二重・三重の根号(遊びの数論30)

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2024-06-23 円周16等分点・32等分点のタンジェント tan (π/8), tan (π/16) など

#遊びの数論 #4次方程式 #多重根号簡約 #tan の多倍角 #(30)

tan (π/16) = (4 + 22) − 2 − 1

*

34. 4倍角の公式の分母の零点から(§18):
  tan 22.5° = tan (π/8) = 2 − 1 = 0.4142135623 730950488…
  tan 67.5° = tan (3π/8) = 2 + 1 = 2.4142135623 730950488…

半角の公式を使って、同じ値を求める。

その1 tan (θ/2) = sin θ/(1 + cos θ)

余弦・正弦・正矢の画像。正弦と「半径+余弦」の比による、ベーシックな半角公式。 ∠COB = θ なら ∠COA = 180° − θ だが、二等辺三角形 COA の内角の和も 180° なので、△COA の底角の和は θ。よって ∠A = θ/2。

tan 22.5° = sin 45°/(1 + cos 45°) = (2) / 2/(1 + (2) / 2)
   = 2/(2 + 2)  ← 分子・分母を 2 倍した
   = 2(2 − 2)/[(2 + 2)(2 − 2)] = 22 − 2/(4 − 2) = 2 − 1

tan 67.5° = sin 135°/(1 + cos 135°) = [(2) / 2]/[1 − (2) / 2] = 2/(2 − 2) = 2(2 + 2)/(4 − 2) = 2 + 1

その2 tan (θ/2) = (1 − cos θ)/sin θ

正矢・正弦の比による、もう一つのベーシックな半角の公式。 ∠BCD + ∠B = 90° = ∠A + ∠B なので ∠BCD = ∠A = θ/2。

tan 22.5° = (1 − cos 45°)/sin 45° = [1 − (2) / 2]/[(2) / 2] = (2 − 2)/2 = 2 − 1

tan 67.5° = (1 − cos 135°)/sin 135° = [1 − (−(2) / 2)]/[(2) / 2] = (2 + 2)/2 = 2 + 1

〔注〕 最後の等号では、分子・分母の各項を 2 で約分。

その3 tan2 (θ/2) = (1 − cos θ)/(1 + cos θ)

証明 加法定理(倍角の公式)から…
  cos 2x = cos2 x − sin2 x = (1 − sin2 x) − sin2 x = 1 − 2 sin2 x
  ∴ sin2 x = (1 − cos 2x)/2  『あ』
  cos 2x = cos2 x − sin2 x = cos2 x − (1 − cos2 x) = 2 cos2 x − 1
  ∴ cos2 x = (1 + cos 2x)/2  『い』
『あ』を『い』で割ると tan2 x = (1 − cos 2x) / (1 + cos 2x)
x = θ/2 と置くと tan2 (θ/2) = (1 − cos θ) / (1 + cos θ) ∎

tan2 22.5° = (1 − cos 45°)/(1 + cos 45°) = [1 − (2) / 2]/[1 + (2) / 2] = (2 − 2)/(2 + 2) = (2 − 2)2/[(2 + 2)(2 − 2)] = (2 − 2)2/2
  ∴ 0 < tan 22.5° = (2 − 2)/2 = 2 − 1

tan2 67.5° = (1 − cos 135°)/(1 + cos 135°) = [1 + (2) / 2]/[1 − (2) / 2] = (2 + 2)/(2 − 2) = (2 + 2)2/2
  ∴ 0 < tan 67.5° = (2 + 2)/2 = 2 + 1

別解(cos, sin の半角の公式) 『あ』から:
  sin2 22.5° = (1 − cos 45°)/2 = (1/2)(1 − (2) / 2) = (1/4)(2 − 2)
  ∴ 0 < sin 22.5° = (1/2)(2 − 2)
『い』から:
  cos2 22.5° = (1 + cos 45°)/2 = (1/2)(1 + (2) / 2) = (1/4)(2 + 2)
  ∴ 0 < cos 22.5° = (1/2)(2 + 2)
よって tan 22.5° = (1/2)(2 − 2) ÷ (1/2)(2 + 2) = (2 − 2)/(2 + 2) = (2 − 2)/2 = 2 − 1

〔補足〕 後ろから2番目の等号では、分子・分母を (2 − 2) 倍した。その結果、分子は ((2 − 2))2 = 2 − 2 になり、分母はこうなる:
  (2 + 2) (2 − 2) = [(2 + 2)(2 − 2)] = (22 − 2) = 2
代わりに (2 − 2) / (2 + 2) = [(2 − 2)/(2 + 2)] の根号下の分数の、分子・分母を 2 − 2 倍してもいい。その結果は:
  [(2 − 2)2/(4 − 2)] = [(4 − 2⋅22 + 2)/2] = (3 − 22)
この二重根号は除去可能: 3 − 22 = 2 − 22 + 1 = (2 − 1)2 なので。

同様に tan 67.5° = (1/2)[2 + 2] ÷ (1/2)[2 − 2] = 2 + 1

35. 8倍角の公式を使って、 22.5° = π/8 のさらに半分の角度――直角の 8 分の 1、つまり 11.25° = π/16 ――を単位とする角度の tan を考えてみたい。円周の32等分点に当たる。
  tan 8θ = (8t − 56t3 + 56t5 − 8t7)/(1 − 28t2 + 70t4 − 28t6 + t8)
ここで t = tan θ。分子の零点は、「直角の 8 分の 1 の角度」(11.25°)の偶数倍――つまり「直角の 4 分の 1 の角度」(22.5°)の整数倍――の θ に対応する; それらの tan θ については既知。一方、分母の零点は、「直角の 8 分の 1 の角度」の奇数倍の θ に対応する tan θ; それを求める。

z = t2 と置いて、上記と逆順(次数の高い順)に書くと:
  z4 − 28z3 + 70z2 − 28z + 1 = 0  【☆】
4次方程式の問題だ。仮に【☆】の左辺を変形して…
  (z2 − 14z + p)2 − (qz + r)2  【★】
…の形にできたとする(p, q, r の値は未知)。それを展開すると:
  (z4 + 196z2 + p2 − 2⋅14z3 − 2⋅14pz + 2pz2) − (q2z2 + 2qrz + r2)
   = z4 − 28z3 + (196 + 2p − q2)z2 + (−28p − 2qr)z + (p2 − r2)  【★★】

【★★】が【☆】の左辺と等しいとすれば、2次・1次の係数、定数項の比較から:
  196 + 2p − q2 = 70  ‥‥①
  −28p − 2qr = −28  ‥‥②
  p2 − r2 = 1  ‥‥③

①から q2 = 2p + 126、 ③から r2 = p2 − 1、その二つを辺々掛け算して:
  q2r2 = 2p3 + 126p2 − 2p − 126  ‥‥④
②から 2qr = −28p + 28 つまり qr = −14p + 14、それを平方して:
  q2r2 = 196p2 − 392p + 196  ‥‥⑤
④から⑤を辺々引き算して 0 = 2p3 − 70p2 + 390p − 322、つまり:
  p3 − 35p2 + 195p − 161 = 0
これを満たす有理数 p があれば、定数項 −161 の約数 ±1, ±7, etc. のどれか。小さい順に試すと、解 p = 1 が見つかる。ゆえに q2 = 2p + 126 = 128 = 82⋅2、その正の平方根を考えると q = 82。一方、③に p = 1 を代入すると 1 − r2 = 1 なので r = 0。結論として、次のように【☆】を【★】の形にできる:
  z4 − 28z3 + 70z2 − 28z + 1 = (z2 − 14z + 1)2 − (82 z)2 = 0
  すなわち (z2 − 14z + 1)2 = (82 z)2

この最後の等式の両辺の平方根を考える; 次のどちらかが成り立たねばならない。
  z2 − 14z + 1 = (82)z つまり z2 + (−14 − 82)z + 1 = 0  『う』
  または z2 − 14z + 1 = −(82)z つまり z2 + (−14 + 82)z + 1 = 0  『え』

これで4次方程式の問題を、2次方程式の問題にできた!

『う』の解は? (−7 − 42)2 = 49 + 2⋅282 + 32 = 81 + 562 なので、次の通り:
  z = 7 + 42 ± (80 + 562) = 7 + 42 ± 2(20 + 142)
同様に『え』の解は:
  z = 7 − 42 ± 2(20 − 142)

t2 = z だから、求めるタンジェント t = tan θ は、上記四つの解 z の平方根。それは…
  t = [7 + 42 ± 2(20 + 142)]  『お』
…のような数だが、この三重根号を簡約できるか? 基本の手順に従い、根号下の数の平方差を計算:
  (7 + 42)2 − 4(20 + 142) = (81 + 562) − (80 + 562) = 1
結果は平方数 1 = 12 なので、その平方根 1 と 7 + 42 の平均 U を求めると(足して 2 で割ると)、 U = 4 + 22; そして 7 + 42 と U のずれ V を求めると V = 3 + 22。従って、次のように三重根号を二重根号にできる!
  [7 + 42 ± 2(20 + 142)] = (4 + 22) ± (3 + 22)

右辺の二重根号をさらに簡約できるか? 第一の根号については、根号下の平方差 42 − 22⋅2 = 8 が平方数でないので、簡約できない。第二の根号については、平方差 32 − 22⋅2 = 1 が平方数なので、簡約可能: 1(その平方数の平方根)と 3 の平均 u は = 2、そして 3 と u のずれは v = 1。従って、次のように二重根号を外せる!
  (3 + 22) = 2 + 1 = 2 + 1
以上をまとめると、『う』の解 z の、正の平方根として得られる t = tan θ は:
  t = [7 + 42 ± 2(20 + 142)] = (4 + 22) ± (2 + 1)  『うう』

同様の根号簡約を『え』の解 z に対して行うと:
  t = [7 − 42 ± 2(20 − 142)] = (4 − 22) ± (2 − 1)  『ええ』

数値的には (4 + 22) = 2.6…, 2 + 1 = 2.4…, (4 − 22) = 1.0…, 2 − 1 = 0.4… なので、大ざっぱに『うう』は 5.0 と 0.2、『ええ』は 1.4 と 0.6。 0° < θ < 90° の範囲では、 θ が大きくなればなるほど正の数 tan θ も大きくなるので、『うう』は最大と最小の正の解に当たり、『ええ』はそれ以外の二つの正の解に当たる。要するに…
  tan (π/16) = (4 + 22) − 2 − 1
  tan (3π/16) = (4 − 22) − 2 + 1
  tan (5π/16) = (4 − 22)2 − 1
  tan (7π/16) = (4 + 22)2 + 1

† 『う・え』の解 z の負の平方根も、 t2 = z の t として有効な解。それらは、上記四つの tan の符号を変えたもの:
  tan (−(π/16)) = −tan (π/16) = −(4 + 22)2 + 1 等々
8倍角の公式の分母は8次式なので、八つの根を持つ(絶対値が同じで符号が反対の、四つのペア)。

‡ 272 = (33)2 = (32)3 = 93 = 729 なので、2.72 = 7.29。一方、 2.62 = 4(1.3)2 = 4(1.69) = 6.76。よって 4 + 22 = 4 + 2.82… = 6.82… の(正の)平方根は 2.6 より大きいが 2.7 より小さい。 (1.0)2 = 1.0, (1.1)2 = 1.21 なので、 4 − 2 = 4 − 2.82… = 1.17… の平方根は 1.0 より大きく 1.1 より小さい。

〔追記〕 【☆】の z4 − 28z3 + 70z2 − 28z + 1 = 0 で y = z + 1/z と置くと y2 − 28y + 68 = 0。それを解くと:
  z + 1/z = y = 14 ± 82
両辺を z 倍して整理すると z2 − (14 ± 82)z + 1 = 0; これは『う・え』と同じ。(2024年7月11日)

36. 前節では tan (π/16) などの根号表現を求めた。検算を兼ね、半角の公式経由で同じものを求める。簡潔化のため 2 を σ と略す(従って σ2 = 2)。
  cos (π/8) = (1/2)[2 + 2] = (1/2)(2 + σ)  ← §34・別解参照
  tan2 (π/16) = [1 − cos (π/8)] / [1 + cos (π/8)]  ← §34・その3参照

従って:
  tan2 (π/16) = (1 − (1/2)(2 + σ)) / (1 + (1/2)(2 + σ)) = (2 − (2 + σ)) / (2 + (2 + σ))
   = (2 − (2 + σ))2 / [(2 + (2 + σ))(2 − (2 + σ))]
   = [4 − 2⋅2(2 + σ) + (2 + σ)] / [4 − (2 + σ)] = [(6 + σ) − 4(2 + σ)] / (2 − σ)
   = [(6 + σ) − 4(2 + σ)](2 + σ) / (4 − σ2)
   = [(12 + 6σ + 2σ + σ2) − (8 + 4σ)(2 + σ)] / 2
   = [(14 + 8σ) − (8 + 4σ)(2 + σ)] / 2 = (7 + 4σ) − (4 + 2σ)(2 + σ)

この数(A とする)の平方根を簡約できるか調べるため、次の平方差に注目する:
  (7 + 4σ)2 − [(4 + 2σ)(2 + σ)]2 = 1
1 は平方数なので、以下 §35 と同じ: A = (4 + 2σ) − (3 + 2σ) 等々。

† (49 + 2⋅28σ + 16σ2) − [(16 + 2⋅8σ + 4σ2)(2 + σ)] = (81 + 56σ) − [(24 + 16σ)(2 + σ)]
= (81 + 56σ) − (48 + 24σ + 32σ + 16σ2) = (81 + 56σ) − (80 + 56σ) = 1
[ ] 内の平方 = 80 + 56σ については、次のように考えた方がいくらか見通しが良いかもしれない:
  (4 + 2σ)(2 + σ) = 2(2 + σ)(2 + σ) = 2(2 + σ)3/2 = 2(20 + 14σ)1/2
  ∴ [(4 + 2σ)(2 + σ)]2 = 22(20 + 14σ) = 80 + 56σ
ただし途中計算で (2 + σ)3 = 8 + 3⋅4σ + 3⋅2σ2 + σ3 = 8 + 12σ + 12 + 2σ = 20 + 14σ という関係を使った。
A は、 §35 の『お』の複号でマイナスを選んだ場合に当たる。

一方、『い』を使うと cos2 67.5° = (1 + cos 135°)/2 = (1 − (2) / 2)/2 = (2 − 2)/4
  ∴ 0 < cos (3π/8) = (1/2)[2 − 2] = (1/2)(2 − σ)

従って:
  tan2 (3π/16) = (1 − (1/2)(2 − σ)) / (1 + (1/2)(2 − σ)) = (2 − (2 − σ)) / (2 + (2 − σ))
   = (2 − (2 − σ))2 / [(2 + (2 − σ))(2 − (2 − σ))]
   = [4 − 2⋅2(2 − σ) + (2 − σ)] / [4 − (2 − σ)] = [(6 − σ) − 4(2 − σ)] / (2 + σ)
   = [(6 − σ) − 4(2 − σ)](2 − σ) / (4 − σ2)
   = [(12 − 6σ − 2σ + σ2) − (8 − 4σ)(2 − σ)] / 2
   = [(14 − 8σ) − (8 − 4σ)(2 − σ)] / 2 = (7 − 4σ) − (4 − 2σ)(2 − σ)  以下同様。

*

tan (3π/8) = 2 + 1 と tan (π/8) = 2 − 1 はシンプル。当然…
  tan (±3π/8) = ±(2 + 1) そして tan (±π/8) = ±(2 − 1)
…となるわけだが、前者に (4 + 22) を足すと tan (7π/16)tan (π/16) になり、後者に (4 − 22) を足すと tan (5π/16)tan (3π/16) に。特に:
  tan (7π/16) = cot (π/16) = (4 + 22) + 2 + 1 = 5.027339…
  tan (π/16) = (4 + 22)2 − 1 = 0.198912…

この二つは、互いに逆数。実際 (2 + 1)2 = 3 + 22 なので:
  [(4 + 22) + (2 + 1)][(4 + 22) − (2 + 1)] = (4 + 22) − (3 + 22) = 1

同様に:
  tan (5π/16) tan (3π/16) = [(4 − 22) + (2 − 1)][(4 − 22) − (2 − 1)] = (4 − 22) − (3 − 22) = 1

これら四つの tan の求め方はいろいろあるだろうが、大抵、多重根号の処理が問題となるようだ。4次方程式(四つの tan それぞれの平方を根とする)を解いた場合、 tan の値が最初は三重根号で表され、その三重根号が二つの二重根号に簡約され、さらにその二重根号の片方を外すことができる――「複雑に絡まったものが、ほどけてく」みたいで、緊張がほぐれるような気持ちの良さがある。

⁂


2024-06-24 18° の倍数の角度に対する sin と cos どの方法が実用的?

#遊びの数論 #1 の原始根 #(30)

「18° の倍数の角度」に対する三角関数の値は、いろんな方法で求められるが、代表的な三つの方法には、どれも短所がある――

(1) 即物的手段は「5倍角の公式」だが、「5倍角」を整然と扱うには、それなりの準備が必要。加法定理から力任せに積み上げると、かなり面倒。

(2) やり方さえ知ってれば、作図から cos 36° を求めるのが軽妙。だが、幾何学的方法には「知らないと思い付けない」という欠陥があり、21世紀の感覚と合わない面もある。急いでるとき「この三角形とあの三角形は相似だから、辺の比が…」などと悠長な議論をされると、「めんどくせぇな。方程式を立てて機械的にスパッとできねぇのか?」という邪心が芽生えてくる。ギリシャ2000年の伝統をまったり楽しみたい気分のときは、いいんだけどね…

(3) cos 72° = sin 18° は 1 の原始5乗根の実部なので、 z5 = 1 を直接解く――これが現代の感覚だろう。ところが z5 − 1 の因子の4次式の根を求めるのは、4次方程式の問題。 z + 1/z を y と置けば2次方程式の問題になるが、どっちにしても「やり方を知らないとできないトリック」に依存する。素朴に sin 18° だけ欲しいとき、4次方程式やら複素数やらってのもオーバースペック気味だし…

折衷案として、「多倍角の公式を使うが、5倍角ではなく3倍角までで勘弁してもらう」という方法を紹介したい。

〔注〕 18°, 36°, 54°, 72° の四つの角度に対する sin θ と cos θ は、単純に考えると「全部で 4 × 2 = 8 種類の値」のようだが、実際には「4 種類の値」しかない。任意の θ に対し cos θ = sin (90° − θ), sin θ = cos (90° − θ) なので…。例えば cos 18° の値と sin 72° の値は同じ。

*

37. 三角関数の基本性質として sin 36° = cos 54° という等式が成り立つ――「それが具体的にどういう数値か?」は不明かもしれないが、とにかくその二つの数は等しい。そのことを利用して、 sin 18° = cos 72° の具体的な値を求める。

θ = 18° とすると、 sin 36° = cos 54° は…
  sin 2θ = cos 3θ  『か』
…を意味する。倍角の公式・3倍角の公式を使って『か』をばらすと:
  2 sin θ cos θ = 4 cos3 θ − 3 cos θ  『が』
cos θ = cos 18° は 0 でないので、『が』の両辺を cos θ で割ることができ、その結果は:
  2 sin θ = 4 cos2 θ − 3 つまり
  2 sin θ = 4(1 − sin2 θ) − 3

sin θ = sin 18° を x とすると、上の式は x についての2次方程式…
  2x = 4(1 − x2) − 3 つまり
  2x = 4 − 4x2 − 3 すなわち 4x2 + 2x − 1 = 0
…なので、機械的に解くことができる:
  x = [−1 ± (12 − 4(−1))]/4 = (−1 ± 5)/4

求めたい値 x = sin 18° は正、 5 = 2.236… なので、複号の + が題意に適する:
  sin 18° = cos 72° = (−1 + 5)/4  『き』

数値的には (−1 + 2.236…)/4 = (1.236…)/4 = 0.309… に当たる。順調な出だしだぜ!

次に『き』を使って cos 18° = sin 72° を求める。こっちは根号が二重になるが、順を追って考えると…
  cos2 18° = 1 − sin2 18° = 1 − ((−1 + 5)/4)2
(−1 + 5)2 = 1 − 25 + 5 = 6 − 25 なので、上の ( )2 の部分を展開すると:
  cos2 18° = 1 − (6 − 25)/16 = (10 + 25)/16
両辺の正の平方根から:
  cos 18° = sin 72° = [(10 + 25)]/4  『く』

これで 18° と 72° に対する cos, sin が求まった。複素平面上で考えるなら 1 の原始5乗根の根号表現を得る。

1 の原始5乗根(主値) cos 72° + i sin 72° = (−1 + 5)/4 + i [(10 + 25)]/4

38. θ = 18° は、もちろん等式『か』 sin 2θ = cos 3θ を満たす(それが議論の出発点だった)。だが、もし θ を未知の角度とした場合、その逆の主張は成り立たない: sin 2θ = cos 3θ が成り立つからといって θ = 18° とは限らない。

事実 cos 18° = sin 72° なので、(その両辺の −1 倍を考えると) −cos 18° と −sin 72° は等しい。今 θ = −54° と仮定すると…
  sin 2θ = sin (−108°) = −sin 108° = −sin 72°
  cos 3θ = cos (−162°) = cos 162° = −cos 18°
この二つの値が等しいのだから、 θ = −54° のときも、等式『か』は成り立つ。『き』では複号の + を選んだが、もしも − を選んでいたら、結果は次の負数になっていた:
  x = sin (−54°) = (−1 − 5)/4
  ∴ sin 54° = cos 36° = (1 + 5)/4  『ぎ』

cos 36° は、数値的には (1 + 2.236…)/4 = (3.236…)/4 = 0.809… に当たる。

『ぎ』を使って sin 36° = cos 54° を求める。
  sin2 36° = 1 − cos2 36° = 1 − ((1 + 5)/4)2
(1 + 5)2 = 1 + 25 + 5 = 6 + 25 なので:
  sin2 36° = 1 − (6 + 25)/16 = (10 − 25)/16
両辺の正の平方根から:
  sin 36° = cos 54° = [(10 − 25)]/4  『ぐ』

18° の倍数の sin, cos
  cos 72° = sin 18° = (−1 + 5)/4 そして sin 72° = cos 18° = [(10 + 25)]/4
  cos 36° = sin 54° = (1 + 5)/4 そして sin 36° = cos 54° = [(10 − 25)]/4

θ = 18°, 36°, 54°, 72° に対する sin θ と cos θ が簡潔に求まった!

39. §37 では『か』を cos θ についての3次式『が』に変形し、その両辺を cos θ で割ることで(cos 18° ≠ 0 を根拠に、この割り算を正当化した)、2次方程式を得た。「このような割り算によって、3次式が2次式になる」ということは、「もし θ を変数とするなら cos θ = 0 は『が』の(従って『か』の)自明な解」ということを暗示している。

実際、もし cos θ = 0 なら(360° の整数倍の違いを無視して) θ = ±90° なので、そのときには…
  sin 2θ = sin (±180°) = 0
  cos 3θ = cos (±270°) = 0
この二つの値も等しいので、 θ = ±90° のときも、等式『か』は成り立つ。

〔注〕 0 = 0 なんていう「自明な等式」に実用上の興味はないが、理論上は「それも解だよ」と。

§37 では天下り的に sin 36° = cos 54° からスタートしたが、 cos 36° = sin 54° からスタートすることも可能。最初と同じように θ = 18° を定数と仮定する。ただし『か』の sin 2θ = cos 3θ の代わりに、次の関係を使ってみる。
  cos 2θ = sin 3θ  『け』
倍角・3倍角の公式を使って、これをばらすと:
  cos2 θ − sin2 θ = 3 sin θ − 4 sin3 θ つまり
  (1 − sin2θ) − sin2 θ = 3 sin θ − 4 sin3 θ
x = sin θ と置くと:
  1 − x2 − x2 = 3x − 4x3 すなわち
  4x3 − 2x2 − 3x + 1 = 0  『こ』

3次方程式『こ』が有理数解を持つとすれば、その解は、定数項 1 の約数 ±1 またはその 1/2 or 1/4 だが、実際に試すと x = 1 が解であることはすぐ分かる。よって『こ』の左辺は x − 1 で割り切れる。実際に割ってみると…

        4x^2 + 2x   - 1
      ┌─────────────────────
x - 1 │ 4x^3 - 2x^2 - 3x + 1
        4x^3 - 4x^2
        ───────────
             + 2x^2 - 3x
               2x^2 - 2x
               ─────────
                     - x + 1
                     - x + 1
                     ───────
                           0

結局『こ』は…
  (x − 1)(4x2 + 2x − 1) = 0
…と分解される。この場合も x = sin θ = 1 つまり θ = ±90° は一つの解(自明な解)というわけ。以下、「自明な解」以外(つまり x ≠ 1 の場合)を考える。その場合には x − 1 ≠ 0 なので、上の等式の両辺を x − 1 で割ることができ、こうなる。
  4x2 + 2x − 1 = 0
これは §37 で解いたのと同じ2次方程式なんで、後は全く同じ議論に。 sin 36° = cos 54° の代わりに cos 36° = sin 54° からスタートしても同じ結論に至ることが分かった。

〔付記〕 同じ結論になるだけで何の新たな成果もないようだが(sin 36° = cos 54° から始めて答えは全部出てるのに、わざわざ別の経路でやるのは無駄なようだが)、「教科書の sin 36° = cos 54° をひっくり返して cos 36° = sin 54° から始めたらどーなるんだろ?」という好奇心が満たされた。ひっくり返しにやると、途中で3次式を分解する手間が増える。大した手間じゃないけど、教科書ではそれを嫌って sin 36° = cos 54° からスタートしてるんだろう。

*

不思議なもんで、こんなふうに「こじんまり」とまとめると、今度は逆に「これでは本質が見えてこない。複素数の範囲で5次方程式を解くのが、最も透明だろう」といった思いも生じる。どの方向から料理しても「帯に短し、たすきに長し」といった感じ…。「1 の原始5乗根」というのは、ギリシャ以来の古典幾何学(正五角形)と、複素数ベースの近代的な数論(円分多項式)の両方にまたがる話題で、どっちか一方の側からのアプローチをすると、他方の文脈では不満が残るのかもしれない。

〔参考文献〕 Casey, Trigonometry, p. 44
https://archive.org/details/treatiseonplanet00caseuoft/treatiseonplanet00caseuoft/page/44/mode/1up

⁂


2024-06-26 24° に関連する問題 怠け心は成功の母

#遊びの数論 #1 の原始根 #(30)

問題 cos 24° + cos 48° + cos 96° + cos 192° = 1/2 を証明せよ。

少し考えると、円分多項式 Φ15 の根の和の半分ということが分かり、具体的な cos の値は必要ない。それはいいのだが、 Φ15 を導出するには、地道に割り算するしかないのだろうか。5分もあれば完了する単純作業とはいえ、少々面倒くさい。何とか手抜きはできないものか…?

5分の手間を惜しんで、何十分も熟慮・検討――楽をするためなら、どんな苦労もいとわない(←矛盾)

そのとき電球がともった!w

*

40. cos 24° + cos 48° + cos 96° + cos 192° とは、 画像の A, B, C, D′ の横座標の和に他ならない。画像。

複素平面上の数としての A, B, C, D; A′, B′, C′, D′ は、 1 の原始15乗根(4組の共役複素数)。この八つの数を根とする8次式を構成すれば、根と係数の関係から、7次の係数が根の和の −1 倍; その係数が −1 であることを示せば、
  A + B + C + D + A′ + B′ + C′ + D′
   = 2(cos 24° + cos 48° + cos 96° + cos 192°) = 1  『さ』
…となって証明完了。

〔注〕 A と A′、 B と B′ などの各ペアは、それぞれ共役: 実部が同じなので、 cos に関する限り、ペアになってる二つの点のどっちの偏角を使ってもいい; 虚部は「絶対値が同じで符号だけ反対」なので、足し合わせると消滅:
  A + A′ = (cos 24° + i sin 24°) + (cos 24° − i sin 24°) = 2 cos 24° 等々

z15 = 1 すなわち z15 − 1 = 0 の左辺を分解して、「原始15乗根でない15乗根」を根とする因子を除去すれば、そのような8次式が得られる。まず…
  z15 − 1 = (z5)3 − 1 = (z5 − 1)(z10 + z5 + 1)

右辺の因子 z5 − 1 = (z − 1)(z4 + z3 + z2 + z + 1) は、1 の15乗根のうち、 1 という数(一つ)とその原始5乗根(四つ)の計 5 個の根を持つ。もう一つの因子 z10 + z5 + 1 は、1 の15乗根のうち、それ以外のもの――原始3乗根(二つ)と原始15乗根(八つ)の計 10 個――の根を持つ。よって、z10 + z5 + 1 は、原始3乗根を根とする z2 + z + 1 で割り切れる。

この「10次式 ÷ 2次式」の筆算を実直にやれば、商は望みの8次式――この割り算は、さほど大変でもない。もはや証明できたも同然。

だが、どーも「この割り算、したくねーな」という感じが…

割り算回避の方法を検討: y = z + 1/z と置けば、10次式が5次式になり、計算量・半額セール。それも悪くないけど z と y の相互変換の手間がかかるし、5次式といえども、割り算自体をしたくない。理由は分からないが、なぜかそう感じてしまう…

そのとき、ひらめいた――この割り算、必要ねーじゃんっ! 分解未完了で、原始根以外の余計な根が混ざってる10次式だけど、余計な根の正体が図の W, W′ であることは分かってる: その二つの複素数は、 1 の原始3乗根(通例 ω と ω2 で表される); ω + ω2 = −1 はハッキリしてるので、引き算で簡単に除去できる。具体的に、10次の因子 z10 + z5 + 1 の9次の係数は 0 なので、10個の根の和は:
  A + B + C + D + A′ + B′ + C′ + D′ + W + W′ = 0
ところが W + W′ = −1 なのだから、
  A + B + C + D + A′ + B′ + C′ + D′ + (−1) = 0
  ∴ A + B + C + D + A′ + B′ + C′ + D′ = 1
つまり『さ』が成り立つ。∎

41. 別解。今証明した式はそれなりに有名らしく Wikipedia でも言及されてるし、教科書の「和→積」の公式の節の、練習問題ともなっている

† The following is perhaps not as readily generalized to an identity containing variables (but see explanation below)
https://en.wikipedia.org/wiki/List_of_trigonometric_identities#Identities_without_variables

‡ Casey, p. 63, 30.
https://archive.org/details/treatiseonplanet00caseuoft/treatiseonplanet00caseuoft/page/63/mode/1up

参考までに「和→積」の公式を使ってみる。
  cos (α + β) = cos α cos β − sin α sin β
  cos (α − β) = cos α cos β + sin α sin β
この二つを縦に足すと:
  cos (α + β) + cos (α − β) = 2 cos α cos β
x = α + β, y = α − β と置くと x + y = 2α つまり α = (x + y)/2; そして x − y = 2β つまり β = (x − y)/2 なので、上の式はこうなる。

cos の「和→積」の公式
  cos x + cos y = 2 cos [(x + y)/2] cos [(x − y)/2]

〔補足〕 cos x + cos y と cos y + cos x は等しいので、左辺の二つの角度のうち、どっちを x、どっちを y と見てもいい。つまり右辺の [(x − y)/2] の分子は、どっちからどっちを引いてもいい。

さて、問題の cos 24° + cos 48° + cos 96° + cos 192° つまり…
  cos (/15) + cos (/15) + cos (/15) + cos (16π/15)
   = cos (/15) + cos (/15) + cos (/15) + cos (14π/15)  『し』
…は、次の形式を持つ:
  cos a + cos b + cos c + cos (a + b + c)  『す』
便宜上、問題を少し一般化して、任意の a, b, c について、この形の「四つの cos の和」を考えてみたい。「和→積」の公式を使うと…
  最初の2項 cos a + cos b = 2 cos [(a + b)/2] cos [(a − b)/2]
  残りの2項 cos c + cos (a + b + c) = 2 cos [(a + b + 2c)/2] cos [(a + b)/2]
よって4項全部の和は(上記2式の右辺の和を考え、共通因数でくくる):
  cos a + cos b + cos c + cos (a + b + c)
   = 2 cos [(a + b)/2] {cos [(a − b)/2] + cos [(a + b + 2c)/2]}
   = 2 cos [(a + b)/2] {2 cos [(a + c)/2] cos [(b + c)/2]}  ← 下記〔注〕参照
   = 4 cos [(a + b)/2] cos [(b + c)/2] cos [(c + a)/2]  『ず』

〔注〕 { } 内の変形では、 x = (a + b + 2c)/2, y = (a − b)/2 として、上記「和→積」の公式を使った。こうなる:
  (x + yb)/2 = [(a + b + 2c)/2 + (a − b)/2]/2 = [(2a + 2c)/2]/2 = (a + cb)/2
  (x − yb)/2 = [(a + b + 2c)/2 − (a − b)/2]/2 = [(2b + 2c)/2]/2 = (b + c)/2

任意の a, b, c について『す』と『ず』が等しい、ってことが分かった。

〔例〕 a = 2°, b = 4°, c = 6° とすると:
  cos 2° + cos 4° + cos 6° + cos 12° = 4 cos 3° cos 4° cos 5°
なかなか面白い!

『す』で a = /15, b = /15, c = /15 とした場合が『し』。そのとき…
  (a + b)/2 = /15 = /5
  (b + c)/2 = 12π/15 = /5
  (c + a)/2 = 10π/15 = /3  ← 120° この数の cos は = −1/2
…となるから、『す』に等しい『ず』の形は、こうなる:
  『し』 = 4 cos (2π/5) cos (4π/5) cos (2π/3) = −2 cos (2π/5) cos (4π/5)
「和→積」の逆の「積→和」の公式を使うと:
   = −2⋅1/2 (cos (6π/5) + cos (2π/5))
   = −[cos (6π/5) + cos (2π/5)] = −[cos (4π/5) + cos (2π/5)]
「マイナス½の定理」から、この [ ] 内は −1/2 に等しい。よって『し』は +1/2 に等しい。∎

† 直接 cos 72° と cos 144° の値を使う手もある。
  cos 72° = (−1 + 5)/4
  cos 144° = −cos 36° = (−1 − 5)/4
…なので(『き』『ぎ』参照):
  −2 cos (2π/5) cos (4π/5) = −2 ((−1 + 5)/4)((−1 − 5)/4) = −2 ((1 − 5)/16) = 1/2

‡ 複素数を使っていいなら、前節同様、4種類の「1 の原始5乗根」を足し合わせた和の半分…と考えた方が手っ取り早い。
  z4 + z3 + z2 + z + 1 = 0
…の4解の和は −1 なので、その半分は −1/2。

*

恒等式『す』=『ず』はすてきだけど、「和→積」経由での証明は、真意が分かりにくい。

この問題は「円分多項式の根の和」の半分と見るのが、自然で透明だろう。もし素直に円分多項式…
  Φ15 = z8 − z7 + z5 − z4 + z3 − z + 1  『せ』
  ↑ 6次と2次の項がなく、残りの係数は交互に ±1。回文的。
…を考えるなら、その根(1 の原始15乗根)の和は、7次の係数の符号を変えた +1; 根の和の半分は 1/2。

代わりに恒等式 a3 − 1 = (a − 1)(a2 + a + 1) に a = z5 を代入して z15 − 1 = 0 の左辺の10次の因数…
  z10 + z5 + 1  『そ』
…を考えると、『そ』の根の和が 0 であること、『そ』の根のうち(原始15乗根以外の)二つの和は ω + ω2 = −1 であることから、『せ』を持ち出さずに、同じ結論を得ることができる。

単に『そ』を z2 + z + 1 という因子(その根は ω, ω2)で割れば『せ』になる。実用上、余計なことを考えず、その割り算をした方が手っ取り早いかもしれない。割り算をすれば、容易に次の分解を得る。
  z10 + z5 + 1 = (z2 + z + 1)(z8 − z7 + z5 − z4 + z3 − z + 1)
だが「その割り算をしたくねーな」という怠け心がモチベーションとなって、『そ』経由の方法が見つかった。

⁂


2024-06-28 cos 24° + cos 48° + cos 96° + cos 192° 強引な解法

#遊びの数論 #1 の原始根 #(30)

cos 24° + cos 48° + cos 96° + cos 192° = 1/2 を直接計算で示す。

前回は、普通に根と係数の関係を使ったり、別解として「和→積」の変換を使ったりしたが、原始15乗根の実部・虚部は、有理数の加減乗除と平方根の組み合わせだけで表現可能(15 = 3 × 5 の素因数 3, 5 は、どちらも 1 を引くと 2n の形なので)。その範囲で cos 24° などを直接求め、直接足し算することも、難しくない。

*

42. 複素平面上、「単位円(原点 O を中心とする)に内接する正15角形」の頂点を考える。一つの頂点を P = 1 + i0 とする。反時計回りに P の隣の頂点 A は、偏角 ∠AOP = 24° を成す。 P の2個先の頂点 B は ∠BOP = 48° を成し、 P の3個先の頂点 Q は ∠QOP = 72° を成す。等々。いずれも円周15等分点。画像(再掲)。

P を 0 番として、「3 の倍数」番目の頂点を結べば、正五角形 PQRR′Q′ が得られる。これらは特別な円周15等分点で、円周5等分点。
  Q = cos 72° + i sin 72° = (1/4)(−1 + 5) + (i/4)(10 + 25)
  R = cos 144° + i sin 144° = (1/4)(−1 − 5) + (i/4)(10 − 25)
…と、それらの虚部の符号を変えた Q′, R′ は、 1 の原始5乗根

「5 の倍数」番目の頂点を結べば、正三角形 PWW′ が得られる。これらは円周3等分点。
  W = cos 120° + i sin 120° = −1/2 + (i3)/2
  W′ = cos (−120°) + i sin (−120°) = 1/2(i3)/2
…は 1 の原始3乗根。どの頂点から見ても、5個前方・5個後方の頂点は、偏角が相対的に ±120° の位置。ある頂点 Z の座標が (x, y) なら――つまり複素数として Z = x + iy なら――、その ±120° の位置の頂点は、複素数としては x + iy の W 倍ないし W′ 倍に当たる。

係数 1/2 を脇へ置き、それ以外の部分に注目すると、 +120° 回転後の実部・虚部は、それぞれもともとの実部虚部(つまり x, y)の符号を変えたものに基づく。回転後の実部では、もともとの虚部3 倍がそこから引き算され、回転後の虚部では、もともとの実部3 倍がそこに足し算される。 −120° 回転の場合もほとんど同じだが、 3 倍の加減については、 +120° 回転の場合と逆に、回転後の実部が足し算・虚部が引き算。

† 120° 回転は 180° 反転に近いので、大ざっぱに言えば符号が逆になる。実際 W, W′ = −1/2 ± … を掛ければ、実部・虚部は、とりあえずどちらも −1/2 倍される。ただし、100パーセント符号が変わるとは限らない。例えば、偏角 −60° の点(第4象限)を +120° 回転した場合、結果は偏角 +60° で第1象限: 虚部の符号は変わるが、実部の符号はプラスのまま。

‡ 引き算が発生する理由について: Z の偏角を θ として(つまり x = cos θ, y = sin θ として)、 ZW = cos (θ + 120°) + i sin (θ + 120°) の右辺に加法定理を適用したとき、その実部には cos (θ + 120°) = cos θ cos 120°  sin θ sin 120° という「符号のねじれ」がある。 sin 120° = (3)/2 は正なので、 sin θ sin 120° = (sin θ)(3)/2 となって、もともとの虚部 y (= sin θ) の定数倍が引き算される。

偏角 72° の点 Q = (1/4)(−1 + 5) + (i/4)(10 + 25) から見て、5個(120°)前方の点 D′ は:
  D′ = (1/8)(+1 − 5 − (30 + 65)) + (i/8)((10 + 25) − 3 + 15)
5個後方の点 B′ は:
  B′ = (1/8)(+1 − 5 + (30 + 65)) + (i/8)((10 + 25) + 3 − 15)
前者は cos 192° + i sin 192° に当たり(偏角 72° + 120°)、後者は cos (−48°) + i sin (−48°) に当たる。

同様に、偏角 144° の点 R = (1/4)(−1 − 5) + (i/4)(10 − 25) から見て、5個後方の点 A は:
  A = (1/8)(+1 + 5 + (30 − 65)) + (i/8)(−(10 − 25) + 3 + 15)

偏角 −144° の点 R′ = (1/4)(−1 − 5) − (i/4)(10 − 25) から見て、5個後方の点 C は:
  C = (1/8)(+1 + 5 − (30 − 65)) + (i/8)(+(10 − 25) + 3 + 15)

以上四つの数の実部は、順に cos 192°, cos (−48°) = cos 48°, cos 24°, cos 96° だが、実部を縦に足し合わせると、
  前二者の ±(30 + 65) と 後二者の ±(30 − 65)
  二つずつある 5 と −5
…は、それぞれ打ち消し合って消滅、和としては (1/8)(+1+1+1+1) = 1/2 が残る。
  cos 24° + cos 48° + cos 96° + cos 192° = 1/2
…の証明だけが目的なら、対応する虚部(sin 24° など)は不要で、初めから実部だけを求めても良かった。つまり、角度の和または差が 24°, 48°, etc. になるような θ を選んで、 cos (θ + 120°) または cos (θ − 120°) を計算しても良かった。

〔注〕 証明法としては「根と係数の関係」経由に比べると見通しが悪く、 cos の根号表現を簡単に導ける場合にしか役立たない。しかも cos 72° のような値が出発点となるので、その正確な根号表現を知っているか、または事前に導出する必要があり、面倒くさい。他方、特定の等式に話を限らず、 1 の原始15乗根の根号表現全般を考える場合、このアプローチは簡明。

43. A の偏角 24° を θ とすると B, C, D の偏角はそれぞれ 2θ, 4θ, 7θ に当たる。 10 + 25 = 10 + 2(2.236…) = 14.472… と 15 は大ざっぱに等しいので、それらの平方根も大ざっぱに等しい。 3.82 = 14.44、そして 3.92 = 15.21 なので(10 + 25)153.8 台。一方 2.32 = 5.29、そして 2.42 = 5.76 なので、 10 − 25 = 10 − 2(2.236…) = 10 − 4.472… = 5.527… の平方根は 2.3 台

† 382 = (19⋅2)2 = 361⋅4 = 722⋅2 = 1444 そして 392 = (40 − 1)2 = 1600 − 80 + 1 = 1521

‡ 232 = 529 そして 242 = (12⋅2)2 = 144⋅4 = 288⋅2 = 576

1 の原始15乗根に含まれる平方根
  (ア) 15 = 3.872983… → 約 4
  (イ) (10 + 25) = 3.804226… → 約 4
  (ウ) (10 − 25) = 2.351141… → 約 2.4 か 約 2.5 〔※注〕
  (イイ) (30 + 65) = 6.589112… → 約 7
  (ウウ) (30 − 65) = 4.072295… → 約 4

(イイ)は(イ)の 3 = 1.73… 倍。この倍率を 7/4 = 1 + 1/2 + 1/4 = 1.75 で代用するなら、「半分」と「半分の半分」を足せばいい:
  3.80… × 7/4 ≈ 3.8 + 1.9 + 0.95 ≈ 3.8 + 2.8 = 6.6
  大ざっぱに 約 4 + 2 + 1 = 7
同様に(ウウ)は(ウ)の約 7/4 倍:
  2.35… × 7/4 ≈ 2.4 + 1.2 + 0.6 = 4.2 大ざっぱに 約 4

〔※注〕 (ウ)は約 2.4 とした方が真の値に近く、上記の概算でも便利だが、どうせ後から 8 で割るので 0.1 くらいの違いは大勢に影響ない。(ア・イ・ウ)などの数値は、仮に 0.4 ずれていても 8 で割れば誤差 0.05 になり、だいたいの大きさの目安としては、十分実用になる。だったら(ウ)を約 2 としては、いけないのか。それでも構わないけど、(ウウ)は本来(ウ)の 1.73… 倍。その関係上、(ウ)が約 2 では若干大ざっぱ過ぎるので、一応 2.5 くらい、ってことにしておく。

前節で求めた四つの点の座標を一覧表にまとめると、次の通り。 B′, D′ については、虚部の(三つの平方根の前の)符号を変えて、第1・第2象限の B, D に置き換えてある。参考として、小数第3位までの真の値と、大きさの目安となる概算値・暗算法を付記。

1 の原始15乗根(第1・第2象限)の実部と虚部
θ 8 cos θcos θ 8 sin θsin θ
A24° 1 + 5 + (30 − 65)0.913… 3 + 15 − (10 − 25)0.406…
約 1 + 2.2 + 4 = 7.2約 0.9 約 1.7 + 4 − 2.5 = 3.2約 0.4
B48° 1 − 5 + (30 + 65)0.669… 3 + 15 + (10 + 25)0.743…
約 1 − 2.2 + 7 = 5.8約 0.7 約 −1.7 + 4 + 4 = 6.3約 0.8
C96° 1 + 5 − (30 − 65)−0.104… 3 + 15 + (10 − 25)0.994…
約 1 + 2.2 − 4 = −0.8約 −0.1 約 1.7 + 4 + 2.5 = 8.2約 1.0
D168° 1 − 5 − (30 + 65)−0.978… 3 − 15 + (10 + 25)0.207…
約 1 − 2.2 − 7 = −8.2約 −1.0 約 1.7 − 4 + 4 = 1.7約 0.2

画像(再掲)。cos 48° が cos 45° = (1.414…)/2 = 0.707… より少し小さいこと、 cos 96° = −cos 84° が cos 90° = 0 より少し小さい負数であること(C の横座標)、 cos 168° = −cos 12° が cos 180° = −1 に近いこと(D の横座標)は、明白。それぞれ 0.6…, −0.1…, −0.9… は、作図からの目分量としても、妥当な線だろう。

cos 24° が 1 に近いことは予想がつくが(A の横座標)、具体的な値 0.91… は明らかではない。 θ = 0° → 90° における cos θ = 1.0 → 0.0 のダウンヒルで、25%地点を通過して θ = 22.5° を超えても、 cos θ はまだ 0.9 台。小さい角度の cos は「変化が遅い」。

虚部の側で明らかなのは、 sin 48° が sin 45° = 0.707… より少し大きいこと、 sin 96° = sin 84° が sin 90° = 1.0 にほとんど等しいこと(C の縦座標)。

sin 24° = 0.40… と sin 168° = sin 12° = 0.20… は、それほど明らかではないけど、作図から A の高さが半径の約40%であること、 D の高さがその半分程度であることは読み取れる。

⁂


2024-06-30 cos 24° などの二重根号/三重根号表現の相互変換

#遊びの数論 #1 の原始根 #多重根号簡約 #(30)

sin 24° = 1/8 (3 + 15 − (10 − 25))

sin 24° = (1/4)[7 + 5 − (30 + 65)]

この二つは、同じ値の別表現。前者→後者の変換は比較的単純。「多重根号簡約の基本アルゴリズム」を再帰的に使うことで、逆変換(三重根号除去)も機械的に可能。

*

44. 簡潔化のため 5 = 2.236… を σ と略す。 σ2 = 5 となる。

第一に 8 cos 24° = (1 + σ) + (30 − 6σ) なので(§43)、両辺を平方して:
  64 cos2 24° = (1 + σ)2 + (30 − 6σ) + 2(1 + σ)(30 − 6σ)

(1 + σ)2 = 12 + σ2 + 2σ = 6 + 2σ だ。従って (1 + σ) = ((1 + σ)2) = (6 + 2σ) でもある。よって、上の式はこうなる。
  64 cos2 24° = (6 + 2σ) + (30 − 6σ) + 2(6 + 2σ)(30 − 6σ)
   = 36 − 4σ + 2[(6 + 2σ)(30 − 6σ)]

(6 + 2σ)(30 − 6σ) = 180 − 36σ + 60σ − 12⋅5 = 120 + 24σ なので:
  64 cos2 24° = 36 − 4σ + 2(120 − 24σ) = 36 − 4σ + 2(2(30 − 6σ))  『た』

共通因子を「約分」してすっきりさせるため、『た』の両辺を 4 で割ると…
  16 cos2 24° = 9 − σ + (30 + 6σ)  『ち』
『ち』の両辺の(正の)平方根から:
  4 cos 24° = [9 − σ + (30 + 6σ)]
  ∴ cos 24° = cos (2π/15) = (1/4)[9 − σ + (30 + 6σ)]  『つ』

† 二つの平方根のそれぞれから 2 をくくり出してから、掛け算してもいい:
  2(6 + 2σ)(30 − 6σ) = 2(2 (3 + σ))(2 (15 − 3σ)) = 2(2 2)((3 + σ))((15 − 3σ)) = 4((3 + σ))((15 − 3σ))

一方、『ち』から 16(1 − sin2 24°) = 16 − 16 sin2 24° = 9 − σ + (30 + 6σ)
  整理すると 16 sin2 24° = 7 + σ − (30 + 6σ)  『☆』
両辺の(正の)平方根から:
  4 sin 24° = [7 + σ − (30 + 6σ)]
  ∴ sin 24° = sin (2π/15) = (1/4)[7 + σ − (30 + 6σ)]  『て』

『つ・て』は、それぞれ cos 24°, sin 24° なので、当然、 cos2 24° + sin2 24° = 1 が成立:
  (1/16)(9 − v + (30 + 6σ)) + (1/16)(7 + σ − (30 + 6σ)) = (1/16)(16) = 1

逆に sin 24° = (1/8)(3 + 15 − (10 − 25)) からスタートすると(§43参照):
  8 sin 24° = 3 + 15 − (10 − 25) = 3(1 + σ) − (10 − 2σ)
平方して:
  64 sin2 24° = 3(1 + σ)2 + (10 − 2σ) − 23(1 + σ)(10 − 2σ)
   = 3(6 + 2σ) + (10 − 2σ) − 23(2(10 + 2σ))
  ∴ 16 sin2 24° = 7 + σ − (30 + 6σ)  ←『☆』と同じ

† (1 + σ)(10 − 2σ) = [(1 + σ)2] (10 − 2σ) = [(6 + 2σ)(10 − 2σ)] = (40 + 8σ) = 2(10 + 2σ)

第二に 8 cos 96° = (1 + σ) − (30 − 6σ) なので(§43)、第一と同様、両辺を平方して…
  64 cos2 96° = (1 + σ)2 + (30 − 6σ) − 2(1 + σ)(30 − 6σ)
   = (6 + 2σ) + (30 − 6σ) − 2(6 + 2σ)(30 − 6σ)
   = 36 − 4σ − 2(120 + 24σ) = 36 − 4σ − 4(30 + 6σ)  『だ』
4 で割って…
  16 cos2 96° = 9 − σ − (30 + 6σ)  『ぢ』
σ は 2.2 台の数、 (30 + 6σ) は 6.5 台の数なので、この右辺は正。

cos 96° は負(第2象限の点の横座標)。正の値を持つ等式『ぢ』の、両辺の負の平方根から:
  0 > 4 cos 96° = −[9 − σ − (30 + 6σ)]
  ∴ cos 96° = cos (8π/15) = (−1/4)[9 − σ − (30 + 6σ)]  『づ』

一方、『ぢ』から 16(1 − sin2 96°) = 16 − 16 sin2 96° = 9 − σ − (30 + 6σ)
  つまり 16 sin2 96° = 7 + σ + (30 + 6σ)
sin 96° は正なので、上の式の両辺の正の平方根から:
  0 < 4 sin 96° = [7 + σ + (30 + 6σ)]
  ∴ sin 96° = sin (8π/15) = (1/4)[7 + σ + (30 + 6σ)]  『で』

† 例えば正の数 3 は、正の平方根 3 と負の平方根 −3 を持つ。そのように、正の数の負の平方根を指す。対応する正の平方根は、次の通り。 cos 84° > 0 と cos 96° < 0 は、符号が反対で絶対値が等しいので…
  cos 84° = cos (7π/15) = (1/4)[9 − σ − (30 + 6σ)]  ←『づ』の符号を変えた正の数

要約 cos 24° あるいは cos 96° = −cos 84° を平方すると、機械的計算により…
  cos2 θ = (1/16)(9 − σ ± (30 + 6σ))
…の形になり、そこから『つ・づ』『て・で』の三重根号形式…
  cos θ = (±1/4)[9 − σ ± (30 + 6σ)]  sin θ = (1/4)[7 + σ ∓ (30 + 6σ)]
…を得ることは易しい。複号同順で上が 24° の場合、下が 96° の場合

† ここでは表記上、二重根号だが、 σ は 5 の略なので、実際には三重根号になっている。

‡ もし「24° と 96°」の代わりに「24° と 84°」を考えるなら、 sin の値は変わらず cos の符号だけが負から正になって、 cos θ の先頭の (±1/4) は単に (1/4) となる。

45. 前節では二重根号の平方を経由して、三重根号表現を得た。その逆変換――三重根号表現が与えられたとして、それを二重根号表現に変換(簡約)すること――を考えてみたい。

『つ』の 4 cos 24° = [9 − σ + (30 + 6σ)] について、 a = 9 − σ, b = (30 + 6σ) と置き、多重根号簡約の基本アルゴリズム(詳細は後述: §47)を試す。 a と b の平方差は:
  a2 − b2 = (9 − σ)2 − (30 + 6σ) = 81 − 18σ + 5 − 30 − 6σ = 56 − 24σ
もしこの数(q とする)が「平方数」で = r2 の形を持つなら、 q/4 = 14 − 6σ も「平方数」で = (r/2)2 となるが、果たしてこの q/4 は「平方数」か?

それを判定するため、子プロセスとして、再び基本アルゴリズムを呼び出す。 q/4 = 14 − 6σ の 2 項の平方差…
  142 − (6σ)2 = 196 − 36⋅5 = 16 = 42
…は平方数である。よって 14 − 6σ も「平方数」。 14 と 4 の平均は u = 9 で、 14 の平均 u からのずれは 5 なので:
  r/2 = (q/4) = 9 − 5 = 3 − σ  ← 検算として (3 − σ)2 = 9 + 5 − 6σ = 14 − 6σ
  ∴ r = 6 − 2σ  ← 検算として (6 − 2σ)2 = 36 + 20 − 24σ = 56 − 24σ = q

子プロセスの成功により、親プロセスの平方差 q は上記 r の平方と判明。親プロセスに戻り a と r の平均は:
  U = [(9 − σ) + (6 − 2σ)]/2 = (15 − 3σ)/2
a の平均 U からのずれは:
  V = (9 − σ) − (3 + σ)/2 = (18 − 2σ)/2 − (15 − 3σ)/2 = (3 + σ)/2

すなわち、 4 cos 24° の三重根号表現 [9 − σ + (30 + 6σ)] は、次の二重根号表現に等しい。
  4 cos 24° = UV = [(15 − 3σ)/2] + [(3 + σ)/2]
根号下の分数を解消するため、両辺を 2 = 4 倍して:
  8 cos 24° = (30 − 6σ) + (6 + 2σ)

右辺の二つの項(σ を含めて二重根号)の中に、さらに簡約可能なものがあるか。第1項については、平方差 302 − (6σ)2 = 900 − 180 = 720 = 144⋅5 = 122⋅5 が有理数の平方ではなく、従って「一重根号にはできない」という意味で答えは「No」。一方、第2項については、平方差 62 − (2σ)2 = 36 − 20 = 16 = 42 が有理数の平方なので、答えは「Yes」。 6 と 4 の平均 s = 5、および 6 と s の差 1 を使って…
  (6 + 2σ) = 5 + 1 = 1 + σ  ← 検算として (1 + σ)2 = 1 + 5 + 2σ = 6 + 2σ

以上をまとめると、次の結論に至る。これは既に得た結果(§43)と一致。
  8 cos 24° = 1 + σ + (30 − 6σ)

† 有理数に σ を添加した範囲で考えるなら、 122⋅5 = (12σ)2 は ρ = 12σ の平方。 30 と ρ の平均 υ = 15 + 6σ、および 30 と υ の差 15 − 6σ を使って、次の分解が可能だが、二重根号は外れず、むしろ項が増えてしまう:
  (30 − 6σ) = (15 + 6σ) − (15 − 6σ)
検算として、この左辺の2乗 30 − 6σ は、右辺の2乗 = (15 + 6σ) + (15 − 6σ) − 2[(15 + 6σ)(15 − 6σ)] = 30 − 2(152 − 62⋅5) = 30 − 245 = 30 − 2(35) に一致。

次に『て』の 4 sin 24° = [7 + σ − (30 + 6σ)] について:
  a = 7 + σ, b = (30 + 6σ)
…と置く。今度は (a + b) ではなく (a − b) であることに注意。いずれにしても平方差は:
  q = (7 + σ)2 − (30 + 6σ) = 54 + 14σ − 30 − 6σ = 24 + 8σ
  q/4 = 6 + 2σ = (1 + σ)2
つまり q = r2 は「平方数」、ただし r = 2 + 2σ である。 a と r の平均は U = (9 + 3σ)/2 で、 a の U からのずれは V = (5 − σ)/2。よって:
  4 sin 24° = [(9 + 3σ)/2] − [(5 − σ)/2]
  ∴ 8 sin 24° = (18 + 6σ) − (10 − 2σ)

右辺の二つ目の根号は、平方差 100 − 4⋅5 = 80 = 42⋅5 が(有理数の範囲では)非平方なので、簡約不可。一つ目の根号は、平方差が 182 − 62⋅5 = 324 − 180 = 144 = 122 なので簡約可能。 18 と 12 の平均 u = 15 と、 18 の u からのずれ 3 を使って:
  (18 + 6σ) = 15 + 3  『★』
  ∴ 8 sin 24° = 3 + 15 − (10 − 2σ)

〔検算〕 『★』の左辺の平方 18 + 6σ は、右辺の平方 = 3(1 + σ) の平方 = 3(6 + 2σ) と一致。

† σ を含む範囲では、 42⋅5 は ρ = 4σ の平方。 10 と ρ の平均 υ = 5 + 2σ、および 10 と υ の差 5 − 2σ を使って (10 − 2σ) = (5 + 2σ) − (5 − 2σ) と書ける。検算として、その左辺2乗は、右辺2乗 = 5 + 2σ + 5 − 2σ + 2(25 − 20) = 10 + 2σ と一致。

46. 『づ』の 4 cos 96° = −[9 − σ − (30 + 6σ)] は、両辺が負。両辺を −1 倍して次のように読み替えてしまえば両辺が正の場合に帰着し、根号の簡約の仕方に本質的な違いはない。
  4 cos 84° = [9 − σ − (30 + 6σ)]

a = 9 − σ, b = (30 + 6σ) と置き、途中計算を一部略すと…
  q = a2 − b2 = (9 − σ)2 − (30 + 6σ) = 86 − 18σ − 30 − 6σ
   = 56 − 24σ = 4(14 − 6σ) = 22(3 − σ)2
…は r = 2(3 − σ) = 6 − 2σ の平方。 a と r の平均 U = (15 − 3σ)/2、および a と U の差 V = (3 + σ)/2 を使うと:
  8 cos 84° = (30 − 6σ) − (6 + 2σ) = (30 − 6σ) − (1 + σ) = −1 − σ + (30 − 6σ)
  ∴ 8 cos 96° = 1 + σ − (30 − 6σ)

σ = 2.2… で (30 − 6σ) が約 4 であることから(§43)、 cos 84° と cos 96° の根号表現は、それぞれ正と負。 (30 − 6σ) の値をあらためて確かめておく。
  3σ = 2.2360… × 3 ≈ 6.6 + 0.108 = 6.708
  6σ = 3σ × 2 ≈ 6.708 × 2 = 13.416
この近似値は σ = 2.23606… の小数「第5位」以下を切り捨てて 6 倍したもの; 最悪でも小数「第4位」が不正確なだけで、13.416 の全部の桁は正しい。よって…
  30 − 6σ = 30 − 13.416… = 16.583… ◎
…も全部の桁が正確。 ◎ は 42 = 16 より大きいので、 4.0 < (30 − 6σ) は確定的。 ◎ は、
  4.12 = (4 + 0.1)2 = 16 + 0.8 + 0.01 = 16.81
…よりは小さいので、次の挟み撃ちを得る:
  4.0 < (30 − 6σ) < 4.1

よって 8 cos 84° = −1 − 2.2… + 4.0… ≈ −3.2 + 4.0 = 0.8、ゆえに cos 84° ≈ 0.1。符号だけ反対の cos 96° は ≈ −0.1。

もう少し正確な値。まず 30 − 6σ について:
  4.072 = 16 + 2⋅0.28 + 0.072 = 16.5649
  4.082 = 16 + 2⋅0.32 + 0.082 = 16.6464
近似値 ◎ によると、 30 − 6σ は、この二つの数の間にあり、どちらかと言うと前者に違い。てきとーに (30 − 6σ) ≈ 4.073 とすると、この平方根は小数第2位まで正確(第3位の「3」はてきとー)。整数部分を含め、有効数字3桁。4桁目も大きくは間違っていないはず。
  8 cos 96° ≈ 1 + 2.236 − 4.073 = 3.236 − 4.073 = −0.837 よって cos 96° ≈ −0.104625

有効な近似値は −0.1046 で小数第4位は怪しく、第3位も確実ではない。実際には、真の値が cos 96° = −0.104528… なので、われわれの近似値は、第3位まで正しく、第4位が 1 ずれている。簡易計算で誤差 ± 0.0001 まで肉薄できた!

† σ = 2.23606 79774… を 2.236 としたことによる誤差は、この概算においては無視できる(次の桁が 0 なので、実質の有効数字が 1 桁多い)。誤差のほぼ全ては、 (30 − 6σ) ≈ 4.073 の末尾桁がてきとーであることに起因する。 4.072, 4.082 を ◎ と見比べると、この平方根は 4.07 台前半の可能性が高く、採用値 4.073 の誤差は「たぶん ±0.002」。安全のためそれを ±0.004 とした場合、 8 で割ると ±0.0005 なので、 cos 96° の近似値 −0.1046 に対して、真の値が −0.1050 や −0.1051 程度である可能性を否定できない。――非公式の本音としては「たぶん ±0.002」なので、 8 で割った結果は約 −0.10462 ± 0.00025 となり、小数第3位はほぼ確実。

47. 多重根号簡約の基本アルゴリズム: 根号のネストを減らせるかどうか判定し、減らせる場合には実際に減らす。二重根号については結論が出ている(参考リンク)。三重根号処理でも、同じロジックが有効。

正の実数 (a + b) ないし (a − b) が与えられ、それを簡約したいとする(多重根号なので a または b の少なくとも一方は、根号を含んでいる)。ここで根号下の二つ目の数は正でも負でも構わないが、議論の便宜上 b を正の実数として、「二つ目の数が正の場合」の a + b と、「二つ目の数が負の場合」の a − b を別々に扱い、以下、二つのケースを複号 a ± b で併記する。

簡約の可否は、根号下の2数の平方差 q = a2 − b2 が「平方数」であるかどうかで決まる。もし q が非平方数なら、簡約できない。もし q が平方数 r2 に等しければ、次の変形が可能。

  1. a と r の平均を求めて(つまり両者を足して 2 で割って)、それを U とする。
  2. a の「平均 U からのずれ」 a − U を求めて、それを V とする。
  3. (a ± b)U ± V に等しい。

証明 仮定により…
  q = a2 − b2 = r2 よって a2 − r2 = b2  『な』
  U = (a + r)/2  『に』
  V = a − U = (2a)/2 − (a + r)/2 = (a − r)/2  『ぬ』
  U + V = a  『ね』
…が成り立つ。

『に・ぬ』の積を考え、『な』を使うと:
  UV = [(a + r)(a − r)]/4 = (a2 − r2)/4 = b2/4
この両辺の正の平方根から、次の等式が成り立つ(仮定により b は正):
  (UV) = b/2  『の』

さて U ± V の平方は、『ね・の』から、次の数に等しい:
  (U ± V)2 = U + V ± 2(UV) = a ± 2⋅b/2 = a ± b
これは与えられた正の実数 (a ± b) の平方に他ならない。∎

最もシンプルなのは b = d の場合、つまり (a ± d) の簡約。簡約の可否は q = a2 − d が平方数か否かで決まる。それとほとんど同じで、一般的によくあるパターンは b = cd の場合、つまり (a ± cd) の簡約。可否は q = a2 − c2d が平方数か否かによる。このケースは e = c2d と置けば (a ± e) と書けるので、第一のケースと本質的には同一。

〔例1〕 (24 + 85) の場合、 242 − 82⋅5 = 576 − 320 = 256 = 162 は平方数なので(r = 16)、簡約可能。 24 と r の平均 u = 20、および 24 と平均 u のずれ v = 4 を使えば:
  (24 + 85) = u + v = 20 + 4 = 2 + 25
検算として、上記左辺の平方 24 + 85 は、右辺の平方 22 + 22⋅5 + 2 × 2(25) に等しい。

〔例2〕 例1 の (24 + 85) については、 = 2(6 + 25) と「約分」すれば、比較的小さい数の計算になる。この二重根号(係数の 2 を無視)について q = 36 − 4⋅5 = 16 = 42, r = 4, u = (6 + 4)/2 = 5, v = 6 − u = 1 なので:
  (6 + 25) = 5 + 1 = 1 + 5
  ∴ 与式 = 2(6 + 25) = 2 + 25

今回、扱ったのは、
  [7 + 5 − (30 + 65)]
…のように、見掛け上、はるかに複雑なものだった。そのような場合でも、単に a = 7 + 5, b = (30 + 65) と見て、
  q = a2 − b2 = (7 + 5)2 − (30 + 6) = 24 + 85 = 4(6 + 25) = 22(1 + 5)2
  r = 2(1 + 5) = 2 + 25
…のように計算すれば、機械的に淡々と進めることができる。小さな違いとして、この場合、 q = 24 + 85 が「平方数」かどうかは、有理数より広い範囲で考える。つまり、
  q = 24 + 85 = r2 を満たす簡単な r があるか?
…について、有理数より広い範囲で、検討する必要がある。けれど、それは要するに、
  r = (24 + 85) を簡単にできるか?
…という問題で、上記の例1あるいは例2のようにして、この基本アルゴリズムそのものを使って、機械的に判定・解決できる。

この最後の q は「平方数」といっても整数や有理数の平方ではなく、無理数 r = 2 + 25 の平方だ。二重根号を外したいとき、もしその簡約で使われる成分 r 自体が根号を含んでいたら、 r を使って表される u や v は、内部に根号を含んでしまう; その場合、 u ± v は二重根号の和または差であり、そのように表記しても「二重根号を外す」という目的を達成できない。二重根号が「二重根号の和または差」になるだけで、簡約どころか、もともとの形より長く複雑になってしまう可能性が高いだろう。

しかし三重根号を扱う場合には、 r が根号を含んでいても、トータルでは二重根号までで収まるなら、簡約になる。二重根号の簡約と違い、三重根号の簡約では、平方差 q が有理数の平方でなくても構わない。 q の平方根 r が(単純に考えると)二重根号になるとしても、もしその二重根号を一重根号に簡約できるなら、根号を一重だけ含む r を使って与式を整理でき、全体では三重根号が二重根号になる!

*

結論 1 の原始15乗根の実部・虚部――言い換えれば「24° の ±1, ±2, ±4, ±7 倍の角度」に対する cos, sin ――については、機械的な単純計算と基本アルゴリズムによって、二重根号表現と三重根号表現を容易に相互変換できる。

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2024-07-02 遊びの cos 5° 負数の平方根の二重根号除去など

#遊びの数論 #1 の原始根 #多重根号簡約 #(30)

問題 cos 55° cos 65° + cos 65° cos 175° + cos 175° cos 55° = −3/4 を示せ。

*

48. 「積→和」の公式から:
  cos 55° cos 65° + cos 65° cos 175° + cos 175° cos 55°  『♪』
   = (cos 120° + cos 10°)/2 + (cos 240° + cos 110°)/2 + (cos 230° + cos 120°)/2
   = (−1/2 + cos 10°)/2 + (−1/2 + cos 110°)/2 + (cos 230° + −1/2)/2
   = −3/4 + (cos 10° + cos 110° + cos 230°)/2  『は』

「和→積」の公式から cos 10° + cos 110° = 2 cos (120/2)° cos (100/2)° = cos 50° なので(なぜなら cos 60° = 1/2):
  cos 10° + cos 110° + cos 230° = cos 50° + cos 230° = cos 50° + cos (50 + 180)° = 0
  ∴ 『は』 = −3/4  『ひ』

ここまでは教科書の練習問題。『♪』は αβ + βγ + γα の形なので、もし追加情報として和 α + β + γ と積 αβγ の代数的表現が分かれば、 α, β, γ を3解(全て実数解)とする3次方程式を構成でき、それを解くことで α, β, γ つまり cos 55° などを根号表現できる(特に −γ = −cos 175° = cos 5° は、 1 の原始72乗根の主値の実部に当たる)。それを試してみたい。

† Casey, p62, 9.
https://archive.org/details/treatiseonplanet00caseuoft/treatiseonplanet00caseuoft/page/62/mode/1up

α + β = cos 55° + cos 65° = 2 cos (120/2)° cos (10/2)° = cos 5° なので:
  α + β + γ = cos 55° + cos 65° + cos 175° = cos 5° + cos 175° = 0  『ふ』
こいつは面白くなってきた!

αβ = cos 55° cos 65° = (cos 120° + cos 10°)/2 = (−1/2 + cos 10°)/2 なので:
  αβγ = cos 55° cos 65° cos 175° = (−1/2 + cos 10°)(−cos 5°)/2
   = (−1 + 2 cos 10°)/2 × (−cos 5°)/2 = (cos 5° − 2 cos 10° cos 5°)/4
   = [cos 5° − 2(cos 15° + cos 5°)/2]/4 = (−cos 15°)/4 = (6 − 2)/16  『へ』

〔補足〕 最後の等号は cos 15° = (6 + 2)/4 による。
  cos (45° − 30°) = cos 45° cos 30° + sin 45° sin 30° = (2/2)(3/2)(2/2)(1/2) = (6/4) + (2/4)

〔参考〕 6 = 2.4494… と 2 = 1.4142… の和は約 3.8636。その 4 分の 1 から cos 15° = 約 0.9659。

『ふ・ひ・へ』から、 α = cos 55°, β = cos 65°, γ = cos 175° を3解とする方程式は次の通り。
  z3 − (3/4)z + (6 + 2)/16 = 0  『ほ』

係数の分数を解消したい。素朴な方法は、 z = y/4 と置いて両辺を 43 倍すること。すると3次の係数は 43 で割られて 43 倍されるので 1 のまま変わらず、 1次の係数は 4 で割られて 43 倍されるので 42 = 16 倍になり、定数項は単に 43 倍されるので 64 倍になる:
  y3 − 12y + 4(6 + 2) = 0  『ぼ』

関連する2次式 x2 + 4(6 + 2)x + (12/3)3 の根を求める。その判別式の 4 分の 1 を d とすると…
  d = [2(6 + 2)]2 − 64 = 4(6 + 2 + 212) − 64 = −32 + 163
  ∴ 根は x = −2(6 + 2) ± (−32 + 163) = −2(6 + 2) ± 4(−2 + 3)

面白いことに、複号の後ろの二重根号がある部分は、次のように簡約可能:
  4(−2 + 3) = 2(−6 − −2)
従って、2次式の根を次のように表現できる(複号同順):
  x = −2(6 + 2) ± 2(−6 − −2) = −2(6 + 2 ± −6 ∓ −2)

† 2(−2 + 3) = (−8 + 43)−6 − −2 = i6 − i2 = i(6 − 2) に等しい(平方根記号の通常の定義では)。実際、前者の平方 −8 + 43 と、後者の平方 i2(6 − 2)2 = (−1)(6 + 2 − 212) = −(8 − 2⋅23) は、等しい。後者の −1 倍、つまり −2 − −6 = i(2 − 6) も、平方されれば前者の平方と等しいが、負の実数[この例では −2 + 3 = −2 + 1.732… = −0.267…]に関しては、虚部が正の純虚数を「平方根の主値」とする。すなわち、通常、下記 A を B より優先する:
  A = i(6 − 2) = i(2.449… − 1.414…) = i(1.035…)
  B = i(2 − 6) = i(1.414… − 2.449…) = i(−1.035…)

結局、『ぼ』の解は、 Cardano の公式から:
  y = 3[−2(6 + 2 + −6 − −2)] + 3[−2(6 + 2 − −6 + −2)]
z = y/4 なので『ほ』の解は:
  z = (1)/4{3[−2(6 + 2 + −6 − −2)] + 3[−2(6 + 2 − −6 + −2)]}
少しトリッキーだが、この { } 内から 2 = 3(22) をくくり出すと:
  z = (2/4)(3[3 − 1 − −3 + −1] + 3[3 − 1 + −3 − −1])
   = (2/4)[3{(−1 + i) − 3(1 + i)} + 3{(−1 − i) − 3(1 − i)}]
立方根の主値を考えるなら、これは最大の解 α = cos 55° に当たる。

† 例えば 3(−26 − 22) = {−223 − 22}1/3 = {−23/23 − 23/2}1/3 = {(23/2)[−3 − 1]}1/3
この (23/2) を { } の外に出すと、上の式 = (23/2)1/3{−3 − 1}1/3 となるが、 (23/2)1/3 = 21/2 = 2 だ。結局、立方根から 2 をくくり出すと、立方根号下の数が 22 分の 1 になる。

49. 前節の α, β, γ に対して、 −α, −β, −γ を根とする3次式を考えると、主値が −γ = −cos 175° = cos 5° になる。そのような3次式は、『ほ』の左辺とほとんど同じで、定数項の符号だけが異なる(2次の係数の符号も異なるはずだが、その係数は 0):
  z3 − (3/4)z (6 + 2)/16 = 0  『ぽ』

前節同様、素朴に z = y/4 と置いて両辺を 43 倍すれば係数の分数を解消できるのだが、今回は少し気を利かせて h = 22 = 8 を使い、 z = y/h と置いて両辺を h3 倍してみる。3次の係数は(h3 で割って h3 倍なので)変わらない。 1次の係数は(h で割って h3 倍なので)正味 h2 = 8 倍され、分数から整数になる。定数項は h3 = 88 = 162 倍される; 分数をなくせるばかりか、ついでに無理数 2 を有理化できる:
  y3 − 6y − (6 + 2)2 = 0 すなわち y3 − 6y − (2 + 23) = 0

関連する2次式 x2 − (2 + 23)x + (6/3)3 の根を求める。判別式の 4 分の 1 を d とすると:
  d = (1 + 3)2 − 8 = −4 + 23

±d が必要になるので、先回りにして d の平方根を求めたい: d = (−4 + 23) の二重根号を外すことができだろうか。基本アルゴリズムを適用すると、根号下の平方差 (−4)2 − 22⋅3 = 16 − 12 = 4 = 22 が平方数なので、答えは「Yes」だろう; 基本通りとすれば、 −4 と 2 の平均 u = −1、そして −4 の u からのずれ v = −3 を考え、
  u = −1 と v = −3
…を使って、 (−4 + 23) を簡約できるはず。ただし、正の実数の平方根と異なり、負の実数の平方根(純虚数)は「平方すると負の実数になる」という性質を持つ; 基本アルゴリズムを応用しつつも、「符号設定」「主値の選択」に要注意。事実として…
  (v − u)2 = (−3 − −1)2 = (i3 − i)2
   = (i3)2 + (i)2 − 2(i3)(i) = (−3) + (−1) − 2(−3) = −4 + 23 = d
…なので、負数 d の平方根の主値(虚部が正)は v − u = −3 − −1 だ。符号が逆の u − v も、もちろん2乗すれば同じ d に等しいが、それは「虚部が負」。規約として、 d の二つの平方根 ±(−3 − −1) = ±(3 − 1)i = ±(0.732…)i のうち、虚部がプラスのものを d の主値とする。――とはいうものの、2次方程式の解で使うのは ±d の形なので、主値・非主値どちらの平方根を選択しても、得られる2解は同じ(その2解を使って表現される3次方程式の3解も同じ)。

結局、上記 x の2次式の根は:
  x = (1 + 3) ± d = 1 + 3 ± (−3 − −1)
従って、 y の3次式の根は:
  y = 3(1 + 3 + −3 − −1) + 3(1 + 3 − −3 + −1)
『ぽ』の解は:
  z = y/8 = (2/4)(3[1 + 3 + −3 − −1] + 3[1 + 3 − −3 + −1])
   = (2/4)[3{(1 − i) + 3(1 + i)} + 3{(1 + i) + 3(1 − i)}]
立方根の主値を考えるなら、 −γ = cos 5° に当たる。

1 の原始72乗根の実部(主値)
  cos 5° = (2/4)[3{(1 − i) + 3(1 + i)} + 3{(1 + i) + 3(1 − i)}] = 0.9961946980917…

*

「cos 5° を求める方法」としては場当たり的で、この方法が最善とは思えないけど、これは「遊び」。

『ほ・ぽ』において、置換 z = y/2 では分母を払い切れない。一方、(有理数の範囲の)素朴な置換 z = y/4 だと、置換後の係数がやや大きくなる――新しい係数は十分に小さく、簡単に処理できるようだが、根 y を求めた後の簡約が少々トリッキー。 2 でも 4 でもなく両者の幾何平均 h = 22 を「置換の分母」とすることで(z = y/h)、係数は最適な大きさとなり、分数は解消され、ついでに定数項の根号までも一部解消。おまけに「立方根号下から 3(22) をくくり出す」といったトリッキーな後処理も不要に。

どの置換を使っても(あるいは置換せずに直接 Cardano の公式を適用しても)最終結果は同じだけど、同じことなら楽しくやりたいものだ。

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2024-07-10 3分の1の角度と3次方程式 正しい計算は善にあらず

#遊びの数論 #1 の原始根 #(30)

問題(再掲) cos 55° cos 65° + cos 65° cos 175° + cos 175° cos 55° = −3/4 を示せ。

θ1, θ2, θ3 が 120° ずつ離れた三つの角度なら、 cos θ1 cos θ2 + cos θ2 cos θ3 + cos θ3 cos θ1 = 3/4 が成り立つ。この例題では、例えば θ1 = 55° と θ2 = (55 + 120)° = 175° と θ3 = (175 + 120)° = 295° を考え、 cos 65° をそれと等しい cos (−65°) = cos 295° = cos θ3 と読み替えれば、直ちに与式が成立。

前回、「積→和」の公式などを使い直接計算してしまったが、「怠けた方が偉い!」というポリシーからすると失敗だった。孫子いわく(?)、「正しい計算は、善の善にあらず。計算しないで解くのが、善の善なり」。

*

50. cos 3θ = −1 を満たす角度 θ は何か? 単純に cos 180° = −1 という事実に基づくなら、 3θ = 180° つまり θ = 60° が、この条件を満たす。しかし cos (−180°) も = −1 なので、 3θ = −180° つまり θ = −60° も、条件を満たす。さらに cos (180 + 360)° = cos 540° も = −1 なので、 3θ = 540° つまり θ = 180° も、条件を満たす。

任意の整数 n に対して 3θ = (180 + 360n)° なら cos 3θ = −1 なので、 θ = (60 + 120n)° の形の無限個の角度が、条件 cos 3θ = −1 を満たす。条件を満たす θ は、次のように 120° 間隔で、正・負両方向に限りなく続く。
  θ = …, −300°, −180°, −60°, 60°, 180°, 300°, …
けれど 360° の整数倍の違いを度外視するなら、このような θ は 180°, ±60° のちょうど3種類しかない。

より一般的に −1 以上 1 以下の定数 C が与えられたとき cos 3θ = C を満たす θ は何か? (ここで C の範囲を −1 以上 1 以下に限定するのは、実数の角度の cos は必ずこの範囲の値を持つから。もしも C がこの範囲外だったら、条件を満たす実数の角度 θ は存在しない。)

任意の角度 θ に対して、cos の3倍角の公式 cos 3θ = 4 cos3 θ − 3 cos θ が成り立つ。

〔証明〕 cos 3θ = cos (2θ + θ) = cos 2θ cos θ − sin 2θ sin θ
  ここで cos 2θ = cos2 θ − sin2 θ = cos2 θ − (1 − cos2 θ) = 2 cos2 θ − 1
  そして sin 2θ sin θ = (2 sin θ cos θ) sin θ = 2 sin2 θ cos θ = 2(1 − cos2 θ) cos θ
  ∴ cos 3θ = (2 cos2 θ − 1) cos θ − 2(1 − cos2 θ) cos θ
   = 2 cos3 θ − cos θ − 2 cos θ + 2 cos3 θ = 4 cos3 − 3 cos θ ∎

従って、「cos 3θ = C を満たす θ は何か?」と尋ねることは、「4 cos3 θ − 3 cos θ = C を満たす θ は何か?」と尋ねることと同じ。 z = cos θ と置き、それを未知数と見れば、次の3次方程式が生じる。
  4z3 − 3z = C つまり 4z3 − 3z − C = 0
  ∴ z3 − (3/4)z − C/4 = 0  『ま』
これは「与えられた角度(3θ)の cos を基に、その 3 分の 1 の角度(θ)の cos を求めること」に当たる。

3θ に 360° の倍数を加減しても――言い換えれば θ に 120° の倍数を加減しても――、 cos 3θ の値は変わらない。だから、もし θ1 が条件 cos 3θ = C を満たす特定の角度なら、 θ2 = θ1 + 120° と θ3 = θ1 + 240° も条件を満たす。つまり z = cos θ1 が『ま』の一つの解なら、 z = cos (θ1 + 120°) と z = cos (θ1 + 240°) も『ま』の解。この最後の解については、 cos (θ1 − 120°) と書くこともできる。要するに、特定の角度 3θ について、上記『ま』は、実数 cos θ と cos (θ ± 120°) を解とする3次方程式。

もし α, β, γ が「120° 間隔の3種類の角度」の cos に等しいのなら、それらは『ま』の形の3次方程式の3解で、解と係数の関係から次が成り立つ:
  α + β + γ = 0
  αβ + βγ + γα = −3/4
  αβγ = C/4

ここで C は、 α = cos θ1 としたときの cos 3θ1 に等しい。第1式・第2式は、この C の値と無関係に成立。

よって、最初の問題は、次の3行だけで解決可能だった。

  1. θ = 55° と θ = 55° ± 120° は cos 3θ = cos 165° を満たすが、3倍角の公式から cos 3θ = 4 cos3 θ − 3 cos θ。
  2. すなわち z = cos θ と置くと、 cos 55°, cos 175°, cos (−65°) は、3次方程式 4z3 − 3z − cos 165° = 0 の解。
  3. cos (−65°) = cos 65° に注意すると、解と係数の関係から与式が成り立つ。∎

† α = cos θ1, β = cos θ2, γ = cos θ3 のうちの任意の一つを cos θ として(つまり θ1, θ2, θ3 のうち、好きな一つを選んで θ として)、 C = cos 3θ としても構わない。

(必須ではないが)選択の仕方を工夫することにより、 0° ≤ 3θ ≤ 180° の範囲の 3θ を使って C を定義でき、従って 0° ≤ θ ≤ 60° に限定できる。なぜなら、もし角度の絶対値が 180° より大きいなら、 360° の整数倍を加減することで(実質的な方位を変えずに)絶対値 180° 以下の角度に置き換え可能; cos (−3θ) = cos 3θ なので、もし −180° ≤ 3θ < 0° なら、符号を変えた正の角度をあらためて 3θ とすることができる。

実際、 cos 3θ = C を満たす角度 3θ は無限個あるが、 0° 以上 180° 以下の範囲に限るなら、ちょうど一つだけ存在する。その範囲から選んだ角度 3θ の 3 分の 1 を θ1 とすると…
  θ1  《これは 0° 以上 60° 以下の角度》
  θ2 = θ1 + 120°  《これは 120° 以上 180° 以下の角度》
  θ3 = θ1 − 120°  《これは −120° 以上 −60° 以下の角度》
…の3種類の角度は、どれも条件 cos 3θ = C を満たす。

51. 『ま』を3次方程式として実際に解いてみる。分数を解消するため y = z/2 と置いて両辺を 8 倍すると:
  y3 − 3y − 2C = 0  『み』
関連する2次方程式は:
  x2 − 2Cx + 1 = 0  『む』
その判別式の 4 分の 1 を d とすると:
  d = C2 − 1

ここで −1 ≤ C ≤ 1 なので、二つのケースに別れる。

(i) もし C = ±1 なら d = 0 となり、重解が生じる。 C = cos 3θ = 1 は 3θ = 0°, ±360° のような場合で、そのとき θ = 0°, ±120° なので z = cos θ = 0 or −1/2 となる(−1/2 は重解)。3次方程式『み』としては、
  y3 − 3y − 2 = (y − 2)(y + 1)2 = 0
…の場合。その解 y = 2, −1 の半分が z に当たる。同様に C = cos 3θ = −1 は θ = 180°, ±60° のような場合で z = cos θ = −1 or 1/2 となる(1/2 は重解)。3次方程式としては、
  y3 − 3y + 2 = (y + 2)(y − 1)2 = 0
…となる。

(ii) もし C ≠ ±1 なら d < 0 となり、2次方程式『む』は共役の非実数解を持ち、3次方程式『み』は三つの相異なる実数解を持つ。この場合でも C = 0 などの特殊なケースでは、『み』が有理係数の範囲やそれに近い範囲で分解されるが、一般には Cardano の簡約不能ケースが生じる。具体的に C = cos 3θ, d = C2 − 1 とすると、『み』の解(主値)は:
  y = 3(C + d) + 3(C − d)
従って『ま』の解は:
  z = (1/2)(3(C + d) + 3(C − d))

例1 3θ = 60° の場合。 cos 60° を基に「3 分の 1」角の cos 20° を求める。 C = cos 3θ = 1/2 なので d = (1/2)2 − 1 = 3/4 となる。よって d = 1/2−3 となって…
  y = 3[½ + ½(−3)] + 3[½ − ½(−3)]
右辺各項を 2 = 38 倍して(つまり立方根号下の数を 8 倍して)、その和の 2 分の 1 を考えても、全体として右辺の値は変わらない。
  y = (1/2)(3(4 + 4−3) + 3(4 − 4−3))
  ∴ cos 20° = z = y/2 = (1/4)(3(4 + 4−3) + 3(4 − 4−3))

例2 3θ = 120° の場合、 C = cos 3θ = 1/2, d = 3/4 となり、例1と同様に:
  cos 40° = (1/4)(3(−4 + 4−3) + 3(−4 − 4−3))

C が「分母 2 の分数」の場合、関連する2次方程式の解がさらに 8 倍されている方が、処理が簡潔になる。『ま』で z = y/2 の代わりに z = Y/4 と置いて両辺を 43 倍すると:
  Y3 − 12Y − 16C = 0
関連する2次方程式 X2 − 16CX + 64 = 0 の解は:
  X = 8C ± (64C2 − 64) = 8C ± 4(4C2 − 4)

例2の場合 X = −4 ± 4−3 だから:
  cos 40° = Y/4 = (1/4)(3(−4 + 4−3) + 3(−4 − 4−3)) = 0.766044443…
  同様に cos 20° = (1/4)(3(4 + 4−3) + 3(4 − 4−3)) = 0.939692620…

例3 3θ = 30° なら、 C = cos 3θ = 3/2 で X = 43 ± 4−1 なので:
  ∴ cos 10° = (1/4)(3(43 + 4−1) + 3(43 − 4−1)) = 0.984807753…
同様に 3θ = 150° なら、 C = −3/2 で X = −43 ± 4−1 なので:
  cos 50° = (1/4)(3(−43 + 4−1) + 3(−43 − 4−1)) = 0.642787609…

*

具体的な計算をせず、構造を透明に見通すのが「理想」。けれど大抵は、さんざん迷い、遠回りをした末、運が良ければ、ようやくうまい道が見つかる。洗練への道は泥くさい。純粋に遊びとしてやってる分には、探検や宝探しのようなもの。「分からない」ということさえ楽しい。

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2024-07-13 3分の1の角度と3次方程式(その2) カルダノの公式

#遊びの数論 #1 の原始根 #(30)

カルダノの公式(3次方程式の解の公式)は、意味が分かりにくい。 0.93969… のような「普通の実数」を表すのに、わざわざ「複素数の立方根」の和を使う――というのは奇妙。
  複素数 P = 1/2 + i(3)/2 = 0.5 + (0.86602…)i
  共役複素数 P′ = 1/2 − i(3)/2 = 0.5 − (0.86602…)i
  実数 0.93969… = (1/2)(3(P) + 3(P′))

「理論的意義はともかく、こんな表現じゃ実用にならない!」と言われることも多い。

だが「3分の1の角度のコサイン」のような状況では、カルダノの公式の意味は明快に図示可能。「60° の 3 分の 1 の角度は 20°」といった無邪気な話から、虚数や複素数、その立方根…といった観点が自然と生じてくるのは面白い。

*

52. 180° 未満の、ある正の角度(3θ)が与えられたとき、その 3 分の 1 の角度(θ)の cos は、次の式を満たす(§51)。
  cos θ = (1/2)(3(C + d) + 3(C − d))
  ここで C = cos 3θ, d = C2 − 1

仮定により 0° < 3θ < 180° なので 1 > C = cos 3θ > −1。従って C2 は 1 未満 0 以上。よって、そこから 1 を引いた d は負d は純虚数。結局、二つの立方根号下の数は、実数 C と虚数 d の和または差から成る複素数。

d は負だから −d は正。 −d = 1 − C2 = 1 − cos2 3θ = sin2 3θ なので、つじつまは合っている。この正の数 −d = sin2 3θ に基づくと、 −d の平方根なら、正の実数…
  −d = sin 3θ
…として、シンプルに表記できる(平方根には ± sin 3θ の可能性があるが、 3θ は正という仮定から、第1・第2象限の sin 3θ も正)!

〔例〕 3θ = 30° の場合、 C = cos 3θ = cos 30° = (3)/2 なので:
  d = C2 − 1 = ((3)/2)2 − 1 = 3/4 − 1 = 1/4
その平方根 d は虚数 i/2 だが、符号を変えた −d = 1/4 なら、その平方根は実数:
  −d = 1/2
これは sin 3θ = sin 30° に他ならない。

d は、「正の数」の平方根 −d = sin 3θ に対応する「負の数」の平方根に(つまり純虚数 i sin 3θ に)等しい。 sin 3θ を S と略すと、 d = i sin 3θ = iS だから、冒頭の式はこうなる:
  cos θ = (1/2)(3(C + d) + 3(C − d)) = (1/2)(3(C + iS) + 3(C − iS))
  略さず書くと = (1/2)(3(cos 3θ + i sin 3θ) + 3(cos 3θ − i sin 3θ))

具体例として 3θ = 60° の場合を考える; 座標 (cos 3θ, sin 3θ) は、単位円上の偏角 60° の点 P に当たる。説明画像。座標の横軸・縦軸の値をそれぞれ実部・虚部の値と解釈するなら(=座標平面を複素平面と見るなら)、点 P は複素数 cos 60° + i sin 60° に当たる――ただし、平面上の点 P を「その横座標 A = cos 60° = 1/2 が実部で、その縦座標 B = sin 60° = (3)/2 = 0.866… が虚部であるような複素数」と同一視した。

複素平面上の任意の点は「その点の横座標を実部、縦座標を虚部とするような複素数」を表す、と解釈できるので、しばらくの間、「点」と「数」(複素数)という二つの表現を区別せずに使うことにする。

では、複素数 P = cos 60° + i sin 60° の立方根とは…? 単位円上の点の立方根は、再び単位円上にあり、偏角が 3 分の 1 の点。つまり図の Q = cos 20° + i sin 20° に当たる。

3θ = 60° の例(画像参照)では…
  3(C + d) つまり 3(cos 3θ + i sin 3θ)
…とは、立方根の記号の下にある複素数から見て、偏角が 3 分の 1 の点。要するに P から見た Q の立場。同様に、第二の立方根…
  3(C − d) つまり 3(cos 3θ − i sin 3θ)
…は、第一の立方根と比べ「立方根記号の下にある複素数の実部が同じで、虚部の符号だけが反対」。すなわち P′ の立方根に当たる。 P′ は偏角 −60° なので、その立方根は偏角 −20° の Q′

ここまではイメージしやすいが、その二つの立方根 Q と Q′ を足し合わせる――ってのは、一体何をしたいのか? 二つの複素数を足し合わせれば、言うまでもなく、実部同士の和が結果の実部、虚部同士の和が結果の虚部。この場合、 Q と Q′ の実部は等しいので(それを X とする)、 Q + Q′ の実部は 2X に等しい。一方、 Q と Q′ の虚部は大きさが同じで符号が反対なので、足し合わせると 0 になる。結局、 Q + Q′ とは、実部が 2X で虚部が 0 の点 R に当たる(この足し算は「ひし形」でイメージすることもできる)。ところが Q の横座標 X はもちろん cos 20° なので、 Q + Q′ = R = 2X の半分が cos 20° に他ならない。まとめると:
  cos 20° = (1/2)(Q + Q′) = (1/2)(3(P) + 3(P′))
   = (1/2)(3(cos 60° + i sin 60°) + 3(cos 60° − i sin 60°))

より一般的に 3θ を 60° に限定しない場合でも、次の関係は全く同様。
  cos θ = (1/2)(3(cos 3θ + i sin 3θ) + 3(cos 3θ − i sin 3θ))
   = (1/2)(3(C + iS) + 3(C − iS)) = (1/2)(3(C + d) + 3(C − d))

「複素数の立方根」の足し算を含む変な式は、実はごく当たり前のことを言っている: cos 3θ を基準に X = cos θ を求めたければ、
  複素数 cos 3θ + i sin 3θ の立方根の実部が X
…だよ、と。つまり 3(cos 3θ + i sin 3θ) の実部が X だよ…っていうだけ。でも、この立方根それ自体は、複素数 cos θ + i sin θ だ。そこから実部の X = cos θ だけを取り出すための手段として、①第一の立方根 cos θ + i sin θ と第二の立方根 cos θ − i sin θ を求め、②両者を足し合わせることで 2 cos θ を得て、③その半分を考えることで望みの cos θ を得ている!

† 「立方根」の意味から、この主張は「Q を立方すれば P になる」つまり「Q3 = P」ということを含意する。実際、任意の複素数 w の立方 w3 は、 w に比べ偏角が 3 倍になり、絶対値(原点 O からの距離)が 3 乗になる。 Q から見ると確かに P は偏角が 3 倍だし、 P も Q も単位円の円周上にあって絶対値 1 なので、「Q の絶対値 1 の 3 乗」が「P の絶対値」という関係を満たす(ぶっちゃけどっちも絶対値 1 で「1 は何乗しても 1」ってだけだが)。

‡ 一般の複素数の立方根は、絶対値が 1 とは限らないのでもう少し話が複雑になる(偏角の主値などの、テクニカルな問題も絡んでくるかもしれない)。ここではシンプルに「絶対値 1 の複素数」の立方根に話を絞る。

53. 要約 180° 未満の、ある正の角度 3θ に対する cos と sin がそれぞれ C, S なら、その 3 分の 1 の角度 θ の cos は、次の形を持つ。
  cos θ = (1/2)[(C + iS)1/3 + (C − iS)1/3]
ただし表記の便宜上 3() の代わりに (…)1/3 と書いた。ここでは「どちらの表記も同じ意味。立方根の主値を表す」とする。

例1 cos 60° = 1/2, sin 60° = (3)/2 なので、それらを C, S とすると:
  cos 20° = (1/2)[(1/2 + i(3)/2)1/3 + (1/2 − i(3)/2)1/3]
この分数だらけの式については、 [ ] 内を 2 倍――つまり (…)1/3 内を 8 倍――して、代わりに冒頭の分母を 2 から 4 にすれば、もう少し簡潔に整理可能(§51)。前述の図解との関係では、上記形式の方が、何が起きているのか分かりやすい。

例2 cos 45° = sin 45° = (2)/2 なので:
  cos 15° = (1/2)[((2)/2 + i(2)/2)1/3 + ((2)/2 − i(2)/2)1/3]
理論的には、これで何も間違ってない。しかし cos 15° は平方根までの範囲で表現可能なので、こんなふうに複素立方根を使って表記するのは、無駄に複雑。3次方程式を使うまでもなく…
  cos 15° = cos (45° − 30°) = cos 45° cos 30° + sin 45° sin 30°
   = (2)/2(3)/2 + (2)/21/2 = (6 + 2)/4
  ついでに sin 15° = sin (45° − 30°) = sin 45° cos 30° − cos 45° sin 30°
   = (2)/2(3)/2 − (2)/21/2 = (6 − 2)/4
分子の 62 の間の符号は、どっちが + でどっちが − か? 「角度が 0° に近いとき、その角度の cos は 1 に近く sin は 0 に近い」ってことから、どっちが + かは明らかだろう。

例3 cos 30° = (3)/2, sin 30° = 1/2 なので:
  cos 10° = (1/2)[((3)/2 + i1/2)1/3 + ((3)/2 − i1/2)1/3]
例1とほぼ同じ。立方根の実部と虚部が入れ替わっただけ。 cos 30° = sin 60°, sin 30° = cos 60° なので。

同様に cos 150° = −(3)/2, sin 150° = 1/2 なので:
  cos 50° = (1/2)[(−(3)/2 + i1/2)1/3 + (−(3)/2 − i1/2)1/3]

例4 cos 15° = (6 + 2)/4, sin 15° = (6 − 2)/4 なので(例2のコメント参照):
  cos 5° = (1/2)[((6 + 2)/4 + i(6 − 2)/4)1/3 + ((6 + 2)/4 − i(6 − 2)/4)1/3]

例4は、「遊びの cos 5°」で場当たり的に求めた値の、理論整然とした表記。必須ではないが、分数を一つにまとめるため、右辺冒頭の分数を半分にして、代わりに [ ] 内を 2 倍すると――ついでに、 im の形の純虚数を −m と表記すると――:
  cos 5° = (1/4)[(26 + 22 + 2−6 − 2−2)1/3 + (26 + 22 − 2−6 + 2−2)1/3]
   = (2/4)[(3 + 1 + −3 − −1)1/3 + (3 + 1 − −3 + −1)1/3]
最後の等号では [ ] 内から 2 を――つまり (…)1/3 内から 22 を――くくり出した(§48参照)。この書き換えの結果が「遊びの cos 5°」の表記と同じ値を表していることは、容易に確認可能。

例5 三角関数の基本性質として cos 75° = sin 15°, sin 75° = cos 15° なので、 3θ = 75° の場合は、例4とほとんど同じ。単に立方根の実部と虚部が入れ替わる(言い換えると 62 の間の符号が逆になる):
  cos 25° = (1/2)[((6 − 2)/4 + i(6 + 2)/4)1/3 + ((6 − 2)/4 − i(6 + 2)/4)1/3]

*

cos 5° と cos 25° の表現の対称性は、眺めて楽しい。 15° ないし 75° の cos, sin をそれぞれ C, S として、「C + iS の立方根と C − iS の立方根を足して 2 で割ってる」だけで、タネが分かると当たり前…。「正しい観点」から眺めるとき「複雑怪奇・難解」に思えたことが明快に見渡せ、「当たり前」になる――ある意味「拍子抜け」だが、数論のすてきな一面だろう。

この手法は「3 分の 1」角以外にも適用できる――例えば (C ± iS)1/3 を (C ± iS)1/7 に置き換えれば「7 分の 1」角の cos に。実際には「7 分の 1」は(そんなふうに7乗根を使うまでもなく)立方根までの範囲で表現可能だが、理論上、円周の任意の整数等分は、この方法で根号表現される。

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2024-07-14 3分の1の角度と3次方程式(その3) sin バージョン

#遊びの数論 #1 の原始根 #Morrie の法則 #(30)

sin, cos いずれの3倍角の公式も「4A3 と 3A の差」の形。「差」と言っても、どっちが 4A3 − 3A で、どっちが 3A − 4A3 か?

A の値が 1 のとき、 4A3 − 3A は 1 だが、 3A − 4A3 は −1。さて θ = 0° なら cos θ = 1 で、 cos 3θ = cos 0° も = 1 なので、 4A3 − 3A つまり 4 cos3 θ − 3 cos θ が cos バージョン。 θ = 90° のとき sin θ = 1 で、 sin 3θ = sin 270° = −1 なので、 3 sin θ − 4 sin3 θ が sin バージョン。

*

54. sin の3倍角の公式は sin 3θ = 3 sin θ − 4 sin3 θ。

〔証明〕 sin 3θ = sin (2θ + θ) = sin 2θ cos θ + cos 2θ sin θ
   = (2 sin θ cos θ) cos θ + (cos2 θ − sin2 θ) sin θ
ここで (2 sin θ cos θ) cos θ = 2 sin θ cos2 θ = 2 sin θ (1 − sin2 θ), cos2 θ − sin2 θ = (1 − sin2 θ) − sin2 θ なので:
  sin 3θ = 2 sin θ (1 − sin2 θ) + (1 − 2 sin2 θ) sin θ = 3 sin θ − 4 sin3 θ ∎

さて sin 3θ = S, sin θ = z と置くと:
  S = 3z − 4z3 つまり 4z3 − 3z + S = 0
  ∴ z3 − (3/4)z + S/4 = 0  『め』

y = z/2 と置いて両辺を 8 倍すると:
  y3 − 3y + 2S = 0  『も』
cos についての同様の式 y3 − 3y − 2C = 0 と比べると(§51『み』)、定数項の符号が違うだけ。『も』に関連する2次式 x2 + 2Sx + 1 の判別式の 4 分の 1 を d とすると:
  d = S2 − 1 = −C2 ここで C = cos 3θ
ゆえに『め』の解は:
  z = (1/2)(3(−S + iC) + 3(−S − iC))

〔例〕 3θ = 60° のとき C = 1/2, S = (3)/2 なので:
  z = (1/2)[(−(3)/2 + i1/2)1/3 + (−(3)/2 − i1/2)1/3]
この z の主値は cos 50° に(従って sin 40° に)等しい(§53、例3)。見掛け上、 60° の 3 分の 1 の角度の sin を求めているようだが、 sin 20° = cos 70° = cos (−70°) = cos (50° − 120°) は主値ではない。もう一つの非主値は cos (50° + 120°) = cos 170° = −cos 10° = −sin 80° だ。

1 の原始3乗根を掛けることで二つの立方根の偏角を 120° ずつ回転させれば、「現在の表現では非主値である特定の値」を主値とするような新しい根号表現を作ることは、常に可能。もっとも sin 20° の場合、 cos 20° の表現から虚部を抜き出した方が手っ取り早く、分かりやすい。
  cos 20° = (1/2)[(1/2 + i(3)/2)1/3 + (1/2 − i(3)/2)1/3] = 0.93969262078…
  sin 20° = [1/(2i)][(1/2 + i(3)/2)1/3 − (1/2 − i(3)/2)1/3] = 0.34202014332…

sin の「3 分の 1角」の公式は、事実上 cos の「3 分の 1角」の公式の再利用に過ぎない。 0° < θ < 60° の範囲の cos θ は、もし C = cos 3θ を四則演算・根号の範囲で表現できるなら、 Cardano 形式の主値として根号表現可能; そして 30° < X < 90° の範囲の sin X は、基本性質 sin X = cos (90° − X) により、上記の範囲の cos θ の問題に帰着。例えば sin 80° を求めることは cos 10° を求めること(§53、例3)に他ならない。

55. 『め』の解と係数の関係を考えると、 cos の場合と同様(§50)、 θ1, θ2, θ3 が 120° 間隔の任意の角度なら α = sin θ1, β = sin θ2, γ = sin θ3 について、次が成り立つ。
  α + β + γ = 0
  αβ + βγ + γα = −3/4
  αβγ = −S/4

ここで S は、 θ1, θ2, θ3 のどれでもいいから一つを選んで θ とした場合の sin 3θ に等しい。

第1式・第2式は θ1, θ2, θ3 の sin でも θ1, θ2, θ3 の cos でも変わらない。例えば…
  cos 10° cos 130° + cos 130° cos 250° + cos 250° cos 10° = −3/4
  sin 10° sin 130° + sin 130° sin 250° + sin 250° sin 10° = −3/4

〔注〕 「120° 間隔の角度」に対する三つの値と同じ値であっても、角度が 120° 間隔ではない――という場合には、一般に cos と sin を置き換えられない。例えば cos 250° = cos (−250°) = cos 110° なので、上の cos 250° を cos 110° に置き換えても値は同じだが「120° 間隔の角度」ではなくなる。この場合、 sin 250° = sin (−110°) = −sin 110° なので、第2式の sin 250° を sin 110° に置き換えると、値が変わってしまう(−sin 110° に置き換えるのならいいが)。

120° 間隔の角度 θ1, θ2, θ3 に対する cos の積は cos 3θ の 4 分の 1 だったが、同じ θ1, θ2, θ3 に対する sin の積は、符号設定が変わって、 sin 3θ のマイナス 4 分の 1

例題 sin 20° sin 40° sin 60° sin 80° を数値で表す。

いろんなやり方があるだろうが、とりあえず Morrie の法則 cos 20° cos 40° cos 80° = 1/8 の sin 版を考える。

sin 40° と sin 160° = sin 20° と sin 280° = sin (−80°) = −sin 80° は 120° 間隔の三つの角度。上述の性質を使い、三つの角度のうち、例えば 20° を θ とすると S = sin 3θ = sin 60° = (3)/2 なので
  sin 20° sin 40° (−sin 80°) = −sin 60°/4 = (3)/8
  ∴ sin 20° sin 40° sin 80° = (3)/8
  ∴ sin 20° sin 40° sin 60° sin 80° = (3)/8(3)/2 = 3/16

† 他の二つの角度(40°, −80°)のどちらかを θ としても S の値は変わらない。三つの θ 候補はどの二つも 120° の違いなので、 3 倍した 3θ は 360° の違いになり、実質、同じ方位。それに対応する三角関数の値は同じ。

別解 Morrie の法則の両辺に cos 60° = 1/2 を掛けて:
  cos 20° cos 40° cos 60° cos 80° = 1/16
ところで tan 20° tan 40° tan 60° tan 80° = 3 が成り立つ。従って:
  sin 20° sin 40° sin 60° sin 80° = (tan 20° tan 40° tan 60° tan 80°) × (cos 20° cos 40° cos 60° cos 80°) = 3/16

*

なかなかきれいな結果が得られた!

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2024-07-15 3分の1の角度と3次方程式(その4) tan バージョン

#遊びの数論 #1 の原始根 #Morrie の法則 #(30)

tan2 20° + tan2 40° + tan2 60° + tan2 80° = 36 のようなきれいな式の背景。

*

56. tan の3倍角の公式は、加法定理を使って機械的に導出可能だが、「実部 1 の複素数」の偏角を考えると意味が分かりやすい。複素平面上で、複素数 w = 1 + iz が表す点(z: 実数)と原点を結ぶ直線の傾きは、明らかに z。この直線と正の実軸が成す角度は――言い換えれば w の偏角 θ は――、もちろん z = tan θ を満たす(偏角の tan は傾き)。

〔例1〕 虚部 z = 3 の場合。 w = 1 + i3 = 1 + i(1.732…) に当たる点 P と原点 O を結ぶ直線の傾きは 3 = 1.732…。 P から横軸に下ろした垂線の足 A は (1, 0) なので、直角三角形 OPA は底辺 1、高さ 3、従って(三平方の定理から)斜辺の長さ 2。横軸上の点 B (2, 0) を考えると △OPB は一辺 2 の正三角形。従って w の偏角 θ = ∠POA = ∠POB は = 60° = π/3。確かに z = tan θ つまり 3 = tan 60° が成立。

一般に、複素数 w = 1 + iz の偏角が θ なら、 w3 = (1 + iz)3 = (1 − 3z2) + i(3z − z3) の偏角は 3θ だ。 w3 に当たる点と原点を結ぶ直線の傾き(3z − z3)/(1 − 3z2) なので、「偏角の tan は傾き」ということから、次の関係が成り立つ:
  tan 3θ = (3z − z3)/(1 − 3z2) = (3 tan θ − tan3 θ)/(1 − 3 tan2 θ)
これが tan の3倍角の公式。形式的には、二項係数 1 3 3 1 を分母・分子に交互に、符号を交代させながら書いたもの。

〔例2〕 例1の w = 1 + i3 は、偏角 θ が 60° だった。 3乗すると…
  w3 = (1 + i3)3 = 13 + 3⋅12⋅i3 + 3⋅1⋅(i3)2 + (i3)3
   = 1 + (33)i − 9 − (33)i = −8
この w3 は実部が負、虚部が 0 なので、横軸上の負の向きにあり、確かに偏角が 180° つまり 3θ に等しい。このとき、3倍角の公式の左辺は確かに tan 3θ = tan 180° = 0 であり、右辺は次のように左辺と一致:
  (3 tan 60° − tan3 60°)/(1 − 3 tan2 60°) = [33 − (3)3]/[1 − 3(3)2] = 0/(−8) = 0
ちなみに w の絶対値 2 から見ると、 w3 の絶対値 8 は3乗になっている。

tan θ の値を引き続き z として、 tan 3θ の値を T とする。3倍角の公式…
  T = (3z − z3)/(1 − 3z2)
…の分母を払うため、両辺を 1 − 3z2 倍すると T − 3Tz2 = 3z − z3 となり、それを整理すると:
  z3 − 3Tz2 − 3z + T = 0  『や』

これは cos 版の『ま』や sin 版の『め』に当たる tan 版の3次方程式: ある角度 3θ が与えられたとき、それに関連する実数 T = tan 3θ を考えると、『や』を満たす三つの z ―― α = tan θ1, β = tan θ2, γ = tan θ3 とする――のうちどれか一つは、 tan θ に等しい。 θ1, θ2, θ3 は、いずれも「その 3 倍の角度の tan が T であるような角度」。

cos 版、 sin 版と同様、残りの2解は tan (θ ± 120°) である…と言っても間違いではない。もっとも、 360° 周期の関数 cos, sin と違い tan は 180° を周期とするので、 tan 版の場合、 θ ± 120° の代わりに θ ∓ 60° と言っても同じこと。実際、 tan (θ ± 120°) = tan (θ ∓ 60°) が成り立つ。解の順序を区別しなければ tan (θ ± 60°) と言ってもいい。

† 例えば原点と「偏角 −40° の点」を結ぶ直線、原点と「偏角 140° の点」を結ぶ直線は、同一の直線であり、当然、同一の傾きを持つ。つまり tan (−40°) と tan (−40° + 180°) = tan 140° は等しい。

57. 『や』の解と係数の関係から、 θ1, θ2, θ3 が 60° 間隔(または 120° 間隔)の三つの角度のとき、 α = tan θ1, β = tan θ2, γ = tan θ3 は、次の関係を満たす。
  α + β + γ = 3T
  αβ + βγ + γα = −3
  αβγ = −T
ここで T というのは、 θ1, θ2, θ3 のどれか一つを選んで(どれを選んでも結果は同じ)それを θ としたときの tan 3θ の値。

〔例3〕 −40°, 20°, 80° は 60° 間隔の三つの角度なので:
  tan (−40°) tan 20° tan 80° = −tan 60° = −3
この計算では 20° を θ として T = tan 3θ = tan 60° とした。さて tan (−40°) = −tan 40° なので、上の等式の両辺の −1 倍から:
  tan 20° tan 40° tan 80° = 3
  ∴ tan 20° tan 40° tan 60° tan 80° = 33 = 33

〔例4〕 例3と同じ T を使って tan (−40°) + tan 20° + tan 80° = 33 = 1.73205080… × 3 = 5.1961524…

〔例5〕 tan (−40°) tan 20° + tan 20° tan 80° + tan 80° tan (−40°) = −3

〔例6〕 α2 + β2 + γ2 = (α + β + γ)2 − 2(αβ + βγ + γα) なので、例4・例5から:
  tan2 20° + tan2 40° + tan2 80° = (33)2 − 2(−3) = 27 + 6 = 33
  ∴ tan2 20° + tan2 40° + tan2 60° + tan2 80° = 33 + 3 = 36
同様に tan (−50°) + tan 10° + tan 70° = 3 tan 30° = 3 なので:
  tan2 10° + tan2 50° + tan2 70° = (3)2 − 2(−3) = 9
  ∴ tan2 10° + tan2 30° + tan2 50° + tan2 70° = 9 + 1/3 = 28/3

以前「ゾクッとする式・きれいな式」として tan2 20° + tan2 40° + tan2 80° = 33 などの関係を“発見”したが、今はそのパターンをより一般的な文脈の中で認識できる。 3 倍の角度 3θ ―― 3θ の側から見れば 3 分の 1 の角度 θ ――が絡む3次方程式の、解と係数の関係から派生する一つの例として。

58. 3次方程式『や』、つまり z3 − 3Tz2 − 3z + T = 0 について、ここまでは個々の解 α, β, γ の値を問題にせず、「その三つ全部を含む対称式」の値(積 αβγ など)を考えた。今度は、個々の解を考えてみたい。

3次方程式の定石に従い、2次の項を消すため、変数を置換して z = y + T と置く:
  (y + T)3 − 3T(y + T)2 − 3(y + T) + T = 0
左辺を展開、整理すると…
  (y3 + 3y2T + 3yT2 + T3) − 3T(y2 + 2yT + T2) − 3y − 3T + T
   = y3 + y2(3T − 3T) + y(3T2 − 6T2 − 3) + (T3 − 3T3 − 2T)
   = y3 + (−3T2 − 3)y + (−2T3 − 2T)
つまり『や』は、こうなる:
  y3 − (3T2 + 3)y − (2T3 + 2T) = 0  『ゆ』
関連する2次方程式は:
  x2 − (2T3 + 2T)x + (T2 + 1)3 = 0  『よ』

『よ』の判別式の 4 分の 1 を d とすると…
  d = (T3 + T)2 − (T2 + 1)3
   = (T6 + 2T4 + T2) − (T6 + 3T4 + 3T2 + 1) = −T4 − 2T2 − 1
   = −(T2 + 1)2

T = tan 3θ は実数なので T2 は 0 以上、よって (T2 + 1)2 は 1 以上の正の数; 従って d = −(T2 + 1)2 は負。『よ』は非実数の共役複素数解を持ち、『ゆ』従って『や』は三つの相異なる実数解を持つ(『や』の3解 α, β, γ が 60° 間隔の実数の角度の tan であることと、つじつまが合う)。

三角関数の基礎によれば sin2 3θ + cos2 3θ = 1、その両辺を cos2 3θ で割れば…
  tan2 3θ + 1 = sec2 3θ  ただし sec 3θ とは cos 3θ の逆数
…なので、負の数 d = −(T2 + 1)2 = −(tan2 3θ + 1)2 とは (−1)(sec2 3θ) であり、その平方根は次の純虚数:
  ±d = ±i sec 3θ
よって『よ』の解は:
  (T3 + T) ± i sec 3θ = tan 3θ(tan2 3θ + 1) ± i sec 3θ
   = tan 3θ(sec2 3θ) ± i sec 3θ = sec2 3θ(tan 3θ ± i)
ゆえに Cardano の公式から『ゆ』の解は:
  y = 3[sec2 3θ(tan 3θ + i)] + 3[sec2 3θ(tan 3θ − i)]  『ら』

変数を z = y + T = tan 3θ + y に戻し、次の結論に至る。

定理1(3 分の 1 角の tan) 30° より大きく 90° より小さい角度 θ について:
  tan θ = T + [E2(T + i)]1/3 + [E2(T − i)]1/3
  ここで T = tan 3θ, E = sec 3θ

角度 θ の範囲制限は、立方根の主値を考える場合の十分条件。すなわち、『ら』の二つの立方根は共役複素数であり、立方根が主値(偏角の絶対値が 60° 未満)を表すという規約の下で、『ら』の実数 y は、『ゆ』の三つの実数解のうち最大のものに等しい。与えられた定数 T = cos 3θ を y に足したものが z なので、 y が大きければ大きいほど、それに対応する z も大きい。要するに『や』の三つの実数解 z = α, β, γ のうちで最大のものが、『ら』の立方根の主値に対応。この「最大の解」を仮に α = tan θ1 とすると、具体的な解 α の値が何であれ、 −180° < θ1 < 180° の範囲から θ1 を選ぶことができる(その範囲で tan は任意の実数値を取るので)。3解が 60° 間隔の三つの角度に対応することを思い出そう。もしも θ1 < 30° なら、 z = tan (θ1 + 60°) の方が値の大きい解なので「α が最大の解」という仮定に反するし、もしも θ1 = 30° なら T = tan 3θ1 = tan 90° は定義されないので、題意に適さない。よって、立方根の主値を考える場合、一般性を失うことなく θ は上掲の範囲内にあると仮定できる。

立方根の非主値も考え、必要に応じて一方の立方根の偏角を ±120° 変え、他方の立方根の偏角を ∓120° 変えるなら(複号同順)、 θ のこの範囲制限はなくなる。例外として、その場合でも T = tan 3θ が定義されないことには計算が成り立たないので、上記の式で θ が ±30° ――または、それに 60° の整数倍を加減した角度――になることだけは不可能

† 任意の複素数の偏角 A を −180° < A ≤ 180° の範囲で表すことにする。「負の実数(偏角 180°)の立方根」の主値の偏角は 60° に等しいが、『ら』の立方根号下の数は、2次方程式『よ』(その判別式は負である)の解であり、実数ではない。ゆえに、これらの(非実数の)立方根の主値の偏角 B は −60° < B < 60° の範囲。

‡ 『や』を解くまでもなく tan 30° などの値(あるいは tan 90° などが定義されないこと)は明らかなので、これらの例外の角度は、実用上問題にならない。

例として、 θ = 80° とすると、 T = tan 3θ = tan 240° = tan 60° = 3 だから:
  E = sec 3θ = 1 / cos 240° = −2, E2 = (−2)2 = 4
  ∴ tan 80° = T + [E2(T + i)]1/3 + [E2(T − i)]1/3 = 3 + [4(3 + i)]1/3 + [4(3 − i)]1/3

〔注〕 T = tan 3θ の値は θ に 60° の倍数を加減しても変わらない。上の例では θ = 20° でも T = 3。一方 E = sec 3θ の値は θ に 60° を加減したとき、符号が反対になる; cos 3(θ ± 60°) = cos (3θ ± 180°) = −cos 3θ だから。しかし実際に使うのは E2 の値なので、 E の符号の違いは結果に影響しない。

tan 80° については、以前、特定の3次方程式を経由して検討したが、今、われわれは、任意の角度 θ について、もし tan 3θ と cos 3θ の表現(四則演算・根号までの範囲での)が分かれば、機械的に tan θ の根号表現を決定できる立場になった。理論上、 cos 3θ と sin 3θ の一方の表現が分かれば他方の表現も(従って tan 3θ の表現も)決定できるので、「この計算で tan θ を求めるのに必要なのは、 cos 3θ または sin 3θ の根号表現だけ」ということになる。

二つの注意点。第一に、立方根の主値を考える場合、絶対値 30° 未満の θ について、この方法で tan θ の根号表現を求めることはできない。非主値を利用するなら、この制約は生じない。第二に、 tan θ が平方根までの範囲で表現可能な場合について(例えば tan 75° について)、あえてこの方法で根号表現を求めようとすると、「間違いではないが無駄に難解な表現」(不必要な立方根を含む)が生じてしまう。この「無駄に複雑な表現」は(少なくとも理論的には)後から簡約可能だが、この種の簡約(立方根の除去)は一般に難しい。初めから平易な方法で――例えば tan 75° なら tan (45° + 30°) などとして――計算した方がいい。

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2024-07-20 3分の1の角度の tan について

#遊びの数論 #(30)

3次方程式を解くことにより、例えば tan 120° を使って tan 40° を表し、 tan 150° を使って tan 50° を表すことができる。それとは別に、このような「3 分の 1 の角度の tan」を「同じ角度の sin」を使って表せる。例えば…
  tan 40° = 4 sin 40° − 3
  tan 50° = (4 sin 50° − 1) / 3

*

59. θ2 を −30° より大きく 30° より小さい角度として、 θ1 = θ2 + 60°, θ3 = θ2 − 60° とする。θ1, θ2, θ3 は、 (−90°, 90°) の区間の 60° 間隔の三つの角度。

〔例1〕 θ1 = 80°, θ2 = 20°, θ3 = −40° は、そのような 60° 間隔の角度。 θ1 − θ2 = θ2 − θ3 = 60° であり、 θ3 − θ1 も ≡ 60° (mod 180°) である。

このような場合、 θ1, θ2, θ3 のどれを θ としても T = tan 3θ の値は一定; E = sec 3θ は、符号の違いを除き一定で、 E2 = sec2 3θ は符号も含めて一定の値を持つ。

〔例2〕 例1の場合 T = tan 240° = tan 60° = tan (−120°) = 3; E = sec 240° = sec (−120°) = −2 または E = sec 60° = 2 で、どちらの場合も E2 = 4。

定理2 θ が −30° より大きく 30° より小さい角度なら:
  tan (θ + 60°) = tan (3θ) + 2 sec (3θ) cos (30° − θ) = tan (3θ) + 2 sec (3θ) sin (θ + 60°)

証明 この定理の θ は上記の θ2 に当たる。左辺にある角度 θ + 60° は、 30° より大きく 90° より小さい(θ1 に当たる)。 T = tan 3θ, E = sec 3θ と置くと、そのどちらも実数で、次の関係が成り立つ(§58、定理1)。
  tan (θ + 60°) = T + [E2(T + i)]1/3 + [E2(T − i)]1/3
二つの立方根の和 [E2(T + i)]1/3 + [E2(T − i)]1/3 が 2 sec (3θ) cos (30° − θ) に等しいことを示せば、定理は証明される(sin を使った表現は cos X = sin (90° − X) による書き換えに過ぎない)。

さて、 E2 は実数なので、複素数 w = E2(T + i) の偏角は T + i の偏角に等しい。 T + i は実部が T で虚部が 1 なので、その偏角 η は第1または第2象限の角で、 cot η = T を満たす。すなわち:
  cot η = T = tan 3θ = cot (90° − 3θ)
  ∴ η = 90° − 3θ  『り』
(仮定により −90° < 3θ < 90° なので、偏角 η は 0° < η < 180° を満たし、正しい象限にある。)

一方、この複素数 w = E2T + iE2 の絶対値の平方は:
  (E2T)2 + (E2)2 = E4(T2 + 1) = E6
  なぜなら T2 + 1 = tan2 3θ + 1 = sec2 3θ = E2
従って w の絶対値は E3 である(仮定により −90° < 3θ < 90° なので cos 3θ は正、よってその逆数 E は正で E3 も正)。

以上のことから、極座標表現を使うと…
  E2(T + i) = w = E3(cos η + i sin η)
  E2(T − i) = w* = E3(cos η − i sin η)
…となって:
  [E2(T + i)]1/3 + [E2(T − i)]1/3 = w1/3 + (w*)1/3
   = E(cos (η/3) + i sin (η/3)) + E(cos (η/3) − i sin (η/3))
   = 2E cos (η/3) = 2 sec (3θ) cos (30° − θ)
なぜなら『り』から η/3 は 30° − θ に等しい。∎

60. 定理2の例 θ = 20° のとき:
  tan 80° = tan 60° + 2 sec 60° cos 10° = tan 60° + 4 cos 10° = tan 60° + 4 sin 80°

実際、 T = tan 3θ = tan 60°, E = sec 3θ = sec 60° と置くと、定理1から:
  tan 80° = T + [E2(T + i)]1/3 + [E2(T − i)]1/3
   = tan 60° + [4(tan 60° + i)]1/3 + [4(tan 60° − i)]1/3
ここで w = E2(T + i) の偏角は arccot (tan 60°) = arccot (cot 30°) = 30° であり、
  |w|2 = (43)2 + 42 = 64
…なので、 |w| = 8。従って:
  [4(tan 60° + i)]1/3 = [8(cos 30° + i sin 30°)]1/3 = 2(cos 10° + i sin 10°)
  ∴ [4(tan 60° + i)]1/3 + [4(tan 60° − i)]1/3 = 4 cos 10°

代数的にも、次の二つの数が等しいことを容易に確かめられる。
  [4(tan 60° + i)]1/3 = [4(3 + i)]1/3
  [8(cos 30° + i sin 30°)]1/3 = [8((3)/2 + i 1/2)]1/3 = 2((3)/2 + i 1/2)1/3

同様に θ = −20° のとき:
  tan 40° = −tan 60° + 4 cos 50° = −tan 60° + 4 sin 40°

T = tan 3θ = tan (−60°) = −3 の符号が反転する以外、既述の例とほとんど同じ; w に当たる複素数の偏角は arccot (tan (−60°)) = arccot (cot 150°) = 150° となる。 cot (−30°) = cot 150° なので、形式的には −30° も同様の式を成立させるが、 w は第1または第2象限にあるので、 −30° では偏角が間違った向き(正反対)になってしまう。

〔参考〕 実数 y に対する arccot y の値域を (0°, 180°) とすることは、実変数の y = cot x を考える場合には珍しくない(複素関数としての観点からは必ずしも自然ではないが)。

次の結論に至る。

tan 80° = 3 + 2[((3 + i)/2)1/3 + ((3 − i)/2)1/3] = 3 + 3(43 + 4i) + 3(43 − 4i)
tan 40° = −3 + 2[((3 + i)/2)1/3 + ((3 − i)/2)1/3] = −3 + 3(−43 + 4i) + 3(−43 + 4i)

定理2の例(その2) θ = 10° のとき:
  tan 70° = tan 30° + 2 sec 30° cos 20° = tan 30° (1 + 4 cos 20°) = tan 30° (1 + 4 sin 70°)

実際、 T = tan 30° = 1/3, E = sec 30° = 2/3 = 2 tan 30° と置くと、定理1から:
  tan 70° = T + [E2(T + i)]1/3 + [E2(T − i)]1/3 = 1/3 + [(4/3)(1/3 + i)]1/3 + [(4/3)(1/3 − i)]1/3
   = tan 30° + [(4/3)(tan 30° + i)]1/3 + [(4/3)(tan 30° − i)]1/3
ここで w = E2(T + i) の偏角は arccot (tan 30°) = arccot (cot 60°) = 60° であり、
  |w|2 = (4/(33))2 + (4/3)2 = 64/27
…なので、 |w| = 8/(33)。従って:
  [(4/3)(tan 30° + i)]1/3 = [8/(33)(cos 60° + i sin 60°)]1/3 = 2/(3)(cos 20° + i sin 20°)
  ∴ [(4/3)(tan 30° + i)]1/3 + [(4/3)(tan 30° − i)]1/3 = 4/(3) cos 20° = 4 tan 30° cos 20°

代数的には、次の二つの数が等しい。
  [(4/3)(tan 30° + i)]1/3 = [4/(33)(1 + i3)]1/3
  [8/(33)(cos 60° + i sin 60°)]1/3 = [8/(33)((1)/2 + i 3/2)]1/3

同様に θ = −10° のとき:
  tan 50° = −tan 30° + 2(2 tan 30°) cos 40° = tan 30° (−1 + 4 cos 40°) = tan 30° (−1 + 4 sin 50°)

次の結論に至る。

tan 70° = 1/3 + 2/(3)[((1)/2 + i3/2)1/3 + ((1)/2 − i3/2)1/3] = (1/3)[1 + 3(4 + 4i3) + 3(4 − 4i3)]
tan 50° = −1/3 + 2/(3)[((−1)/2 + i3/2)1/3 + ((−1)/2 − i3/2)1/3] = (1/3)[−1 + 3(−4 + 4i3) + 3(−4 − 4i3)]

*

tan 40°, tan 50° などが、それぞれ sin 40°, sin 50° との間で面白い等式(それほど自明ではない)を満たすことは、漠然と分かっていた(最初にたまたま tan 80° のケースに気付いたときは、かなりミステリアスな感じがした)。今回 cot, arccot を利用することで、この関係について仕組みを明らかにして、多少一般化できた。 θ が π の有理数倍なら、定理1における w = tan 3θ ± i の偏角 η = 90° − 3θ も π の有理数倍。よって w の立方根の偏角も π の有理数倍になり、もし −30° < θ < 30° なら tan (θ + 60°) = tan 3θ + 2 sec (3θ) sin (θ + 60°) が成り立つ。 θ が 10° の倍数の場合に限らず、例えば tan 65° = tan 15° + 2 sec 15° sin 65° となる。

この種の関係は(少なくとも個々のケースに関しては)、工夫すればもっと直接的に―― Cardano 形式を経由せず、一般的な三角関数の公式だけを使って――示すことができるのかもしれない。あまり人気のない Cardano 形式だが、この場合に関しては、なかなか気分のいい展望台。「実数の範囲の議論であっても、実数の範囲で考えるのでは見えない事柄がある」ということ、複素数の範囲で考えることが自然で必然的であるということが、あらためて実感される。

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