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すてきな証明・すてきな作図 tan ((α + β)/2) = ?

2021年10月 9日
記事ID f11009

  1. すてきな証明 tan ((α + β)/2) = ? ウィキペディアより
  2. すてきな作図 sec α + tan α = ?
  3. tan (θ/2) = csc θ − cot θ の可視化 cscって何だっけ

2021-03-06 ウィキペディアより

図のように、一辺の長さ 1 のひし形 OPQR を考える。青い辺 OP の傾きを α、赤い辺 OR の傾きを β とすると、黄緑の対角線 OQ の傾き (α + β)/2 は、縦÷横なので:
  tan ((α + β)/2) = (sin α + sin β) / (cos α + cos β)

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黄緑の対角線 OQ の傾き(オレンジの点線の角度)は α + ★ だが、★ は緑の角度 β − α のちょうど半分(△OPQ ≡ △ORQ だから、2個の ★ は等しい)。従って:
  OQ の傾き = α + (β − α)/2 = (α + β)/2
…方位 α と方位 β のちょうど中間(平均)の方向に当たる。
2カ所の β が等しい角度なのは、OR と PQ が平行だから。

tan ((α + β)/2) は、正攻法ではゴチャゴチャ長い計算になるが、上記の作図によると、見ただけで「そうなって当然!」と思える。出典は Tangent half-angle formula(一部改変)。

リンク先にはミスタイプもあるので注意。冒頭の第4・第5式の tan(½(θ ± π/2)) は、tan(½(π/2 ± θ)) の誤り。

参考(普通の証明法)

1. 任意の2角 α, β は α = x + y, β = x − y の形で表現可能(α, β の平均を x、平均との差を y とすればいい)。加法定理を使うと:
  sin α + sin β = sin (x + y) + sin (x − y) = 2 sin x cos y
  cos α + cos β = cos (x + y) + cos (x − y) = 2 cos x cos y
上の等式を下の等式で割ると:
  (sin α + sin β) / (cos α + cos β) = tan x
この x は α, β の平均なので (α + β)/2 に等しい。(終わり)

2. 1.の途中計算の説明。

任意の y について cos y と cos (−y) は等しいが、sin y と sin (−y) は符号が正反対。従って
  sin (x + y) = sin x cos y + cos x sin y
の y を −y に置き換えた場合、右辺第1項は値が変わらないが、第2項は符号が逆になる。
  sin (x − y) = sin x cos y − cos x sin y
上と下を足し合わせると、それぞれの第1項が残って、第2項は打ち消し合うので
  sin (x + y) + sin (x − y) = 2 sin x cos y
となる。コサインについても同様:
  cos (x + y) = cos x cos y − sin x sin y
  cos (x − y) = cos x cos y + sin x sin y

3. 同様に考えると、
  tan ((α + β)/2) = −(cos α − cos β) / (sin α − sin β)
も成り立つ。証明:
  cos β − cos α = cos (x − y) − cos (x + y) = 2 sin x sin y
  sin α − sin β = sin (x + y) − sin (x − y) = 2 cos x sin y
上を下で割ると:
  (cos β − cos α) / (sin α − sin β) = tan x

4. 3.の別の証明法(Wikiversité):

(sin α + sin β) / (cos α + cos β) = −(cos α − cos β) / (sin α − sin β) を示す(左辺が tan ((α + β)/2) に等しいことは既に分かっている)。一般に、AD − BC = 0 は AD = BC と同値で、それが成り立つなら、両辺を BD で割って A/B = C/D が成り立つ。今、A = sin α + sin β, B = cos α + cos β, C = −(cos α − cos β), D = sin α − sin β とすると:
  AD − BC = (sin α + sin β)(sin α − sin β) + (cos α + cos β)(cos α − cos β)
  = (sin2 α − sin2 β) + (cos2 α − cos2 β)
  = (cos2 α + sin2 α) − (cos2 β + sin2 β) = 1 − 1 = 0

2021-03-07 すてきな作図 sec α + tan α = ?

上記「すてきな証明」で β が直角、つまり π/2 になった場合。

黄緑の対角線の傾きが
  tan ((α + π/2)/2) = (1 + sin α) / cos α
であることが一目瞭然。従って:
  = 1 / cos α + sin α / cos α = sec α + tan α  (☆)

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この結果自体は、前回の式
  tan ((α + β)/2) = (sin α + sin β) / (cos α + cos β)
に β = π/2 を代入すれば得られるが、上の図では、(☆)の sec α + tan α が可視化されている。つまり…

  1. 三角関数の基礎によると OB の長さは sec α。
  2. △ABO は二等辺三角形なので(※注)、AB = OB = sec θ。
  3. 三角関数の基礎によると BC の長さは tan α、AC の長さは tan ((α + π/2)/2)。
  4. だから tan ((α + π/2)/2) = AC = AB + BC = sec α + tan α。

結論 sec α + tan α = tan (α/2 + π/4)  (☆☆)

  セックたんが合体すると、直角との平均たん

恒等式(☆☆)は、sec の積分やグーデルマン関数を考える上で、一つの鍵となる。

※注 △ABO が二等辺三角形である理由。まず、2個の ★ の角度は等しい(△QOP ≡ △QOR なので)。さて、直線 AB と 直線 RO は平行。黄緑の直線 AO は、それら2本の平行線と交わっているので、∠OAB = ∠AOR = ★。

参考(面白いけど分かりにくい)

作図や「前回の式」を使わない直接計算。2種類の倍角の公式
  (i) cos 2θ = 1 − 2 sin2 θ つまり 2 sin2 θ = 1 − cos 2θ
  (ii) 2 sin θ cos θ = sin 2θ
…を使えるように、tan θ を変形する:
  tan θ = sin θ / cos θ = 2 sin2 θ / 2 sin θ cos θ = (1 − cos 2θ) / sin 2θ
θ = x/2 と書くと:
  tan (x/2) = (1 − cos x) / sin x = csc x − cot x  [図解
x = α + π/2 とすると:
  tan (α/2 + π/4) = csc (α + π/2) − cot (α + π/2) = sec α + tan α  [理由は下記]

Ronald Shubert によるこの巧妙な計算法は、Mercator’s World Map and the Calculus, p. 38 に載っている。最後の等号は「90°先の csc が sec に等しいこと」と「90°先の cot が −tan に等しいこと」による。そのうち前者は「90°先の sin が cos に等しいこと」から明らかだが、必要なら sin の加法定理を使えばいい。後者は関数のグラフから直観的には明らかだが、tan の加法定理
  tan (α + β) = (tan α + tan β) / (1 − tan α tan β)
に β = π/2 を入れる方法では、これを証明できない。代わりに β = ±π/4 を入れると:
  tan (α + π/4) = (tan α + 1) / (1 − tan α) = −(tan α + 1) / (tan α − 1)
  tan (α − π/4) = (tan α − 1) / (1 + tan α) = (tan α − 1) / (tan α + 1)

最後の2個の式で、右端の −(tan α + 1) / (tan α − 1) と (tan α − 1) / (tan α + 1) は、分子と分母を入れ替えてマイナス1倍したもの。つまり、互いに逆数のマイナス1倍の関係。従って、任意の角度 α について、その45°先のタンジェント
  tan (α + π/4)
というものは、45°前のタンジェント
  tan (α − π/4)
と比べ、逆数のマイナス1倍。タンジェントの逆数はコタンジェントなので、これは −cot に他ならない:
  tan (α + π/4) = −[1 / tan (α − π/4)] = −cot (α − π/4)
φ = α − π/4 とすると
  tan (φ + π/2) = −cot φ
  −tan (φ + π/2) = cot φ
つまり「90°先の cot は −tan」となる。

<例> tan 30° = 1/√3 だが cot 120° = −1/√3 = −tan 30°。実際、cot 120° = 1 / tan 120° = 1 / (−√3)。

別解(ややすっきり)

tan の加法定理から:
  tan (θ + π/4) = (tan θ + 1) / (1 − tan θ) = (sin θ / cos θ + 1) / (1 − sin θ / cos θ)
  = (sin θ + cos θ) / (cos θ − sin θ) = (cos θ + sin θ)2 / (cos θ − sin θ)(cos θ + sin θ)
  = (1 + 2 cos θ sin θ) / (cos2 θ − sin2 θ) = (1 + sin 2θ) / cos 2θ
θ = α/2 と書くと:
  tan (α/2 + π/4) = (1 + sin α) / cos α = sec α + tan α

別解2(これでどうだ)

cos 2θ = cos2 θ − sin2 θ = (1 − tan2 θ) cos2 θ
= (1 − tan2 θ) / sec2 θ = (1 − tan2 θ) / (1 + tan2 θ) の両辺の逆数:
  sec 2θ = (1 + tan2 θ) / (1 − tan2 θ) … ①
一方:
  tan 2θ = 2 tan θ / (1 − tan2 θ) … ②
ただし、①②について、分母 ≠ 0 つまり tan θ ≠ ±1 と仮定する。さて:
  tan (θ + π/4) = (tan θ + 1) / (1 − tan θ) = (1 + tan θ)2 / (1 − tan2 θ)
  = (1 + tan2 θ + 2 tan θ) / (1 − tan2 θ) = sec 2θ + tan 2θ (なぜなら①②)
θ = α/2 と書くと:
  tan (α/2 + π/4) = sec α + tan α
tan θ ≠ ±1 という仮定は θ ≠ ±π/4, ±3π/4 などを含意するが、それは α = 2θ ≠ ±π/2, ±3π/2 つまり tan α ≠ ±∞ という意味であり、最終結果の一般性を損なわない。

別解3(さらに別ルートから)

公式 tan (θ/2) = (1 − cos θ) / sin θ を使う(こちらの (9.2) を参照)。θ = α + π/2 のとき:
  tan (α/2 + π/4) = [1 − cos (α + π/2)] / sin (α + π/2) … ③
③の右辺について、加法定理から(★★):
  −cos (α + π/2) = −(cos α cos (π/2) − sin α sin (π/2)) = −(−sin α) = sin α
  sin (α + π/2) = sin α cos (π/2) + cos α sin (π/2) = cos α
だから:
  ③ = (1 + sin α) / cos α = sec α + tan α
③の分母が 0 でないと仮定する必要があるが、それは cos α ≠ 0 つまり tan α ≠ ±∞ という意味であり、結果の一般性を損なわない。

★★ cos (α + π/2) = −sin α であること、sin (α + π/2) = cos α であることは、三角関数の基本性質だ…と考えてもいいのだが、加法定理から機械的に単純計算すれば、同じ結論になる。

2021-03-17 tan (θ/2) = csc θ − cot θ の可視化

①  tan (θ/2) = sin θ / (1 + cos θ)
②  tan (θ/2) = (1 − cos θ) / sin θ
③  tan (θ/2) = 1 / (csc θ + cot θ)
④  tan (θ/2) = csc θ − cot θ

このうち①②は、いろいろにイメージできるが、③④は??? csc を使い慣れてないので、勘が働かない。

計算上①②の分子・分母を sin θ で割れば、それぞれ③④だが、幾何学的イメージが分かりにくい。

コタンジェント、コセカントが、それぞれタンジェント、サインの逆数であること、単位円のてっぺんに接する水平線と関係あることを思い出そう(図解)。それを前提に…

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図のオレンジは、一辺が csc θ のひし形。黄緑が cot θ なので、青い三角形の「底辺」の長さは csc θ − cot θ。

ひし形の2本の対角線は直交する(※1)。2個の ♥ の角度は等しいので、青い三角形の ★ の角度は、θ を二等分した ★ の角度に等しい(※2)。青い三角形について、長さ 1 の辺が「底辺」だと再解釈すると、斜辺の傾き(言い換えれば ★ に対するタンジェント)は、csc θ − cot θ に他ならない。これで一応④がイメージできた。

③はもっと簡単で、ひし形の緑の対角線の傾きから tan (θ/2) = 1 / (csc θ + cot θ) と分かる。言い換えれば(両辺の逆数を考えれば)、次の関係が成り立つ。
  cot (θ/2) = csc θ + cot θ

※1 ひし形は、2本の対角線によって四つの合同な三角形に分割される。四つの三角形の、頂点 B の部分の(四つの)角は、どれも等しい(合同な三角形の対応する角なので)。それら四つの等しい角の和は 360° だから、一つ一つの角は 360° ÷ 4 = 90° の大きさ。

※2 直角三角形 ABC と直角三角形 ODC は、直角以外の一つの角 ♥ が等しいので、残りの角 ★ も等しい。

〔追記〕 ∠DAE = θ/2 については、次のように証明することも可能。 △AOE は二等辺三角形だから ∠OAE = ∠OEA。この等しい角度を e とすると、三角形の内角の和は 180° なので:
  θ + e + e = θ + 2e = 180° つまり 2e = 180° − θ
両辺を 2 で割って:
  e = 90° − θ/2  ‥‥(♪)
∠DEA = ∠OEA = e に注意しつつ、青い直角三角形 ADE を考えると、その内角の和は:
  ∠DAE + 90° + e = 180° つまり ∠DAE = 90° − e
これに(♪)を代入して:
  ∠DAE = 90° − (90° − θ/2) = θ/2

参考リンク: 「かいじゅうペンタゴン」 §22

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