1640年のクリスマスの日、フェルマーはメルセンヌに宛てた手紙の中で、こう言った。
「4の倍数より1大きい全ての素数は、ただ一通りの方法で、2個の平方数の和となります」
例えば 5 = 22 + 12 と書けるし、13 = 32 + 22 と書けるし、17 = 42 + 12 と書けるが、3, 7, 11 は、こういうふうに書けない。フェルマーは、どのような素数 p が x2 + y2 の形を持つか知っていた。
では、どのような p が x2 + 2y2 や x2 + 3y2 の形、一般に x2 + ny2 の形を持つか?
幾つかの n については、比較的簡単に答えを出せる。n = −6 に関しては、次の美しい結果を得た(§6)。
D が 4k + 3 型の素数のとき、いつ x2 − Dy2 = p が成り立つか? …このように範囲を絞ると、ある程度統一的な答えを出せる(§5)。ただし、同じタイプに見えても D = 79 は「規則」に従わない。79 の何がそんなに例外的なんでしょ?
p を 3 以上の素数とするとき、次が成り立つ。
フェルマーのクリスマス定理(2平方の定理):
証明: もし x2 + y2 = p を満たす整数 x, y が存在するなら、p ≡ 1 (mod 4) が成り立つ。なぜなら、偶数の平方は ≡ 0 (mod 4)、奇数の平方は ≡ 1 (mod 4) だから、x, y を「偶・偶」「偶・奇」「奇・偶」「奇・奇」のどれにしても、x2 + y2 ≡ 3 (mod 4) にはならない。p は 3 以上の素数なので p ≡ 0, 2 (mod 4) も不可能。
逆に p ≡ 1 (mod 4) が成り立つなら、下記(☆)の理由から、単数ではないガウス整数 α, β が存在して p = αβ と分解される。
ガウス整数とは、x + yi の形の複素数(x, y は普通の整数)。単数とは「1 の約数」で、この場合 ±1, ±i のこと。単数ではないという限定は、p = (−1)(−p) のような「分解」は分解とは認めない…ということ。認めると、いつでも分解は可能で、分解できる・できないを考える意味がないので。p = αβ というのは、「ガウス整数として、p は分解できない素数ではなく、合成数だよ!」という意味を持つ。
α = x + yi, β = x′ + y′i と置く(x, y, x′, y′ は普通の整数)。p = αβ なので:
両辺をそれぞれ共役複素数に置き換えると:
実数 p の共役複素数は p 自身。「積の共役複素数」は「それぞれの共役複素数の積」。
辺々掛け合わせると:
この右辺の2因子は、どちらも正の整数で積が p2(素数の2乗)なので、両方 p に等しいか、または一方が 1 で他方が p2 に等しい。けれど α, β は単数ではないので、x2 + y2 も x′2 + y′2 も 1 ではない。だから、どちらも p。すなわち x2 + y2 = p が成り立つ。これが証明したいことだった。□
β = p/α = (x2 + y2)/(x + yi) = x − yi なので、x′ = x, y′ = −y が成り立つ。途中で共役複素数を使ったが、α, β 自身も共役複素数のペア。当然 x′2 = x2, y′2 = y2 なので x′2 + y′2 = p でもあるが、p を「平方数の和」として書く方法が2通り見つかるわけではない。
<例> 素数 13 は、ガウス整数としては、次のように分解される:
このことから 13 = (3 + 2i)(3 − 2i) = 32 + 22 となる。
(☆) p ≡ 1 (mod 4) を満たす任意の素数 p について、単数ではないガウス整数 α, β が存在して p = αβ が成り立つ。
証明のようなもの: 第一補充法則により、p ≡ 1 (mod 4) なら −1 は p を法とする平方剰余。つまり、普通の意味での整数 r が存在して
が成り立つ。つまり r2 + 1 は p で割り切れる。
ところが、r2 + 1 = (r + i)(r − i) であり、この右辺の2因子は、どちらもガウス整数。この積が p で割り切れるのだから、もし仮に p がガウス整数としても素数なら、ガウス整数 r + i または r − i が p で割り切れるはず(注1)。しかし、それは不可能(無理やり割っても、結果の r / p + (1 / p) i などは、ガウス整数にならない)。従って p は、ガウス整数としては、素数ではない。
p は、ガウス整数として、もちろん単数ではない。
素数でも単数でもないのだから、p は、ガウス整数として合成数だろう(注2)。合成数なら、当然、2因子 α, β の積に分解される。□
(注1) これは「2整数 A, B の積 AB が素数 q で割り切れるなら、A または B が q で割り切れる」という性質(普通の整数の世界では当たり前)に基づく。むしろ逆に「そういう性質を持つ数 q を素数と呼ぶ」と定義しよう(ただし単数と 0 は素数ではないとする)。
(注2) 0 は別として「素数でも単数でもない整数は合成数」と考えている。ガウス整数の世界では、この「常識」は正しい。
<例> mod 13 の場合、82 = 64 ≡ −1 (mod 13) なので r = 8 だが、
が 13 の倍数なのに、8 + i も 8 − i も 13 で割り切れない(無理やり割っても、結果はガウス整数にならない)。なぜそんなことになるか、といえば、ガウス整数の範囲では
と分解され、13 は「合成数」だから。8 + i も 8 − i も 13 では割り切れないけど、合成数をばらした α, β で割り切れる:
p = αβ は単に「因数」分解というだけでなく、実はガウス整数としての「素因数」分解になっている――ガウス整数の素因数分解では、普通の整数の素因数分解と同様、分解の仕方が一通りに定まる(証明)。すなわち、特定の素数 p が与えられたとき、可能な α, β の選択は(順序と単数倍の違いを無視して)一通りだけ。従って x, y は(順序と符号の違いを無視して)ただ一通りに定まる。
フェルマーは正しかった!
「ガウス整数」の発見は約200年も未来の話だが、1640年の時点で、フェルマーは「誰も知らない世界」の影を見ていた。さぞかし、うっとりしただろう。さぞかし孤独だっただろう…。ちなみに、その頃ガリレオは、太陽系の構造を見抜いた「罪」で発禁処分を食らい、自宅監禁されていた。
参考: クリスマス定理とイースター定理
§1 の証明の鍵は「−1 が法 p の平方剰余」という条件だった(※注)。それが成り立つなら
となり、この2因子の積は p で割り切れる。ところが、ガウス整数の世界において、2因子のどちらも p で割り切れない。だからガウス整数として p は素数ではなく、p = αβ と分解されるはず…と推論され、この分解について実部と虚部を考えたら、自然に結論が得られた。
この証明の −1 を −2 や +2、一般に整数 D で置き換えることができれば、以下のように、ほとんど同じ流れで x2 − Dy2 = p についての結果が得られる(オリジナルのクリスマス定理は D = −1 に当たる)。
(※注) 話を簡単にするため、§1 では p を 3 以上の素数に限った。実際には、p = 2 も2平方の和で書ける(12 + 12)。そして p = 2 を法として −1 ≡ 1 = 12 は平方剰余。すなわち、§1 の鍵となる性質は、任意の素数について成り立つ。
【1】 命題1: D を整数、p を素数とする。D が 法 p の平方剰余なら、x2 − Dy2 = p は、整数解を持つ。
この命題は常に成り立つわけではなく、成立条件には微妙な問題が絡んでいる(後述)。§1 の(☆)に当たる部分は…
D が法 p の平方剰余なら、通常の整数 r が存在して:
このとき r2 − D = (r + √D)(r − √D) という分解が成り立つ。ガウス整数の場合と同様に、
の形の数を「この世界の整数」と考えて、その(新しい意味での整数の)全体を ℤ[√D] と呼ぶことが許されるなら、上記は ℤ[√D] における r2 − D の因数分解。そしてこの整数は p の倍数。§1 と同様に考えると…
【2】 α = x + y√D, β = x′ + y′√D と置いて、§1 と同じように進める。ただし x + y√D の共役数は x − y√D だと約束する。
最後の式の右辺の2因子は、どちらも整数で、積が p2 に等しい。そして「一方が 1 で他方が p2」という可能性はない(α, β は単数ではないので)。D < 0 の場合、2因数とも正なので、どちらも p に等しい。D > 0 の場合には、両方 p かもしれないが、両方 −p かもしれない。いずれにしても、第1因数が p または −p に等しいのだから、次が成り立つ:
拡張クリスマス定理: ℤ[√D] が「常識的」な世界になるように、D の値を選んだとする。このとき p を法として D が平方剰余なら:
ここで「解」というのは、通常の整数の範囲での解(有理整数解)のこと(以下同じ)。
D > 0 の場合、2種類の方程式を併記する代わりに、絶対値記号を付けて | x2 − Dy2 | = p に解がある…と言うこともできる。
−p = x2 − Dy2 については、両辺を −1 倍すれば p = Dy2 − x2 と同じことで、未知数の名前を入れ替えれば、p = Dx2 − y2 とも書ける。
【3】 「常識的」とは? まず D が平方数 0, 1, 4, 9, … なら x + y√D の形の元全体は「通常の整数全体」と全く同じ。証明の枠組みとなる「新しい整数」の世界が定義されない。D が平方因子を含む場合も、例えば √8 = 2√2 なので D = 8 の世界は D = 2 の世界の一部にすぎず、新しい世界にならない。これらについては、一応最初から除外しておく。
その上で、ℤ[√D] において素因数分解が一意的(一意分解性を持つ)ということが条件となる。つまり「その世界では、素数でも単数でもない数は、本質的にただ一通りの方法で、素数の積に分解される」。一つの素因数分解があるとき、「その掛け算の順序を変えただけの積」や「全体が 1 倍されるように幾つかの素因数に単数を掛けただけの積」は、本質的に同じ分解と見なされる。
<駄目な例> ℤ[√−5] では 6 = (1 + √−5)(1 − √−5) という分解が成り立つが、6 = 2 × 3 でもある。これらは本質的に異なる2種類の分解。一意分解性が成り立っていない。このとき、6 = (1 + √−5)(1 − √−5) は 2 で割り切れるが、その因数の 1 + √−5 も 1 − √−5 も 2 では割り切れない。従って、定義上、ℤ[√−5] において 2 は素数ではない…。だからといって「この世界では 2 がさらに分解可能」というわけではなく、2 は「合成数」でもない。こういう状況では「p が素数ではないなら p = αβ と書ける」という常識が崩れる。
【4】 結局、ℤ[√D] が一意分解性を持つ場合には、命題1は大筋正しい。ただし D > 0 のときは、上記のように2種類の方程式をセットで考えて「どちらかに解がある」と言う必要がある。
<例1> D = 3 とする。ℤ[√3] は一意分解性を持つことが、知られている。p = 11 を法として 3 は平方剰余(r = 5)なので、x2 − 3y2 = 11 に解があるか、または 3x2 − y2 = 11 に解がある。
検証: x = 2, y = 1 は第2式を満たす。この例では、第1式には解がない。
<例2> D = −5 とする。上記のように ℤ[√−5] は一意分解性を持たない。従って、−5 が法 p の平方剰余だからといって、x2 + 5y2 = p が解を持つとは限らない。例えば p = 7 を法として、−5 ≡ 2 は平方剰余(r = 3)だが x2 + 5y2 = 7 は解を持たない。
D を整数、p を 素数とする。§2 によると、一定条件下で
が成り立つ(拡張クリスマス定理)。逆は、無条件で成り立つ:
証明: ±p = x2 − Dy2 に解があるとする。このとき:
後述の理由により y ≢ 0, y2 ≢ 0 (mod p) なので、(3.1) の両辺を y2 で割って、次のように変形できる。
ここで −1 乗は、mod p での逆数(乗法逆元)を表す。(3.2) で r = xy−1 と置くと、r2 ≡ D (mod p) なので、確かに D は平方剰余。
y2 ≢ 0 (mod p) すなわち y ≢ 0 (mod p) の保証がないと、上記の計算は許されない。しかし、もし仮に y ≡ 0 (mod p) なら、(3.1) から x2 ≡ 0 (mod p) となり、すなわち x ≡ 0 (mod p) となる。これは x, y の両方が p の倍数ということで、そうなると ±p = x2 − Dy2 の右辺は p2 の倍数。左辺は p2 の倍数ではないので、これは不合理。従って y ≢ 0 である。□
この証明では、一意分解性に関する仮定は使われていない。ℤ[√D] に一意分解性があってもなくても、p = | x2 − Dy2 | が解を持つなら D は平方剰余…と言い切れる。
例えば D = −5 の ℤ[√−5] では一意分解が成り立たないが、それと無関係に、以下の主張は正しい。
<例1> x2 + 5y2 = 29 は解を持つ(x = 3, y = 2)。従って、−5 は法 29 の平方剰余でなければならない。
検証: y−1 ≡ 15 (mod 29) に注意すると、r = xy−1 ≡ 45 ≡ 16 (mod 29)。確かに 162 = 256 ≡ −5 (mod 29)。
<例2> −5 (mod 17) は平方非剰余。従って、x2 + 5y2 = 17 は解を持たない。
検証: | y | = 0 or 1 なら x2 = 17 or 12 で解なし。| y | ≥ 2 なら左辺は 20 以上で大き過ぎる。
もしくは与式を mod 5 で考えると x2 ≡ 2 となるが、これは解なし。
【1】 ℤ[√2] では一意分解が成り立つことが、知られている。従って、拡張クリスマス定理が成り立つ(定理の逆は、常に成り立つ):
<例1> 2 は法 7 の平方剰余(r = 3)なので、x2 − 2y2 = 7 または 2x2 − y2 = 7 は、解を持つ。実際には、両方の式が解を持つ:
「2因子の積の形」を付記したのは、上の式と下の式は「本質的に同じ分解に基づいている」ことを示すため。今、ℤ[√2] の2元 ε = 1 + √2, ε′ = 1 − √2 を考えると、これらは εε′ = −1 を満たすので、両方とも 1 の約数、つまり単数。上記2通りの分解は、1 + 2√2 = (3 − √2)ε, 1 − 2√2 = (3 + √2)ε′ という関係になっている。
【2】 「ある数と、その共役数の積」をその数のノルムと呼ぶことにすると、
については、3 − √2 のノルムの計算、とも解釈できる。または(同じことだが)それと共役の 3 + √2 のノルムの計算。この(互いに共役の)2因子に、それぞれ ε, ε′ を掛けたら、どうなるだろうか。ε, ε′ は、どちらもノルムが −1 であり、結果の
については、今度はノルム −7 を求める計算とも解釈できる(αε のノルムは、α のノルムと ε のノルムの積)。
一般に、x2 − 2y2 = p の1組の整数解 x = n, y = m が得られたとき、α = n + m√2 を「その解に対応する数」と呼ぶなら、
は、x2 − 2y2 = −p の解に対応する数。要するに x = n + 2m, y = n + m は、x2 − 2y2 = −p の1組の解。
例1の第1式において、x2 − 2y2 = 7 の解に対応する一つの数は α = 3 + (−1)√2。この数は x = 3, y = −1 という解に対応している(もちろん x = 3, y = 1 も解なので、α の代わりに β = 3 + √2 を考えても構わない)。αε = 1 + 2√2 は、x2 − 2y2 = −7 の解 x = 1, y = 2 に対応する数。
結局、x2 − 2y2 = p の解が得られたら、機械的な計算で x2 − 2y2 = −p の解も得られる。逆に後者の解を出発点として、前者の解を得ることも容易。x2 − Dy2 = p と Dx2 − y2 = p は異なる方程式だが、D = 2 の場合、両者の解はこの関係で結び付いていて(※注)、一方に解があれば必ず他方にも解がある。従って D = 2 に関して解の有無を問題にする場合、2種類の式を「または」と併記するのは冗長で、どちらか一方だけを考えれば十分。
(※注) x2 − 2y2 = −p は、未知数の名前を入れ替えれば 2x2 − y2 = p と等価(§2【2】)。
【3】 第二補充法則によると、「2 が法 p の平方剰余」ということは、p ≡ 1, 7 (mod 8) と同値。上記のことと合わせると、定理の内容は次のように整理される:
<例2> 17 ≡ 1 (mod 8) なので、p = 17 のとき、上記の式には解がある(x = 5, y = 2)。19 ≡ 3 (mod 8) なので、p = 19 のときには解なし。
共役な2因子にそれぞれ ε = 1 + √2, ε′ = 1 − √2 を掛ければ、積の符号が反転する。同じことを2回繰り返した場合、積の値は元に戻るが、式の形は元に戻らない。
同じことを2回・3回…と繰り返せば、見掛け上「新しい」解を粗製乱造できる:
数の並び方が、フィボナッチ数列みたいだ!
これらの積の値(すなわち因子のノルム)は ±7。もし仮に因子がさらに分解されるなら、ノルムも(通常の整数の範囲で)さらに分解されるが、このノルムの絶対値は素数なので、それは不可能。
例1では、7 が2通りに分解されていた。すなわち ℤ[√2] においては、7 は素数ではなく、分解可能。他方、7 を分解して出てきた2因子のそれぞれは、それ以上は分解不可能。2通りの分解は、単数倍の違いを無視すれば、本質的に同じものだった。
上で粗製乱造されている分解は、どれも単数倍の違いしかなく、全部本質的に同じもの。言い換えると、ε の2乗・3乗…などは全部別の単数:
何乗かすると 1 に戻るわけではない!
(a + b√2)(1 + √2) = (a + 2b) + (a + b)√2 なので、a + b√2 に ε を掛けたとき、√2 の新しい係数は a + b。
c = a + b と置くと、新しい「整数部分」は、a + 2b = b + (a + b) = b + c。
というフィボナッチ数列風の計算になる。ただし、(1 + 2√2)ε は 5 + 3√2 であり、3 + 5√2 ではない。本物のフィボナッチ数列と比べると、項の現れる順序が逆。そのため、最初の数行はフィボナッチ数列のように見える場合でも、結局はフィボナッチ数列とは別のパターンになる。
ノルムを使うと、クリスマス定理の証明の核心部を2行で要約できる。すなわち、p = αβ の左辺のノルムは p2 なので、α, β は、どちらもノルム p を持つ。α = x + yi と置くと、p = N(α) = x2 + y2。…ここで記号 N(α) は α のノルム。拡張クリスマス定理についても同様だが、その場合、ノルムは −p かもしれない。
【4】 ℤ[√−2] でも一意分解が成り立つことが、知られている。従って、素数 p について:
「−2 が法 p の平方剰余」ということは、−2 ≡ 0 (mod p) であるか、または、ルジャンドル記号を使って書くと ( −2 / p ) = 1。
−2 ≡ 0 (mod p) になるのは p = 2 の場合に限られ、このとき x2 + 2y2 = 2 は自明解 x = 0, y = 1 を持つ。
一方、( −2 / p ) = ( −1 / p )( 2 / p ) = 1 ということは:
第一補充法則・第二補充法則から、この「または」の前は p ≡ 1 (mod 4) かつ p ≡ 1, 7 (mod 8) と同値。すなわち p ≡ 1 (mod 8) と同値。「または」の後ろは p ≡ 3 (mod 4) かつ p ≡ 3, 5 (mod 8) と同値。すなわち p ≡ 3 (mod 8) と同値。従って (4.2) は、
と同値。結局、(4.1) は、
という意味を持つ。言い換えれば:
<例3> p = 17 は、8 で割って 1 余るので、この形で書ける(x = 3, y = 2)。p = 19 は、8 で割って 3 余るので、この形で書ける(x = 1, y = 3)。p = 7 や p = 13 は、この形では書けない。
【1】 ℤ[√3] も一意分解が成り立つ世界(一意分解整域)であることが、知られている。従って、素数 p について:
<例1> x2 − 3y2 = 13 は解を持つ(x = 4, y = 1)。だから ( 3 / 13 ) = 1 のはず。検証: ( 3 / 13 ) = ( 13 / 3 ) = ( 1 / 3 ) = 1。
<例2> ( 3 / 23 ) = −( 23 / 3 ) = −( 2 / 3 ) = −(−1) = 1。だから x2 − 3y2 = 23 または 3x2 − y2 = 23 が解を持つはず。検証: x = 3, y = 2 は第2式を満たす。
x, y はそれぞれ偶数または奇数なので、x2 も y2 も ≡ 0 or 1 (mod 4)。4パターンの偶奇の組み合わせを考えると:
p は素数なので p ≡ 0 (mod 4) にはならない。p ≡ 2 (mod 4) の場合、つまり p = 2 のときは、両方の式が成り立ち得る。
p が 2 以外なら、p ≡ 1 (mod 4) か p ≡ 3 (mod 4) かによって、成り立ち得る式は (5.1) と (5.2) のどちらか一方に限られる:
【2】 p = 3 は (5.4) の特別な場合(p = D)。法 p = 3 において 3 ≡ 0 は(自明な)平方剰余なので、3x2 − y2 = 3 に解がある(自明解 x = 1, y = 0)。
p を 3 以外の素数とする。平方剰余の相互法則によると、「3 は法 p の平方剰余」ということは、次の意味を持つ:
mod 3 では 1 が平方剰余、2 が非剰余なので、( p / 3 ) = 1 なら p ≡ 1、( p / 3 ) = −1 なら p ≡ 2。この他、0 も(自明な)平方剰余だが、p ≡ 0 となる素数は p = 3 だけで、既に除外されている。
(5.3) と (5.5)、(5.4) と (5.6) をそれぞれ組み合わせると、5 以上の素数 p について:
p が 12 の倍数より 1 大きければ第1式に解あり。逆も成り立つ。p が 12 の倍数より 1 小さければ第2式に解あり。逆も成り立つ。上記の例1・例2も、そうなっている。5 以上の素数 p がこれ以外の形を持つなら、どちらの方程式にも解がない。
歯切れのいい結果が得られた!
p = 3 の場合には、上述のように、第2式(だけ)に自明解がある。p = 2 の場合については、まだ答えが出ていない。
【3】 (5.1), (5.2) は、係数 3 を任意の整数 D ≡ 3 (mod 4) に置き換えても、そのまま成り立つ。
このとき、ℤ[√D] が一意分解整域という条件の下で、上記と同じ理屈から、(5.3), (5.4) に当たるものも、そのまま成り立つ。2 以外の素数 p について:
この二つの ⇔ のうち、⇒ の部分は無条件に成立。⇐ の側に、ℤ[√D] の一意分解性に関する前提条件が付く。D が 4n + 3 型の小さい素数の場合(D = 3, 7, 11, 19 など)、大抵この前提条件が満たされることが、知られている。
<例3> x2 − 7y2 = 19 に解があるか。これは (5.3*) で D = 7, p = 19 としたもの。解があるためには p ≡ 1 (mod 4) が必要。p = 19 はこれを満たさないので、答えはノー。
<例4> 7x2 − y2 = 19 に解があるか。これは (5.4*) のケース。p ≡ 3 (mod 4) を満たしているので、( 7 / 19 ) = 1 なら解がある。( 7 / 19 ) = −( 19 / 7 ) = −( 5 / 7 ) = −( 7 / 5 ) = −( 2 / 5 ) = −(−1) なので、答えはイエス。検証: x = 2, y = 3 は与式を満たす。
【4】 残ったのは p = 2 のケースだが、その場合 (5.1*), (5.2*) の両方が成り立ち得る。D ≡ 3 (mod 4) かつ D が素数の場合に限定して、
を mod D で考えると、第1式・第2式はそれぞれこうなる:
このうち ( −1 / D ) = −1 の部分は、第一補充法則による。mod 8 の部分は、第二補充法則を単純に適用するなら、上が D ≡ 1, 7 (mod 8)、下が D ≡ 3, 5 (mod 8) だが、D ≡ 3 (mod 4) という前提なので、どちらも2種の剰余類の一方のみが、条件に合う。
まとめると:
この mod D での議論は単なる平方剰余の話で、一意分解性とは関係ない。D が 4n + 3 型の素数である限り、無条件に成り立つ。
<例5> 11x2 − y2 = 2 に解があるか。11 ≡ 3 (mod 8) なのでイエス。検証: x = 1, y = 3 は与式を満たす。
<例6> x2 − 11y2 = 2 に解があるか。11 ≢ 7 (mod 8) なのでノー。検証: 与式を mod 11 で考えると x2 ≡ 2 だが、x = 1, 2, 3, 4, 5 のどれを入れても、これは不成立。
<例7> x2 − 79y2 = 2 に解があるか。79 ≡ 7 (mod 8) なのでイエス。実は ℤ[√79] は一意分解整域ではないが、79 は 4n + 3 型の素数なので、この部分に関しては全く同様に振る舞う。検証: x = 9, y = 1。
D = 3 の場合、D ≡ 3 (mod 8) なので、p = 2 のとき第2式(だけ)に解がある(x = 1, y = 1)。この結論と【2】の結論を合わせると、任意の素数 p について、次が成り立つ。
【5】 D が 200 以下の 4n + 3 型の素数の場合について、数値的に実験してみると:
<例8> D = 3, 7, 11, 19, 23, 31, 43, 47, 59, 67, 71, 83 のとき x2 − Dy2 = 5 の解の有無は、厳密に (5.3*) に従う。もし同じパターンに従うなら、D = 79 ≡ 4 (mod 5) は法 5 の平方剰余なので x2 − 79y2 = 5 は解を持つはず。実際には、解なし。
この場合「解がないこと」を証明するのは、簡単ではない。単純に「一定範囲(例えば x, y の絶対値1万以下)に解はない」ことを確認するだけでは、「その範囲外に解があるかも」という疑いが残る。さいわい、拡張ペル方程式(generalized Pell equation)に関連して「この範囲に解がなければ、どこにも解はない」という不等式があって、その範囲を全部調べることができれば、解の有無が確定する。その方法によると、確かに解がない!
別記事「妖精の森 ♌ ペル方程式の夏」の第5章(§19)で、x2 − Dy2 = 5 が整数解を持たないことを確かめる。
どのような素数 p が、x2 − 3y2 = p や x2 − 7y2 = p や x2 − 11y2 = p などの形で書けるか。一般に、4n + 3 型の素数 D について、どのような p が、x2 − Dy2 = p または Dx2 − y2 = p の形を持つか。
フェルマーのクリスマス定理を少し拡張したこれらの問いに、ある程度、明快な答えを出すことができた。けれど、デリケートで不透明な前提条件が絡んでいる。x2 − 79y2 = p は同じ形の式(79 は 4n + 3 型の素数)なのに、同じ規則に従わない。ℤ[√79] が一意分解整域ではないからだが、なぜ D = 67, 71, 83 のときには一意分解整域になり、D = 79 だと「駄目」なのか。D = 67, 71, 83 などは、何がそんなに「良い」のか。…深いレベルに何か秘密があるのだろうが、表面的には、神秘のベールに包まれている。いつか徹底的に探求する必要がありそうだ。
数値実験によると、1000 以下の 4n + 3 型の素数のうち、D = 79, 223, 359, 439, 443, 499, 659, 727, 839 が、上記の意味で「駄目」と予想される。このうち 499, 659 以外は n2 ± 2 の形を持つ(例えば 79 = 92 − 2)。この形に、何か意味があるのだろうか。同じ形を持っていても D = 7, 23, 47, 83 などは「良い」のだから、もしかすると意味のない偶然かもしれないが…。
D = 3 のケースは完全解決したものの、全体としては、むしろ謎が増えてしまった!
ℤ[√6] も一意分解性を持つことが、知られている。この場合、x, y の偶奇で x2 − 6y2 = p と 6x2 − y2 = p を区別しようとしても、どちらも p ≡ 0, 1, 2, 3 (mod 4) となってしまい、何の手掛かりも得られない。しかし mod 3 か mod 6 で考えれば、係数が ±6 の項を消すことができる。一般論として、法が素数の方が扱いやすいので、mod 3 で分類してみる。
【1】 p が 3 以外の素数なら:
これによると、どちらかの式に解があるとすれば、p を 3 で割った余りによって、どちらに解があるか決まる(一方だけが解を持つ)。解の有無それ自体は、もちろん「6 が法 p の平方剰余か非剰余か」によって決まる。
【2】 p = 3 つまり p ≡ 0 (mod 3) の場合には、第1式は x2 ≡ 0 (mod 3) となり、第2式は y2 ≡ 0 (mod 3) となるので、どちらが成り立ってもおかしくない。法 3 で 6 ≡ 0 は(自明な)平方剰余なので、解があることは確か。
この場合、第1式が成り立つなら x ≡ 0 (mod 3)、すなわち x は 3 の倍数。x = 3n と置くと:
これは y ≡ 1 (mod 3) という解を持つ。安直に y = 1 を試すと
となって、第1式の解が得られる。
一方、第2式が成り立つなら y ≡ 0 (mod 3)、すなわち y は 3 の倍数。y = 3n と置くと:
これは解を持たないので、第2式は不成立。結局、この場合も、2種類の式の一方だけが解を持つ。
【3】 6 が法 p の平方剰余ということは、p = 2, 3 または ( 6 / p ) = 1。p = 2 の場合、(6.2) のケースなので、第2式が解を持つ。p = 3 の場合、今確かめたように第1式が解を持つ。
p = 2, 3 が片付いたので、ここからは p が 5 以上の素数の場合に話を絞る。
このうち ( 3 / p ) の値は、下記(☆☆)の理由から、p ≡ ±1 ≡ 1, 11 (mod 12) なら 1、p ≡ ±5 ≡ 5, 7 (mod 12) なら −1(逆も成り立つ)。これを ( 2 / p ) の値と組み合わせて整理すると:
これを (6.1), (6.2) の分類と組み合わせると、次の結論が得られる。
なかなか美しい!
というか、ホントにこんな小粋な形になるのだろうか…。数値的に検証してみましょう。
明らかな反例は見つからない。どうやら、これで合ってるらしい!
第1式・第2式は、もともと「同じ式 = ±p」に当たるので(§2【2】)、このように +p 側の条件と −p 側の条件が「符号だけ逆」になるのは、当たり前かもしれない。
D = 7, p > 7 の場合、第1式・第2式が解を持つ必要十分条件は、それぞれ p ≡ +1, −3, +9 と p ≡ −1, +3, −9 (mod 28)。D = 11, p > 11 の場合、それぞれ p ≡ +1, +5, −7, +9, −19 と p ≡ −1, −5, +7, −9, +19 (mod 44)。やはり2種類の条件に現れる数値は、絶対値が同じで符号が逆(絶対値がなるべく小さい整数を使って、剰余類を表した場合)。
これら二つの場合、( D / p ) = 1 を解いたもの、すなわち (6.3) に当たる条件は、p ≡ ±r, ±r′, … (mod 4D) の形を持つ。±r のように複号が付くのは「平方するから、符号はどっちでもいいので」。法の大きさが、もともとの D の 4 倍なのは「ひっくり返すときの場合分け」が mod 4 なので。…この複号の一つ一つについて、≡ 1 (mod 4) になるように符号を選ぶと第1式の条件、逆の符号を選ぶと第2式の条件が得られる。なぜなら、複号の後ろの r などはどれも偶数ではないので +r ≢ −r (mod 4) であり、+r と −r の一方は ≡ 1、他方は ≡ 3 (mod 4) となって、それぞれ (5.3*), (5.4*) に従う。
D = 6 の場合も同様: 複号の符号の一方は ≡ 1 (mod 3)、他方は ≡ 2 (mod 3)。
この遊びが面白そうだと感じた方は、別の D について試してみるといいかもしれない。D = 14, 21, 22 などに対しても拡張クリスマス定理が成り立つはずなので…
(☆☆) 「第三」補充法則: 3 より大きい素数 p について(参考: 相互法則の簡単な紹介):
証: ( 3 / p ) をひっくり返して ( p / 3 ) にすれば、直接計算できる。相互法則から、ひっくり返した場合の符号は p (mod 4) によって異なる。
① p ≡ 1 (mod 4) すなわち p ≡ 1, 5, 9 (mod 12) のとき:
法 12 で p ≡ +1 と p ≡ +5 のとき、( 3 / p ) はそれぞれ 1 と −1 になる。素数なので p ≡ 9 (mod 12) にはならない。
② p ≡ 3 (mod 4) すなわち p ≡ 3, 7, 11 (mod 12) のとき:
法 12 で p ≡ −1 と p ≡ −5 のとき、( 3 / p ) はそれぞれ 1 と −1 になる。3 より大きい素数なので p ≡ 3 (mod 12) にはならない。□
【1】 補題1: q が 3 以上の整数なら、x2 + qy2 = 2 は整数解を持たない。
証: y = 0 なら左辺は平方数、y ≠ 0 なら左辺は q 以上。いずれにしても 2 ではない。□
任意の整数は ≡ 0 or 1 (mod 2) であり、すなわち ≡ 02 or 12 (mod 2) なので、法 2 の平方剰余。従って、D ≤ −3 かつ p = 2 の場合、前提条件を無視して拡張クリスマス定理を無理やり使うと「解あり」と判定される。補題1により、真相は「解なし」。
拡張クリスマス定理によれば:
この命題の対偶と補題1により、D ≤ −3 なら ℤ[√D] は一意分解整域ではない。
結局、D ≤ −3 のときには定理の前提条件が満たされず、定理を使えない(この他、D > 3 のときも、一般には定理を使えない)。例えば D = −3 の x2 + 3y2 = p について考えたい場合、他のアプローチが必要になる。
【2】 拡張クリスマス定理の逆は常に成り立つ:
拡張クリスマス定理そのものが成り立たない場合(すなわち ℤ[√D] が一意分解整域ではない場合)でも、適切な付帯条件があれば ⇔ になる:
D = −3 の場合の付帯条件を考えると、補題1から、少なくとも p = 2 のケースを除外することが必要。この場合、実は、それだけで十分:
「−3 が法 p の平方剰余」ということは、p = 3 または ( −3 / p ) = 1。p = 3 の可能性をひとまず除外すると:
「第一補充法則の符号の違い」と「ひっくり返すときの符号の違い」が打ち消し合って、どちらの場合も「p が法 3 の平方剰余」という同じ結論になる。付帯条件から p ≢ 2 (mod 4) なので、以上で(p = 3 以外の)全ての可能性がカバーされている。結局、(7.1) の代わりに
を証明してもいい。
今回はこの先には立ち入らないが、ℤ[√−3] の代わりに少しだけ違う別の世界を考えると、(7.2) が自然に得られる。
数値的に調べると、D = −7 の場合にも同様の状況が予想される:
【3】 D = −5 は少し難しい。例えば p = 7 のとき ( −5 / p ) = 1 だが x2 + 5y2 = p は解を持たない。この場合、もはや p ≠ 2 という付帯条件だけでは十分ではない。
実際、(5.1*) で見たように x2 + 5y2 は ≡ 0, 1, 2 (mod 4) にしかならず、p = 7 ≡ 3 (mod 4) には等しくなり得ない。一般に:
補題2: x2 + 5y2 = p が解を持つとすれば、p ≡ 1 (mod 4) の場合に限られる。
証: 素数なので p ≡ 0 (mod 4) は不可能。補題1より、x2 + 5y2 から p = 2 を作れないので、≡ 2 (mod 4) も不可。(5.1*) より ≡ 3 (mod 4) も不可。□
x2 + 5y2 = p が解を持つなら −5 は法 p の平方剰余であり、従って p = 5 または
となるが、この最後の「または」の後ろは p ≡ 3 (mod 4) を含意し、補題2の条件に合わない。すなわち p ≠ 5 が x2 + 5y2 の形を持つなら、「または」の前の ( −1 / p ) = ( p / 5 ) = 1 が成り立たなければならない。これは p ≡ 1 (mod 4) かつ p ≡ 1, 4 (mod 5) と同値であり、補題2の条件にも合う。
整理すると、x2 + 5y2 = p が解を持つためには、p = 5 か p ≡ 1, 9 (mod 20) であることが必要。では、それで十分か?
p = 5 のとき、x2 + 5y2 = p は自明解 x = 0, y = 1 を持つ。問題は:
p ≡ 1, 9 (mod 20) 型の最初の5個の素数は 29, 41, 61, 89, 101 で、いずれも x2 + 5y2 の形を持つ:
もっと先まで試すと「p ≡ 1, 9 (mod 20) なら解あり」と予想されるが、その証明は簡単ではない。
【4】 最後に「クリスマス定理の一般化は一筋縄ではいかない」という雰囲気を伝えるため、2個の命題を引用する。
命題A: 素数 p について、x2 + 27y2 = p が整数解を持つなら、p ≡ 1 (mod 3) かつ 2 は法 p の立方剰余。逆も成り立つ。
p ≡ 1 (mod 3) という条件は、D = 6 の場合と同様の方法で証明可能。もう一つの条件として、立方剰余が絡んでいる。平方剰余関連のテクニックだけでは、この命題には到達できない。
<例1> 素数 p = 43 を x2 + 27y2 の形で書くことができる(x = 4, y = 1)。このとき、43 ≡ 1 (mod 3) であり、しかも z3 ≡ 2 (mod 43) が解を持つ(z = 20)。
<例2> 31 ≡ 1 (mod 3) かつ 43 ≡ 2 (mod 31) は立方剰余。ゆえに x2 + 27y2 = 31 に解あり(x = 2, y = 1)。
これらの場合でも、拡張クリスマス定理の逆は成立。例1では、法 43 で −27 ≡ 16 は平方剰余。例2では、法 31 で −27 ≡ 4 は平方剰余。
命題B: 14 より大きい素数 p について:
これは、さらに複雑な例。半分は D = −14 における拡張クリスマス定理の形をしているが、付帯条件は立方剰余どころか、剰余に関する4次式。具体例として、p = 23 のとき、方程式に解がある(x = 3, y = 1)。このとき 32 = 9 ≡ −14 (mod 23) は確かに平方剰余。そして4次式には (32 + 1)2 = 100 ≡ 8 (mod 23) という解がある。
証明抜きに結論だけ見ても、難しそう…。でも、面白そうだ!
〔追記〕 x2 + 64y2 の形の素数は四乗剰余に関係するが、初等的なアプローチが存在する(Dirichlet の美しい証明)。
ガウス整数の丘から見渡して、2平方の定理を「自明」と言い切る小気味よさ。計算練習のつもりで D = 6 を試したら、結果は予想外に美しく、見とれてしまった。ささいなこと、理由が分かれば当たり前のことでも、自分で見つけたものは印象深い。
丘に登って、今まで見えなかった景色がよく見えたとき、逆に「自分が登った場所は裾野だった」と気付く。分かれば分かるほど、分からないことが増えるなぁ、という気がする。
(参考文献)