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チラ裏
「チラ裏」は適当な走り書き。誤字・誤記・脱線が多いです!
2022-05-21 x² + y² = n の解の個数 Part 2 あんなの飾りです
ガンオタには「偉い人」の皮肉が分からんのですよ…
「偉い人」とは、作品世界内の「上層部」ではなく、機体の色・形状などに口出しをした揚げ句、打ち切りを決めてしまう「スポンサーサイド」ではないだろうか?
【4】 それはともかく x2 + y2 = n は整数解を持たないこともある。例えば、
x2 + y2 = 3 とか x2 + y2 = 7
のように、n が「4で割って3余る素数」のときには、解がない(クリスマス定理)。
ここでは「4で割って3余る素数」をチョコレート素数と呼ぶことにする。
n の因子がバニラ素数だけなら、x2 + y2 = n が解を持つことは、既に確かめた。上記の通り、n がチョコレート素数なら、この方程式に解はない。じゃあ n として、バニラとチョコレートがミックスされてたら、どうなるだろうか。例えば
x2 + y2 = 3 × 5 = 15
のように? ちょっと試行錯誤すると、この例も「解なし」であることが分かる。なぜこのパターンには、解がないのだろうか。ガウス整数の問題として考えると…
norm(Z) = n = pq を満たすガウス整数 Z がない理由は何か。ここで p はバニラ素数、q はチョコレート素数。
【5】 この問いに答えるため、ガウス素数はどんなノルムを持ち得るか考えてみよう。まず、ガウス素数 1 + i のノルムは 12 + 12 = 2 なので、ノルム2のガウス素数は存在する。
次に、p がバニラ素数のとき x2 + y2 = p は解を持つので、任意のバニラ素数 p について、ノルム p のガウス素数 x + yi が存在する。
〔注〕 ガウス整数 G = x + yi のノルムが素数なら、それ以上の分解は不可能なので、G はガウス素数。つまり「norm(G) が素数なら G はガウス素数」。
他方、q がチョコレート素数のとき x2 + y2 = q は解を持たない。だから、どんなチョコレート素数 q を考えても、ノルム q のガウス素数は存在しない。つまり、チョコレート素数 q 自身のノルムは…
norm(q) = q2
…だけど、この q をガウス整数の範囲で q = AB と分解して
norm(q) = norm(A) × norm(B), norm(A) = norm(B) = q
とするのは無理(ノルム q の A や B は存在しないのだから)。
従って、整数の世界のチョコレート素数 q は、ガウス整数の世界でも素数(分解不可能)。そして、そのノルムは q2。
〔注〕 q 自体はガウス素数だが、そのノルム norm(q) = q2 は(普通の意味での)素数じゃない。G がガウス素数だからといって norm(G) が素数とは限らないのである。つまり「G はガウス素数だが norm(G) は合成数」というケースもある。
まとめると、ガウス素数のノルムは「2」「バニラ素数」「チョコレート素数の2乗」の三択になって、それ以外の選択肢はない!
この観察によれば、最初の疑問「norm(Z) = n = pq を満たす Z が存在しない理由」は単純明快。ガウス整数の世界で Z = ABCD などと素因数分解されたとしよう。すると
norm(Z) = norm(A) norm(B) norm(C) norm(D)
だけど、この右辺の因子は「2」「バニラ素数」「チョコレート素数の2乗」のどれかに限られる。どう逆立ちしても、「チョコレート素数の1乗」である q という因子が単独で出てくることはない(q2 ならあり得るが、q1 は無理)。右辺の因子が何個あろうが(つまり Z が何個のガウス素数の積に分解されようが)、原理は同じ。
結論として、n の因子にチョコレート素数が1個だけ交じっているとき、x2 + y2 = n は「解なし」。
【6】 ではチョコレート素数の因子が交じっていたら、絶対「解なし」? いや、今の考察から分かるように、「チョコレート素数の2乗」なら、そういうノルムのガウス素数が存在する。ということは…。これについては、直接、普通の整数の世界で考えた方が分かりやすい。例えば、
x2 + y2 = 5
の右辺はバニラ素数で、この方程式は 解 (x, y) = (2, 1) を持つ。
22 + 12 = 4 + 1 = 5
その x, y をそれぞれ3倍した (6, 3) は、次の関係を満たす:
(2⋅3)2 + (1⋅3)2 = 4⋅32 + 1⋅32 = 5⋅32 = 45
だから x2 + y2 = 45 は解を持ち、解の個数は、x2 + y2 = 5 の解の個数と同じ。
要するに n = 3 × 5 だと解なしだが、n = 32 × 5 なら解がある。
解と言っても、もともと成り立ってる式の両辺を 32 = 9 倍しただけ…もともとある解が、全部 3 倍されるだけ。つまらない話だ。この場合、チョコレート素数の2乗は、両辺を無意味に水増しするだけの「飾り」。
一般に、偶数の自然数 2k を考えると、x2 + y2 = n が解を持つなら、両辺を q2k 倍したもの(つまり x, y をそれぞれ qk 倍したもの)も、解を持つ。一方、両辺を「q の奇数乗」倍した場合、q がチョコレート素数なら、前記 q1 のケースと同様、解なし。解に対応するガウス整数 Z について、norm(Z) の素因子は「2」「バニラ素数」「チョコレート素数の2乗」のどれかにならねばならず、そのような素因子をどう掛け合わせても「チョコレート素数の奇数乗」を作れないから。
【7】 さて、v をバニラ自然数とするとき、
x2 + y2 = v 「♪」
に解があることも、解の正確な個数も、分かっている(前回参照)。【6】と同様に考えると、「♪」の右辺にチョコレート素数の因子 q, r, s, … が1個以上加わって
x2 + y2 = vqfrgsh…
のようになった場合、その式を満たす解 (x, y) の個数は、
指数 f, g, h, … が全部偶数なら「♪」の解の個数と同じだが、
指数に1個でも奇数が交じっていたら「解なし」。
ここで q, r, s, … は相異なるチョコレート素数、f, g, h, … は自然数。
「指数が全部偶数」の場合の解というのは、「♪」の解を qf/2rg/2sh/2… 倍しただけ(f などは偶数と仮定してるので、2で割り切れる)。
〔結論〕 n にチョコレート素数の因子があっても、x2 + y2 = n の解の個数は、その「チョコレート素数の因子」を無視した場合と変わらないか(因子が偶数乗だけの場合)、あるいは、単に「解なし」となる(因子に奇数乗が含まれる場合)。「解があるかないか、あるとすれば何個か」を問題にする場合、チョコレート素数は、問題の本質とは関係ない。
でも「チョコレート素数は、そういう性質の存在だ」という抽象的事実それ自体は、興味深い!
ガウス整数の世界では、バニラ素数はもはや素数でなく、2個の破片に split される。一方、チョコレート素数は、何の“反応”も起こさず、素数のまま「停滞」する。この性質は inert という形容詞で表現される。ニュアンス的には「不活性」だけど、日本語では「惰性」と呼ばれるらしい…何かだせぇ(おやじギャグw)。
2022-05-19 x² + y² = n の解の個数 バニラのバナナ・スプリット
前回の続き。
【1】 ちょっと難しい(?)定理を考える。
2以上の自然数は、素数と合成数(=2個以上の素数の積)に分けられる。ここでは、素数
2, 3, 5, 7, 11, 13, 17, 19, …
のうち、4で割って1余る素数、つまり
5, 13, 17, …
などを、バニラ素数と呼ぶことにする。
バニラ素数自身やそれを何乗かしたもの(例: 53 = 125, 132 = 169, 171 = 17)、あるいは、そのような数を2個以上掛け合わせたもの(例: 52 × 131 = 325)をバニラ自然数と呼ぶことにしよう。
バニラ自然数 = バニラ素数。または2個以上の(必ずしも相異ならない)バニラ素数の積。
定理 あるバニラ自然数 n = pe が与えられたとき、それを2平方数の和として書き表す方法は、
4(e + 1) 通り
ある。もし n が2種類のバニラ素数から成り n = peqf と書けるなら、この数は
4(e + 1)(f + 1) 通り
となる。3種類以上のバニラ素数から成る場合も同様で、n = peqfrg… のとき、この数は
4(e + 1)(f + 1)(g + 1)… 通り
となる。ここで p, q, r, … は相異なるバニラ素数。e, f, g, … は自然数。言い換えると、x2 + y2 = n の整数解 (x, y) は、上記の数だけある。ただし「x と −x の違い」「y と −y の違い」「足し算の順序の違い」を区別しないなら、解の個数は8分の1に減る(1未満の端数は切り上げ)。
解説 n = pe(つまり、バニラ素数 p の e 乗)について、x2 + y2 = n の整数解が
4(e + 1) 個
あることは、前回、確かめた。上の定理は、n が2個以上の「バニラ素数のべき」の積であるときにも、同様の性質が成り立つ…という主張。例えば、
n = 52 × 131 = 325
のとき、p = 5, e = 2, q = 13, f = 1 となり、上の定理によれば…
x2 + y2 = 325 の解は
4(e + 1)(f + 1) = 4(2 + 1)(1 + 1) = 24 個。
ただし符号と足し算の順序を区別しなければ、その8分の1となり、3個。
〔注〕 具体的には:
12 + 182 = 325
62 + 172 = 325
102 + 152 = 325
この3種の一つ一つについて、次のような左辺のバリエーションを考えられるので、厳密に細かく数えた解 (x, y) の個数は8倍ある。
(±1)2 + (±18)2 あるいは (±18)2 + (±1)2 (複号任意)
自然数は、一般にはバニラ自然数とは限らず、バニラ素数以外の因子を含んでいる。だから「上記の定理は一般性がない」…と感じられるかもしれない。実は、バニラ素数以外の因子は、この問題の本質に影響しない――詳細は後述するが、バニラ以外の因子があっても、その「バニラ以外の因子」を無視した場合と解の個数は変わらないか、あるいは単に「解なし」となり、その判別法も簡単。従って、バニラ自然数の場合だけを扱う上記定理こそが、問題の核心なのだ!
【2】 定理の内容は少し複雑そうだが、具体例を観察すれば自然と「そうなって当然」と感じられる…。
バニラ素数 p = 5 をガウス整数の範囲で p = AB と分解しよう。例えば A = 2 + i として、その共役を B = 2 − i とする。次の関係に注意:
norm(A) = p, norm(B) = p
norm(A2) = norm(A) × norm(A) = p2
norm(AB) = norm(A) × norm(B) = p2
norm(B2) = norm(B) × norm(B) = p2
より一般的に A or B を合計 e 個選んで掛け合わせると、その積のノルムは pe
同様に、バニラ素数 q = 13 をガウス整数の範囲で q = CD と分解しよう。例えば C = 3 + 2i として、その共役を D = 3 − 2i とする。
C or D を合計 f 個選んで掛け合わせると、その積のノルムは qf
〔注〕 p = AB, q = CD のように、普通の素数が2個の(本質的に異なる)ガウス素数の積に分解することを split(スプリット)という。バニラ素数は、ガウス整数の世界において split される。
さて n = peqf として、
x2 + y2 = n
の解を求めたい。いつものように norm(Z) = peqf を満たす Z を考えよう。まずノルムが pe になるガウス整数だが…
□ + ○ = e ならば norm(A□B○) = pe なので*1
□ = 0, 1, 2, …, e の e+1 通りの選択肢がある(□ を選べば、○ = e − □ は自動的に決まる)。
同様に、ノルムが qf になるガウス整数としては…
■ + ● = f ならば norm(C■D●) = qf なので*2
■ = 0, 1, 2, …, f の f+1 通りの選択肢がある(■ を選べば、● = f − ■ は自動的に決まる)。
*1 *2 この主張の逆は成り立たない。例えば A や B を同伴数(単数倍したもの)で置き換えれば、norm(☆) = pe を満たすような別の「☆」を作れる。じゃあ、選択肢はもっと増えるのか。その通り、「入り口」の選択肢は本当はもっと多い。だけど、単数倍の違いについて、いちいち因子ごとに考えるのは面倒くさい。「掛け算が終わってから、まとめて1回だけ考えれば同じこと」なので、そうしよう。
ノルム peqf のガウス整数を作るには、①ノルム pe のガウス整数 A□B○ と、②ノルム qf のガウス整数 C■D● を、選んで掛け合わせるしかない(だって、基本性質として、素因数分解は本質的に一通りじゃん。例えば n = pe × qf になるんなら、それ以外の分解はない――単数倍の違い・掛け算の順序の違いを無視すれば)。①の □ には e+1 通りの選択肢がある。さらに、①の選択とは独立に(言い換えれば①の選択肢の一つ一つに対して)、②の ■ には f+1 通りの選択肢がある。だから、選択肢の組み合わせとしては:
(e + 1)(f + 1)
さらに、単数倍も考慮すると…。一つ一つの□と■の選択について、A□B○C■D● には、
±(A□B○C■D●), ±i(A□B○C■D●)
の4種のバリエーションがあり(単数倍の関係の4種は、ノルムが同じ仲間同士だけど、数値としては異なるガウス整数)、norm(Z) = peqf を満たすガウス整数 Z の個数は、単数倍まで細かく区別すると、4倍に増える:
4(e + 1)(f + 1)
これが「掛け算が終わってから、まとめて1回だけ考える」部分。選択肢を漏れなく数えたい一心で、「入り口」で因子ごとに4種類の単数倍を区別をすると、「4の指数乗」のものすごい勢いでパターンが増えてしまう。でも、単数は何乗しても単数。ガウス整数の世界では、4種類だけ――増殖するように見えても、4パターンが重複して現れるだけ。「入り口」では放置しておき「出口」で4倍すれば、全パターンを過不足なくカウントできる!
解の符号・足し算の順序を無視した場合、解の個数が(厳密に細かく数えた個数と比べて)8分の1に減る理由は…。符号の無視によって4分の1になり、足し算の順序の違いを区別しないこと(例えば 32 + 42 と 42 + 32、つまり解 (3, 4) と解 (4, 3) を一つと数えること)によって、さらに半分になるから!
対応するガウス整数で考えると…。単数倍の違いの無視で4分の1、共役の違いの無視でさらに2分の1。「共役が単数倍」のような特殊ケースでは少し変則的になるが、基本原理はそうなる。
【3】 以上の分析は p = 5, q = 13 という具体的な値とは、あまり関係ない。任意の(相異なる)バニラ素数 p, q について、同じことが言える。さらに、n = peqfrg… のように、3種類(あるいはそれ以上)のバニラ素数の「べき」についても同様の議論が成り立ち、そのとき選択肢(解の数)が
4(e + 1)(f + 1)(g + 1)… 個
になるのは、明らかだろう。
これは、ガウス整数の世界においてバニラ素数はスプリットされるという性質――世界それ自体の構造についての性質――の現れなのだ。ある素数 p を「異なる2平方数」の和として
p = a2 + b2
と書ければ、ガウス整数の世界において
p = (a + bi)(a − bi)
とスプリットされるのだから、フェルマーのクリスマス定理が重大な意味を持つ!
フェルマー自身は、このことの深い意味には気付いてなかっただろう。
「意味は分からないけど、ここには重大な何かがあるぞ」と直感はしてただろう。
超人ガウスは、ついにこの構造を見抜いたが、1世代前のオイラーは「確かにそうなるのだが、その証明は容易ではない」と言葉を濁している。
われわれは今、偉大な先人たちに肩車してもらうことで、天才オイラーにすら見抜けなかったことを透明に見通している。現代の数学の中では小さなことかもしれない。だが、この風景の素晴らしさに気付く者は、初めて海を見た子どものように驚嘆するだろう。(続く)
「チラ裏」は、きちんとまとまった記事ではなく、断片的なメモです…
Map
の長所、splice
より速い要素挿入法も紹介。 〔最終更新: 2016年4月10日〕bdi
要素と Unicode 6.3 の新しい双方向アルゴリズム (2012-12-04)dir
属性は落とし穴が多い。HTML5 の <bdi>
は役立つ。近い将来、「ユーザー入力欄などの語句は、このタグで隔離」が常識になるかも。 〔最終更新: 2014年4月27日〕fad()
は濁りやすい。各種の代替手段を紹介。forum.doom9.org
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