3 : 06 猫の正しい数え方

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猫の正しい数え方

2001年 7月23日
記事ID d10723

あなたは猫の正しい数(かぞ)え方を知っている? 日本語の助数詞では猫は「いっぴき」「にひき」と「ひき」で数え、象は「一頭」「二頭」と「頭」で数えるが、どこで数えたってかまやしない。しっぽで数えてみたらどうかしら。猫がこっちに3しっぽ、あっちに2しっぽ、あわせて5しっぽ―― 猫はしっぽで数えるのが正しいのかもしれないよ。実際、おさかなは「一尾、二尾」とも数えるのだから……。

あなたは猫の正しい数え方を知っている?

本当は全部うそ。本当のホントはね……(これは内緒だよ)……猫は数えられない。数えてはいけない。シャーリプトラよ、世界の猫は、「わたし」であり、ル・シャ(the cat)なのだ。猫とは、いきなり黒い山高のウィッチハットのような定冠詞をかぶって登場する魔法使い。

Kids, be hip cats!

現代語訳・般若心経

Windows は「よろしいですか」と尋ねる。あなたは答える。Windows は男性だろうか、女性だろうか。リンゴの絵を思い浮かべなければ足し算も引き算もできないおさな子のように。

―― ちいさいころ、絵本を読んでもらうより、ひとりで読むほうがおもしろかったのは、読んでもらうと、おとこのひとの声やおんなのひとの声が聞こえたけれど、ひとりで読むとほかの声が聞こえたからだ。いや、聞こえなかった。「人間の声は聞こえなかった」 ―― それがわたしの最初にして最大のひみつなのだ。

話し手、書き手といった「人間」をまず思い浮かべなければ話を進められない者もいるかもしれない。かつて赤いリンゴやみどりのリンゴ、きんいろの星やふじ色の石ころからそれらの上方にある透明な「数」を抽出したように、やがてあれこれの人間を考えなくてもストリームだけを考えられるようになるだろう。

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それまでのあいだ、法学のサイトに「著者」の趣味がマリンスポーツで愛読書が中山星香で本名がヌースカムイックネンでノルウェー在住だとかいった、りんごのへたの話がつきまとう。ましてや、伸び縮みするゴムのような、軟体動物の顔写真が……。この理論は明快で素晴らしい、と語るかわりに、この理論を考えた「だれだれ」は偉大だ、と語る。それをみて、見えないものを見ているのは、どっちかとふとふしぎな気分になるかもしれない。

「25という数は存在しない」だの、「マイナス6という数などない」といった言葉は、詩にすぎない。たとえあなたが、万、億、兆……より大きい数を呼べないからといって、そういう数が存在しないわけでは、ないのだ。ゼロさえも ―― 。

妖精の現実とは、1+1が2だという話にすぎず、そのイントリンシックに入ってしまえば、現実とか非現実とかいうレベルの話でない。3つの星と3個のリンゴと3羽のひよどりが同じだという意味に気づくまでは、星とリンゴとひよどりの共通項など決して分からないだろうし(それは見る角度が違うからだ)、意味が分かってしまえば3は3に決まっていて見るべきものなど何もない。というより、3という概念は、初めから見えないものなのだ。

おとなも子どもも男も女も機械も人間も妖精もおまんじゅうもない。いや、アジタよ、あるのだが、見る角度が違う。見る、見ない、見える、見えないと思って穴のあくほどリンゴを見つめてみても、決して「3」には到達できないからだ。シャーリプトラよ。妖精の国に憧れるそのそなたの憧れこそが、そなたを妖精の国からへだてている。おむそわか、むすんで、ひらいて、そっとひらいた手のうえに、「何もない」。

幼子だったとき、わたしは幼子のように話し、幼子のように思い、幼子のように考えていた。成人した今、幼子のことを棄てた。わたしたちは、今は、鏡におぼろに映ったものを見ている。わたしは、今は一部しか知らなくとも、そのときには、はっきり知られているようにはっきり知ることになる。 -- コリント前書

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言霊使いの自ら歌った謡(うた)

2001年 7月21日
記事ID d10721

1992年5月22日に書きとめたものです。その日、図書館に行って絵本を選んでいたら、小学2年生くらいの子どもが、たまたまいあわせた4歳くらいの子どもたちに、紙しばいを読んであげる場面に、出くわしました。小2くらいの子は、「じゃあ、ここ、幼稚園にする?」と言い、ほかの子は「うん」と言いました。ですから、図書館の、そのテーブルは幼稚園になったのです。紙しばいのあと、ひとりの子が「いいこと考えちゃった、お姫さまごっこしない? わたし、お姫さまになりたい」と言いました。ほかの子は「いいよ」と言いました。ですから、その子はお姫さまになったのです。 — このメモはエコラリアに満ちています。 —

前口上

1

弱々しい声で《翼をください》と歌っている諸君! 諸君に問う、「君には翼がないのか」。

天国を語る者よ! 諸君は地をはずかしめる。本当に心を開いて、1本の花を眺めたことがないのか? 1本の花からすべてが学べる;観よ、真実はかくも単純で、かくも美しく、かくも深い。そして諸君よ! 諸君もまた神の創らせたまいし作品ではないか。いずくんぞ心に翼なからんや。

2

公園で走り回っている子どもたちを観察すると、次の2つのことに気がつく:(イ)子どもたちの足が地面に触れている時間はいかに短いか! 子どもたちはより多くの時間を空中で過ごしているのだ;(ロ)君には子どもたちが見えているのに、子どもたちには君が見えていない — つまり、子どもたちは別の世界を観ている!

3

そしてまた、ひとひらの雪の中に驚異の宇宙があるということ。君は虫めがねの中に初めて雪の結晶を見た人の気持ちを想像してみたことがあるか?

この世は不思議なしるしでいっぱいだ! 感じよ、本当によく感じよ、考えるのでなしに;目に見えるものしか信じないのでは、何も識り得ない。盲人にとって世界は存在していないとは何の理ぞや。

「君のしっぱに黄金(きん)のリボンあれ!
君の心にかく輝ける翼あれ!」

*

「ノ・ニーン、
さればさあ、さっそく歌い始めよう、
白い魔法を知らしめよう!」

こう言うと、言霊(ことだま)使いは、心をこめし言葉を()らし、
翼ある、言葉を告げて、続けるよう、

「花びらの上に寝そべること、
銀河をそっと手にすくうこと、
猫語を話すこと、
小鳥の心話(こえ)を聞くこと、
ホットミルクの膜の上でお昼寝すること、
ミルククラウンを頭の上にかぶること、ニーン‥

しっぽをピンと立てること、
しっぽをぐるりと回すこと、
しっぽで疑問符(はてな)を作ること、
難しい考えごとをしながら、ついしっぽに結び目をこしらえてしまい、ほどくのに苦労すること、ニーン‥

水に映った三日月を、パキンと割って食べること、
(みいい味!)
星をカリカリかじること、
(ふみい味!)
彗星のしっぽの中をシャリシャリ歩くこと、ニーン‥

たんぽぽの綿毛につかまって空を飛ぶこと、
空の虹を細長く裂いて、いろいろな色のきれいなリボンを作ること、
それらをみつ編みにして、あやとりのひもにすること、
月の光を蒸留して、黄金(きん)蜜酒(みつしゅ)を密造すること、
オーロラを空からはがしてきて、
ボートネックのフェアリードレスを縫うこと、
ホーキ星をつかまえて虫カゴで飼うこと、
(逃げられないように注意! ノ・ニーン!)

1秒の単位を伸び縮みさせること、
友達と180億年後の待ち合わせの約束をすること、
みんなが寝てる()に星をならびかえて、勝手な星座を作ること、
土星のわっかをかっぱらい、
冷蔵庫にしまっておくこと、ニーン‥

限りなく澄んだものを思い浮かべること、
うすべに色のパステルで、
青いガラスびんを写実的に(えが)くこと、
《愛する》が、ついに自動詞であったと気づくこと、
(《眠る》のように‥!)
《愛しています》と告白すること、
かぐわしき大地(テ・ナヴェ・ナヴェ・フェヌア)》と囁くこと、
すばらしき緑の土地(イハナ・ヴィヒレア・マー)》と呟くこと、
おれはトナカイだ!(モン・リヤン・プワッソ)》と叫ぶこと、
見えない物を観、聞こえない音を聴き、香らない香りを嗅ぐこと、ニーン、ティエテンキン‥

雪の中で立ち止まること、沈黙(しじま)のさまざまな音色(ねいろ)を味わうこと、
夕暮れの不思議な匂いを聞くこと、
心の目を凝らし、金色の西風を見ること、
風の中のシルフィードに呼びかけること、
心の耳を澄まし、森が夢みているのを聴くこと、
フェアリーリングの中で、世界一上手にダンスを踊ること、銀色の星の輪を腕にはめ、ニーン‥

春の野ずえのような灰緑色の瞳を持つこと、
日の光を浴びて、背中の羽を虹色にきらめかすこと、
夕星(ゆうづつ)の光を編みあげたような、淡い色に輝く髪を、
夢のように風になびかせていること、
見るために目をつぶり、聞くために耳をふさぐこと、
夜空を彩る15色の夜の虹、
そして、極地の空に舞う257色の極光(オーロラ)
銀河のしぶきに耀(かがよ)う6万6049色の宇宙虹(オーリオラ)、ニーン‥!

花の中で眠ること、
(ばら色のそよ風‥)
つりがね草の花の音を聞くこと、
(フィ・リン‥)
世界はおまえのおもちゃだったと思い出すこと、
夢みること、常に、夢みること、
(悲しみは幸せの食前酒、
試練(くるしみ)は姿を変えた祝福だと知ること、)
自分自身を楽しむこと、
この嘘っこ歌を上回る嘘っこ歌を、歌い歌って歌い()ぎ、
この(うた)の続きを続けること、すなわち‥

0歳から999歳までの子どもたち!
しっぽにリボン、心に翼、
嘘っこ歌をいつまでも!」

       と

言霊(ことだま)使いは自ら言葉を(つづ)って、
言の葉の(つえ)を自ら使って、
こう物語りました、
 ‥とさ。

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