五・六・十角形の恒等式(遊びの数論24)

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「チラ裏」は、きちんとまとまった記事ではなく、断片的なメモです。誤字脱字・間違いがあるかもしれません。


コタンジェントに恋してる


2024-03-27 五・六・十角形の恒等式 現代とは違う感覚

#数論 #正五角形 #正五角形の矢

画像: 円に内接する正五角形・正六角形・正十角形。今から2000年以上前の古代ギリシャでは、ものすごく幾何学の研究が進んでいた。ユークリッドの『幾何学原論』第13巻(最終巻)の命題10は、次のような趣旨の、優雅で面白い定理。

「同一の円に内接する正五角形・正六角形・正十角形の一辺の長さをそれぞれ x, y, z とすると、 x2 = y2 + z2 が成り立つ」

全ては掛け値なしに「小学生の算数の範囲」。何しろ三角関数どころか、平方根の記号も、「1, 2, 3」のようなアラビア数字も知らない古代人が記したのだ…。

ユークリッド自身の証明は、一見謎めいている――現代の感覚では「確かにその補助線を引くとそうなるけど、なぜそんな所に補助線を引くの?」といったところか。しかし「学問の進歩した現代なら、2000年前よりうまくできるはず」というおごりを捨て、謙虚にユークリッドの証明を検討しているうちに、「この古代の証明こそが最も軽妙」と思えてきた。

このメモでは、ユークリッド自身による証明を、簡単化して紹介したい。

*

【1/3】 まず、円に内接する正六角形の一辺の長さ y は、その円の半径に等しい。画像: 円に内接する正六角形。このことは、当たり前だろう。念のため理由を記すと、次の通り。

円の中心を O として、そこに内接する正六角形の一辺を AH とすると、∠AOH は 360° の6分の1なので 60°。しかも △AOH は、二等辺三角形(斜辺 AO も OH も、同じ円の半径だから長さが等しい)。だから、その二つの底角(図の ?)は等しい。――三角形の内角の和は 180° なので、これは ? = 60° を意味し、三つの角が全部 60° ということは正三角形なので、どの辺の長さも y に等しい。二等辺のみならず三等辺!

〔補足〕 二等辺三角形の三つの角のうち、「底辺と斜辺が成す等しい二つの角度」(底角)を a として、「斜辺と斜辺が成すもう一つの角度」を b とすると、三角形の内角の和は 180° なので a + a + b = 180°。上の例では b = 60° なので a + a + 60° = 180°、従って a も 60° となる。――この例に限らず、どんな二等辺三角形でも、2個の「底角」を a、「もう一つの角」を b とすると、 a = (180° − b)/2。

画像: x, y, z。従って、「円に内接する正六角形の一辺」を y とする代わりに、「その円の半径」を y としても同じことであり、ユークリッドの命題を次のように言い換えることができる。

「半径 y の円に内接する正五角形の一辺を x、正十角形の一辺を z とすると、
  x2 = y2 + z2
が成り立つ」

以下では、この等式を証明する。

【2/3】 円に内接する正五角形(あるいは同じことだが、正五角形の外接円)について考えると、「正五角形の一辺の長さ AB = x は、(外接円の)半径 BO = y より少し長い」ということに気付く。画像: 円に内接する正五角形。

現代のわれわれは、この x と y の関係を「三角関数を使って表現」したり、根号を含む式で「代数的に表現」したりするのだが、古代ギリシャにはそのような概念はなかった。とはいえ古代の研究者も、もちろん x と y の関係に興味を持った!

三角関数のようなツールのない古代の人々は、素朴に AB の長さ(つまり x)に対する BO の長さ(つまり y)の比はどうなっているか?と考えた。そのためには、BO を底辺として「二等辺三角形 ABO と相似な(つまり三つの角が等しい)三角形」を作図する――というのが、自然な発想となる(AO を底辺としても同様になるが、ユークリッドは BO を選んだ)。現代人には少し違和感のある発想かもしれないけど、他にあまりツールがないのだから、「相似に持ち込めないか?」と考えるのは、当時としては当たり前の感覚だったに違いない。

具体的には次の通り。

△ABO について、二つの斜辺 AO = BO = y は円の半径なので等しく、 ∠AOB は 360° の5分の1なので 72°。この二等辺三角形(底角 54°)と相似な △BOQ を、BO を底辺として作図し(BQ = OQ)、Q が AB 上に来るようにすると、「相似な三角形では、対応する辺の比は一定」ということから…
  底辺 : 斜辺 = AB : AO = BO : BQ つまり x : y = y : BQ
  従って x(BQ) = y2  ‥‥〔

x と y の比は、y と BQ の比に等しい――その事実を利用して、古代の研究者も x と y の関係を正確に把握できた。だが、このような都合のいい Q を、具体的にはどうやって作図すればいいのだろうか。

正五角形の性質上、∠ABO = ∠QBO = 54° であることは、分かっている。そこで △BOQ が △ABO と相似であるためには、 ∠BOQ も 54° でなければならない。それは ∠AOB = 72° のちょうど4分の3。従って、∠AOB の二等分線 OC を引いて、さらに ∠AOC のそのまた二等分線 OD を引いて、OD と AB の交点を Q とすればいい。「半分」プラス「半分の半分」は「4分の3」なので、 ∠BOQ = ∠BOD = 54° となる!

【3/3】 古代人でも現代人でも、弧 AB の中点 C が「A, B を頂点とする正十角形」の頂点の一つであることに気付く。画像: 円に内接する正十角形。

相似を利用することに慣れていた古代の幾何学者は、「正十角形の一辺の長さ CA = CB = z も、AB = x に対する比を利用して、うまく表現できる」ことに、気付いただろう。実際、二等辺三角形 ABC は、小さい二等辺三角形 CAQ と相似なので
  底辺 : 斜辺 = AB : BC = CA : AQ つまり x : z = z : AQ
  従って x(AQ) = z2  ‥‥〔

今、〔〕と〔〕の左辺同士・右辺同士をそれぞれ足し合わせると…
  x(BQ) + x(AQ) = y2 + z2
  つまり x(BQ + AQ) = y2 + z2
ところが BQ + AQ = AB = x なので…
  x(x) = y2 + z2 つまり x2 = y2 + z2
証明したかった等式が得られた。∎

† △ABC は明らかに二等辺。 △CAQ が二等辺であることを示すには、 CA と OD の交点を R として(CA と OD が直交することは容易に示される)、△CRQ ≡ △ARQ を言えばいい(それには、この二つの直角三角形について CR = AR, RQ = RQ に注目すればいい)。さて、二つの二等辺三角形 △ABC, △CAQ は頂点 A の部分の角を共有するので、底角が等しい。従って、対応する三つの角がそれぞれ等しく、相似。

*

証明自体はシンプルだが、もともとどういう経緯でこの定理が発見されたのかは、はっきりしない。

「正20面体」の研究過程で発見された――と考える人もいるが、上記の証明・考察からすると、考え過ぎの可能性が高い。正五角形と外接円の半径の関係は、当然、古代の幾何学者の基礎研究の範囲内であり、比較的早い段階で、この命題は発見されたと思われる。

補助線がミステリアスだというのは、代数的・抽象的な式変形に慣れ切っている現代人の感覚に過ぎず、研究ツールが限られていた当時としては、当たり前の作図だったのだろう。「相似な三角形を作る」という立場からは、補助線 OQ を引くことと、ついでに CQ を線分で結ぶことは、同種の操作。三角関数の立場から考えても、この命題は正20角形と関係しているので、正五角形の弓形の二等分線のそのまた二等分線(順に正十角形と正20角形の辺に対応する)が登場するのは、不自然ではない。

2009年、米国の Baez [2] がこの命題に言及し、ネット上で活発な議論が行われ、まとめのページ [3] が作られた。2014年の [4] でもテーマとなっている。「ユークリッド自身の証明は、ごちゃごちゃして分かりにくい。現代の知見をもってすれば、もっと簡単にできるはず」――誰でもまあそう思う。けれど、結局のところ「これはユークリッドの上を行く」と言えるような、うまい証明は出てこなかった。いろいろな別証明は考えられるが、ユークリッドの淡々とした証明と比べると、どうも技巧的で小ざかしい…。

『幾何学原論』の記述は、やや冗長に感じられる。だがそのエッセンスは、味わい深い!

第13巻・命題10 もしも円の中に等辺の五角形が描かれるなら、その五角形の辺上の正方形(の面積)は、その同じ円の中に描かれる(等辺の)六角形と十角形の(辺上の正方形の面積の和)。

JPEG画像 PNG画像
ユークリッドの作図(9世紀の写本)と、それに基づく今回の作図
JPEG Image courtesy of the Clay Mathematics Institute/Digilib;
PNG Images: public domain, generated with gnuplot

*

とはいえ、もちろん、ユークリッドの証明だけが唯一絶対ではない。2000年たっても何も進歩していないというのでは、むしろ古代の研究者に申し訳が立たない…。18° 単位の三角関数の値(あるいは同じことだが 1 の原始5乗根)を使いこなすなら、この命題はほぼ自明だろう。

〔参考文献〕
[1] Fitzpatrick (2008): Euclid’s Elements of Geometry
https://farside.ph.utexas.edu/Books/Euclid/Euclid.html
[2] Baez (2009): This Week's Finds in Mathematical Physics (Week 283)
https://math.ucr.edu/home/baez/week283.html
[3] pentagon decagon hexagon identity
https://ncatlab.org/nlab/show/pentagon%20decagon%20hexagon%20identity
[4] Baez (2014): Pentagon-Hexagon-Decagon Identity
https://blogs.ams.org/visualinsight/2014/01/01/pentagon-hexagon-decagon-identity/

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2024-03-31 五角形のジグソーパズル 五・六・十角形の式の別証明

#数論 #正五角形 #正五角形の矢

画像: 二つの正五角形。AB を一辺とする緑の正五角形。AC, CB, BE を 3 辺とする赤い正十角形。――その二つが、半径 1 の円(O を中心とする)に内接しているとしよう。

図のように AO, OE を 2 辺として、もう一つの(青い)正五角形 AOEFG を描くことができる。青い五角形の頂点 F, G は、それぞれ OB, OC の延長線上に。青い五角形は、もともとの緑の五角形より少し小さいが、どちらも正五角形!

赤い十角形を 10 等分した二等辺三角形(例えば △ACO や △BCO)を「水色タイル」と呼ぶことにする。一方、青い五角形の一辺を底辺とし、赤い十角形の一辺を斜辺とする二等辺三角形(例えば △AGC)――この三角を「黄色タイル」と呼ぶことにする。

水色 4 枚、黄色 3 枚のタイルをうまく並べると、一辺の長さ 1 の正五角形を作れる。…青い五角形のことだが、図解も何もなく、計 7 枚のタイルだけ渡されたら、うまく並べることができるだろうか?

瞬時にはできないかもしれない。試行錯誤により、そのうちできるだろう! この作図自体、試行錯誤で見つけた。しかしパーツを渡されるのではなく、自分でパーツを作ること――正五角形を七つの二等辺三角形に分割すること――は、比較的難しい。

ジグソーパズルのようなこの図を、ユークリッドの命題 XIII.10 の証明に利用できる。その命題とは、「同一の円に内接する正五・六・十角形の一辺の長さをそれぞれ x, y, z とすると x2 = y2 + z2」というもの。以下の証明法は、ユークリッドのオリジナルより近代的だが、三角関数は不要。

*

円の半径 y は、その円に内接する正六角形の、一辺の長さに等しい。そこで六角形の一辺の長さの代わりに、円の半径を y とする(両者は等しいので)。

半径 OA = y の円があるとして、その円に内接する正五角形の一辺を AB とする(AB = x)。話を簡潔にするため、当面、半径 y = 1 としよう。

画像: 正五角形の一辺の長さを求める。

AB の二等分点を C として、半径 OC と AB の交点を P とする(OC と AB は直交する)。 OAGB がひし形になるように、OC の延長線上に点 G を設定。さらに △BFG が二等辺三角形になるように(BG = FG = 1)、OB の延長線上に点 F を設定し、その底辺 BF の長さを w とする。

【1】 AO と GB は平行; ∠AOB = 72° なので ∠FBG も 72°。このことから、二等辺三角形 BFG と二等辺三角形 FGO は、どちらも 72°–72°–36° の3角を持ち、相似。前者は底辺 w、斜辺 1、後者は底辺 1、斜辺 1 + w なので…
  w : 1 = 1 : 1 + w
  従って w(1 + w) = 1
この左辺は w2 + w = (w + 1/2)2 − 1/4 に等しいから…
  (w + 1/2)2 − 1/4 = 1
  つまり (w + 1/2)2 = 5/4

w は線分の長さなので正、従って w + 1/2 も正。上の式の両辺の正の平方根から…
  w + 1/2 = (5)/2 つまり w = (5 − 1)/2  ‥‥①
  ∴ OG = OF = 1 + w = 2/2 + (5 − 1)/2 = (5 + 1)/2  ‥‥②
OP は、ひし形の対角線 OG の半分なので、その長さは次の通り。
  OP = (5 + 1)/4  ‥‥③

今、直角三角形 OPA に、三平方の定理 (OP)2 + (AP)2 = (AO)2 を適用する。③から…
  (OP)2 = ((5 + 1)/4)2 = (5 + 1)2/16 = (5 + 25 + 1)/16 = (6 + 25)/16
さらに (AO)2 = 12 = 1。従って、三平方の定理は、われわれに次の関係を教えてくれる。
  (6 + 25)/16 + (AP)2 = 1
  ∴ (AP)2 = 1 − (6 + 25)/16 = 16/16 − (6 + 25)/16 = (10 − 25)/16
AP の長さは、その正の平方根。
  AP = (10 − 25)/4
そして緑の五角形の一辺の長さ x = AB は AP の長さの 2 倍:
  x = (10 − 25)/2  ‥‥④

【2】 最後に、画像: 正十角形の一辺の長さを求める。△BCO も 72°–72°–36° の二等辺三角形で、その斜辺の長さは 1 なので、△BCO ≡ △BFG。両者の底辺は等しいので z = w である!

従って、①から:
  z = w = (5 − 1)/2  ‥‥⑤

④と⑤は、それぞれ半径 1 の円に内接する正五角形・正十角形の一辺の長さ。よって y = 1 のとき、次の二つの値は確かに一致する。
  ④から x2 = (10 − 25)/4
  ⑤から y2 + z2 = 1 + (6 − 25)/4 = (10 − 25)/4

なぜなら z2 = ((5 − 1)/2)2 = (5 − 1)2/4 の分子は (5)2 − 2⋅5⋅1 + 12 = 5 − 25 + 1 に等しい。

円の半径 y が必ずしも 1 ではない場合には、それに比例して、④も⑤もそれぞれ y 倍になる。具体的に、④は [(10 − 25)/2]y になり、 ⑤は [(5 − 1)/2]y になるので、やはり次の二つの値は一致する。
  x2 = [(10 − 25)/4]y2
  y2 + z2 = y2 + [(6 − 25)/4]y2 = [(10 − 25)/4]y2

円の半径 y ――それは、その円に内接する正六角形の一辺の長さでもある――がどのような値でも、x2 = y2 + z2 が成り立つことが、証明された。∎

*

本文で w と置いた BF の長さは、赤い正十角形の一辺の長さ z に等しい。従って、青い正五角形の対角線 OF のうち BF の部分は、赤い正十角形の一辺の長さと等しい。下図の △EFB のような黄色いタイルは、二等辺三角形なのだッ!

画像: 緑の五角形と青い五角形。

ちなみに、一辺の長さ 1 の青い五角形の対角線の長さ 1 + w = (5 + 1)/2 = (2.236… + 1)/2 = 1.618… は、いわゆる黄金比。

緑の五角形は、半径 OA = y の円に内接するが、緑の五角形の一辺 x は y より少し長い。一方、青い五角形の一辺は、この y に等しい。具体的に y を 1 とすると、④から:
  x = (10 − 25)/2 = 1.1755705…

すなわち、円に内接する正五角形の一辺は、その円の半径より約 17.5% 長い。青い五角形の一辺から見た緑の五角形の一辺も、同じ割合で、少し長い。

1.1755705… というこの値は、∠AOP = 36° の直角三角形 AOP において、斜辺 OA の長さを 1 としたときの、対辺 AP の 2 倍に等しい。
  2(AP) = 2 sin 36° = 2 × 0.58778525… = 1.1755705…
言い換えれば、半径 1 の円に内接する正五角形の一辺の長さ。

③によれば、OP = cos 36° = (5 + 1)/4。これは、同じ緑の五角形の「中心から辺までの垂直距離」。言い換えれば、緑の五角形に内接する円の半径。さらに言い換えれば、一辺 1 の青い五角形の対角線の長さ OG = OF の半分であり、要するに、黄金比の半分。

水色タイルは、底辺が z で斜辺が 1、等しい底角が 36° × 2、もう一つの角が 36° に等しい。

黄色タイルは、底辺が 1 で斜辺が z、等しい底角が 36°、もう一つの角が 36° × 3 に等しい。

「180° を 5 等分した 36° の角度」を「1 単位」とすると、合計 180° の内角を二等辺三角形の三つの角に配分するとき、前者では 2:2:1 の割合、後者では 1:1:3 の割合が使われている。

⑤によれば、赤い正十角形の一辺は z = (5 − 1)/2 = 0.6180339… だが、この値は 2 sin 18° に当たる(緑の正五角形の一辺が 2 sin 36° に当たるのと同様)。すなわち:
  sin 18° = cos 72° = (5 − 1)/4 = 0.30901699…

*

ユークリッドの命題 XIII.10 は、三角関数の言葉で表現すればシンプルな内容とはいえ、何らかの形でその三角関数の値を求める必要がある。ユークリッド自身の証明は簡潔で高速だが、「変な補助線」(正20角形に関連)を使う。今回の別証明も「変な補助線」を使うけど、正十角形までの範囲でピタリと収まる上、作図自体が美しく、いったん仕組みが分かると(コンセプト的には)見通しがいい。

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2024-03-23 「正五角形の矢」とは…

#数論 #正五角形 #正五角形の矢

正五角形の矢の図。正五角形の「矢」というのは、外接円と辺の間にできる弓形(図の黄色い部分)の高さ(赤い矢印)――辺の中点と弓形の弧の中点の距離。

それが何の役に立つのか? 大人は言うかもしれないけど、眺めてきれいな図には違いない。

正五角形の五つの辺は対称的なので、五つの弓形は合同で、5カ所のどこで測っても「矢」――つまり「弓形の高さ」――は同じ。

「矢」は、外接円の半径(水色・実線)と、内接円の半径(黄緑・点線)の差に等しい。なぜなら…
  内接円の半径 + 矢 = 点線の長さ + 赤い矢印の長さ = 外接円の半径

*

正五角形の矢の研究を「小学生の算数」から始める――矢には tan の半角の公式が絡んでいて、その土台となるから。

最初の部分は幾何の基礎知識として普通に役立つだろうが、だんだんマニアックでマイナーな話題になってくる…。教科書に出てくる sin, cos, tan だけでなく、csc と cot が活躍。

少なくとも三角関数の勉強・計算練習にはなるだろうけど、あくまで遊び。リアルで役立てようなんて気はさらさらないし、興味ない人にとっては面白くもなんともないだろう。実のところ、自分自身、正五角形が面白いとは、思ってなかった…古代ギリシャからみっちり研究され、ポピュラー過ぎるし。ホントは正15角形、正30角形、あるいは正20面体あたりをじっくり研究してみたい。正五角形はその準備。

とはいえ、やってみると、多重根号の問題が絡んだりして正五角形も案外、微妙に難しく、侮れない。「学問に王道なし」である!

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2024-03-22 「正五角形の矢」の研究 小学生の算数から

#数論 #正五角形 #正五角形の矢

画像1。のび太くんは、平面上のでたらめな2点を A, B として、AB を直径とする円を描きました。そして、その円周上から勝手に選んだ点を C として、三角形 ABC を作りました。

不思議なことに、何度やっても、どの向きにどんな形の三角形を描いても、正確に作図すると ∠C はちょうど 90° になるのです…。

∠A, ∠B の大きさはいろいろに変えられるのに、なぜ ∠C の大きさが固定されてしまうのでしょうか?

*

画像2。直径 AB の中点――つまり円の中心――を O とする。線分 AO と OC は、同じ円の半径なので、長さが等しい。だから △AOC は二等辺三角形。その等しい底角を小文字の a としよう。

同様に △BOC も二等辺三角形なので、その等しい底角を小文字の b としよう。

謎の ? = ∠ACB は a + b に等しい。画像1。要するに a + b = 90° を示せばいいのだ!

ところが、三角形の内角の和は 180° なので、△ABC について、次が成り立つ。
  ∠A = a
  ∠B = b
  ∠C = a + b
  ∠A + ∠B + ∠C = a + b + a + b = 180°
あってもなくてもいい丸かっこをサービスで付けておけば…
  (a + b) + (a + b) = 180°
その両辺の半分を考えると…
  (a + b) = 90°
これが証明したいことであったッ!

*

a, b は和が 90° なら好きな角度に設定できるのだが、 a + b の和が固定されている結果、もう一つの ∠C は大きさが一定に…

ところで y = ∠COB は、 a のちょうど 2 倍の大きさを持つ。画像3。理由は次の通り。 ∠AOC を x とすると、三角形の内角の和は 180° なので…
  a + a + x = 180° つまり x = 180° − 2a

x と y の和は 180° だが、x は 180° − 2a なので y は(それと足して 180° になるのだから) 2a でなければならない。

〔補足〕 次のように言うこともできる。 x + y = 180° つまり x = 180° − y。ところが x = 180° − 2a でもあるので、 x = 180° − y = 180° − 2a、従って y = 2a。

そこで y の代わりに 2a と書くと、次の図のようになる。画像4。なかなか美しいではないか…。以下の話と関係ないので図には記入してないけど、同様に ∠AOC = 2b でもある。 a + b = 90° なので 2a + 2b = 180° というわけ。

C を通って AB と直交する直線と AB の交点を D とすると、∠BCD は a に等しい。画像5。というのも △BCD は、直角三角形。その内角の和は…
  b + ∠BCD + 90° = 180°
…なので b + ∠BCD = 90° つまり ∠BCD = 90° − b となる。

この 90° − b というのは、どういう角度だろうか?

a + b = 90° なのだから、もちろん 90° − b = a である!

初めは ? だった ∠ACB は、ちょうど 90° と判明した。この 90° の角度を、半径 CO を使って ∠ACO と ∠BCO に分割するなら、前者は a で後者は b になる(二等辺三角形の性質から)。垂線 CD を使って ∠ACD と ∠BCD に分割するなら、前者が b で後者が a になる。

点 C として、円周上のどこを選んでも、ABC が三角形になる限り、この性質が成り立つ。別の言い方をすると、大きい三角形 ABC と、それを分割してできる小さい三角形 ACD、小さい三角形 BCD は、どれも a–b–90° の3角を持つ。つまり三つの三角形は相似であり、辺の長さの比は一定。

この円の半径を OC = 1 としよう。単位円を使った三角関数の定義から、次の関係が成り立つ。
  cos (2a) = OD, sin (2a) = CD  ‥‥➊
C が O より左にあるときは OD は負、C が O より下にあるときは CD は負だが、細かいことにこだわると見通しが悪くなるので、とりあえず「辺の長さの正・負」の扱いについては、気にしないことにする。

*

直角三角形を使ったタンジェント(tangent — 記号 tan)の定義は、対辺 ÷ 隣辺。もっと分かりやすい言葉で言えば「高さ ÷ 底辺」。ただし「高さが縦・底辺が横」とは限らないことに注意。直角三角形はどっち向きになってるか分からないし、直角以外の二つの角のどっちを基準にするかも分からないからだ。この文脈では、斜辺以外の2辺のうち、基準とする角の向かい側にある辺が高さ(対辺)、基準とする角(がある頂点)に接する辺が底辺(隣辺)。

画像6。 △ACD の ∠A = a を基準にすると、辺 CD が高さ(対辺)、辺 AD が底辺(隣辺)。この場合は、底辺が下にあって分かりやすい。タンジェントの定義によると…
  tan a = 高さ/底辺 = CD/AD = CD/(AO + OD)

半径 AO = 1 ということと➊を組み合わせると…
  tan a = sin (2a)/(1 + cos (2a))  ‥‥➋

一方、 △BCD の ∠BCD = a を基準にすると(この場合、底辺=隣辺は縦で、高さ=対辺は横)…
  tan a = DB/CD = (OB − OD)/CD = (1 − cos (2a))/sin (2a)  ‥‥➌
ここでは、半径 OB = 1 ということと➊を使った。

これらの式を導いたところで、後回しにした「符号の問題」をクリアにしておきたい。結論から言えば、➋➌の関係は、原則として a が正でも負でも成り立つ。だが、そもそも tan a とは何なのか?

タンジェントは、直観的には「上昇率」。底辺(隣辺)を「時間の流れ」と思うと、どれだけ時間をかけて対辺の高さまで上昇したか。底辺が 1 で高さが 2 なら、時間 1 で 2 上昇したんだから、タンジェントは 2。あるいは底辺が 2 で高さが 1 ならタンジェントは 1/2。――点 C が、基準となる直径 AB より上にあれば、斜辺 AC は「上昇」しているので、タンジェントは正だが、C が AB より下にあれば「下降」…「負の上昇」ということになる。下降の場合、 a は 0° より小さく −90° までの範囲にある。上昇の場合 a は 0° より大きく +90° までの範囲にある。もしも a = ±90° だったら、真上・真下に向かって、時間が止まった状態で限りなく上昇・下降する意味になってしまうが、それは ±∞ の傾き: 無限大の傾きでは △ABC を描画できないので、図の a の範囲は −90° < a < 90° でなければならない。さらに a = 0° の場合にも △ABC がつぶれてしまうので、 a ≠ 0° という条件も付けておく。

〔注〕 tan 0° = 0 は、きちんと定義される(傾きがゼロなら、どこまで行っても上昇はゼロ)。 0° を除外する理由は tan 0° 自体に問題があるからではなく、単に「この作図では、その値をうまく表現できない」というだけ。同様に、絶対値が 90° を超える角度の tan も定義されるのだが、この作図では説明しにくい。

上記の前提で a が正の場合、 2a は 0° より大きく 180° より小さい(第1象限または第2象限の角)。その範囲では sin (2a) は常に正、 cos (2a) は −1 より大きく +1 より小さい。従って➋➌の分子・分母は両方正で、➋➌は正の値を持つ。 a が正なら tan a は正…という事実と、つじつまが合っている。このケースは単純明快、符号の問題はない。

同じ前提で a が負の場合、 2a は 0° より小さく −180° より大きい(第3象限または第4象限の角)。画像7。その範囲では sin (2a) は常に負、 cos (2a) はやはり −1 より大きく +1 より小さい。従って➋➌は負の値を持ち、 a が負なら tan a は負…という事実と、つじつまが合っている。

a が負の角度なら、△ACD の斜辺 AC は「下降」しているのだから、その場合、辺 CD を「負の長さ」と解釈するしかあるまい。C の縦座標が sin 2a なんだし、横軸 AB より下に行くのだから、そう考えるのは自然だろう。 △BCD については、正負の意味が不明朗だが、C が円の下半分にあるときは辺 CD は「負の長さ」――と決めたからには、△BCD の底辺(隣辺) CD は「負の時間経過」を表していることになるだろう: C から D へと「過去に進む」と、対辺 DB の長さの上昇が起きる。過去へ行くほど上昇してるんだから、斜辺 CB は下降している、と。

ちょっと苦しい説明かも――三角関数を作図だけで説明することには、限界がある。でも計算自体は合ってるんだし、何より tan の半角の公式を具体的にイメージできるメリットは大きい。

2a = θ と置くと、a = θ/2 となって、➌はこうなる。

tan の半角の公式(sin, cos バージョンその1)
  tan (θ/2) = (1 − cos θ)/sin θ

画像8。

この公式は「矢」の概念とセットで考えると、イメージしやすい。

円周上の2点を結ぶ「弧」と「弦」を考え、その弧と弦が作る図形を弓形と名付ける。例えば、図で「B を経由する円周の一部 CE」は弧。「C と E を直線で結ぶ CE」は弦。両者は弓形 CEB を作る(図の黄色の領域)。

弓形の弦の部分を「底辺」として、その中点から垂直に測った弧の高さ DB は、 sagitta と呼ばれる――直訳すれば「矢」、意訳すれば「辺弧距離」。「弦から弧までの長さ」を「弓の弦につがえられた矢」に見立てた用語だろう(つがえる=弓に矢をセットすること)。特に、正弦 sin θ = CD につがえられた矢 1 − cos θ = DB を正矢と呼ぶことにする。

† ラテン語に基づく用語。分かりやすく「矢の長さ」と言ってもいい。一方 sagitta は既に「その部分の長さ」という意味なので、「sagitta の長さ」と言うのは冗長。


セイント正矢


すると tan の半角公式は、次の簡潔な言葉で表現される――「半角 θ/2 に対応する tan は、全角 θ に対応する正矢・正弦の比に等しい」。その根拠は ∠BCD = θ/2 であること、そして C から D までの「時間」で高さ DB の上昇が起きること。

tan (θ/2) = (1 − cos θ)/sin θ = 1/sin θ − cos θ/sin θ = csc θ − cot θ なので、csc, cot バージョンへの変換も容易。 csc θ − cot θ については、ひし形の作図を利用した方が、イメージしやすいかもしれない。しかし上の図からも、正弦 CD を 1 として――これは単位円なので正弦は一般には 1 ではないはずだが、相対的な比を考える上では、どこを 1 としても構わない――、それを直角三角形 COD と対辺と見ると、斜辺 CO は csc θ、隣辺 OD は cot θ。 CO は円の半径に当たるから、半径 OB も csc θ。従って DB = OB − OD = csc θ − cot θ。ところが CD を 1 としているのだから、直角三角形 CDB に着目すれば DB は tan (θ/2) に等しく、tan の半角の公式(csc, cot バージョン)を再び得る。さらに、この図からは、ペアとなる cot の半角も出てくる: △CAD の隣辺(CD = 1 を対辺とする)は AD = cot (θ/2) だが、円の半径が csc θ なのだから、AD = AO + OD は csc θ + cot θ に等しい。

θ が 90° を超えると cos θ は負になるので、正矢 1 − cos θ は、幾何学的には足し算になる(D が O より左に来て、DO + OB = |cos θ| + 1 が正矢)。➋の式は、その感覚に近い。

tan の半角の公式(sin, cos バージョンその2)
  tan (θ/2) = sin θ/(1 + cos θ)

A から D までの「時間」で高さ CD の上昇が起きる。

*

正五角形にも「矢」がある。

それは「正五角形の一辺 CE が、外接円から切り取る弓形 CEB の高さ」。 CE の中点を D とすれば、DB の長さ。画像9。

∠BCD = ∠CAD = 18° が ∠COD = 36° の半分になる――というのは、これまでの話と全く同様。正五角形の一辺の長さが 2 で CD = 1 なら、タンジェントの意味から DB = tan 18° となる(時間 1 当たりの高さの変化)

今までの作図では、半径 OC = 1 だった。この正五角形の図では CD = 1 であり、外接円の半径 OC は 1 ではなく csc 36° = 1/sin 36° に等しい。つまり図の各部のサイズが、これまでと比べ 1/sin 36° 倍されている。従って、OD の長さも、余弦 cos 36° ではなく、
  cos 36° × 1/sin 36° = cos 36°/sin 36° = cot 36°
…ということに。

DB = tan 18° は、正五角形の外接円の半径と、内接円の半径の差でもある。その観点からは、この図は、csc, cot バージョンtan の半角の公式の具体例の、新たな可視化ともいえる。外側の円の半径 OA = OB = csc 36° から、内側の円の半径 OD = cot 36° を引き算した長さが「矢」 DB で、それは tan 18° に等しい。つまり:
  csc 36° − cot 36° = tan 18°

同じ図は、cot の半角の公式 csc 36° + cot 36° = cot 18° の可視化にもなっているのだった。

csc と cot の和は、半角のコタンジェント。 csc と cot の差は、半角のタンジェント。――シンプルですてきな関係。正五角形の一辺の長さが半分の 1 だったら、「矢」も半分の 1/2 tan 18° になる。一般には、次の通り。

一辺 a の正五角形の「矢」 (a/2) tan 18° = (a/10)(25 − 105)

ただし、計算済みの tan 18° = [(25 − 105)]/5 を使った。「矢」は、外接円の半径と内接円の半径の差なので、次の関係が成り立つ。
  (a/10)(25 − 105) = R − r = (a/10)(50 + 105) − (a/10)(25 + 105)

実際、両辺を 10/a 倍して、移項すると:
  (25 + 105) + (25 − 105) = (50 + 105)

「なぜこんな足し算が成り立つの?」と戸惑うかもしれないけど、二重根号簡約の一種。左辺の2項を掛け合わせると、根号の中身が 625 − 500 = 125 になるんで、二重根号が一重になって 125 = 55。従って:
  左辺の2乗 = (25 + 105) + (25 − 105) + 2(55) = 右辺の2乗
もともと両辺とも正なので、これは左辺 = 右辺を意味する。

25 + 25 = 50 のような単純計算はもちろん許されないが、面白いことに、この場合、それに似た計算が本当に成り立ってしまう!

「矢」は存在自体知られてないような地味な概念だが、他にも興味深い性質を秘めている。それについては、次回にでも…

*

グラフ。

tan 0° = 0 は有効な値だけど(グラフの点線参照)、tan の半角の公式のうち「正矢・正弦の比」は、角度 0° に対応できない(分母が 0 になってしまう)。 csc, cot バージョンも 0° には非対応(csc 0° も cot 0° も定義されない)。 sin, cos バージョンその2は、角度が 0° でも構わない。

tan ±90° は定義されず、従って半角の公式で θ を ±180° にすることはできない(どのバージョンでもゼロ除算が発生)。

cot は tan の逆数なので、tan の半角の公式の分母と分子をひっくり返せば、 cot の半角の公式になる。その場合、cot 0° 自体が定義されないので(グラフの実線参照)、どのバージョンでも角度を 0° にはできない。半面、tan と違って cot は ±90° に対しても定義される。そのとき半角の公式では θ = ±180° だが、csc, cot バージョンはこれに非対応、sin, cos バージョンその2も非対応。その1(の逆数)、つまり次の式は θ = ±180° に対しても有効。
  cot (θ/2) = sin θ/(1 − cos θ)

もっとも tan 0° = 0 や cot ±90° = 0 については、わざわざ半角の公式を使って計算するまでもないだろう。

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2024-03-24 「正五角形の矢」の研究(続き)

#数論 #正五角形 #正五角形の矢

「矢」と円の半径の関係。二重根号外し(基本形)の四つの方法。

アルキメデスは正96角形を使い、円周率が 3 + 10/71 (= 3.140…) よりわずかに大きいことを証明した。同じ正96角形を使って、この下界を 3 + 11/78 (= 3.141…) に改善できる。

*

正五角形 ABCDE の中心を O、辺 CD の中点を P とする。画像10。

正五角形の一辺の半分 CP の長さを 1 とすると、直角三角形 COP は ∠COP が 36° で対辺(高さ)が 1 なので、底辺 OP の長さは cot 36°、斜辺 OC の長さは csc 36° になる。

この底辺 OP = cot 36° = [(25 + 105)]/5 は、正五角形の内接円の半径 r に当たる(図の緑の点線)。

斜辺 OC = csc 36° = (50 + 105)/5 は OA と長さが等しく、外接円の半径 R に当たる(オレンジの実線)。

OP を(A の反対側に)延長した直線と、外接円の交点を Q とすると、矢 PQ は tan 18° = [(25 − 105)]/5 に等しい(前半で確かめたように、△QCP と △CAP は相似で ∠QCP = 18°)。

より一般的に、正五角形の一辺の長さを a とすると、CP = a/2 となり、各部のサイズは a/2 倍されて次のようになる(簡潔化のため、内接円・外接円の半径をそれぞれ内径・外径と略す)。

一辺 a の正五角形に関連する長さ
  矢 s = (a/2) tan 18° = (a/10)(25 − 105)
  内径 r = (a/2) cot 36° = (a/10)(25 + 105)
  外径 R = (a/2) csc 36° = (a/10)(50 + 105)

矢の意味から s = R − r であり、これは tan の半角の公式(csc, cot 版)の図解ともいえる:
  tan 18° = csc 36° − cot 36°

直角三角形 CAQ は ∠C = 18°、対辺 1 なので、底辺 AP = AO + OP = cot 18° であり、同時に cot の半角の公式(csc, cot 版)の図解でもある。
  cot 18° = csc 36° + cot 36°

さて、内径の式を辺長 a について解くため、両辺を 2 tan 36° 倍すると:
  a = 2r tan 36°  ‥‥①
特に、半径 r = 1 の単位円に外接する正五角形の一辺は a = 2 tan 36° = 2(5 − 25)。このことは OP = 1 と考えれば、作図からも明らか。従って、単位円に外接する正五角形の周囲の長さ(5辺の長さの合計)は:
  10(5 − 25) = 7.2654252…
五つの接点を除き辺は単位円の外側にあるので、当然、単位円周 2π = 6.2831853… より少し大きい。

同様に、外径の式の両辺を 2 sin 36° 倍すると:
  a = 2R sin 36°  ‥‥②
特に、単位円に内接する正五角形の一辺は 2 sin 36° = [(10 − 25)]/2。 OC = 1 と考えれば、作図からも明らか。単位円に内接する正五角形の周囲の長さは:
  [5(10 − 25)]/2 = 5.8778525…
こちらは 2π より少し小さい。

*

正五角形は、円の近似図形としては大ざっぱ過ぎるけど、もっと辺の多い(円に近い)正多角形を考えれば、この方法で 2π の(従って円周率 π の)まずまずの近似値が求まる。以前、正12角形を使って素朴な方法で円周率を近似した。三角関数を利用すれば、体系的に同様のことを実行可能。例えば θ = 180°/96 = 1.875° とすると、単位円に内接あるいは外接する正96角形の周囲の長さの半分は、 96 sin θ あるいは 96 tan θ に等しい。

今から2000年以上前(紀元前3世紀ごろ)、アルキメデスは実質これと同じ計算を行い、次の挟み撃ちを得たという。驚嘆すべき成果だ!
  π は 3 + 10/71 = 3.14084… より大きい(この下界は 96 sin θ = 3.14103… に当たる)
  π は 3 + 1/7 = 3.14285… より小さい(この上界は 96 tan θ = 3.14271… に当たる)

正96角形を使えば、π が 3.141 より大きいこと、つまり「小数第3位は 1 か 2 で 0 ではない」ことを確定できるのだが、アルキメデスは 3.140 台の可能性を排除していない。当時は10進小数(位取り記数法)自体が未発見だったので、「小数何桁」という考え方をしなかったのだろう。しかし、小数がない世界だとしても、 3 + 10/71 (= 3.140…) の代わりに 3 + 11/78 (= 3.14102) とすれば、さらに良かった。上界 3 + 1/7 は妥当だが、さすがのアルキメデスも、下界の最良近似分数を得られなかったのである!

10/71 は、面白いといえば面白いが、変な分数。 11/78 の方が、感覚的にもしっくりする。

〔補足〕 アルキメデスの名誉のために言うと、1/7 = 10/7010/71 での挟み撃ちは、「1 を 70 等分した 10 個分よりは大きいが、1 を 71 等分した 10 個分よりは小さい」と言い換えられ、それはそれで簡潔で分かりやすい。けれど、同じくらいの複雑さの分数を使う挟み撃ち(範囲指定)なら、原則としては、より狭い範囲に限定した方が良い。

〔追記〕 アルキメデスが得た「生の」下界は 25344/8069 = 3.140909… だったらしい。それに対する 223/71 = 3.140845… は優良な近似分数の一つ。理論的に可能なはずの 245/78 = 3.141025… を採用し得なかった背景として、96 sin θ に肉薄しながら優良な近似分数を得られなかったのではなく、計算で利用した 3 の近似分数の誤差、途中計算での近似誤差などから、高精度の肉薄(小数5桁ほどの有効数字が必要)自体ができなかったようだ。参考リンク:
Archimedes' Approximation of Pi
https://web.archive.org/web/20210511201318/https://itech.fgcu.edu/faculty/clindsey/mhf4404/archimedes/archimedes.html

*

①を矢の式に代入すると、内径 r を使って矢を表すことができる:
  s = r tan 36° tan 18° = r(5 − 25)[(25 − 105)]/5 = (r5/5)(5 − 25)

同様に、②を矢の式に代入すると:
  s = R sin 36° tan 18° = R[(10 − 25)]/4[(25 − 105)]/5 = (R/4)(14 − 65)
最後の根号内の平方差 142 − (65)2 = 196 − 180 = 16 は平方数なので、二重根号を解除可能(詳細については後述):
  (R/4)(14 − 65) = (R/4)(3 − 5)

あるいは sin の倍角の公式を使って…
  s = R sin 36° tan 18° = R(2 sin 18° cos 18°) sin 18°/cos 18° = 2R sin2 18°
   = 2R((5 − 1)/4)2 = (R/4)(3 − 5)

倍角の公式に基づく表現 s = 2R sin2 (π/(2n)) は、何の役に立つのかはともかく、簡潔でなかなか面白い。ここで n は正多角形の辺の数。正五角形の場合 2n = 10 で π/10 = 18° となる。

〔参考文献〕 Weisstein (2003), CRC Concise Encyclopedia of Mathematics (2nd ed.), p. 2616, “Sagitta”;
vol. 4, p. 1590 in 1st ed. (1999) 参照部分のスキャン画像(archive.orgより)
https://archive.org/details/CrcEncyclopediaOfMathematics/Weisstein__Eric_W_-_CRC_Concise_Encyclopedia_Mathematics_Vol_4__CRC_1999__4AH/page/n101/mode/1up

*

上記 (14 ± 65) のような二重根号を(一重にできる場合に)一重にする方法。これは二重根号解除の基本形で、機械的に処理可能。

第一の方法は、一般性が高い。まず根号内の平方差を確認する。この場合 196 − 180 = 16 が平方数 m2 なので、二重根号を解除できる。その平方数の正の平方根 m = 4 と、根号内の整数部分 14 の平均を求める: (4 + 14)/2 = 9。 この平均値と m のずれを求める: 9 − 4 = 5。得られた二つの数 9 と 5 のそれぞれに根号を付ければ、解除完了: 9 ± 5 = 3 ± 5

数が大きいとき、平方差の処理は少々面倒だが、結果が平方数かどうかで「二重根号を普通の範囲で解除できるか?」を確定判断できる。この話題を扱う文献の多くは、この方法と実質同じアルゴリズムを(やや分かりにくい公式として)記述している。

第二の方法として、二重根号を解除できると事前に分かっている場合や、解除できると分かる(勘が働く)場合に、平方差の計算をしないで済ませることも可能。この例で言うと、内側の根号の係数 6 の半分 3 を二つの自然数の積 xy で表す。この場合 x = 1, y = 3 か x = 3, y = 1 しかない。 x2 + 5y2 を根号内の整数部分 14 に等しくできれば成功: x = 3, y = 1 は条件と満たすので x ± y5 = 3 ± 5 となる。 5y2 と y5 の 5 は、もともとの二重根号の内側の根号内の数。
  (a ± bc) = x ± yc
…の c が一定の場合に限って使える(数論的な問題では、多くの場合 c が一定になるので、実用性は高い)。

このアルゴリズムは、拡張 Pell 方程式の解の全数検索に当たるが、積 xy の情報があるため、条件によっては高速。

第三の方法にも同様の条件が付く。これは第一の方法の亜種で、根号内の平方差が平方数 m2 と分かったとき、根号内の整数部分 14 に m を足すか引くかして(どちらでも可)、平方数の半分を作れたら成功。この例では 14 − 4 = 10 は平方数の半分ではないが、14 + 4 = 18 は平方数 36 の半分。二重根号内の数に、この加減を行ったものを「途中の数」と呼ぶ。
  (14 ± 65) → 途中の数 18 ± 65
途中の数を「加減の根拠となった平方数」(途中の数の整数部分 18 の 2 倍)の平方根 6 で割ると、答えを得る。

このアルゴリズムは面白いけど、m2 の正負どちらの平方根を使うのが得策か判断する必要があり、アルゴリズムの分岐が増える。

第四の方法は、第二の方法の亜種。まず与えられた二重根号を変形して、内側の根号の係数が 2 になるようにする:
  (14 ± 65) = (14 ± 245)
そして、この例で言えば「和が 14 で積が 45 の二つの数」を探す。若干の試行錯誤で 9 と 5 が見つかるので、それぞれに根号を付ければいい。

第四の方法は、シンプルで意味が分かりやすいが、多くの場合、積の候補が増えてしまい、第二の方法より効率が悪い。

一般には、第一の方法を使うのが堅実だろう。シンプルなケースでは、第二の方法を使ってもいいと思われる。第四の方法も、内側の根号の係数がもともと 2 で、内側の根号の中身が小さいときには、役立つだろう。

⁂


2024-04-01 加法定理からの tan 24° 「基本の次」の二重根号処理

#数論 #1 の原始根 #4次方程式 #正五角形 #正五角形の矢

tan 144° = −tan 36° = −(5 − 25) は、比較的簡単な形を持つ。それと tan 120° = −3 を組み合わせる方法で、 tan 24° を求めてみる。

*

cos 36° = (5 + 1)/4, sin 36° = [(10 − 25)]/4 なので:
  tan 36° = [(10 − 25)]/(5 + 1) = [(10 − 25)(5 − 1)]/4
  この分子 = (25)(5 − 1)(5 − 1) = (25)(5 − 1)3/2
   = (25)[(5 − 1)3]1/2 = (25)(55 − 3⋅5 + 35 − 1)1/2
   = (25)(85 − 16) = (16⋅5 − 16⋅25) = 4(5 − 25)
  ∴ tan 36° = (5 − 25)
  ∴ tan 144° = tan (−36°) = −(5 − 25)

*

tan の加法定理から:
  tan 24° = tan (144° − 120°) = (tan 144° − tan 120°)/(1 + tan 144° tan 120°)
   = [(5 − 25) − (−3)]/[1 + (−(5 − 25))(−3)] = [3 − (5 − 25)]/[(15 − 65) + 1]

2段階に分けて分母を有理化する。まず分子・分母を (15 − 65) − 1 倍:
  tan 24° = [(3 − (5 − 25))((15 − 65) − 1)]/[(15 − 65) − 1] = [(3 − (5 − 25))((15 − 65) − 1)]/(14 − 65)
次に分子・分母を 14 + 65 倍:
   = [(3 − (5 − 25))((15 − 65) − 1)(14 + 65)]/(196 − 180)
   = (1/8)(3 − (5 − 25))((15 − 65) − 1)(7 + 35)  ‥‥①

152 − (65)2 = 225 − 180 = 45 は有理数の平方ではないので、この二重根号は簡約不可能。同様に、もう一つの二重根号も簡約できない。そこで、①の各因子を地道に、順々に掛け算していく。 (5 − 25)(15 − 65) = 75 − 605 + 60 = 135 − 605 なので:
  (3 − (5 − 25))((15 − 65) − 1) = (45 − 185)3(135 − 605) + (5 − 25)
ところが 1352 − (605)2 = 18225 − 18000 = 225 = 152 は平方数なので、この二重根号簡約可能(他の2カ所は簡約不可)。基本の手順に従うと、135 と 15 の平均は 75、そして 135 の平均からのずれは 60 なので:
   = (45 − 185)3 − (75 − 60) + (5 − 25)
   = 3(5 − 25)3 − 53 + 215 + (5 − 25) = 4(5 − 25) − 63 + 215

従って、①はこうなる。
  (1/8)(4(5 − 25) − 63 + 215)(7 + 35)
   = (1/4)(2(5 − 25) − 33 + 15)(7 + 35)
①に比べ、因子が一つ減った。残った二つの因子も展開しよう。例えば 2(5 − 25) × 7 では単に 2 を 7 倍すればいいが、 2(5 − 25) × 35 では 2 を 3 倍して根号内を 5 倍する必要がある。
   = (1/4)(14(5 − 25) + 6(25 − 105) − 213 − 915 + 715 + 375)
   = (1/4)(14(5 − 25) + 6(25 − 105) − 63 − 215)  ↑ 375 = 3⋅53
   = (1/2)(7(5 − 25) + 3(25 − 105) − 33 − 15)
   = (1/2)(7(5 − 25) + 35(5 − 25) − 33 − 15)
   = (1/2)[(7 + 35)(5 − 25) − 33 − 15]  ‥‥②

二つの二重根号の和(2項)を積の形(1項)にできた(どちらも (5 − 25) の倍数であることを利用)。この積は次のように、機械的に計算可能:
  (7 + 35)(5 − 25) = [(7 + 35)2](5 − 25)
   = (49 + 425 + 45)(5 − 25) = (94 + 425)(5 − 25)
   = (470 − 420 + 2105 − 1885) = (50 + 225)  ‥‥③

502 − 222 = 2500 − 484 = 2016 (= 63 × 32) は平方数でないので、この二重根号のさらなる簡約はできない。③を②に代入し、次の結論を得る。

tan 24° = (1/2)((50 + 225) − 33 − 15)

50 + 225 = 50 + 22 × 2.236… ≈ 50 + 44.72 + 4.472 = 99.192、その平方根 ≈ 9.960。 33 = 3 × 1.732… ≈ 5.196、15 ≈ 3.873。従って tan 24° の近似値は:
  (9.960 − 5.196 − 3.873)/2 = 0.891/2 = 0.4455
真の値は tan 24° = 0.4452286…

*

この例から、二重根号処理に関して、幾つかの事実を観察できる。

第一に、 (p + q5) のような数は普通に a 倍することも b 倍することもでき、
  ab × (p + q5) = a(bp + bq5)
であるが、同じ形式の二つの二重根号の積
  (p + q5) × (r + s5)
…は、一つの二重根号 (A + B5) に簡約される。実際、
  (p + q5)(r + s5) = (pr + 5qs) + (ps + qr)5
であるから A = pr + 5qs, B = ps + qr となる。

〔例1〕 ①で (5 − 25) × (15 − 65) = (135 − 605)

第二に、同じ形式の三つの二重根号の積も、同様に簡約される。その特別な場合として、3因子が等しいか共役のとき、つまり…
  ((p + q5))3 や ((p + q5))2 (p − q5)
…の形を作れる場合は、処理しやすい(この形に持ち込むことを以前「トリック」と呼んだ)。さらに、3因子のうち2因子だけが等しい場合も、比較的処理しやすい。
  (a + b5)(r + s5)
…の形はこのパターンになり、一つの二重根号 (A + B5) の形に簡約される:
  (a + b5)(r + s5) = ((a + b5))2 (r + s5) = [(a2 + 5b2) + 2ab5] × (r + s5)
であるから、前記 A = pr + 5qs, B = ps + qr に p = a2 + 5b2, q = 2ab を代入すると、 A = (a2 + 5b2)r + 10abs, B = (a2 + 5b2)s + 2abr となる。

〔例2〕 ②に含まれる (7 + 35)(5 − 25) は、③の (50 + 225) に簡約された(上掲の恒等式で a = 7, b = 3; q = 5, r = −2 に当たる)。

一般に d が無理数のとき、(a + bd)(r + sd) は一つの二重根号に簡約可能。

もし同じ二重根号 N = (r + sd) を因子とする二つの項があって、一方が N の a 倍、他方が N の bd 倍になっていれば、簡約の道が開ける(a, b の一方または両方は 1 などでも構わない。例えば N の a 倍と N の d 倍の和でも可)。

〔例3〕 7(5 − 25) + 3(25 − 105) = (7 + 35)(5 − 25) = (50 + 225)。最後の等号は、例2より。

一つの二重根号 (p + qd) が、別の二重根号 (r + sd)d 倍(あるいはその整数倍)になってないか――という観察が、鍵になり得る。

第三に、「基本の方法で二重根号を一重にできる場所はないか」の検討は、どのステップでも重要。最初に(あるいは途中で)基本の変形が成り立つ場所が見つかれば、上記のようなことと組み合わせて、基本より一歩先の二重根号簡約ができるかもしれない。

*

今回は tan の加法定理経由で tan 24° を求めた。24° の sin と cos の比として tan 24° を求めることも考えられるが、もっと面倒そうにも思える。
  sin 24° = 1/8 (3 + 15 − (10 − 25))
  cos 24° = 1/8 (1 + 5 + (30 − 65))

sin 24°/cos 24°分母の3項式をどう有理化したものか…。

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2024-04-02 sin/cos からの tan 24° やや複雑な二重根号処理

#数論 #1 の原始根 #4次方程式 #正五角形 #正五角形の矢

tan 24° を sin 24°/cos 24° として求める。

*

sin 24° = 1/8 (3 + 15 − (10 − 25)) を cos 24° = 1/8 (1 + 5 + (30 − 65)) で割る――というのは、第一印象、面倒そう。
  tan 24° = [3 + 15 − (10 − 25)]/[1 + 5 + (30 − 65)]  ★
この割り算は、ちょっと敬遠したくなるよね…

tan の加法定理経由の方が楽そう…ってなわけで、前回はそれをやって、既に tan 24° 自体は求まったのだが、今回は上記の sin 24°/cos 24° を試してみたい。理由――どうなるのか気になるから。冒険でしょでしょ!?

★ を眺めて「どこから手を付けたものか」と検討。何となく、本格的な計算を始める前に、こう変形しておくのが得策に思える。
  [3(1 + 5) − (10 − 25)]/[(1 + 5) + 3(10 − 25)] = [3(1 + 5) − (10 − 25)]/[3(10 − 25) + (1 + 5)]  ☆

これは、前回の教訓…

…を生かすことでもある。

(1 + 5) を一つの項と見ると、☆ の分母は2項式。――分母の足し算の順序を逆にした理由は、単なる気分の問題: 2項式 X + Y の第1項 X が第2項 Y より大きいなら、有理化の最中に (X + Y)(X − Y) = X2 − Y2 が負にならず、気分がいい。ひっくり返さなくても後から分子・分母を −1 で割れば(−1 倍すれば)同じことなんで、別にどっちでもいーんだけど。

下ごしらえができたところで、前回同様、2段階に分けて分母を有理化する。まず ☆ の分子・分母に
  3(10 − 25) − (1 + 5)
を掛ける:
  {[3(1 + 5) − (10 − 25)][3(10 − 25) − (1 + 5)]}/[3(10 − 25) − (1 + 5)2]

この分母 = 30 − 65 − (6 + 25) = 24 − 85 = 8(3 − 5) なので、分子・分母をさらに 3 + 5 倍すれば、新しい分母は 8(3 − 5)(3 + 5) = 8(32 − 5) = 32 となる。要するに:
  tan 24° = (1)/(32)[3(1 + 5) − (10 − 25)][3(10 − 25) − (1 + 5)](3 + 5)  ☆☆

分母の有理化完了! さて、ここからどうするか…。二重根号内の平方差を見ると、外せる二重根号はない。となると、面倒だが、因子を順に掛け算するしかあるまい。まず、☆☆ の二つの [ ] の積を、地道に 1 項ずつ計算。
  […][…] = 3(1 + 5)(10 − 25) − 3(1 + 5)2 − 3(10 − 25) + (1 + 5)(10 − 25)
   = 4(1 + 5)(10 − 25) − 3(6 + 25) − 3(10 − 25)
   = 4(1 + 5)(10 − 25) − 163
   = 4(6 + 25)(10 − 25) − 163  〔※注1〕
   = 4(40 + 85) − 163 = 4⋅2(10 + 25) − 163  ☆☆☆

この ☆☆☆ を ☆☆ に代入して 8 で約分すると:
  tan 24° = (1)/(4)((10 + 25) − 23)(3 + 5)  《ア》
   = (1)/(4)[(3 + 5)(10 + 25) − 63 − 215]  《イ》
   = (1)/(4)((14 + 65)(10 + 25) − 63 − 215)  〔※注2〕
   = (1)/(4)((200 + 885) − 63 − 215) = (1)/(2)((50 + 225) − 33 − 15)

前回と同じ結論が得られたッ! 基本形の二重根号外しがなかった分、この経路の方が tan の加法定理経由より楽かも。ポイントは、《ア》の「2項 × 2項」を展開するとき、バラバラに4項にしてしまわず、《イ》のように…
  (a ± bd)(r ± sd)
…の形(符号の組み合わせは任意)を残しておくこと。前回見たように、この形の積は、トリックなしの単純計算によって、一つの二重根号に簡約可能。二重根号簡約の文脈では、これを見逃す手はない!

〔※注1〕 前回と同じパターン。ここでは (1 + 5) を (6 + 25) で置き換えた。根拠は (1 + 5)2 = 6 + 25。その後は、単なる根号内の掛け算。

〔※注2〕 注1と同様 (3 + 5)2 = 32 + 2⋅35 + 5 = 14 + 65 を利用し、後は単なる掛け算。

*

今のところ tan 24° 自体に用はないけど、二重根号処理の例題としては、なかなかゲームバランスがいい――二重根号外しの基本形よりは少しレベルが高いけど、難し過ぎない。とはいえ、今回は事前整理によって、分母を事実上、2項式として扱った。分母が二重根号を含む一般の3項式で、こんなふうに事前整理ができない場合は、どうしたものか…。

五角形の話題でも二重根号が重要な役割を果たすが、15角形・30角形(12° の倍数の角度の三角関数)では、三重根号を含むやや高度な多重根号処理が絡んでくる。もう少し研究しておきたい。

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