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きちんとまとまった記事ではなく、雑多なメモ。誤字脱字・間違いがあるかもしれません。
2024-12-31 べき和公式の因子 4次・6次の因子の根
#遊びの数論 #べき和 #4次方程式 #6次式 #べき和の因子
複素数の範囲で、
(x2 + x + a)(x2 + x + b)
=
x4 + 2x3 + (a + b + 1)x2 + (a + b)x + ab
と分解される4次式は、係数が 1, 2 と始まり、2次の係数が1次の係数より 1 大きい。例えば、6乗和の公式、
∑ { from k=1 to n } k6
=
(1/7)n(n + 1)(n + 1/2)(n4 + 2n3 − n + 1/3)
の4次の因子はこの性質を持ち、そのことを利用すると、4次式の根を簡単に求められる。同様の手法は(8乗和などの)6次の因子、(10乗和などの)8次の因子にも応用可能。
§1. 4次式 n4 + 2n3 − n + 1/3 を (n2 + n + a)(n2 + n + b) と分解したとき、上記の考慮によれば a + b = −1, ab = 1/3 なので、 a, b は、
y2 + y + 1/3
の根:
a, b = [−1 ± √(12 − 4/3)]/2
=
(−3 ± √−3)/6
従って4次式の根は、二つの2次式、
n2 + n + (−3 + √−3)/6 および n2 + n + (−3 − √−3)/6
の根に等しい。後者の判別式の 4 分の 1 は、
(1/2)2 − (−3 − √−3)/6
=
(3 + 6 + 2√−3)/12
=
(27 + 6√−3)/36
なので、後者の根は次の通り。
n = −1/2 ± (1/6)√(27 + 6√)
同様に、前者の根は:
n = −1/2 ± (1/6)√(27 − 6√)
この方法は、問題の4次式を一般の4次方程式として扱う場合と比べ、かなり簡潔。
いずれも複号の後ろは、純虚数ではない非実数。それを実部と虚部に分離すると:
n = −1/2 ± α または −1/2 ± α*
= 0.3813732363… ± i⋅0.1637644091…, −1.3813732363… ± i⋅0.1637644091…
ここで α = [√(54 + 6√)]/12
+
[i√(−54 + 6√)]/12
この α を次のように書くこともできる。
2−2⋅3−1⋅61/2(√(√ + 9) + i√(√ − 9))
= 2−3/2⋅3−1/2(√(√ + √) + i√(√ − √))
=
2−3/2⋅3−1/2⋅31/4(√(√ + √) + i√(√ − √))
= 2−3/2⋅3−1/4(√(√ + √) + i√(√ − √))
この別表現では、実部・虚部がそれぞれ正であることが一目瞭然。 Concrete Mathematics (2nd ed.) に複数の誤植があった部分だ。
〔参考〕 訂正済みバージョン Graham & Knuth & Patashnik, Concrete Mathematics
https://www-cs-faculty.stanford.edu/~knuth/gkp34.pdf
289ページ参照
§2. 同様の例として、
∑ { from k=1 to n } k7
=
17 + 27 + 37 + ··· + n7
=
n2(n + 1)2(3n4 + 6n3 − n2 − 4n + 2)/24
=
(1/8)n2(n + 1)2(n4 + 2n3 − (1/3)n2 − (4/3)n + 2/3)
の4次の因子の根を考える。この因子の係数は 1, 2 と始まり、2次の係数 −1/3 が1次の係数 −4/3 より 1 大きい。最高次の係数を 1 に限定しない形式、
3n4 + 6n3 − n2 − 4n + 2
においては、3次の係数が4次の係数の2倍で、2次の係数が「1次の係数と4次の係数の和」に等しい(−1 = −4 + 3)。
既述のように、このような4次式(最高次の係数を 1 とする)は、複素数 a, b を使って、
(x2 + x + a)(x2 + x + b)
と分解され、 a + b は1次の係数に等しく、 ab は定数項に等しい。実際:
[(x2 + x) + a][(x2 + x) + b] = (x2 + x)2 + (a + b)(x2 + x) + ab
= x4 + 2x3 + x2 + (a + b)x2 + (a + b)x + ab
= x4 + 2x3 + (a + b + 1)x2 + (a + b)x + ab
従って n4 + 2n3 − (1/3)n2 − (4/3)n + 2/3 をこのように分解したときの a, b の値は、
y2 + (4/3)y + 2/3
の根。この2次式の判別式の 4 分の 1 は、
(2/3)2 − 2/3 = −2/9
なので、
a, b = −2/3 ± (√−2_/3
であり、 n についての上記の4次式の根は、下記の二つ(複号によって表される)の2次式の根に等しい。
x2 + x + (−2 ± √−2)/3 ‥‥❶
❶の判別式の値(複号でマイナスを選択した場合)の4分の1は、
1/4 − (−2 − √−2)/3
=
(3 + 8 + 4√−2)/12
=
(33 + 12√−2)/36
なので、対応する2次式の根は:
−1/2
± [√(33 + 12√)]/6 ‥‥❷
実部と虚部の分離について。今 u, v をどちらも正の実数とすると、
(√u ± i√v)2
=
u ± 2i√uv + (−1)v
=
(u − v) ± 2i√uv
の右辺は、実数 ± 純虚数。両辺の(実部が正の)平方根から、
√u ± i√v
=
√[(u − v) ± 2i√] ‥‥❸
となる。 w = −v と書くと:
√u ± √w
=
√[(u + w) ± 2√] ‥‥❹
今、❷の分子 √(33 + 12√)
=
√(33 + 2√)
を❹と比較すると、正の実数 u と負の実数 w (= −v) の和が 33、積が −72 だから、 u, w は t2 − 33t − 72 の根:
u, w = {33 ± √[332 − 4(−72)]}/2
=
{33 ± √[32⋅112 + 4(8⋅32)]}/2
=
[33 ± 3√(121 + 32)]/2
=
[33 ± 3√(9⋅17)]/2
=
(33 ± 9√17)/2
=
(66 ± 18√17)/4
∴ √u = (1/2)√(18√ + 66), √w = i√−w
= i√v
= (i/2)√(18√ − 66)
〔注1〕 もしくは、同じことだが:
u, w = 33/2 ± √[(33/2)2 + 72]
=
33/2 ± √[(332 + 72⋅4)/4]
=
33/2 ± (3/2)√[(112 + 8⋅4)]
= 33/2 ± (3/2)√153
= 33/2 ± (9/2)√17 以下同じ。
〔注2〕 66 − 18√17 は負。実際、 18√17 > 18√16 = 18⋅4 = 72 > 66。
文字 β によって、実部・虚部がどちらも正の複素数、
β = [√(33 + 12√)]/6
=
(1/6)(√u + i√v)
=
(1/12)(√(18√ + 66) + i√(18√ − 66))
を表すと、上記2次式の根❷は −1/2 ± β だ。
もう一つの2次式は❶の複号でプラスを選んだ場合だが、その選択では❷の根号下の 12√−2 の前の符号が変わるので、❸によって、根は −1/2 ± β* だ。ただし、
β* = (1/6)(√u − i√v)
=
(1/12)(√(18√ + 66) − i√(18√ − 66))
は β の共役複素数。
Knuth 風に書くと、 i 倍される平方根が実数であることが、分かりやすい:
β = 2−2⋅3−1⋅61/2(√(3√ + 11) + i√(3√ − 11))
=
2−3/2⋅3−1/2(√(√ + 11) + i√(√ − 11))
あるいは 2−3/2⋅3−1/2(√(√ + √) + i√(√ − √))
β の表現に関わらず、四つの根は −1/2 ± β および −1/2 ± β* で、数値的には次の通り:
0.4867732954… ± i⋅0.2388616123…, −1.4867732954… ± i⋅0.2388616123…
§3. 比較として同じ4次式、
n4 + 2n3 − (1/3)n2 − (4/3)n + 2/3
の根を、一般の4次方程式の解法を使って求める。
n4 + 2n3 − (1/3)n2 − (4/3)n + 2/3
=
(n2 + n + p)2 − (qn + r)2 ア
と置く。右辺・第1項の真ん中の n の係数 1 は、左辺の3次の係数の半分。 p, q, r は、以下で決定されるべき複素数。
アの右辺を展開:
n4 + n2 + p2 + 2n3 + 2pn + 2pn2 − (q2n2 + 2qrn + r2)
= n4 + 2n3 + (2p − q2 + 1)n2 + (2p − 2qr)n + (p2 − r2)
これがアの左辺と等しくなるためには、 n2 以下の項の対応する係数が一致しなければならない(両辺とも n4 と n3 の係数は 1, 2 で、既に一致している):
−1/3 = 2p − q2 + 1 つまり q2 = 2p + 4/3 イ
−4/3 = 2p − 2qr つまり 2qr = 2p + 4/3 ウ
2/3 = p2 − r2 つまり r2 = p2 − 2/3 エ
イ・エから:
(qr)2 = q2r2 = (2p + 4/3)(p2 − 2/3)
= 2p3 + (4/3)p2 − (4/3)p − 8/9 オ
ウから:
(qr)2 = (2qr/2)2 = (p + 2/3)2
= p2 + (4/3)p + 4/9 カ
オからカを引いて:
0 = 2p3 + (1/3)p2 − (8/3)p − 4/3
分母を払って:
6p3 + p2 − 8p − 4 = 0
p についての、上記の(係数が整数の)3次方程式が有理数解を持つとすれば、それは、
p = ±定数項の約数/最高次の係数の約数
の形。つまり p = ±1, ±2, ±4 か、その「2 分の 1」「3 分の 1」「6 分の 1」のどれか。そのどれも解でないなら、有理数の解はない。若干の試行により、解 p = −2/3 が見つかる。実際:
6(−2/3)3 + (−2/3)2 − 8(−2/3) − 4 = 6(−8)/(3⋅3⋅3) + 4/9 + 16/3 − 4
= −16/9 + 4/9 + 16/3 − 4 = −12/9 −4/3 + 16/3 − 4 = 0
このようにして有理数解を見つけることは、困難ではないが、多少面倒くさい。前節のように、4次式が (x2 + x + a)(x2 + x + b) と分解されることを利用できれば、かなり手間が省ける。
イから q2 = 2(−2/3) + 4/3 = 0 つまり q = 0。一般に q の符号と r の符号の一方は任意に選択可能だが、 q の値を選択すると、係数についての条件(2q を含む式)によって r の符号と値は決定される(r の符号を自由に選ぶことはできない)。例外として q = 0 の場合には、 r2 についての式から r が決定され、 r の符号は ± どちらでも良い。この例では、エから r2 = p2 − 2/3 = 4/9 − 2/3 = −2/9 なので r = √(−2)/3 を選択できる。アに当てはめると:
n4 + 2n3 − (1/3)n2 − (4/3)n + 2/3
=
(n2 + n − 2/3)2 − (√(−2)/3)2
= (n2 + n + (−2 + √−2)/3)(n2 + n + (−2 − √−2)/3)
結局、アの四つの根は、 n2 + n + (−2 + √−2)/3 の二つの根と、 n2 + n + (−2 − √−2)/3 の二つの根に等しい。以下、前節と同じ。
§4. 次に、
∑ { from k=1 to n } k8
=
18 + 28 + 38 + ··· + n8
=
n(n + 1)(2n + 1)(5n6 + 15n5 + 5n4 − 15n3 − n2 + 9n − 3)/90
=
(1/9)n(n + 1)(n + 1/2)(n6 + 3n5 + n4 − 3n3 − (1/5)n2 + (9/5)n − 3/5)
の6次の因子の根を考える。
u = x2 + x と置くと:
(x2 + x + a)(x2 + x + b)(x2 + x + c) = (u + a)(u + b)(u + c)
= u3 + (a + b + c)u2 + (ab + bc + ca)u + abc
= (x6 + 3x5 + 3x4 + x3)
+ (a + b + c)(x4 + 2x3 + x2)
+ (ab + bc + ca)(x2 + x) + abc
= x6 + 3x5 + [(a + b + c) + 3]x4
+ [2(a + b + c) + 1]x3
+ [(a + b + c) + (ab + bc + ca)]x2
+ (ab + bc + ca)x + abc
ゆえに6次式(最高次の係数を 1 とする)が (x2 + x + a)(x2 + x + b)(x2 + x + c) の形に分解されるためには(a, b, c は複素数)、次の条件が必要。第一に、係数が 1, 3 と始まること。第二に、4次の係数から 3 を引いたものを E1 = a + b + c として、3次の係数が 2E1 + 1 に等しいこと。第三に、1次の係数を E2 = ab + bc + ca として、2次の係数が E1 + E2 に等しいこと。――以上の条件が満たされるなら、定数項を E3 = abc として、 a, b, c は次の3次式の根:
y3 − E1y2 + E2y − E3
8乗和の式の因子 n6 + 3n5 + n4 − 3n3 − (1/5)n2 + (9/5)n − 3/5 は、これらの条件を満たす。実際、係数は 1, 3 から始まり、4次の係数から 3 を引いたものを E1 = 1 − 3 = −2 とすると、3次の係数は 2E1 + 1 = 2(−2) + 1 = −3 に等しい。さらに、1次の係数を E2 = 9/5 として、2次の係数は E1 + E2 = −2 + 9/5 = −1/5 に等しい。よって、この因子は (n2 + n + a)(n2 + n + b)(n2 + n + c) と分解され、 a, b, c は、次の3次方程式の解:
y3 + 2y2 + (9/5)y + 3/5 = 0 サ
サの分母を払い、かつ2次の係数を3の倍数とするため、 y = z/15 と置いてサの両辺を 153 倍すると:
[(z/15)3 + 2(z/15)2 + (9/5)(z/15) + 3/5] × 153
= z3 + 30z2 + 405z + 2025 = 0
2次の項を除去するため z = s − 10 と置くと:
(s − 10)3 + 30(s − 10)2 + 405(s − 10) + 2025
= (s3 − 30s2 + 300s − 1000) + (30s2 − 600s + 3000) + (405s − 4050) + 2025
= s3 + 105s − 25 = 0 シ
関連する2次式 t2 − 25t − (105/3)3 = t2 − 25t − 353 は、定数項が負なので、判別式の値が正。よって実係数の3次方程式シは(従ってサも)実数解を一つ持ち、非実数解を二つ持つ(共役)。判別式の具体的な値は、
252 − 4(−353)
=
54 + 4(53⋅73) = 53(5 + 4⋅73)
= 53(5 + 4⋅343) = 53⋅1377 = 53⋅92⋅17
なので、この2次式の実数解は、
t =
(25 ± 5⋅9√5⋅17)/2
=
(25 ± 45√85)/2
だ。これを使い、シの実数解を次のように表現できる:
s = 3√[(45√ + 25)/2] − 3√[(45√ − 25)/2]
〔注〕 ここでは、立方根記号は常に主値を表す(もし「負の実数についての立方根記号が、主値ではなく負の実数を表す」とするなら、上記の第2項は + 3√[(25 − 45√)/2] に当たる)。二つの立方根記号の根号下が、どちらも正の実数であることは明白(よって、どちらの立方根も正の実数値を持つ)。
(45√85 + 25)/2 < (45√100 + 25)/2 = (450 + 25)/2 = 237.5 < 343 = 73
なので、第1項は 7 より小さく、従って z = s − 10 は負の実数。
変数を元に戻して、3次方程式サの実数解(上記の理由から負)は:
y = z/15
=
(s − 10)/15
=
(1/15)(3√[(45√ + 25)/2] − 3√[(45√ − 25)/2] − 10)
= −2/3 + (1/30)(3√(180√ + 100) − 3√(180√ − 100)) = −0.6508022067… ス
便宜上、正の実数 3√(180√ + 100) と 3√(180√ − 100) をそれぞれ J, K と略すと、負の実数スは、
y = −2/3 + (1/30)(J − K)
となる。一方、サの非実数解は、次の通り:
y = −2/3 + (1/30)(J⋅(−1 ± √−3)/2 − K⋅(−1 ∓ √−3)/2)
= −2/3 + (1/60)[(−J + K) ± (J + K)√−3]
= −2/3 − (1/60)[(J − K) ∓ (J + K)√−3]
= −0.6745988966… ± i⋅0.6832681958… セ
サの解 a, b, c の一つス(a としよう)は負の実数なので、問題の6次式の一つの因子 n2 + n + a の判別式の値 12 − 4a は、正の実数。従って、この6次式は実数の根を二つ持つ(b, c は非実数なので、残りの四つの根は非実数)。 n2 + n + a の判別式の値の4分の1は:
1/4 − [−2/3 + (1/30)(3√(180√ + 100) − 3√(180√ − 100))]
= (1/60)[15 + 40 − 2(J − K)]
= (1/60)[55 − 2(J − K)]
= (1/900)[825 − 30(J − K)]
ゆえに n2 + n + a の根は:
−1/2 ± (1/30)√[825 − 30 (J − K)]
= 0.4491060039…, −1.4491060039…
これら二つの根を −1/2 ± γ とすると(ただし γ > 0)、 γ は次の値に等しい。
γ = (1/30)√[825 − 30 (3√(180√85 + 100) − 3√(180√85 − 100))]
〔参考〕 丸かっこ内にある立方根の差 J − K は 1 より小さい正の数。なぜなら 1620 = 180√81 < 180√85 < 180√100 = 1800 なので、これらの立方根は 11 と 13 の間にあるが(113 = 1331, 133 = 2197)、 123 = 1728 なので、この範囲の実数では ±100 の差があっても、立方根の値に 1 以上の差は生じない。ゆえに、一番外側の根号下は 825 − 30⋅1 = 795 より大きく 825 − 30⋅0 = 825 より小さい。従って、この平方根は √784 = 28 より大きく、 √841 = 29 より小さい。要するに γ は 28/30 = 0.93333… と 29/30 = 0.96666… の間にある。正確には γ = 0.9491060039… だ。
次のように書くこともできるが、この表記にあまり利点はないようだ。
γ = 2−1⋅3−1/2 [11 − 2⋅5−1(3√(180√ + 100) − 3√(180√ − 100))]1/2
= 2−1⋅3−1/2 [11 − 25/3⋅5−2/3(3√(9√ + 5) − 3√(9√ − 5))]1/2
= 2−1⋅3−1/2 [11 − 25/3⋅5−1/2(3√(9√ + √) − 3√(9√ − √))]1/2
§5. n6 + 3n5 + n4 − 3n3 − (1/5)n2 + (9/5)n − 3/5 の一つの因子 n2 + n + a に関しては以上の通りで、定数項 a は(負の)実数だった。残りの二つの因子 n2 + n + b および n2 + n + c の定数項 b, c は、下記の非実数(セ参照):
c, b = −2/3 − (1/60)[(J − K) ∓ (J + K)√−3]
ここで、
J = 3√(180√ + 100)
K = 3√(180√ − 100)
は、どちらも正の実数(J > K)。
複号でプラスを選んだものを b、マイナスを選んだものを c (= b*) とする。 b, c 共通の実部、
−40/60 − (1/60)(J − K)
=
−(1/60)(40 + J − K)
と、 b の虚部、
−(1/60)[(J + K)√3]
は、どちらも負。 n2 + n + b の判別式の4分の1は:
1/4 − {−(1/60)(40 + J − K) − (1/60)[(J + K)√−3]}
= 15/60 + (1/60)[40 + (J − K) + (J + K)√−3]
= (1/60)[55 + (J − K) + (J + K)√−3]
この複素数の実部 [55 + (J − K)]/60 と虚部 [(J + K)√3]/60 は、どちらも正。
1/60 の平方根の絶対値は 1/(2√15)
= (√15)/30 なので、 n2 + n + b の根は:
−1/2 ± (√15/30)√[55 + J − K + (J + K)√]
= 0.5183977077… + i⋅0.3354623594…, −1.5183977077… − i⋅0.3354623594…
同様に、 n2 + n + c の根は:
−1/2 ± (√15/30)√[55 + J − K − (J + K)√]
= 0.5183977077… − i⋅0.3354623594…, −1.5183977077… + i⋅0.3354623594…
前節までで見た4次の因子の場合と同様、 n2 + n + b の二つの根も n2 + n + c の二つの根も互いに共役複素数ではないが、計四つの根は、上記のように、2対の共役複素数。 n2 + n + b の根を −1/2 ± δ とすれば、 n2 + n + c の根は −1/2 ± δ* だ†。
† b が非実数のとき、二つの2次式 x2 + x + b と x2 + x + b* の計四つの根は2組の共役複素数で、 −1/2 ± δ, −1/2 ± δ* の形を持つ。ここで δ = √(1/4 − b) は、純虚数でない非実数。われわれは複素平面上の第4象限の数を b としたので、 −b は第1象限。 1/4 − b およびその平方根の主値 δ も第1象限。
これら四つの根についても、実部・虚部を分離することは可能だが、あまりシンプルな形にはならない。
H = √[4(J2 + K2) + 110(J − K) + 3585]
と置くと、
δ = √[(H + J − K + 55)/120]
+ i√[(H − J + K − 55)/120] = 1.0183977077… + i⋅0.3354623594…
を使って(δ は実部も虚部も正)、四つの根を次のように表現できる。
−1/2 ± δ, −1/2 ± δ*
「二つの3次式の積」に分解される6次式(特に六つの解が ±x1, ±x2, ±x3 の形のもの)を解くことは時折必要になるが、「非自明な三つの2次式の積」に分解される6次式の処理は、比較的珍しいと思われる。
2025-01-01 べき和公式の因子(その2) 別の方法
∑ { from k=1 to n } k6 の因子 n4 + 2n3 − n + 1/3 の根を求める別の方法(§1参照)。
n = x − 1/2 と置くと x4 − (2/3)x2 + 31/48 になり、それを x2 についての2次式として扱うことができる。
前回述べたように、4次の因子 n4 + 2n3 − n + 1/3 の係数は 1, 2 と始まり、2次の係数(0)は1次の係数(−1)より 1 大きい。
§6. この4次の因子の根は、複素平面上で (−1/2, 0) を対称の点とする2対の共役複素数で、下記の形を持つ(u, v: 実数)。
A = −1/2 + (u + vi), B = −1/2 − (u + vi),
A* = −1/2 + (u − vi), B* = −1/2 − (u − vi)
よって x = −1/2 をあらためて複素平面の縦軸とすれば――つまり根が ±(u + vi), ±(−u ± vi) で表されるように変数を置換すれば――、置換後の新変数で表された四つの根 a, b, c, d は、「絶対値が同じで符号が反対」の2組、言い換えれば「互いに −1 倍の2数」の二つのペアから成る。例えば a = +(u + vi), b = −(u + vi)。このとき、明らかに a + b = a + (−a) = 0。同様に c + d = 0。従って、四つの根 a, b, c, d の和は 0 に等しい。
のみならず、「互いに −1 倍の2数」それぞれの逆数は、再び「互いに −1 倍の2数」だから、各組の二つの根の逆数の和は 0 だ。例えば 1/a + 1/b = 1/a + 1/(−a) = 0。従って、根 a, b, c, d を三つずつ掛けて足したものも、次のように 0 に等しい。
abc + abd + acd + bcd = abcd(1/a + 1/b + 1/c + 1/d) = abcd(0 + 0) = 0
〔補足〕 あるいは単に abc + abd + acd + bcd = ab(c + d) + cd(a + b) = ab⋅0 + cd⋅0 = 0。大局的に、根が ±x1, ±x2 であるような x についての4次式が、 y (= x2) についての2次式になることは、明白だろう。同様に、根が ±x1, ±x2, ±x3 であるような6次式は、 y についての3次式になる(従って、 x についてのこの6次式には、奇数次の項がない)。等々。
四つの根の和は、4次式の3次の係数の符号を変えたものに当たり、根を三つずつ掛けて足したものは、4次式の1次の係数の符号を変えたものに当たる。
以上のことから、 n についての上記の4次の因子は、置換 n = x − 1/2 によって、奇数次の項のない4次式になる。実際:
(x − 1/2)4 + 2(x − 1/2)3 − (x − 1/2) + 1/3
= x4 − 4x3⋅1/2 + 6x2⋅1/4 − 4x⋅1/8 + 1/16
+ 2(x3 − 3x2⋅1/2 + 3x⋅1/4 − 1/8) − (x − 1/2) + 1/3
= x4 − (3/2)x2 + 31/48
ここで y = x2 と置くと、次の2次式を得る。
y2 − (3/2)y + 31/48
その根は(1次の係数の半分 −3/4 とその平方 9/16 を使うと):
y = −(−3/4) ± √(9/16 − 31/48)
= 3/4 ± √(−4/48)
= 3/4 ± √(−1/12)
= 3/4 ± √(−3)/6
=
(1/36)(27 ± 6√−3)
今、変数の置換 y = x2 を元に戻すため、上記・右辺の分数の平方根を考えると:
x = ±(1/6)√(27 ± 6√) 複号は4通りの組み合わせが可能
∴ n = x − 1/2 = −1/2 ± (1/6)√(27 ± 6√)
これは前回(あるいは以前、別の場所で)得たのと同じ結果だ。後は必要に応じて、非実数 27 ± 6√−3 の平方根の実部・虚部を分離するだけ。
置換 n = x − 1/2 の処理は機械的にできる単純なものだが、手計算では少し面倒。その点を別にすれば、今回の方法は、前回の考察より流れが分かりやすいかもしれない。
2025-01-02 べき和公式の因子(その3) 別の方法(続き)
#遊びの数論 #べき和 #4次方程式 #6次式 #べき和の因子
∑ k7 の4次の因子、 ∑ k8 の6次の因子について、奇数次の項のない4次式・6次式を経由して根を求める。
§7. ∑ { from k=1 to n } k7 の4次の因子、
n4 + 2n3 − (1/3)n2 − (4/3)n + 2/3
の根を求める別の方法(§2参照)。 n = x − 1/2 と置くと、
x4 − (11/6)x2 + 17/16
となり、 y = x2 と置くと、
y2 − (11/6)y + 17/16
となる。その判別式は、
121/36 − 4⋅17/16
=
121/36
−
153/36
=
−32/36
なので、解は:
y = 11/12 ± 4√−2/12
=
(1/36)(33 ± 12√−2)
∴ x = ±(1/6)√(33 ± 12√)
複号は四つの組み合わせが可能。以下 §2 の❷と同様に進む。
奇数次の項のない4次式(x についての)さえ得てしまえば後は簡単だが、そのための変数置換(n についての4次式に n = x − 1/2 を代入する部分)が、手計算では少し面倒くさい。解と係数の関係を利用すれば、同じ4次式を (n2 + n + a)(n2 + n + b) と分解するために必要な定数 a, b は、直ちに2次方程式から求まる(§2)。恐らくその方が得策だろう。
§8. ∑ { from k=1 to n } k8 の6次の因子、
n6 + 3n5 + n4 − 3n3 − (1/5)n2 + (9/5)n − 3/5 タ
の根を求める別の方法(§4参照)。 n = x − 1/2 と置くと、
x6 − (4/11)x4 + (239/80)x2 − 381/320 チ
となり、 y = x2 と置くと、
y3 − (4/11)y2 + (239/80)y − 381/320 ツ
となる。2次項を除去するため y = z + 11/12 と置くと、
z3 + (15/7)z + 1/135 テ
となり、分母を払うため z = s/15 と置いて 153 = 3375 倍すると、
s3 + 105s + 25 ト
を得る。
〔補足〕 ツの分母は複雑であり、ツの時点で分母を払っても、必ずしも処理が簡単にならない。具体的に、ツにおいて y = u/20 と置き 203 倍すると u3 − 55u2 + 1195u − 9525 となり、そこで u = v + 55/3 と置くと v3 + (560/3)v + 1600/27 となる。ここでもし v = w/3 と置き 27 倍するなら w3 + 1680w + 1600 を得るが(それを直接解くことも可能だが)、この1次の係数・定数項はそれぞれ 42, 43 で割り切れるので、 w = 4s と置いて 43 で割ればトに簡約される。言い換えると、 v の式で v = w/3 の代わりに v = 4s/3 と置き (3/4)3 倍すれば、トに至る。これらトに至る置換は、トータルでは本文の置換と同内容だが(y = s/15 + 11/12)、置換のチェーンが長く、やや遠回りだと思われる。
3次式トは、§4の3次式シとほとんど同じ(定数項の符号だけが逆)。唯一の実数解の符号が逆(絶対値は同じ)であることを別にすれば、どちらも全く同じ3解を持つ。トの実数解は:
s = 3√[(45√ − 25)/2] − 3√[(45√ + 25)/2] = (K − J)/2 = −0.2379668985…
コンセプト的には簡明な解法だが、実際上、タをチにする変換が(単純計算とはいえ)面倒くさい。
変数を元に戻すと:
y = z + 11/12
=
s/15 + 11/12
=
(K − J)/30 + 11/12
=
[825 − 30(J − K)]/900
この数 y はツの唯一の実数解で「6次式タの実数解 x と −1/2 の差」の平方、つまり γ2 に等しい(ただし γ > 0 と仮定)。§4 と同じ次の結論に至る。
γ = (1/30)√[825 − 30(J − K)] つまり タの実数の根は −1/2 ± γ
〔注〕 タは §4 で扱っている6次式と同一だが、置換の方法が異なるため文字 y, z などの意味は異なる。タは実数の根を二つ持つが、どちらも −1/2 から等距離。
一方、チの(四つの)非実数の根は、次の通り。複号は、かっこ内でのみ同順。先頭の複号との組み合わせで、計4通りの符号選択が可能。
x = ±(1/30)[825 − 30(J⋅(−1 ± √−3)/2 − K⋅(−1 ∓ √−3)/2)]1/2
これらの複号で全部上の符号を選ぶと、実部・虚部が両方正の複素数 δ を得る:
δ
=
(1/30)[825 − 15(−J + K) + 15(√−3)(J + K)]1/2
=
(√15)/30 × √[55 + J − K + (J + K)√]
タの(四つの)非実数の根は −1/2 ± δ, −1/2 ± δ* に等しい(§5 の結果と一致)。
2025-01-04 べき和公式の因子(その4) 9乗和・10乗和の特異性
#遊びの数論 #べき和 #4次方程式 #6次式 #べき和の因子
S9(n) = ∑ { from k=1 to n } k9 =
(1/10)n10
+
(1/2)n9
+
(3/4)n8
−
(7/10)n6
+
(1/2)n4
−
(3/20)n2
から因子 n2(n + 1)2 を分離したときの6次の余因子、
(n6 + 3n5 + (1/2)n4 − 4n3 + (1/2)n2 + 3n − 3/2)/10
は、有理係数の範囲で既約でない(2次と4次の因子に分解される)。この現象、および同様の現象は、 m = 9, 10 の場合(9乗和・10乗和)に限って起きるようだ。
この6次式(および10乗和で生じる同様の8次式)を分解する簡単な方法があるか? 事実としては n2 + n − 1 が因子なので、天下り的に割り算することはできるが、どうやって n2 + n − 1 が因子だと突き止めるのか?
2年前(2023年3月)、こうした疑問を抱いたが、答えが分からなかった。この種の6次式・8次式を複素係数の範囲で完全分解するアルゴリズムを得た今、少なくとも上記の疑問は自然解決した。この6次の因子の分解について記す。
§9. 問題の6次式(の分子)、
n6 + 3n5 +
(1/2)n4 − 4n3
+
(1/2)n2
+ 3n
− 3/2 ‥‥①
は、次の三つの性質を持つ。第一に、係数が 1, 3 と始まる。第二に、4次の係数から 3 を引いたものを E として(この例では E = 1/2 − 3 = −5/2)、3次の係数が 2E + 1 に等しい(−4 = 2⋅(−5/2) + 1)。第三に、1次の係数を F として(この例では F = 3)、2次の係数が E + F に等しい(1/2 = −5/2 + 3)。既述のように、このとき6次式を、
(n2 + n + a)(n2 + n + b)(n2 + n + c) ‥‥②
と分解することができ、複素数 a, b, c は、6次式の定数項を G として(①では G = −3/2)、
y3 − Ey2 + Fy − G
の根。すなわち、①の分解では、
y3 + (5/2)y2 + 3y + 3/2 つまり 2y3 + 5y2 + 6y + 3 ‥‥③
の根を利用できる。
もし③が有理数の根を持つなら、その根は定数項の約数 ±1, ±3 またはそれらの 1/2 のどれかだ。③は全部の係数が正の3次関数; −∞ から +∞ まで単調に増加し†、座標の横軸と一度だけ交わる。つまり実数の根(零点)を一つだけ持つ。 y が正のとき③の各項は正なので、③の実数の根は負。 y = −1, −3; −1/2, −3/2 の四つが候補となり、容易に根 y = −1 を得る。この根を a としよう。今や①が、
(n2 + n − 1)(n2 + n + b)(n2 + n + c)
と分解されること、すなわち因子 n2 + n − 1 を持つことは、明白。
† 実関数として極値を持たない。なぜなら導関数 6y2 + 10y + 6 の判別式が負。
6次の余因子①を複素係数の範囲で②の形に分解したとき、 a, b, c の一つ(それを a とする)が実数、残りの二つが非実数になることは、8乗和の場合と同じ。9乗和の特異性は、この実数 a がたまたま有理数(しかも整数)になること(従って、余因子の根のうち二つは二次の無理数になること)。なぜ「たまたま」有理数になるのか。9乗和・10乗和以外では、この現象は起きないのか?
しかも S9(n), S10(n) の両方が、同一の因子 n2 + n − 1 を持つ。これは単なる偶然か?
m が偶数か奇数かに応じて、 Sm(n) を n(n + 1)(2n + 1) あるいは n2(n + 1)2 で割ったものを T とすると、 m = 2, 3, 4, 5 の場合には T は0次式または2次式なので、疑問の生じる余地はない。 m = 6, 7, 8 の場合の T が(有理係数の範囲で)既約である一方、 m = 9, 10 の場合には T に「思わぬ」因子 n2 + n − 1 が発生することについては、恐らく繊細な数論的説明が可能なのだろうが、素朴な観察として、 Bernoulli 形式 Sm の「係数の分数の複雑さ」と関連性があるように思われる。 S7 は係数 −7/24 を持ち、 S8 は係数 −1/30 を持つ。 m が偶数の場合・奇数の場合に分けて比較するなら、これらの分数は S6 以下で現れる分数より複雑で、次数に応じた「順当な複雑度」を持つ。他方において S9 の係数は、一番複雑なものでも −3/20 であり、後ろから2番目の係数は 1/2 だ。 S10 に至っては、最後の係数は 5/66 と複雑なものの、その手前の係数は 5/6, −1, 1, −1/2 という特異的に単純なもので(二つは整数!)、そのような意味では S10 は S8 よりかえってシンプル(同様に S9 は S7 よりシンプル)といえる。
このように、次数が増えてもかえってシンプルになることが S9, S10 の特異性の背景にあるのではないか。関連する事実として、 B8 = −1/30 は B6 = 1/42 より単純であるばかりか B4 と等しいので、いわば「複雑さを増加させない」。一方、 B12 = −691/2730 以降、 Bernoulli 数が急激に複雑化することもあって、 S12 以降はもはや自明な因子しか持ち得ず(いわば「複雑過ぎて、きれいに割り切れず」)、つまり余因子 T が既約になる――と予想される†。
† 事実そうであることは、多少の深い理論的考察から証明可能なのだろうが、少なくとも直ちに明らかではないだろう。 m ≤ 1000 の範囲でこの予想が正しいことを、以前 PARI を利用して確かめた。今回、 m ≤ 6000 の範囲まで確かめた。
S11 には S9 よりシンプルな面もあり、非自明な因子を持ち得たかもしれないが、実際にはそうなっていない。 B14 = 7/6 も特異的に単純だが、その単純さは、 B12 以降の(桁違いな)複雑さを中和するには全く不十分であろう。
§10. m = 9 の場合の余因子(の分子)、
n6 + 3n5 + (1/2)n4 − 4n3 + (1/2)n2 + 3n − 3/2 = (n2 + n − 1)(n2 + n + b)(n2 + n + c)
について、 n2 + n − 1 の根は:
−1/2 ± (√5)/2 = −1/2 ± 1.1180339887…
残りの四つの根 n を求めるため、まず③の残りの二つの(非実数の)根 y を求める。③を y + 1 で割った商 2y2 + 3y + 3 の根は:
y = (−3 ± √−15)/4
複号でマイナスを選んだ場合を b として、
n2 + n + (−3 − √−15)/4
を解くと、その判別式は 12 − (−3 − √−15) = 4 + √−15 なので、 n2 + n + b の根は:
n = −1/2 ± ε
ただし ε = (1/2)√(4 + √)
=
1.0936043824… + i⋅0.4426856055…
y の複号で別の選択をした場合の根(n2 + n + c の根)は、 ε を共役複素数 ε* に置き換えたもの。
今、 ε の実部・虚部を分離すると、
ε = (1/2)[((4 + √31)/2)1/2 + ((4 − √31)/2)1/2]
= (1/4)(√(2√ + 8) + i⋅√(2√ − 8))
となる(31 は、 4 と √−15 の平方差)。あるいは Knuth 風に:
ε = 2−3/2 (√(√ + 4) + i√(√ − 4))
結論として、われわれは次の分解を得る。
S9(n) = n2(n + 1)2(n + 1/2 + √(5/4))(n + 1/2 − √(5/4))(n + 1/2 + ε)(n + 1/2 − ε)(n + 1/2 + ε*)(n + 1/2 − ε*)/10,
where ε = 2−3/2 (√(√ + 4) + i√(√ − 4)).
S8(n) との比較はもとより、 S6(n), S7(n) についての同様の明示的表現と比べても、この分解はシンプルで(α, β と比べ ε は単純な形をしている)、それ自体、特異的といえる。ただし m が偶数の場合に限れば、余因数 T が4次を超える範囲では S6(n) の分解が最もシンプルだ(Cf. Concrete Mathematics, p. 289)。同じ6次の T の分解でも、 m = 9 のケースは m = 8 のケースより、はるかに易しい(実質4次の因子の分解なので)。
§11. 別の方法。①で n = x − 1/2 と置き、奇数次の項のない6次式(x についての)を得る。 y = x2 と置くと:
y3 − (13/4)y2 + (71/16)y − 155/64
分母を払うため y = z/4 と置いて 64 倍すると:
z3 − 13z2 + 71z − 155 ‥‥④
もし④が有理数の根を持つなら、その根は定数項の約数 ±1, ±5, ±31, ±155 のどれかだ。 z が負のとき④の各項は負なので、正の可能性だけ考えればいい。 z = 1 は明らかに根でない。 z = 5 を試すと 125 − 325 + 355 − 155 = 0 となり、それは根。そこで④を z − 5 で割ると:
④ = (z − 5)(z2 − 8z + 31)
ゆえに④の根は z = 5, 4 ± √−15 だ。変数を元に戻すと、
y = 5/4, (1/4)(4 ± √−15)
∴ x = ±√5/2, ±(1/2)√(4 + √), ±(1/2)√(4 − √)
∴ x = −1/2 ± √5/2, −1/2 ± ε, −1/2 ± ε*
ここで ε = √(4 + √) だ。これは(必要に応じて ε の実部・虚部を分離すれば)既に得た結論と一致。
この解法の方が見通しが良いようにも思えるが、 n についての6次式①に対する置換 n = x − 1/2 の処理は、単純計算とはいえ面倒くさい。 x の奇数次の項が消滅することは保証されているので、下記のように、展開において奇数次の項を無視することで、かなり省力化できる。
(x − 1/2)6
+
3(x − 1/2)5
+
(1/2)(x − 1/2)4
−
4(x − 1/2)3
+
(1/2)(x − 1/2)2
+
3(x − 1/2)
−
3/2
= x6 + (15/4)x4 + (15/16)x2 + 1/64
− 3(5/2)x4 − 3(10/8)x2 − 3(1/32)
+ (1/2)x4 + (1/2)(6/4)x2 + (1/2)(1/16)
+ 4(3/2)x2 + 4(1/8)
+ (1/2)x2 + (1/2)(1/4)
− 3(1/2) − 3/2
= x6 + (15/4 − 30/4 + 2/4)x4 + (15/16 − 60/16 + 12/16 + 96/16 + 8/16)x2 + (1/64 − 6/64 + 2/64 + 32/64 + 8/64 − 96/64 − 96/64)
= x6 − (13/4)x4 + (71/16)x2 − 155/64
それでも多少手間取る。一方、①から③を導くこと、③の根 a, b, c を求めることは特に面倒ではなく、その後で n2 + n + a などの2次式の根を求める手間も大したものではない。置換 n = x − 1/2 には理論的価値があり、数式処理ソフトなどを利用するなら事実上どちらでも手間は変わらないものの、アルゴリズム的には(特に手計算の場合)、最初のアプローチの方が軽快だと思われる。
2025-01-09 べき和公式の因子(その5) 10乗和
S10(n) は Bernoulli ご自慢の式だ。それを使って 110 + 210 + ··· + 100010 を7分半で計算したという。この和は、 9140 9924 から始まる32桁の数で、公式がことの外シンプルな形をしていることもあって、桁の並びには「24」が何度も現れる(機械的に反復されるわけではない)。日本の
§12. S10(n)
=
(1/11)n11
+
(1/2)n10
+
(5/6)n9
−
n7
+
n5
−
(1/2)n3
+
(5/66)n
の最初の三つの係数はお約束通り、最後の係数は単に B10 なので、7乗・5乗・3乗の係数(符号は順に − + −)だけが問題となる、実はそれら三つの係数の絶対値は 1, 1, 1/2 だ。異常ともいえるシンプルさ。その異常さと関連するのか、 S10(n) を(m が偶数の Sm(n) に共通の)因子 n(n + 1)(n + 1/2) で割った余因子(を11倍したもの)、
n8
+ 4n7
+ (8/3)n6
− 6n5
− (10/3)n4
+ 8n3
+ (2/3)n2
− 5n
+ (5/3 ‥‥❶
は「十分に複雑」でなく、有理係数の範囲で既約にならない。この現象は、無数にある Sm(n) において m = 9, m = 10 のとき発生。
今、 E = a + b + c + d, F = ab + ac + ad + bc + bd + cd, G = abc + abd + acd + bcd, H = abcd とすると、
(u + a)(u + b)(u + c)(u + d)
=
u4 + Eu3 + Fu2 + Gu + H (*)
となるが、ここで u = n2 + n と置くと:
(*) = n8 + 4n7 + 6n6 + 4n5 + n4
+ E(n6 + 3n5 + 3n4 + n3)
+ F(n4 + 2n3 + n2) + G(n2 + n) + H
= n8 + 4n7 + (6 + E)n6 + (4 + 3E)n5
+ (1 + 3E + F)n4 + (E + 2F)n3 + (F + G)n2 + Gn + H ‥‥❷
❶ = (n2 + n + a)(n2 + n + b)(n2 + n + c)(n2 + n + d) と仮定すると、それを展開したものは❷の形なので、❶との係数比較により G = −5, H = 5/3 は直ちに確定、従って2次の係数から 2/3 = F + G = F − 15/3 となり、 F = 17/3 だ。6次の係数から E = 8/3 − 6 = −10/3。ゆえに a, b, c, d は次の4次式の根:
y4 + (10/3)y3 + (17/3)y2 + 5y + 5/3 つまり 3y4 + 10y3 + 17y2 + 15y + 5 ‥‥❸
❸に有理数の根があるとすれば −1, −5 またはそれらの3分の1。容易に y = −1 を得る(この根を d とする。これ以外に有理数の根はない)。
n2 + n − 1 の二つの根、言い換えれば❶の根のうちの二つは、次の通り。
n = −1/2 ± √5/2
=
0.6180339887… or −1.6180339887…
さらに、❶は n2 + n + d = n2 + n − 1 で割り切れ、その商から:
S10(n) = n(n + 1)(n + 1/2)(n2 + n − 1)(n6 + 3n5 + (2/3)n4 − (11/3)n3 + n2 + (10/3)n − 5/3)/11
= n(n + 1)(2n + 1)(n2 + n − 1)(3n6 + 9n5 + 2n4 − 11n3 + 3n2 + 10n − 5)/66
〔付記〕 3n6 から始まる6次の因子は、次の三つの性質を満たす: 最高次の係数 3 を ℓ として、係数が ℓ, 2ℓ と始まる; 3番目の係数 2 から 3ℓ を引いたもの(−7)を e として、4番目の係数 −11 は 2e + ℓ に等しい; 1次の係数(10)を f として、2次の係数(3)は e + f に等しい。
§13. ❶の残りの六つの根を求めたい。❸を因子 y + d = y + 1 で割って商をモニック3次式で表すと y3 + (7/3)y2 + (10/3)y + 5/3 だ。分母を払いつつ2次の係数を 3 の倍数にするため、 y = z/9 を置いて 93 倍すると:
(z3/93)93 + (7/3)(z2/92)93 + (10/3)(z/9)93 + (5/3)93
= z3 + 21z2 + 270z + 1215
2次項を除去するため z = s − 7 と置くと:
s3 + 123s + 11 ‥‥❹
413 = (40 + 1)3
= 64000 + 3⋅1600 + 3⋅40 + 1
= 64000 + 4800 + 120 + 1
= 68921
関連する2次式 t2 + 11t − 413 の判別式の値 112 + 4⋅68921 = 275805 = 81⋅3405 は正。2次式の根 (−11 ± 9√3405)/2 は、正と負の実数。
ゆえに❹は実数の根を一つだけ持ち、その値は:
s = 3√[(9√ − 11)/2] − 3√[(9√ + 11)/2]
= (−1/2)(3√[36√ + 44] − 3√[36√ − 44])
この丸かっこ内の二つの立方根(主値)を順に L, M と略すことにする(どちらも正の実数で L > M)。つまり、
s = −(1/2)(L − M)
だ(これは負の実数)。すると、 y についての4次式❸は、 y = d = −1 以外にも、次の実数の根を持つ(それを a とする):
y = a = z/9 = (s − 7)/9 = [(−1/2)(L − M) − 7]/9 = (−1/18)(L − M + 14)
よって n2 + n + a の二つの根(実数)、言い換えれば❶の四つの実数根のうちの(前節で記した二つ以外の)二つは:
−1/2 ± √[1/4 + (1/18)(L − M + 14)]
=
−1/2 ± √[9/36 + (1/36)(2L − 2M + 28)]
= −1/2 ± (1/6)√(37 + 2L − 2M)
= 0.5186824322… or −1.5186824322…
一方、❸ないし❹の残りの二つの根(非実数)は次の通り。
s = (1/4)[(L − M) ± (L + M)√−3]
∴ y = (1/9){−7 + (1/4)[(L − M) ± (L + M)√−3]}
= (1/36)[−28 + (L − M) ± (L + M)√−3]
= −0.7728097177… ± i⋅1.2323118774…
上記 y の式の複号で − を選んだ場合を b とすると、 n2 + n + b の判別式の4分の1は、
1/4 − (1/36)[−28 + (L − M) − (L + M)√−3]
= 9/36 + (1/36)[28 − (L − M) + (L + M)√−3]
= (1/36)[37 − (L − M) + (L + M)√−3]
なので、根は:
−1/2 ± (1/6)√[37 − (L − M) + (L + M)√]
= 0.6454885143… + i⋅0.5378979631… or −1.6454885143… − i⋅0.5378979631…
同様に、 y の式の複号で + を選んだ場合の根は:
−1/2 ± (1/6)√[37 − (L − M) − (L + M)√]
= 0.6454885143… − i⋅0.5378979631… or −1.6454885143… + i⋅0.5378979631…
要するに、8次式❶の八つの根は次の通り。
−1/2 ± √5/2
−1/2 ± ζ
−1/2 ± η, −1/2 ± η*
ここで ζ = (1/6)√(37 + 2L − 2M) = 1.0186824322…
η = (1/6)√[37 − (L − M) + (L + M)√] = 1.1454885143… + i⋅0.5378979631…
ただし L = 3√(36√ + 44), M = 3√(36√ − 44)
〔付記〕 √3405 は √2500 = 50 より大きく、 √3600 = 60 より小さい(正確には 58.352…)。ゆえに L, M の立方根号下は、 1800 ± 44 より大きく、 2160 ± 44 より小さい。従って L, M は、大ざっぱに 123 = 1728 と 133 = 2197 の間にある。 123 = 1728 と 133 = 2197 の差は 400 以上なので、この付近の数では、 ±44 の違いがあっても、立方根の値に 1 の違いは生じない。つまり L − M は 1 未満の正の数であり、 37 − (L − M) は 36 台の正の数。従って η の根号下の数は、実部も虚部も正(よって η 自身の実部・虚部も正)。正確には L = 12.895…, M = 12.717…, L − M = 0.178… だ。
§14. ❶で n = x − 1/2 と置き、奇数次の項のない8次式を得る別解は、コンセプト的には明快だが、実際の計算はあまり楽ではない。 n の8次式(分数の係数を含む)の各 n に、 x の1次式(分数を含む)を代入するのは面倒で、まともに展開すれば45項が生じる(奇数次の項を無視することで、多少計算量を減らせる)。結果だけ記すと:
x8
−
(13/3)x6
+
(205/24)x4
−
(409/48)x2
+
2555/768
y = x2 と置くと(文字 y の意味は、前節とは異なる)、
y4
−
(13/3)y3
+
(205/24)y2
−
(409/48)y
+
2555/768 ‥‥❺
となるが、係数の分数が複雑だ。 y = z/12 と置いて 124 倍すれば、整数係数の
z4 − 52z3 + 1230z2 − 14724z + 68985 ‥‥❻
になるものの、その有理数根の探索では、原理的には 68985 = 32⋅5⋅7⋅73 の約数24個(正負を区別すれば48個)を試す必要がある(z が負なら式の値は正なので、実際には正の z だけを試せばいい)。小さい順に試すと、根 z = 15 が見つかる。❻を z − 15 で割って、
z3 − 37z2 + 675z − 4599
という商を得る。
この3次の因数について、2次項を除去するため z = r + 37/3 と置けば、
r3 + (656/3)r − (704/27) = r3 + (41⋅42/3)r − (11⋅43/33)
となり、簡潔化のため r = (4/3)s と置いて (3/4)3 倍すれば、
s3 + 123s − 11
となる(前節の❹と同じ形の式)。
〔参考〕 ❺で y = w/4 と置いて 44 倍してから、さらに 3 倍して分母を払うと、
3w4 − 52w3 + 410w2 − 1636w + 2555
となる。この形なら 2555 = 5⋅7⋅73 の正の約数(またはその3分の1)だけを考えればよく、有理数の根を見つけやすい可能性があるが、潜在的には面倒な分数計算が必要になる。この場合に関しては、整数計算だけで根 w = 5 が見つかり、 w についての4次式を w − 5 で割れば、前記の分解と本質的に同じ結論に至る(商の3次式について、 w = z/3 と置いて 9 倍すれば、前記の z についての3次の因子と同じものを得る)。
s の3次式に関連する2次式 t2 − 11t − 413 について、判別式は 121 + 4⋅413 = 275805 = 81⋅3405 なので、根は
t = (11 ± 9√3405)/2 だ。通常通り(前節同様)、二つの根 t それぞれの立方根から3次式の根 s が得られる。特に、負の根 t の負の立方根は:
−3√[−(11 − 9√)/2]
=
−3√[(9√ − 11)/2] = −M/2
一方、正の立方根は:
s = 3√[(9√ + 11)/2] = L/2
実数の根 s は、この二つの和 (L − M)/2 なので:
y = z/12 = (r + 37/3)/12 = [(4/3)s + 37/3]/12 = 4s/36 + 37/36
= (37 + 4s)/36 = (37 + 2L − 2M)/36
この y の平方根 x は、前節の ζ と一致。
最後に、残りの二つの(非実数の)根 s は:
s = (L⋅(−1 ± √−3)/2 − M⋅(−1 ∓ √−3)/2)/2
=
[−(L − M) ± (L + M)√−3]/4
∴ y = (37 + 4s)/36 = [37 − (L − M) ± (L + M)√−3]/36
複号で + を選んだ場合、この複素数 y の平方根は、前節の ±η と一致。複号で − を選べば、平方根は ±η* だ。
2025-01-12 べき和公式の因子(その6) 11乗和
S11(n) は、根をぎりぎり初等的に扱える最後のべき和だ。余因子は既約の8次式だが、4次方程式に帰着可能。理論的に、4次方程式は必ず解ける――とはいうものの、この場合、最も厄介なパターンになる(関連する3次方程式が、いわゆる簡約不可能ケース)。
§15. 11乗和の式は、 Bernoulli 形式で書くと、比較的シンプルな形をしている。
S11(n) =
(1/12)n12
+
(1/2)n11
+
(11/12)n10
−
(11/8)n8
+
(11/6)n6
−
(11/8)n4
+
(5/12)n2
係数の分数を複雑さの一つの目安とするならば、一番大きい分母でも 12 で、どの分数も分母が偶数(9乗和・10乗和についての同様の表現では、一番大きい分母はそれぞれ 20 と 66 だ)。簡単そうに見える。係数の分子に 11 が4連続で現れるところなど、美しい感じさえする。実際、全部の根を根号表現できるという意味では「簡単」な式だ。他方において、(有理係数の範囲で)8次の因子が出現する。 S10(n) までは6次以下の因子で済んでいたので、困難度がアップ。もっとも S11(n) が難しいというより、 S10(n) が例外的に簡単なのだろう。
S11(n) から自明な因子 n2(n + 1)2 を分離し、12倍すると、次の8次の因子を得る。
n8 + 4n7 + 2n6 − 8n5 − (5/2)n4 + 13n3 − (3/2)n2 − 10n + 5 ナ
8次式ナの根を求める問題を、4次式の問題に帰着させることができる。§12 と同じ方法を使うと、定数項から H = 5。 1次の係数から G = −10。 2次の係数から F + G = F − 20/2 = −3/2、よって F = 17/2。 6次の係数から 6 + E = 2、よって E = −4。――ゆえに、次の4次方程式の解を a, b, c, d とすると、8次式ナは、複素係数の範囲では n2 + n + a, n2 + n + b, n2 + n + c, n2 + n + d の四つの因子に分解する。
y4 + 4y3 + (17/2)y2 + 10y + 5 = 0 ヌ
明らかにヌは有理数解を持たない(もしも有理数解があれば y = ±1, ±5 のどれかだが、それらを代入したとき、ヌの左辺の値は分母 2 の既約分数)。よって S10(n) の場合のような楽はできず、真面目に4次方程式を解くしかない。今、 p, q, r を未知数として、
(y2 + 2y + p)2 − (qy + r)2
= y4 + 4y2 + p2 + 4y3 + 4py + 2py2 − (q2y2 + 2qry + r2)
= y4 + 4y3 + (2p − q2 + 4)y2 + (4p − 2qr)y + (p2 − r2)
とヌが一致すると仮定すると、係数の比較から:
2p − q2 + 4 = 17/2 つまり q2 = 2p − 9/2 ネ
4p − 2qr = 10 つまり 2qr = 4p − 10 ノ
p2 − r2 = 5 つまり r2 = p2 − 5 ハ
ネとハの積から:
q2r2 = 2p3 − (9/2)p2 − 10p + 45/2
∴ 4q2r2 = 8p3 − 18p2 − 40p + 90 ヒ
ノの平方から:
4q2r2 = 16p2 − 80p + 100 フ
ヒとフから次の3次方程式を得る。
8p3 − 18p2 − 40p + 90 = 16p2 − 80p + 100
∴ 8p3 − 34p2 + 40p − 10 = 0 ホ
ここで p = z/4 と置いて 43/8 = 8 倍すれば、整係数のモニック z3 − 17z2 + 80z − 80 に変換できるが、(変換後の)2次の係数が 3 の倍数の方が便利なので、 p = z/12 と置いて 123/4 倍しよう。すると、
z3 − 51z2 + 720z − 2160 = 0
となり、さらに s = z + 17 と置くと、
s3 − 147s + 254 = 0 マ
を得る。関連する2次式 t2 + 254t + 493 の判別式の4分の1は、
1272 − 493 = −122⋅705
で、2次式の根は −127 ± 12√(−705) だ。
〔補足〕 関連する2次方程式の判別式が負のとき、「有理数解を持たない(実係数の)3次方程式」は、三つの実数解を持つ。ただしその解は、共役の非実数の立方根の和として、表現される。これが「簡約不可能ケース」――実数解を表す式なのに、非実数の立方根を使って表現され、根号表現としては、それを簡約して「実数だけを使った表現」にすることができない。
Cardano の公式から、マの解は、
s = 3√(−127 + 12√) + 3√(−127 − 12√)
であり(立方根記号は主値を表すものとする)、ホの解の主値を U とすると、
p = U = (1/12)(17 + 3√(−127 + 12√) + 3√(−127 − 12√))
= 2.3454104346…
は、正の実数。
このときネから q2 = 2U − 9/2 だ(右辺は正の実数。なぜなら U ≈ 2.35)。その平方根を q として、正の実数 q = √(2U − 9/2) を選ぶことにすると、その選択の結果として r は負になる。なぜならばノから r = (4U − 10)/(2q) だが、この分子は負。符号を考慮し、ハから r = −√(U2 − 5) を得る。
§16. 結局、ヌは、次の4次方程式と同一。
(y2 + 2y + U)2 = (√(2U − 9/2)⋅y − √(U2 − 5))2
∴ y2 + 2y + U = ±(√(2U − 9/2)⋅y − √(U2 − 5))
言い換えると、次の二つの2次方程式に分解される。
y2 + (2 − √(2U − 9/2))y + (U + √(U2 − 5)) = 0 ミ
または y2 + (2 + √(2U − 9/2))y + (U − √(U2 − 5)) = 0 ム
複号を使って、2次方程式ミ・ムの判別式をまとめて書くと、
(2 ∓ √(2U − 9/2))2 − 4(U ± √(U2 − 5))
=
4 ∓ 4√(2U − 9/2) + 2U − 9/2 − 4U ∓ 4√(U2 − 5)
= −1/2 − 2U ∓ 2√(8U − 18) ∓ 4√(U2 − 5)
= (−2 − 8U ∓ 8√(8U − 18) ∓ 16√(U2 − 5))/4
なので(複号同順)、ミの解を c, d (= c*) とすると†:
d, c = −1 + (1/4)√(8U − 18) ± (1/4)(−2 − 8U − 8√(8U − 18) − 16√(U2 − 5))1/2
同様に、ムの解を a, b (= a*) とすると:
b, a = −1 − (1/4)√(8U − 18) ± (1/4)(−2 − 8U + 8√(8U − 18) + 16√(U2 − 5))1/2
† ミの1次の係数 2 − √[(8U − 18)/4] = 2 − ½√(8U − 18) の半分は 1 − ¼√(8U − 18)。
解を表す文字については、便宜上、複号で + を選んだ場合を d, b とし − を選んだ場合を c, a する(逆の選択でも、トータルでは同じ結果になるが)。表記の簡潔化のため、
Q = 8√(8U − 18) + 16√(U2 − 5)
= 18.3137403289…
と置くと:
a, b = −1 − (1/4)√(8U − 18) ∓ (1/4)√(Q − 8U − 2) メ
c, d = −1 + (1/4)√(8U − 18) ∓ (1/4)√(−Q − 8U − 2) モ
〔注〕 数値的には 8U = 18.7632834771… であり、 8U − 18 は(1 未満の)正の実数。よって、メ・モどちらも、複号の前の部分は(負の)実数。一方、 Q は 8U より小さい正の実数。よって、メ・モどちらも複号の後ろの部分は、根号下が負の実数であり、純虚数。要するに、上記 a, b は「同じ実数 ∓ 同じ純虚数」であり、互いに共役。 c, d についても同様。
8次式ナの根は、4種類の2次式―― n2 + n + ○ の形の(○ = a, b, c, d)――の根と一致するのであった(§12参照)。
今 n2 + n + a の判別式の4分の1を θ2 とすると、
θ2 = 1/4 − (−1 − (1/4)√(8U − 18) − (1/4)√(Q − 8U − 2))
= (1/4)(5 + √(8U − 18) + √(Q − 8U − 2))
であり、 n2 + n + a の解は −1/2 ± θ で、 n2 + n + b の解は −1/2 ± θ* だ。ただし、
θ = (1/2)√[5 + √( + )√( )]
= 1.2223065162… + i⋅0.1600561746…
は、実部・虚部とも正とする(逆の符号の平方根を θ としても、トータルでは同じ結果になるが)。 θ* は、上の式の外側の根号下において、 √(Q − 8U − 2) の前の + を − に変えたもの。この符号が + の場合と − の場合とでは、外側の根号下は「実部が同じで虚部の符号が反対」となり(メとその下の〔注〕参照)、従って、外側の平方根の値は共役複素数となる(共役複素数の平方根なので)。
同様に n2 + n + c の解は −1/2 ± ι で、 n2 + n + d の解は −1/2 ± ι* だ。ここで:
ι = (1/2)√[5 − √( + )√( )]
= 1.2050196677… + i⋅0.6484501833…
細かい数値はともかく、定性的な観察として、余因子ナは、実数の根を持たない。これは S10 以下では起きなかった現象で、この8次式の(実関数としての)グラフは、常に横軸より上にある(極小値 0.4015064106…)。
八つの根は、四つずつ二組に分かれ、どちらの組の根も −1/2 ± z; −1/2 ± z* の形を持つ(z: 非実数)。 S6 以降、繰り返し出現するパターンだ。 Sm(n) に関しては、根の対称性から、非実数の根は必ずこのように四つ一組になるのだろう。しかし、一般の8次式では、例えば八つの根のうち四つだけがこのような非実数の組となることも、可能だろう。8次式ナが、四つの非実数根の他に −1/2 ± u; −1/2 ± v の形の四つの実数根(u, v: 実数)を持ったとしても、原理的にはおかしくないと思われるが、実際にはそうはなっていない。
以前は S6(n) の4次の因子の根を求めるだけでも、多少の冒険だった。今は S11(n) までの全部の因子(有理係数の範囲では最大8次)の根に、アクセスできるようになった。 Bernoulli 数そのものは深遠な分野で、このような探索は「波打ち際でのお遊び」に過ぎない。それでも、(与えられた設問に取り組むのではなく)「こういうことができる」ということ自体をふと思い付き、実際それでうまくいったという点に、ささやかな喜びがある。客観的には、たわいもないことだとしても!
2025-01-14 べき和公式の因子(その7) 11乗和(別の方法)
S11(n) の8次の因子を「奇数次の項のない8次式」(x についての)に変換し、 x2 についての4次方程式に帰着させる。
§17. §15のナで n = x − 1/2 と置くと:
x8 − 5x6 + (95/8)x4 − (241/16)x2 + 2073/256
y = x2 と置くと:
y4 − 5y3 + (95/8)y2 − (241/16)y + 2073/256
y = z/4 と置いて 44 = 256 倍すると:
z4 − 20z3 + 190z2 − 964z + 2073 ヤ
ナが有理数の根を持たないことは既知なので、ヤは有理数の根を持たない(定数項 2073 = 3⋅691 の約数を z に代入して、直接それを確かめることもできる)。
今、ヤが4次式、
(z2 − 10z + p)2 − (qz + r)2
= z4 + 100z2 + p2 − 20z3 − 20pz + 2pz2
− (q2z2 + 2qrz + r2)
= z4 − 20z3 + (100 + 2p − q2)z2
+ (−20p − 2qr)z + (p2 − r2)
と一致すると仮定すると、係数の比較から:
190 = 100 + 2p − q2 つまり q2 = 2p − 90 ユ
−964 = −20p − 2qr つまり 2qr = 964 − 20p ヨ
2073 = p2 − r2 つまり r2 = p2 − 2073 ラ
ユとラの積から:
q2r2 = 2p3 − 90p2 − 4146p + 90⋅2073
∴ 4q2r2 = 8p3 − 360p2 − 16584p + 746280 リ
ヨの平方、
4q2r2 = 929296 − 38560p + 400p2
をリから引くと、次の3次方程式を得る。
8p3 − 760p2 + 21976p − 183016 = 0
∴ p3 − 95p2 + 2747p − 22877 = 0 ル
p = u/3 と置いて両辺を 27 倍すると:
u3 − 285u2 + 24723u − 617679 = 0
u = w + 95 と置くと:
w3 − 2352w + 16256 = 0
w = 4s と置いて 64 で割ると:
s3 − 147s + 254 = 0 レ
レに関連する2次式 t2 + 254t + 493 の判別式の4分の1は、
1272 − 493 = −101520 = 122(−705)
なので、この2次式の根は:
t = −127 ± 12√−705
従って、3次方程式レの解は:
s = 3√(−127 + 12√) + 3√(−127 − 12√)
変数の置換を元に戻して、ルの解の主値(それを V とする)は次の通り。
p = V = (1/3)[95 + 4(3√(−127 + 12√) + 3√(−127 − 12√))]
= 46.5265669542…
〔補足〕 分数計算を行うなら、次のようにした方が見通しが良く、変数置換の回数を減らせる。ルにおいて、2次項を除去する標準的置換 p = ℓ + 95/3 を行い、
ℓ3 − (784/3)ℓ + 16256/27
を得てから、分数を解消しつつ分子を小さくするため ℓ = (4/3)s と置いて 33/43 倍すれば、レを得る。このとき p = ℓ + 95/3 = (4/3)s + 95/3 = (1/3)(95 + 4s)。本文の置換(分数の係数を避けたもの)では u = w + 95 = 4s + 95 であり、よって p = u/3 = (1/3)(4s + 95) となり、 p と s の関係に違いはない。
p = V は、数値的には上記のように 45 より大きいので、ユから q2 = 2V − 90 は正。もし q として正の平方根
√(2V − 90) を選ぶと、 r も正。なぜなら、ヨから r = (964 − 20V)/(2q) だが、この分母は(正の q を選べば)正だし、分子も正(実際、 V < 47 なので 20V < 940 であり、 964 − 20V は正)。従って、ラに基づき r を根号表現するなら、 r2 の正の平方根を r とする必要がある:
r = √(V2 − 2073)
〔注〕 q ≠ 0 のときには q として正・負どちらの平方根でも自由に選べるが、 q の符号の選択後、もし r を根号表現するなら、 r について正・負どちらの平方根を選ぶかは、自由ではない。一方、ヨに基づき r を分数表現するなら、符号は自動的に定まり、符号についての考慮は不要。場合によっては、その方が便利だろう。しかしこの例では r を根号表現した方が簡潔だろう。
§18. 結局、4次式ヤは、次の4次式と同一。
(z2 − 10z + V)2 = (√(2V − 90)⋅z + √(V2 − 2073))2
∴ z2 − 10z + V = ±(√(2V − 90)⋅z + √(V2 − 2073))
すなわち:
z2 − (10 + √(2V − 90))z + (V − √(V2 − 2073)) = 0 ワ
または z2 − (10 − √(2V − 90))z + (V + √(V2 − 2073)) = 0 ヲ
ワの判別式は、
100 + 20√(2V − 90) + 2V − 90 − 4(V − √(V2 − 2073))
= 10 − 2V + 20√(2V − 90) + 4√(V2 − 2073)
なので、ワの解は:
z = 5 + (1/2)√(2V − 90) ± (1/2)(10 − 2V + 20√(2V − 90) + 4√(V2 − 2073))1/2
表記の便宜上、
R = 20√(2V − 90) + 4√(V2 − 2073)
と置くと、上記の根 z に対応する y = z/4 は次の通り(2V − 90 は正、 10 − 2V + R は負):
y = (1/4)(5 + (1/2)√(2V − 90) ± (1/2)√(10 − 2V + R))
= (1/16)(20 + 2√(2V − 90) ± 2√(10 − 2V + R))
y = x2 で x = n − 1/2 だから、上記の y の平方根、つまり、
x = (1/4)√[20 + 2√( ± 2 )√( )]
が§16の θ, θ* に等しい。同様に、ヲから、次の数が ι, ι* に等しい。
(1/4)√[20 − 2√( ± 2 )√( )]
値は同一だが、§16で得た表現の方が、ほんの少しシンプルなようだ。
『遊びの数論37』へ続く。