(遊びの数論36)

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きちんとまとまった記事ではなく、雑多なメモ。誤字脱字・間違いがあるかもしれません。


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2024-12-17 28乗根(28角形)を巡る幾つかの話題

#遊びの数論 #第七補充法則 #1 の原始根 #ガウス和 #(36)

π/3, π/4, π/5, π/6 などに対する三角関数の値の根号表現を知った後、では π/7π/14 などに対する cos や sin 等の値は?と興味を持つのは、素朴な好奇心だろう。「何の役に立つのか」とは無関係に!

実用性に乏しいので、既存の資料・文献等にはほとんど記述がない。だからこそますます興味を感じ、自力で導出しよう・なるべくきれいな表現を得ようと試みる…。これまで「三重根号あり」が自己ベストだったが、実は 1 の7乗根・14乗根・28乗根の実部・虚部は、どれも二重根号までの範囲で表現可能と判明。例えば:

sin (π/7) = −7/6 + (67)/12(3(52 + 12−3) + 3(52 − 12−3)) = 0.4338837391…

それ自体は別に役に立たないけど、結構うれしい。

ガウスは Disq. Arith. §124 において、 +7 の平方特性(平方剰余か否か)の判定について、直接証明を完遂し得なかった。相互法則を経由するなら証明は機械的だが、代数的整数の概念(ガウスの初孫くらいの世代のデデキントによって、導入された)を使うと、直接証明も易しい。

一般に、円周 p 等分の根号表現では「cos が比較的易しく sin は根号のネストが一つ深くなる」というイメージがあるかもしれない。けれど円周 4p 等分を考えるなら、 cos と sin の立場は対等になる。気付いてみると、すごく当たり前のことだけど…。

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1. このメモでは θ = π/14 は定数。直角の 7 分の 1 の角度を表す(約 12.9°)。

正28角形の画像

z = cos θ + i sin θ とすると(これも定数とする)、 28 種類の複素数 zk = cos kθ + i sin kθ は 1 の28乗根。ただし k = 0, 1, 2, ···, 27 であり、あるいは k = 0, ±1, ±2, ···, ±14 と書くこともできる。そのうち k = ±1, ±3, ±5; ±9, ±11, ±13 のときの 12 種類の zk1 の原始28乗根だ(残り 16 種は非原始28乗根で、内訳は、原始7乗根が六つ、原始14乗根が六つ、それ以外の四つは ±1, ±i)。

次の二つの等式が成り立つ(詳細については後述)。

補題 z1 + z−1 + z3 + z−3 + z9 + z−9 = 7
  z5 + z−5 + z11 + z−11 + z13 + z−13 = −7

今 p を 3 以上の素数(7 を除く)とする。 Euler の基準と上記の補題によれば、
  (7)p = (z1 + z−1 + z3 + z−3 + z9 + z−9)p ≡ zp + z−p + z3p + z−3p + z9p + z−9p = ±7 (mod p)
の右辺の符号に応じて、 7 は mod p の平方剰余あるいは非剰余。

mod 28 において、集合 H = {±1, ±3, ±9} の各要素を同時に ℓ 倍した結果は、もし ℓ = ±1, ±3, or ±9 なら、全体として再び H。よって p ≡ ±1, ±3, ±9 (mod 28) なら (7)p7 (mod p) が成り立ち、 7 は mod p の平方剰余。

他方、もし ℓ = ±5, ±11, or ±13 なら、 H の各要素を ℓ 倍した結果は mod 28 では {±5, ±11, ±13}。よって p ≡ ±5, ±11, ±13 (mod 28) なら (7)p ≡ −7 (mod p) が成り立ち、 7 は mod p の非剰余。

要するに:

第七補充法則 p が 3 以上の素数なら:
  (7/p) = 1 ⇔ p ≡ ±1, ±3, ±9 (mod 28)

この法則は知られていたが、古典数論での直接証明は困難だった。 Gauß が相互法則を確立したことによって、単にその一つの事例となった。代数的整数の観点から再考するなら、例えば「六つの数 ±1, ±3, ±9 をそれぞれ 3 倍したものは ±3, ±9, ± 27 ≡ ±3, ±9, ∓1 (mod 28) となり、もともとの六つの数と合同」という程度の、単純な事実に過ぎない。今述べた例によると、 p ≡ 3 (mod 28) のときには、
  (7)3 = (z1 + z−1 + z3 + z−3 + z9 + z−9)3 ≡ z3 + z−3 + z9 + z−9 + z27 + z−27 (mod 3)
   = z3 + z−3 + z9 + z−9 + z−1 + z1 = 7
となる(そして Euler の基準によって、そのような p を法として 7 は平方剰余)。この手法で革新的なのは、 7 のような平方根(二次の無理数)はもちろんのこと、 z, z3 などの数も「整数の仲間」と見なし、合同記号の対象としてしまうこと。 p = 3 なら、上記の合同式はこうなる:
  (7)37 つまり 777 (mod 3)

合同記号の定義からすると、これは 77 − 7 = 67 が 3 で割り切れる、という意味だ(商は 27)。あるいは、同じことだが、 77 を 3 で割ると、商は 27 で余りは 7 に…。「斬新だが自然」とでもいうべき、この観点。もともとそこにあった「代数的整数」という構造に気付いたことが Dedekind の偉大さだろう!

2. 上記の補題は、それに比べれば大した問題ではない。 z1 と z−1 は、どちらも実部(横座標)が cos θ で虚部の符号が反対だから、
  z1 + z−1 = (cos θ + i sin θ) + (cos θ − i sin θ) = 2 cos θ
は実数(もともとの実部の 2 倍)。同様に z3 + z−3 = 2 cos 3θ 等々なので、
  z1 + z−1 + z3 + z−3 + z9 + z−9 = 7
を証明する代わりに、
  2(cos θ + cos 3θ + cos 9θ) = 7
を証明しても同じこと。この命題は、原始28乗根を根とする多項式を考えると自然に生じるものだが、便宜上、ここで直接的な証明も記しておく。 7θ は直角なので cos 7θ = 0、そして cos θ と cos 3θ は正、 cos 9θ は負。 cos 9θ = −cos (14θ − 9θ) = −cos 5θ だが、この負数の絶対値 cos 5θ は cos 3θ より小さい。よって cos θ + cos 3θ + cos 9θ は正であり、上の等式の両辺を平方した式、
  4(cos θ + cos 3θ + cos 9θ)2 = 7
を証明すれば足りる。


(※)
cos の積→和の公式
2 cos A cos B =
cos (A+B) + cos (A−B)
特に 2 cos2 A =
cos (2A) + cos (0)
= cos 2A + 1


ところが、
  (cos θ + cos 3θ + cos 9θ)2 = cos2 θ + cos2 3θ + cos2 9θ + 2(cos θ cos 3θ + cos 3θ cos 9θ + cos 9θ cos θ)
の 2(···) の部分は、積→和の公式から、
  cos 4θ + cos 2θ + cos 12θ + cos 6θ + cos 10θ + cos 8θ = cos 4θ + cos 2θ − cos 2θ + cos 6θ − cos 4θ − cos 6θ = 0
なので、
  4(cos θ + cos 3θ + cos 9θ)2 = 4 cos2 θ + 4 cos2 3θ + 4 cos2 9θ
  = 2(cos 2θ + cos 0) + 2(cos 6θ + cos 0) + 2(cos 18θ + cos 0) = 2(3 + cos 2θ + cos 6θ + cos 10θ) ★
が成り立つ(なぜなら cos 18θ = cos (14θ + 4θ) = cos (14θ − 4θ) = cos 10θ)。

cos 2θ, cos 6θ, cos 10θ は、それぞれ −cos 12θ, −cos 8θ, −cos 4θ に等しいので、
  ★ = 2[3 − (cos 12θ + cos 8θ + cos 4θ)] = 2[3 − (−1/2)] = 2⋅7/2 = 7
となる。というのも cos 4θ, cos 8θ, cos 12θ は 1 の原始7乗根の 3 種類の実部で、それらの和は −½ だ。

これで一応、補題の証明が完了したが(補題の第二式は、第一式を項ごとに −1 倍したに過ぎない)、これだけだと、どこからどうやって補題の式が出てきたのか、不透明。「1 の原始28乗根を根とする多項式」について考えてみたい。

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3. x28 − 1 = (x14 + 1)(x14 − 1) の根のうち、 x14 − 1 の根は 1 の14乗根。 1 の原始28乗根は、
  x14 + 1 = (x2 + 1)(x12 − x10 + x8 − x6 + x4 − x2 + 1)
の第二因子の根。われわれは、この12次式の根の代数的表現に興味がある。

次数を半減させるため f(x) = (x12 − x10 + x8 − x6 + x4 − x2 + 1)/x6 と置き y = x + 1/x とする(明らかに x = 0 は根ではなく、従って、根を検討するとき 1/x や 1/x6 などを含む変数変換を利用しても差し支えない)。今、
  f(x) = x6 − x4 + x2 − 1 + 1/x2 − 1/x4 + 1/x6
という式から、
  y6 = x6 + 6x4 + 15x2 + 20 + 15/x2 + 6/x4 + 1/x6
を引くと、
  −7x4 − 14x2 − 21 − 14/x2 − 7/x4
が残り、それに y4 = x4 + 4x2 + 6 + 4/x2 + 1/x4 の 7 倍を足すと、
  14x2 + 21 + 14/x2 = 14(x + 1/x)2 − 7 = 14y2 − 7
なので、 f(x) − y6 + 7y4 = y2 − 7 つまり f(x) = y6 − 7y4 + 14y2 − 7 と書くことができる。 x が 1 の原始28乗根のとき、 y = xk + x−k は共役複素数の和、
  (cos kθ + i sin kθ) + (cos (−k)θ + i sin (−k)θ) = (cos kθ + i sin kθ) + (cos kθ − i sin kθ) = 2 cos kθ
であり(k = 1, 3, 5; 9, 11, 13)、従って、今導いた(y についての)6次式、
  y6 − 7y4 + 14y2 − 7
の六つの根は「1 の原始28乗根の 6 種類の実部を、それぞれ 2 倍したもの」、つまり次の形の六つの実数:
  y = zk + z−k = 2 cos kθ

上記6次式は、次のように、二つの3次式の積に分解される:
  y6 − 7y4 + 14y2 − 7 = y6 − 7(y4 − 2y2 + 1) = y6 − 7(y2 − 1)2
   = y6 − (7)2(y2 − 1)2 = (y3)2 − ((7)y2 − 7)2
   = (y3 + (7)y2 − 7)(y3 − (7)y2 + 7)

最後の右辺・第二因子 y3 − (7)y2 + 7 の三つの根を a, b, c とすると、根と係数の関係から、
  a + b + c = 7  ‥‥①
  ab + bc + ca = 0  ‥‥②
  abc = −7  ‥‥③
となり、しかも第一因子 y3 + (7)y2 − 7 の根は −a, −b, −c だ。これら六つの根 ±a, ±b, ±c は、絶対値だけを考えるなら 3 種類の実数だが、符号の違いも考慮すると、どの二つも等しくない(「1 の原始28乗根の 6 種類の実部の 2 倍」が、過不足なく現れる)。当然 a, b, c は、どれも絶対値が異なる。

条件③から、実数 a, b, c の中には負数が奇数個含まれるが、条件①から、 a, b, c の全てが負ではない。従って a, b, c のうち二つが正(そのうち大きい方を a、小さい方を b としよう)、一つが負(c としよう)。つまり a, b は、三つの数 2 cos θ, 2 cos 3θ, 2 cos 5θ のうちのどれか二つで、 c は三つの数 2 cos 9θ = −2 cos 5θ; 2 cos 11θ = −2 cos 3θ; 2 cos 13θ = −2 cos θ のうちのどれか一つ。

a, b, c はどれも絶対値が異なるので(前述)、正の実数 2 cos θ, 2 cos 3θ, 2 cos 5θ のうち二つを a, b として選択すれば、負の実数 c の値は自動的に定まる(−2 cos θ, −2 cos 3θ, −2 cos 5θ のうち −a でも −b でもないものが c)。その事実と条件②から、 a = 2 cos θ, b = 2 cos 3θ, c = −2 cos 5θ であることを確かめるのは、難しくない。実際、 a, b, c をそのように設定した場合、積→和の公式から、
  ab + bc + ca = 4(cos θ cos 3θ − cos 3θ cos 5θ − cos 5θ cos θ)
   = 2(cos 4θ + cos 2θ − cos 8θ − cos 2θ − cos 6θ − cos 4θ) = 0
は、条件②を満たす(−cos 8θ = +cos 6θ)。

〔補足〕 {a, b} の選択肢は三つしかないので(そして a, b を選べば c の選択肢は一つしかないので)、たとえ理論的根拠が曖昧でも、 3 回以内の試行によって正しい解の組み合わせが見つかる。特定の(係数が実数の)3次方程式の解の組み合わせは特定なので、条件を満たす解 a, b, c が見つかった場合、確かめるまでもなく、他の選択肢は条件を満たさない。参考として、あえて確認の計算を行うと: もしも a = 2 cos θ, b = 2 cos 5θ, c = −2 cos 3θ なら、和 ab + bc + ca は、
  2(cos 6θ + cos 4θ − cos 8θ − cos 2θ − cos 4θ − cos 2θ) = 4(cos 6θ − cos 2θ) ≠ 0
になり、もしも a = 2 cos 3θ, b = 2 cos 5θ, c = −2 cos θ なら、和 ab + bc + ca は、
  2(cos 8θ + cos 2θ − cos 6θ − cos 4θ − cos 4θ − cos 2θ) = 4(−cos 6θ − cos 4θ) ≠ 0
になる。どちらの選択肢も条件②に反する。

〔付記〕 一応の理論的考察として Gauß 周期と同様の考え方ができる。 mod 28 の乗法群の要素 {±1, ±3, ±5, ±9, ±11, ±13} について ± の区別を度外視して「六つの対象」と考えるなら、 5 はそれらの生成元; 50, 52, 54 が一つの「3項周期」、 51, 53, 55 がもう一つの「3項周期」。 52 = 25 ≡ −3 なので、前者については、 ± を度外視すると 30, 31, 32 つまり 1, 3, 9 を k とすればいい。もう一つの「3項周期」はその 5 倍、つまり 5, 15 ≡ −13, 45 ≡ −11 の ± を度外視したもの。ここで ± を度外視することは、 zk の虚部の違いを無視することに当たる(Re zk = cos kθ = cos (−k)θ = Re z−k)。

結局、①から 2 cos θ + 2 cos 3θ + 2 cos 9θ = 7 となる。それは y3 − (7)y2 + 7 の三つの根 y = a, b, c の和なので、 y の意味から、 1 の原始28乗根に関する次の等式が成り立つ:
  z1 + z−1 + z3 + z−3 + z9 + z−9 = 7
従って、次の等式も成り立つ:
  z5 + z−5 + z11 + z−11 + z13 + z−13 = −7

第二の等式の導出については、単に第一の等式の両辺を z14 = −1 倍してもいいし、 1 の原始28乗根 12 種の和が 0 であることを利用してもいいし、あるいは y3 + (7)y27 の三つの根 y = −a, −b, −c を考え、第一の等式を得たのと同様の手順を踏んでもいいだろう。これら二つの等式が、補題の内容だ。

4. 3次式 y3 − (7)y2 + 7 の根について。記述の簡潔化のため 7 を ε と略し(よって ε2 = 7, ε3 = 7ε)、
  y3 − εy2 + ε = 0  ‥‥④
を解く。2次の項を除去するため y = Y + ε/3 と置くと、④左辺は:
  (Y + ε/3)3 − ε(Y + ε/3)2 + ε
   = (Y3 + 3Y2ε/3 + 3Y⋅7/9 + 7ε/27) − ε(Y2 + 2Yε/3 + 7/9) + ε
   = Y3 + εY2 + 7Y/3 + 7ε/27 − εY2 − 14Y/3 − 21ε/27 + 27ε/27
   = Y3 − 7Y/3 + 13ε/27
これが④右辺の 0 に等しい。分母を払うため Y = s/3 と置くと:
  s3/27 − 7s/9 + 13ε/27 = 0
両辺を 27 倍して:
  s3 − 21s + 13ε = 0  ‥‥⑤


(※)
Cardano の公式
 s3 + As + B = 0 に
関連する2次方程式、
 t2 + Bt − (A/3)3 = 0
の解が t = α, β ⇒
 s = 3α + 3β
は、3次方程式の解


有理数解がないことは明白なので、 Cardano の公式を使う。関連する2次方程式 t2 + 13εt + 73 = 0 の解を求める。判別式は、
  (13ε)2 − 4⋅1⋅73 = 169⋅7 − 4⋅49⋅7 = (169 − 196)⋅7 = (−27)⋅7 = 32ε2⋅(−3)
なので、2次方程式の解は:
  t = (−13ε ± 3ε−3)/2 = (ε/2)(−13 ± 3−3)
よって⑤の解は:
  s = 3[ε(−13 + 3−3)/2] + 3[ε(−13 − 3−3)/2]
変数を元に戻して:
  Y = (1/3)[3[ε(−13 + 3−3)/2] + 3[ε(−13 − 3−3)/2]]
  ∴ y = (1/3)[3[ε(−13 + 3−3)/2] + 3[ε(−13 − 3−3)/2]] + ε/3
   = ε/3 + (1/6)[3[ε(−52 + 12−3)] + 3[ε(−52 − 12−3)]]
   = 7/3 + (67)/6(3(−52 + 12−3) + 3(−52 − 12−3))

立方根の主値を考えると、この y は、④の最大の実数解 a = 2 cos θ = 2 cos (π/14) に等しい。つまり:

cos (π/14) = sin (6π/14) = sin (3π/7) = sin (4π/7)
   = 7/6 + (67)/12(3(−52 + 12−3) + 3(−52 − 12−3)) = 0.9749279121… (☆)

立方根の非主値に対応する解 c = −2 cos 5θ と b = 2 cos 3θ を、 1/2 倍した形で記す:
  −cos (5π/14) = cos (9π/14) = −sin (/14) = −sin (π/7)
   = 7/6 + (67)/12(ω⋅3(−52 + 12−3) + ω23(−52 − 12−3)) = −0.4338837391…
  cos (3π/14) = sin (/14) = sin (/7)
   = 7/6 + (67)/1223(−52 + 12−3) + ω⋅3(−52 − 12−3)) = 0.7818314824…
ここで ω = (−1 + −3)/2 は 1 の原始立方根。 67 は、常に主値の実数 1.3830875542… を表すものとする。

〔補足〕 −52 + 12−3 = −52 + 20.7846… は、複素平面で第二象限の後半(偏角 135° ~ 180°)にあるので、その立方根の主値(r0 としよう)は 45° ~ 60° の範囲の偏角を持つ。よって r0 に ω の回転(+120°)を与えた結果の複素数 r1 は、第二象限の横軸近くにあり、共役の立方根との和は、絶対値の大きな負の実数を表す。一方、 r0 に ω2 の回転(−120°)を与えた結果の複素数 r2 は、第四象限で縦軸にやや近く、共役の立方根との和は、絶対値の比較的小さい正の実数を表す。これらの実数は (67)/12 倍され (7)/6 = 0.4409… を加算されるため、絶対値の大小が(場合によっては符号も)変わり得る。しかしこの方程式の解の一つ c が負であることは、事前に分かっているので、その負の解は r1 に対応する。

5. 6次式を分解したもう一つの因子 y3 + (7)y2 − 7 の根を、上記と同様に求める。④に当たる式、
  y3 + εy2 − ε = 0
の2次項を消すための置換に含まれる符号は、既述のものと逆になる(y = Y − ε/3)。⑤に当たる式、
  s3 − 21s + 13ε = 0
に関連する2次方程式 t2 − 13εt + 73 = 0 の解は、実部の符号が逆になることを除けば、既述のものと同じ。次の根号表現(主値)に至る。

cos (5π/14) = sin (2π/14) = sin (π/7) = sin (6π/7)
   = −7/6 + (67)/12(3(52 + 12−3) + 3(52 − 12−3)) = 0.4338837391… (☆☆)

関係①から(その両辺を 2 で割ると)、
  cos (π/14) + cos (3π/14) − cos (5π/14) = (7)/2
なので、(☆☆)と(☆)から、次が成り立つ。

cos (3π/14) = sin (4π/14) = sin (2π/7) = sin (5π/7) = (7)/2 + cos (5π/14) − cos (3π/14)
   = 7/6 + (67)/12(3(52 + 12−3) + 3(52 − 12−3) − 3(−52 + 12−3) − 3(−52 − 12−3)) = 0.7818314824…

6. 原理的には、置換 y = x + 1/x を逆にたどることで、 1 の原始28乗根の(実部・虚部両方を含む)根号表現を得ることができる。それは x2 − yx + 1 = 0 を x について解くことだから、実部は y/2 で、上記の通りの cos だ。 y/2 の絶対値は 1 未満、従って y2 の絶対値は 4 未満なので、2次方程式の解の公式に含まれる平方根 ((y2 − 4))/2 は純虚数を表す。その虚部は [1 − (y/2)2] に等しく、 sin kθ を (1 − cos2 kθ) として求めるのと、同じことになる。この方法で、実部に対応する虚部(sin)を表現することは可能だが、必ずしも便利ではない。ここでは、次のように考えた方が話が早いだろう(絶対値において、 1 の原始7乗根の実部に帰着)。
  sin (π/14) = cos (6π/14) = cos (3π/7) = −cos (4π/7)
  sin (3π/14) = cos (4π/14) = cos (2π/7)
  sin (5π/14) = cos (2π/14) = cos (π/7) = −cos (6π/7)

実部と虚部を合わせると、次の通り。

1 の原始28乗根 / Primitive 28-th roots of unity
 T = ((13 + 3−3)/2)1/3 + ((13 − 3−3)/2)1/3
 U = ((−13 + 3−3)/2)1/3 + ((−13 − 3−3)/2)1/3
 V = ((7 + 21−3)/2)1/3 + ((7 − 21−3)/2)1/3
 W = ((−7 + 21−3)/2)1/3 + ((−7 − 21−3)/2)1/3
とすると:
  exp (πi/14) = [7 + (67)U]/6 + i⋅(1 + V − W)/6
  exp (3πi/14) = [7 + (67)(T − U)]/6 + i⋅(−1 + V)/6
  exp (5πi/14) = [7 + (67)T]/6 + i⋅(1 + W)/6
1 の原始28乗根は、各象限に三つずつ、計 12 個。上記の三つの数(第一象限)の実部の符号を変えると、第二象限の三つの数になる。以上六つの数の虚部の符号を変えると、残りの六つの数になる。

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この種の根号表現は、好奇の対象ではあっても、応用上、ほとんど役立たない。 Cardano の簡約不能ケース(一対の共役複素数それぞれの立方根の和として、実数を表す)は、いかんせん、実用性に乏しいのだ。

他方において、 z1 + z−1 + z3 + z−3 + z9 + z−9 のような和を活用する上では、そもそも z や z3 などの根号表現は全く必要ない。文脈によっては、個々の項の具体的数値が問題にならないどころか、 1 の原始28乗根のどれを z としても構わないケースさえ、珍しくない。「具体的な個々の対象はアクセス困難、あるいはアクセス不要。気にせず、そこにある大局的性質・抽象的構造を利用する」というのは、良くも悪くもモダンなアプローチだ。このメモ自体、根号表現の導出が大きな目的であるかのような書き方だが、実際には「目的地」そのものより「そこへ到達する道のり・試行錯誤」を楽しんでる面も大きい!

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