7 : 14 FFFTPでパスワードを忘れたら

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DeFFFTP

2003年 3月25日
記事ID d30325

FTPクライアントにFTPサーバのログイン情報を登録したあと、ログインパスワードが分からなくなってしまうと、 そのクライアントを使えばログインできるのに自分ではパスワードが分からないという困った状態になる。 パスワードをタイプしなければならない場合に困るし(パスワードの変更とかウェブからのログイン)、 OSの再セットアップをすると永遠にログインできなくなってサイトの更新ができなくなってしまう。

パスワードを忘れてしまう自分がいけないといえばそれまでだが、 FFFTPでこのような状態になったときに、下の表を使うと、ffftp.ini からパスワード情報を復元できる。OSを再セットアップするときは、念のために ffftp.ini をバックアップしておくと良いかも。

暗号の対応表(PNG 12 KiB)

ピンクの欄の黒い文字が暗号化された状態、水色の欄の緑の文字・斜体が解読結果。表の配列は、左から右に1行ずつ暗号状態のアスキーコード順。*は任意の一文字、解読欄で SP とあるのは半角スペース。この場合、半角の\と半角の¥は同じ意味。

表の使い方

FFFTP の暗号化はリニアな換字暗号(文字の置き換え)で、ソースも公開されてます。 半角英数字記号1文字につき3通りのパターンのどれかになり、 暗号化の結果は2文字または3文字。1文字めのASCIIコード番号が偶数のときは2文字、奇数のときは3文字になりますが、 追加される3文字めはダミーで、解読には関係しません。 例えば小文字の a は、FFFTPの暗号化を通すと、 RLという2文字になるか、AF* または eH* の3文字になります。 ここで*は任意の一文字。また、表の解読欄で SP とあるのは半角スペースです。

FFFTPをインストールしたフォルダにある ffftp.ini でパスワードは次のような感じで保存されてます。

[FFFTP\Options\Host61]
Set=0
HostName=Sample
HostAdrs=ftp.sample.net
UserName=okamiki
LocalDir=
Password=eKLeJvVLVMeN}

上の例では、ログインは okamiki でパスワードが eKLeJvVLVMeN} と暗号化されているのですが、表をみると、 eK* の意味は m ですから、eKL が m です。 同様に、eJv が i, VL が c, VM が k, eN} が y なので、 パスワードは micky と分かります。

表を見るのが面倒なら、JavaScript でも簡単に実行できます。(ソースを飛ばす

enc = "eKLeJvVLVMeN}";
plain = "", i = 0;
while( i < enc.length ) {
    c1 = enc.charCodeAt(i), c2 = enc.charCodeAt(i+1);
    Rnd = c1 >> 4 & 0x3;
    Ch = c1 & 0xF | (c2 & 0xF) << 4;
    Ch <<= 8, Ch >>= Rnd, Ch = (Ch & 0xFF) | ((Ch >> 8) & 0xFF);
    plain += String.fromCharCode( Ch );
    i = i + 2 + c1 % 2;
}
document.write("<p>解読結果: " + plain + "<\/p>");

出力例: 解読結果: micky

更新履歴

  1. 2003年3月25日、初版。
  2. 2013年11月29日、テーブルの画像の表示をサムネイル形式にした。
  3. 2013年12月19日、サムネイルだとかえって不便なのでテーブルを元に戻した。表の見方について補足説明を追加(バックスラッシュ問題など)。

この記事のURL


カラバシ注解(8–21課)

2013年12月 1日
記事ID e31201a

シリア語: カラバシ注解」の本文の続き(全体の目次はこちら)。

第8課 Hergā da-Ṯmānyā

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本文
ܒܰܝܬܐ ܪܰܒܐ
発音🔊 baytā rabbā
意味「大きな家」
解説
  1. ܒܰܝܬܐ は男性名詞。従って、ܪܰܒܐ は男性形・強調状態。
  2. ـ‍ܬܐ は普通は女性語尾だが、ܒܰܝܬܐ はその法則に当てはまらない。(Jess. ではこれが女性名詞となっているが、何かの誤り。)
  3. 音声ファイルは東方言。ay[ɛɪ] と発音されている。
ܐܰܒܐ
発音🔊 ʾaḇā /(ʔ)avɑ(ː)/
意味「父」
解説発音注意。CAL では​ ʾabbā となっており、聖書にも「アッバ、父よ」などと書いてある。しかしそれはアラム語一般での発音であり、シリア語では軟音を使って​ ʾaḇā となる(Nöld. §146)。さらに、この録音では /v/[w] と発音されている。
ܐܶܡ
発音ʾemmā
意味「母」
ܨܶܝܕ
発音ēḏ
意味「~に向かって、~の近くに」
解説◌ܶܝ は長い ē を表す。既に ܐܰܝܠܶܝܢ (ʾaylēn) を学んだ。
ܪܳܚܶܡ ܦܺܐܪ̈ܐ ܣܰܓܝ
発音 èm pērē saggī
意味「彼は果物(複数)がとても好きです」
解説ܣܰܓܝܪܳܚܶܡ を強調する副詞。 ܣܰܓܝ は形容詞として使われることもあるが ―― もし形容詞として使われているなら「たくさんの(いろいろな種類の)果物が好き」となるが ―― 、ここではその解釈は成り立たない。なぜなら、既に学んだように、名詞を限定する形容詞は強調状態になり末尾に ܐ が付くが、ここではそうなっていない。より正確に言えば、「たくさんの果物」と解釈するためには「たくさんの」は「果物」と一致して男性複数形・強調状態になる必要があるが、そうなっていない。
質問
ܐܰܝܟܰܐ ܗ̱ܘ
発音ʾaykaw = 東方言ʾaykāw
意味男性名詞について「どこに~はあるか・いるか」
解説この疑問詞は、単独では ܐܰܝܟܐ (ʾaykā) と発音される。しかし、後ろに ܗ̱ܘ が来ると、語尾の ā は圧縮されて a に変わる。東方言ではこの変化は起きない。
ܩܳܐܶܡ
発音qāʾèm
解説語根 QWM「立つ、居る、存在する」の分詞・男性単数形。

第9課 Hergā d-Ṯešʕā

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本文
ܪܝܚܐ
発音rēā西方言 ā
意味m. (男性名詞)「香り、匂い」
解説
  1. ܝܚ つまり ܝـܚ (YḤ) と、ܚܝ つまり ܚـܝ (ḤY) は、非常に紛らわしい。一般に、文字の形はほとんど同じなので前後関係から判断する必要がある。
  2. この場合、もし Y が後ろで単語が ـܝܐ で終わっているとしたら​ “r” となるが、それだと連続3子音から単語が始まることになり不自然。
    [2014-04-06追記] 一般には、次のように文字が ḤY の順に並ぶこともある。 ܪܚܝܡ (r(ə)īm) 「いとしい」、ܢܚܝܪܐ (n(ə)īrā) 「鼻」、ܚܝܐ ((ə)yā) 「彼は生きた」。
補足[2014-03-30追記] この語の最初の母音は、古典シリア語では ē と発音される。 ܪܝܫܐ (第4課) と同様。
ܚܰܡܫܐ
発音🔊 amšā
意味「5個の、五つの」(男性形)
ܐܝܠܳܢܐ
発音🔊 ʾīlānā
意味m.(男性名詞) 「木」
解説複数形 ܐܝܠܳܢ̈ܐ (ʾīlānē)。フォントによってはセヤメが見にくいが、ܐܝܠܳـܢ̈ܐ のようになっている。 ܐܝ̈ܠܳܢܐ と書いても全く同じ。セヤメを付ける場所に決まりはないが、通常、背の低い文字の上に付ける。
ܓܰܢܬ̥ܐ
発音🔊 ganṯā
意味f.(女性名詞) 「庭園」
解説
  1. ـ‍ܬ̥ܐ (-ṯā) / ـ‍ܬܐ (-tā) は女性語尾。この語尾で終わる名詞は女性名詞。
  2. ܒܰܝܬܐ (baytā)「家」のような例外(男性名詞)もあるが、極めてまれ。
  3. 原則として、子音で終わる音節の後ろに軟音は来ない。しかし、女性語尾の ـ‍ܬ̥ܐ (-ṯā) は特別で、子音の後ろでも軟音になることがあるgan-ṯā)。
ܣܰܓܝ
発音saggī
意味「たくさん」
解説
  1. 「たくさんの(=形容詞)花々がある」と「花々がたくさん(=副詞)ある」は同じ意味なので、実用上はどちらと考えてもいい。
  2. しかし、理論上は副詞となる。なぜなら、「たくさんの花々」と解釈するためには「たくさんの」は「花々」と一致して男性複数形・強調状態になる必要があるが、そうなっていない。
ܗܰܒܳܒ̈ܐ
発音habbāḇē
意味m. pl. (男性名詞・複数) 「花々」
ܩܳܛܶܦ
発音è
意味「摘みます」
ܘܰܪ̈ܕܐ
発音wardē
意味m. pl. 「バラ」
解説セヤメがあるので複数形、従って語尾は ē
ܫܰܦܝܪ
発音šappīr
意味「美しいです」
解説男性形・絶対状態。
ܪܝܚܐ ܒܰܣܝܡܐ
発音rēā ¦bassīmā
意味「良い香り」
解説形容詞は男性形・強調状態。
注意
質問
ܥܰܡܶܗ
発音ʕammèh
意味「彼とともに」
解説ܥܰܡ + 所有語尾・3人称男性単数。
ܡܢܝ
発音m(ə)nī
意味「数えなさい」
解説語根 MNY 「数える」の命令形。「第3子音Y」型の命令形は、ī で終わる。既に語根 ḤZY 「見る」 の命令形 ܚܙܝ ((ə)zī) を学んだ。
ܠܚܰܡܫܐ
発音l(ə)amšā
意味「5まで」
解説
  1. 前置詞 ܠ は、後続する単語とつなげて書かれる。以下いちいち注記しないが、ܠ‎ で始まる語句は常にこの可能性を持つ。
  2. シリア語の数詞: 第7課で ܚܰܕ (aḏ) 「1」、この課で「5」を学んだ(いずれも男性形)。問題文の指示に従うには「2・3・4」が必要だが、第2巻の巻末に数字の表がある(カナダ版では「3」がミスプリントで「37」になっている)。JPEG画像 / 大きい画像
  3. Alan(要JavaScript)の Level Four / Lesson 109 には各数字の発音の音声ファイルがあり、参考になる。東方言なので [w] と発音され、大抵は [χ] と発音されている。古典シリア語の e に当たる短母音が​ “i” で表されているが、これはローマ字表記上の違いであり、この場合​ “e” も​ “i” も本質的に同じ音素を表す。
    [2014-02-02追加] Alan のページでは「4」の男性形のローマ字表記が ârib'a となっているが、シリア文字の表記上、r の後ろに i という母音は存在していない。この i は、rbʕ という連続3子音を発音しやすくするために便宜上、挿入された曖昧母音を表している(​ʾarəbʕā。恐らくこの発音も方言的なもの。一般には、連続3子音の場合、第2子音と第3子音の間に曖昧母音が挿入される(​ʾarbəʕā
補足[2014-03-02追記]ばびっと数え歌 シリア語編」も参照(古典シリア語の数詞の1~10を覚えるための数え歌)。
注意

第10課 Hergā d-ʕesrā

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本文
ܒܳܟ̥ܶܐ
発音bāḵē /bɑ(ː).xeː/
意味「泣きます」
解説語根 BKY の分詞・男性単数形。「第3子音Y」型の分詞・男性単数形は -ā-ē となる。この場合、末尾の ē は、ܝ ではなく ܐ を使って表される。既に、この型の分詞 ܪܳܥܶܐ (rāʕē) 「(草を)食みます」と ܫܳܬܶܐ (šāṯē) 「飲みます」を学んだ。
ܢܳܟܶܬ
発音nāḵèṯ
意味「かみます」
解説カラバシでは軟音記号が付いていない。
ܩܰܛܐ
発音qaā
意味m./f. 「猫」
ܘܒܶܣܪܐ
発音w(ə)ḇesrā
意味m. 「そして肉(を)」
解説ܒܶܣܪܐ (besrā) の最初の子音が軟音に変わる。
ܟܰܕ
発音kaḏ
意味「~するとき」
ܚܳܙܶܐ
発音āzē
意味「彼が見る」
解説語根 ḤZY の分詞。これも「第3子音Y」型。
ܚܳܙܶܐ ܠܶܗ
発音āzē lèh
意味「彼がそれ(猫)を見る」
解説ܠ + 所有語尾」が、目的格の代名詞のような役割を果たしている。 この部分は、理論上「それ(猫)が彼を見る」という意味にもなりうるが、文脈上「彼がそれを見る」と解釈する必要がある。

猫が怖いと感じる人にとって「猫が自分を見ている」というのも確かに怖いことだろう。しかし、猫がその人を見ていても、その人自身が見られていること(猫の存在)に気付かなければ、怖がりようがない。「猫が見ると泣く」ではなく、「猫を見ると泣く」と解釈するのが合理的。

ܗܰܒ
発音haḇ
意味「与えてください、あげてください」
解説語根 YHB の不規則動詞「与える」の命令形。「ܠ + 所有語尾」は「それ(猫)に」という意味。
注意
質問
ܐܰܪܰܐ
発音ʾara(ʾ)
意味「~ですか」
解説疑問文を導く語。
  1. この単語は、ギリシャ語の ἄρα / ἆρα がシリア語に入ったもの。ギリシャ語のもともとの用法では、しばしば不安や焦りを表す。ここでも「猫は、かみますか(かみませんよね)」という不安な疑問文を導いている。
  2. シリア語での用法はより一般的で、特別なニュアンスのないニュートラルな疑問文を導く場合もある。
ܐܰܝܟ
発音ʾaḵ /(ʔ)ax/
意味「~のように」。ここでは「次のように」、つまり「例」。「このように(完成された文にしなさい)」という意味。
解説ܝ は黙字(Nöld. §23C)。例文では、文末のピリオドが抜けている。

第11課 Hergā da-Ḥḏaʕsar

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本文
ܟܶܪ̈ܟܐ
発音kerkē
意味m. pl. 「ノート(複数)」
ܝܳܬ̥ܶܒ
発音yāṯèḇ
意味「座っています」
ܢܺܚܶܐ
発音neē または nēē西方言 ē
意味「(彼は)生きるだろう」
解説
  1. 語根 ḤYY未来形未完了形とも呼ばれる)、3人称単数男性。ここでは細部を気にする必要ないが、未来形は ne- のような接頭辞を伴う。もともとの形は neē だが、古い時期から別形 ē も使われた。ē は後代の発音(Nöld. §183 (7))。
  2. ܛܰܠܝܐ ܛܳܒܐܡܰܬ̥ܰܝ と同格。直訳的には「良い少年マサイは生きるだろう」。意味は「(願わくは)良い少年マサイが生きますように」、つまり「立派な少年、マサイ万歳」。
補足[2013-12-19追記] この場合、結果的に、西シリア文字の ◌ܺ が古典シリア語では e または ē と発音される。
参考[2014-04-06追記] 東方言では neē (niē) となるようだ。
ܙܥܘܪܐ
発音ō
意味「小さい~、若い~」
解説男性形・強調状態。後半と合わせて、「小さいマサイは、本(複数)を持っています」。
ܩܳܪܶܐ
発音qārē
意味「読んでいます」
解説語根 QRY 「声を上げる」の分詞。この行は分詞が2個連続しているが、単純に「座って読んでいます」という意味。
質問
ܠܰܢ
発音lan
意味「私たちに」
解説前置詞 ܠ + 所有語尾・1人称複数(通性)。
注意

第12課 Hergā da-Ṯreʕsar

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本文
ܪܶܓ̥ܠܐ
発音re
意味f. 「(足首より下の)足」
解説
  1. 複数形は ܪ̈ܶܓ̥ܠܐ (re)。
  2. カナダ版では、冒頭の単語コーナーも本文も両方複数形になっている。米国版では、冒頭では単数形が紹介されている。本文で使われる単語を予習するコーナーなので、カナダ版の方が本来だろう。単数形と並べると、「1文字目のセヤメによって語末の母音が変わる」というシリア文字特有の現象が観察できる。
  3. 人体のパーツで2個一組のものを表す基本単語は、全て女性名詞。「足」もその一つ。
ܓܶܦ̈ܐ
発音geppē
意味m. pl. 「翼(複数)」
ܬܰܪܢܳܓ̥ܠܐ ܪܰܒܐ
発音tarnālā rabbā
意味「大きなおんどり」
解説形容詞は男性形・強調状態。強調状態は、名詞を“強調”する用法、つまり名詞に重ねて名詞句を構成する語形を指し、普通の言葉で言えば「限定的」とか「連体形」に当たる。この場合の“強調”は「修飾」のことで、文字通りに意味が強まるわけではない。
ܬܰܪܢܳܓ̥ܠܐ ܪܰܒ
発音tarnālā rab
意味「おんどりは大きい」
解説形容詞は男性形・絶対状態。絶対状態は、絶対的、つまりそれ単体で独立して文の述語となれる語形を指し、普通の言葉で言えば「叙述的」とか「終止形」に当たる。
ܬܪܶܝܢ
発音🔊 trēn
意味m. 「2個の、二つの」
解説
  1. 女性形は ܬܰܪܬܶܝܢ (🔊 tartēn)。
  2. 男性名詞を数えるときは男性形、女性名詞を数えるときは女性形が使われる。
参考この数詞は、セヤメを付けて ܬܪ̈ܶܝܢ (m.) / ܬܰܪ̈ܬܶܝܢ (f.) と書くことがある。
ܩܳܪܶܐ
発音qārē
意味「読む」という意味で既出。ここでは「声を上げます、コケコッコーと鳴きます」
ܪܳܡܳܐ
発音rāmā
意味「(位置が)高い、気高い、(声が)高い」
解説男性形・強調状態。
ܥܳܡܰܪ
発音ʕāmar
意味「住んでいます」
解説語根 ʕMR 「住む」の分詞。語根の第3子音が r のとき、その r の直前の母音は通常の è ではなく a になる。例えば:
  1. ܟܳܬ̥ܶܒ (kāṯè) 「書きます」
  2. ܝܳܬ̥ܶܒ (yāṯè) 「座っています」
  3. ܬܳܩܶܦ (tāqè) 「強くなります」
  4. ܥܳܡܰܪ (ʕāmar) 「住んでいます」
ܒܓ̥ܰܘ [2014-01-19追加]
発音b(ə)aw = 東方言 b(ə)āw
意味「~の内部に」
ܩܶܢܐ
発音qennā
意味m. 「巣」
解説CALでは女性名詞となっているが、本書では男性名詞(第18課参照)。
質問
ܠܳܩܶܛ
発音lāqè
意味ここでは「(地面から)拾い集める」、つまり「ついばむ」
ܚܶܛـ̈ܐ
発音eē
意味f. pl. 「小麦の粒(複数)」
解説ܚ̈ܶܛܐ と書いてもいい。カラバシは、分かりやすくするために、「実質的に ē の母音記号を兼ねる位置」 ―― つまり語尾の直前 ―― にセヤメを付けることを好んでいるようだ。
注意

第13課 Hergā da-Ṯlāṯaʕsar

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本文
ܙܰܝ̈ܬܐ
発音zaytē
意味m. pl. 「オリーブ(の実)」
解説単数形は ܙܰܝܬܐ (zaytā)。 ܒܰܝܬܐ「家」同様、ـ‍ܬܐ で終わっているが男性名詞。
ܛܥܝܢܐ
発音ʕīnā
意味「(彼女は)運んでいます」
解説語根 ṬʕN 「持ち上げて運ぶ」の受動分詞・女性単数形。この場合、受動分詞といっても「運ばれている」という意味にはならず、「運んでいる」という能動的な意味になる。
ܣܰܬܐ
発音sattā
意味f. 「つる、つる植物」
解説第5課で使われた。この課では使われない。
ܘܬܺܐܢ̈ܐ
発音w(ə)ṯē
意味f. pl. 「そしてイチジク(複数)」
解説ܘ が付くことで ܬܺܐܢ̈ܐ の語頭の硬音が軟音に変わる。
ܣܳܒܐ
発音sāḇā
意味m. 「高齢の男性、おじいさん」
ܒܟܰܪܡܐ
発音b(ə)ḵarmā
意味「ブドウ園の中に」
解説ܒ が付くことで ܟܰܪܡܐ の語頭の硬音が軟音に変わる。
ܒܢ̈ܳܬ̥ܳܐ
発音bnāṯā
意味f. pl. 「娘たち」
解説米国版では ܒܢ̈ܳܬ̥ܐ となっていて、母音記号が一つ抜けている。
  1. 単数形の「娘」は ܒܰܪܬ̥ܐ (🔊 barṯā)。女性語尾の -ṯā は、子音の後ろでも軟音になることがある(第9課)。
  2. 原則として、「-ṯā または -tā で終わる女性名詞」の複数形においては、セヤメに関わらず末尾の ā が保たれる。この単語の複数形は不規則だが、上記の原則は依然成り立つ。
参考この原則は、「女性名詞と同じ語尾を持つ紛らわしい男性名詞」を識別する目安にもなる。例えば、男性名詞 ܙܰܝܬܐ「オリーブ」は女性名詞と同じ語尾を持つが、その複数形は ܙܰܝ̈ܬܐ つまり ܙܰܝ̈ܬܶܐ だから、女性名詞の特徴を満たさない(末尾の ā が保たれていない)。
ܠܳܩܛܐ
発音lāqā
意味「(彼女は)集めている」
解説分詞の女性単数形は -ā--ā になる。男性形 ܠܳܩܶܛ (lāqè) は既出。以下の例も既に学んだ。
  1. ܝܳܬ̥ܶܒ (yāṯèḇ /jɑ(ː).θev/)「(彼は)座っています」 → 第11課。語末の は軟音。
  2. ܝܳܬ̥ܒܐ (yāṯbā /jɑ(ː)θ.bɑ(ː)/)「(彼女は)座っています」 → 第2課。子音で終わる音節の後ろの b は硬音。
ܛܥܝܢܐ ܣܰܠܐ
発音ʕīnā sallā
意味「(彼女は)かごを運んでいます」
解説この動詞は変則的で、意味は能動的(=運んでいる≠運ばれている)なのに、それが受動分詞で表現されることが多い。「かごを負わされている」と解釈すると、ニュアンスが分かりやすい(Nöld. §280)。特に、重い物の運搬(例: 荷物を運ぶ、ロバが人を乗せる)を表す場合、受動分詞が常用される。
参考能動分詞 ܛܳܥܶܢ (āʕèn) / ܛܳܥܢܐ (āʕnā) が使われるケースもある。第2巻・第8課では「かばんを持って(学校に行く)」という文があるが、その場合は普通に能動分詞が使われている。
参考になる音声ファイル
ܓܰܢܬ̥ܰܢ ܐܝܬ̥ ܒܳܗ̇ ܙܰܝ̈ܬܐ.
発音🔊 ganṯan (ʾ)īṯ bāh zaytē [ɡɛn.θan ʔiθ bʌh zɛɪ.te(ː)]
意味「私たちの庭は、その中にオリーブ(複数)があります」
解説
  1. 全単語が既出。発音は東方言。
  2. ܓܰܢܬ̥ܐ に所有語尾を付けるとき、ܐ を取ってから付ける(第7課)。-an は所有語尾・1人称複数(第11課)。
  3. 本来は口を大きく開けて発音するはずの音素でも、実際の文中では簡略化され、口を開き切らずに発音されることが多い。つまり、前舌の a[æ][ɛ] になり、後舌の ā[ʌ] になることは、珍しくない。ī も短く発音されている。一般に、シリア語では、伸ばすか伸ばさないかは音素的な意味を持たない。
補足[2014-02-23追記] 特に、東方言では、子音で終わる音節の長母音が短くなる傾向がある(Nöld. §42)。
質問
ܥܳܒܶܕ
発音ʕāḇèḏ
意味「している」
解説分詞・男性単数形。
注意

第14課 Hergā d-Arbaʕsar (d-Arbṯaʕsar)

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本文
ܪܝܫܐ ܕܓܰܡܠܐ
発音rēšā ¦d(ə)amlā
意味「ラクダの頭」
解説ܓܰܡܠܐ の語頭の子音は軟音に変わる。
ܟܰܪܣܐ ܪܰܒܬ̥ܐ
発音karsā rabṯā
意味「大きなおなか」
解説
  1. 原文にミスプリントがある(下記「注意」参照)。
  2. [2013-12-15更新] ܪܰܒܬ̥ܐ (rabṯā) の b が硬音である点に注意。一般に、母音の後ろの b は「二重化されれば硬音、そうでなければ軟音」になる。しかし、この単語は古形が *rabbəṯā と推定され、もともと b が二重だった。発音が簡略化されて rabṯā になっても、b が硬音であるという性質は保たれた。男性形・絶対状態 ܪܰܒ (rab古形 *rabb) の発音も、同様に説明される(第1課)。男性形・強調状態=女性形・絶対状態 ܪܰܒܐ (rabbā) では、二重の b が保たれる。
  3. 女性語尾の -ṯā は、子音の後ろでも軟音になることがある(第9課)。特に、「a + 子音」の後ろではそうなることが多い(Nöld. §23 E。例えば、ܓܰܢܬ̥ܐ (ganṯā)「庭園」、ܒܰܪܬ̥ܐ (barṯā)「娘」。 ܪܰܒܬ̥ܐ (rabṯā) も同じパターン(この単語は、上記のように古形が *rabbəṯā と推定され、もともと -ṯā は子音の後ろではなかった)。
注意
質問
ܣܝܡ
発音sīm
意味「置きなさい」
解説語根 SWM「置く」の命令形。直訳すると「単語たちを置きなさい、点々の場所」。要するに穴埋め問題の問題文。 ܕܘܟܰܬ̥ ܢܘܩ̈ܙܐ (dukkaṯ nuqzē)「点々の場所」の前に「~に」という前置詞があった方が落ち着く気がするが、「~を…に配置する」という二重目的語だと思えば、一応納得できる。
補足[2014-12-14追記] シリア語では二重目的語は比較的まれだが、ペシタには次の例がある。「あなた方を満たす、喜びで」(ローマ15:13)、「それを入れる、神殿の金庫に」(マタイ27:6)。そうすると、「単語を置く、点線の場所に」も成り立つだろう。
ܕܘܟܰܬ̥
発音dukkaṯ
意味f. 「~の場所」
解説ܕܘܟܬ̥ܐ (dukṯā古形 dukkəṯā) の構成状態。
ܢܘܩ̈ܙܐ
発音nuqzē
意味m. pl. 「点(複数)」
ܥܰܝܢ̈ܐ
発音🔊 ʕaynē
意味f. pl. 「目(複数)、両目」
解説人体のパーツで2個一組のものを表す基本単語は、どれも女性名詞。
ܫܳܡܰܥ
発音šāmaʕ
意味「聞きます」
解説第3子音が ܥ (ʕ) のとき、その直前の母音は è ではなく a になる。同じ現象は第3子音が ܪ (r) のときにも起きる。 ܥܳܡܰܪ を既に学んだ。
ܐܶܕܢ̈ܐ
発音ʾeḏnē
意味 f. pl. 「耳(複数)、両耳」
解説CALでは男性名詞となっているが、女性名詞。人体のパーツで2個一組のものを表す基本単語は、どれも女性名詞になる。
ܡܗܰܠܶܟ
発音mhalleḵ
意味「歩きます」
解説語根 HLK の動詞 ܗܰܠܶܟ (halleḵ) の分詞・男性単数形。この動詞は、「基本形が -a--e- で、発音上、第2子音が二重になる」という特徴を持つ。このような動詞の変化パターンをパエル態(Pael)と呼ぶ。このタイプの動詞では、分詞の頭に m- が付く。
注意

第15課 Hergā d-Ḥamšaʕsar (d-Ḥammeštaʕsar)

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本文
ܚܶܘܳܪܐ
発音ewwārā
意味「白い」
解説
  1. シリア文字の1文字目に短母音、2文字目に長母音が付く場合、原則として、2文字目が表す子音は発音上、二重化される。例えば、ܣܰܓܝ (saggī)、ܓܘܒܐ (gubbā)、ܐܶܢܶܝܢ (ʾennēn)。ただし、ܐܰܒܐ (ʾaḇā) は例外。硬軟の区別がある子音は、二重化されると必ず硬音。言い換えると、軟音は決して二重化されない。
  2. [2014-04-27改訂] 2文字目に付く母音が短母音の場合でも、それが閉音節(子音で終わる音節)になっていれば、2文字目が表す子音は二重化されることが多い。例えば、ܥܰܡܶܗ (ʕammèh)、ܐܶܡܰܬ̥ܝ̱ (ʾemmaṯ)
  3. パアル態の動詞でも、子音が二重化される(第14課)。
ܦܳܪܰܚ
発音pāra
意味「飛びます」
解説
  1. 語根 PRḤ の分詞・男性単数形。
  2. e→aルール: 動詞語根の第3子音が ܚ のとき、その前の母音は通常の è ではなく a になる。第3子音が ܪܥ のとき同じ現象が起きることは、既出。まとめると、語根の第3子音が  r / ʕ / / h  の場合、「その直前に通常なら e/è が置かれるケース」において、代わりに a が置かれる(Nöld. §170)。
ܘܰܙܐ
発音wazzā
意味m./f. 「ガン、ガチョウ」
解説巻末の単語集によると、ここでは「白鳥」を指す。ガンとハクチョウは別の種だが近縁。
ܫܰܦܝܪ
発音šappīr
意味「美しく、上手に」
解説この単語は形容詞として既出だが、ここでは副詞として用いられている。実際にはガンも白鳥もハトより速く飛べるが、ハトのようにパッと飛び立つことはできない。特に、家畜のガチョウは重いので飛ぶのは苦手。こうしたことから「ハトのように(ハトほど)上手に飛ばない」と言っているのだろう。
質問
ܨܘܪܬܐ
発音ūrtā
意味f. 「絵、画像」
解説女性語尾の -ṯā は子音の後ろでも軟音になることがあるが(第9課)、「長母音 + 子音 + 」の場合は硬音が普通。演習問題の末尾にいつもある ܟܬ̥ܝܒܬܐ (kṯīḇtā) 「筆記」もその例。
ܐܝ̈ܕܐ
発音(ʾ)īḏē
意味f. pl. 「手(両手)」
解説人体のパーツで2個一組のものを表す基本単語は、全て女性名詞。
注意

第16課 Hergā de-Štaʕsar (d-Šettaʕsar)

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本文
ܓܰܒܪܐ
発音gaḇrā
意味m. 「(大人の)男」
解説硬軟の区別がある子音の硬軟は、次の規則に従う。
  1. 母音の後ろでは、二重化されれば硬音、そうでなければ軟音(第15課参照)。前者の例は、ܣܰܓܝ (saggī)、ܓܘܒܐ (gubbā)。後者の例は、ܗܳܕܶܐ (ē)、ܛܳܒܐ (āā)。
  2. 子音の後ろでは、原則として硬音。例えば、ܝܳܬ̥ܒܐ (yāṯbā)、ܘܰܪ̈ܕܐ (wardē)。
  3. ただし、女性語尾の -ṯā は子音の後ろでも軟音になることが多い(第14・15課)。
  4. 見掛け上連続する2子音の間には、歴史的に、表記されない曖昧母音 ə が存在しているケースがある。このような曖昧母音は次第に脱落して発音されなくなったが、硬音・軟音に関してはその影響力が残っている。すなわち、後ろ側の子音は「母音の後ろ」の規則に従い軟音になる。特に、語頭の2子音は、原則として常にこのパターンになる。例えば、ܟܬ̥ܳܒܐ (k(ə)āḇā)、ܒܟܰܪܡܐ (b(ə)armā)、ܒܓ̥ܰܘ (b(ə)aw)。
  5. 語頭の子音は硬音。
ܡܙܰܒܶܢ
発音mzabben
意味「売っています」
解説語根 ZBN のパエル態の分詞・男性単数形。既出の ܡܗܰܠܶܟ (mhalleḵ) と同じパターンで、頭に m- が付く。
ܚܰܙܘܪ̈ܐ
発音azzūrē
意味m. pl. 「リンゴ」
ܦܺܐܪ̈ܐ ܒܰܣܝܡ̈ܐ
発音pē¦bassīmē
意味「いい匂いの果物」
解説男性複数・強調状態。
  1. ܒܰܣܝܡ (bassīm) 「甘いです」(男性単数・絶対状態) → 第5課
  2. ܒܰܣܝܡܐ (bassīmā) 「甘い~」 (男性単数・強調状態) → 第9課
ܙܳܒܶܢ
発音zāḇèn
意味「買います」
解説語根 ZBN の分詞・男性単数形。この分詞のパターンは既に何度も登場したが、この課では、同じ語根のパエル態の分詞も登場している。パエル態だと「売る」という意味になる。
  1. ܙܳܒܶܢ (zāḇèn)「彼は買います」=基本の分詞
  2. ܡܙܰܒܶܢ (mzabben)「彼は売ります」=パエル態の分詞
パエル態では語根の第2子音が二重になり、硬軟の区別があれば硬音になる。基本の分詞では、同じ子音が軟音になる。
ܣܳܐܶܡ
発音sāʾèm
意味「置きます、入れます」
解説語根 SWM(既出)の基本の分詞・男性単数形。「第2子音W」型の分詞・男性単数形では、第2子音が ܐ に変わる。
ܝܳܗܶܒ
発音yāhèḇ
意味「与えます」
解説語根 YHB(既出)は不規則動詞だが、分詞形は規則的に作られる。
ܙܘܙ̈ܐ
発音zūzē
意味m. pl. 「お金」
解説単数形は、もともと硬貨の一種を指した。複数形は漠然と「お金」。
質問
ܡܳܢܳܐ ܐܝܬ̥
発音mānā (ʾ)īṯ
意味「何がありますか」
解説カラバシのスタイルでは、二つ目の母音記号は本来必要ない。
ܥܺܕܬܐ
発音ʕē(t)tā西方言 ʕītā
意味f. 「教会」
解説
  1. 2文字目のダーラス (Dālaṯ) ‍ܕ は子音 を表すが、この単語の一般的な発音では、この子音は脱落(または直後の t に同化)する。つまり、発音が *ʕēḏtā > ʕē(t)tā と変化している。そのため、語尾の -tā は、母音の直後なのに硬音になる。
  2. 米国版巻末の語彙集では ܥܺܕ̱ܬܐ と表記されている。つまり、発音されない文字に下線が引いてある。
補足[2013-12-19追記 / 2013-12-29更新] この語の母音 ē は後代の西方言では ī に変化しており、西シリア文字では ◌ܺ で表される。古典シリア語として発音する場合、それを ē と読む必要がある。
ܚܰܘܚ̈ܐ
発音awē = 東方言 āwē
意味f. pl. 「桃」
解説ただし、カラバシはこの単語を「プラム」の意味で使うこともある。古典シリア語の単語ではなく、Jess. などの辞書には載っていない(→ 単語の背景)。
注意

第17課 Hergā da-Šḇaʕsar (da-Šḇāt̤aʕsar)

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本文
ܡܰܣܬܐ
発音mastā
意味f. 「ヨーグルト」
解説古典シリア語の単語ではない可能性がある(→ 単語の背景)。
ܥܶܣܒܐ
発音ʕesbā
意味f. 「草」
解説実際には ʕezbā と発音されることがあるAlan, Lv. 2, L. 47 / Nöld. §22 脚注1)
補足[2014-02-16追記] 少なくとも11世紀の東方言では、ʕezbā (ʕizbā) と発音されたようだEliâ, IX。古典期より後の発音かもしれない。
ܐܰܪܝܡ
発音ʾarīm
意味「高くしなさい、上げなさい」
解説これは語根 RWM の動詞のパターンの一種であり、頭に​ ʾa- が付く。
ܥܺܐܕܐ
発音ʕēḏā西方言 ʕīḏā
意味男性名
補足[2014-03-02追記] 普通名詞としての意味は「祭り、祭日」。母音の発音については第4課参照。
ܥܶܙܐ
発音ʕezzā
意味f. 「(雌)ヤギ」
解説[2014-01-05追記] シリア語では主に「雌ヤギ」を指す。CAL では男性名詞とされているが、少なくともシリア語においては女性名詞(Nöld. §84)。
ܪܳܥܝܐ
発音rāʕyā
意味「(草を)食んでいます」
解説語根 RʕY(既出)の分詞・女性単数形。「第3子音Y」型の分詞は、男性単数において ܪܳܥܶܐ (rāʕē) のように Y が消えてしまうが、女性単数では Y が残って、一般の動詞と同じパターンになる。
ܫܳܬܝܐ
発音šāṯyā
意味「飲みます」
解説語根 ŠTY(既出)の分詞・女性単数形。
注意
参考になる音声ファイル
ܚܕܐ ܥܶܙܐ
発音🔊 (ə)ḏā ʕezzā [χ(ə)ðɑ(ː) ʕɪz.zɑ(ː)]
意味「一匹の雌ヤギ」
解説音声ファイルは東方言のもので、[χ] と発音されている。
質問
ܩܪܝ
発音q(ə)rī
意味「読みなさい」
解説語根 QRY(既出)の命令形。
ܘܰܥܒܶܕ
発音waʕ(ə)ḇeḏ
意味「そしてしなさい」
解説連続する2個の子音(間にある (ə) はカウントしない)で始まる単語の前では、接頭辞(接続詞)の ܘ に母音 a が付く。
ܩܘܡ
発音qūm
意味「立ちなさい」
解説語根 QWM。
補足[2014-04-27追記] 新約聖書「マルコによる福音書」にある「タリタ、クム(少女よ、起きなさい)」の「クム(起きなさい)」と実質的に同じ言葉。付録4参照。
ܙܶܠ
発音zel
意味「行きなさい」
解説語根​ ʾZL。
ܬܶܒ
発音teḇ
意味「座りなさい」
解説語根 YTB。
ܟܘܪܣܝܐ
発音🔊 kurs(ə)yā
意味m. 「椅子」
ܐܰܪܝܡ ܐܝܕܳܟ
発音ʾarīm (ʾ)īḏāḵ
意味「あなた(男性)の片手を上げなさい」
参考「貴女の片手を上げなさい」は、ܐܰܪܝܡܝ̱ ܐܝܕܶܟܝ̱ (ʾarīm (ʾ)īḏèḵ)。
ܓܘܒܢ̈ܐ
発音guḇnē
意味m. pl. 「チーズ」
注意

第18課 Hergā da-Ṯmānaʕsar (da-Ṯmāntaʕsar)

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本文
ܒܳܢܝܐ
発音bānyā
意味「(彼女は)建設します」
解説語根 BNY。
ܒܝܥ̈ܐ
発音bēʕē西方言 bīʕē
意味f. pl. 「卵(複数)」
補足[2013-12-29追記] この語の最初の母音は、古典シリア語では ē と発音される。 ܪܝܫܐ (第4課) と同様。
ܣܳܝܡܐ
発音sāymā
意味「(彼女は)置きます」。この場合「(卵を)産みます」
解説
  1. 語根 SWM の分詞・女性単数形。
  2. 「第2子音W」型の分詞・女性単数形では、第2子音が ܝ に変わる。男性形 ܣܳܐܶܡ (sāʾèm) は第16課で既出。
ܫܰܒܐ
発音šabbā
意味男性名
ܥܰܠ ܝܰܕ
発音ʕal yaḏ
意味「~の端の上に、~の傍らに」
質問
ܡܰܢ ܒܳܢܶܐ
発音man bānē
意味「誰が建設しますか」
解説「誰が」のような主語が不定の文では、述語動詞は男性形になる。「誰が」の答えが女性(女性名詞)なら、答えの文では動詞を女性形に変える必要がある。
ܟܡܐ ܒܝܥ̈ܐ ܐܝܬ̥ ܒܩܶܢܐ؟
発音kmā ¦bēʕē (ʾ)īṯ b(ə)qennā
意味「いくつの卵がありますか、巣の中には?」
解説米国版では、印刷ミスで文の後半が抜けている。カナダ版では、軟音記号が省略されている。
ܫܡܳܗ̈ܐ
発音šmāhē
意味m. pl. 「単語(複数)」
解説ܫܡܐ「名前」の複数形。
注意

第19課 Hergā da-Ṯšaʕsar (da-Ṯšāt̤aʕsar)

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本文
ܚܰܝܘ̈ܳܬ̥ܳܐ
発音aywāṯā
意味f. pl. 「動物たち」
解説セヤメの位置に決まりはない。カナダ版では ܚܰܝ̈ܘܳܬ̥ܳܐ になっている。
参考[2014-04-27追記] 単数形は通常 ܚܰܝܘܬ̥ܐ (ay(y)ūṯā)。ただし、aywəṯā と発音されることもある(Nöld. §40D)。東方言では ayəwṯā とも。
ܐܰܪܝܐ
発音🔊 ʾaryā
意味m. 「ライオン」
補足[2014-04-27訂正] 男性名詞(Nöld. §79, §146)。
ܕܶܒܐ
発音debbā
意味m./f. 「熊」
解説この名詞は、デフォルトで女性扱いされる傾向がある(Nöld. §85)。ここでも、熊を筆頭とする野生の動物たちが、女性複数扱いされている。
ܘܰܐܪܝܐ
発音waryā
意味「そしてライオン」
解説
  1. ܘ (w(ə)-)「そして」の後ろに ܐܰܪܝܐ (ʾaryā)「ライオン」を付けたもの。
  2. 原文では、ܘܐܰܪܝܐ と表記されている。単純に考えれば *w(ə)-ʾaryā で何も問題がないようだが、実際には、ܐ から始まる単語の前に接続詞の ܘ や前置詞の ܒ などが付くと語頭の子音​ ʾ が完全に脱落して、waryā のようになる。そしてこのような場合、一般的な表記法では ܐ に付いていた母音記号が直前の文字の上に移動する。実際、問題10ではそのようになっている。
  3. シリア語には、確立した統一的正書法はない。東シリア文字では、このパターンにおいて ܐ にそのまま母音記号を付けることが多い(Nöld. §33A)。母音記号が移動しない書き方の方が初心者にとっては分かりやすいともいえる。とはいえ、一般には移動する書き方が用いられる。第2巻では、このパターンの場合、カナダ版では母音記号が移動する書き方が用いられ、米国版では移動しない書き方が用いられている。
ܗܳܠܶܝܢ
発音🔊 hālēn
意味「これらは」(通性)
ܐܳܟ̥̈ܠܳܢ
発音ʾāḵlān
意味「食べます」
解説語根​ ʾKL の分詞・女性複数。一般に、分詞の女性複数形は -ā--ān となりセヤメが付く。
ܐܶܡܪܳܐ
発音ʾemrā
意味m. 「子羊、(若い)羊」
解説男性名詞。カラバシのスタイルでは、本来二つ目の母音記号は必要ない。
補足[2014-04-27追記] 西方言では、ā で終わる単語に w が続くとその二つが aw に圧縮されることがある。そういうケースではないことを示す目的で、念のために ā の母音記号を明示しているのかもしれない。
ܪܳܥܶܝܢ
発音rāʕēn
意味「(草を)食みます」
解説
  1. RʕY (既出)の分詞・男性複数形。「ラクダ」を筆頭とする動物たちが、男性複数扱いされている。
  2. 「第3子音Y」型の分詞・男性複数形は -ā-ēn。既に ܣܳܓܶܝܢ 「多くなります」を学んだ。
  3. セヤメは複数を表す記号だが、分詞の場合、女性複数形にだけ付いて男性複数形には付かない。
この課の背景

インドライオンは乾いた森に住む。この亜種は、かつてギリシャからインドにかけての広い地域に分布し、19世紀まではシリアやメソポタミアにも生息していた。イランには20世紀になってもまだ野生のライオンがいた。1903年生まれのカラバシは、森に住むライオンについて、身近な話として聞いていたのだろう。

[2015-07-26追記] 旧約(ヘブライ語)聖書の世界にも、ライオンはよく出没する。例えば、士師記14:5、サムエル記上17:34、サムエル記下23:20、列王記上13:24。紀元前の中東では、わりと身近な動物だったに違いない。

質問
ܐܰܝܕܳܐ ܗ̱ܝ
発音ʾaydāy = 東方言ʾayday
解説二つ目の母音記号は、カラバシのスタイルでは本来必要ない。 ܐܰܝܢܰܐ ܗ̱ܘ (ʾaynaw) との母音の違いや方言差があるので、念のために母音記号を付けたのかもしれない。
ܕܺܐܒܐ
発音dēḇā西方言 dīḇā
意味m./f. 「オオカミ」
補足[2014-01-12追記] 母音の発音については第4課参照。
注意

第20課 Hergā d-ʕesrīn

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本文
ܕܳܢܰܚ
発音dāna
意味「昇ります、(太陽が)照らします」
解説e→aルール(第15課)。
ܥܳܢ̈ܳܐ
発音🔊 ʕānā
意味f. 「羊の群れ」
解説単数・複数の区別を持たない集合名詞。複数形のようにセヤメを伴うが、単数扱いされることが多い。
ܚܰܢܰܐ
発音anna(ʾ)
意味女性名
ܒ̈ܳܬܐ
発音bāttē
意味m. pl. 「家々」
解説ܒܰܝܬܐ (baytā)「家」の複数形(不規則)。この単語は男性名詞だが、女性名詞のような語尾 -tā を持つ。しかし、複数形は女性名詞の特徴を満たさない(第13課参照)。
補足[2013-12-19訂正] bātē と発音されることもあるが、本来の発音は bāttē(Nöld. §23C)。t が硬音であるのもそのため。
ܥܰܠ ܐܝܠܳܢ̈ܐ
発音ʕal ʾīlānē
意味「木々の上で」
解説環境によっては、ܥܰܠ‌ ܐܝܠܳܢ̈ܐ の「1語目の語末の ܠ + スペース + 2語目の語頭の ܐ の合計3文字」が、一つの合字 — ラーマドの上にアーラフを重ねたような文字 — で表示される。この合字は、スペースの入らない「1文字目 ܠ+ 2文字目 ܐ の合字ܠܐ とは異なる。
ܨܰܦܪܐ
発音a
意味m. 「朝、夜明け」
補足[2014-08-17追記] 広義では「明け方~正午近く」。特に「日の出の少し前の薄明るい時間帯~日の出後の早朝」を指すことが多い。
ܥܳܢ̈ܳܐ ܪܳܥܝܐ
発音ʕānā rāʕyā
意味「羊の群れは(草を)食んでいます」
解説形式的に主語は女性複数だが、述語は女性単数形になっている。「群れ」が集合的単数であるための変則的現象。 ܥܳܢ̈ܳܐ が主語のときは、こうなることが多い。一般に、「第3子音Y」型の分詞は、女性形については、単数・複数とも一般の分詞と同じようになる。
  1. ܪܳܥܶܐ (rāʕē): 男性単数 → 第2課
  2. ܪܳܥܝܐ (rāʕyā): 女性単数 → 第17課
  3. ܪܳܥܶܝܢ (rāʕēn): 男性複数 → 第19課 / セヤメなし
  4. ܪ̈ܳܥܝܳܢ (rāʕyān): 女性複数 → 第19課参照 / セヤメあり
注意
質問
注意

第21課 Hergā d-ʕesrīn w-Ḥaḏ

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本文
ܣܶܕܪܐ
発音seḏrā
意味m. 「教室」
解説原義は「列、階級」。転じて「学年、(進度別の)クラス」。ここでは「教室」という意味。この用法は、Jess. などの辞書には載っていない(→ 単語の背景)。
ܕܝܠܰܢ
発音dīlan
意味「私たちの」
解説ܕܝܠـ + 所有語尾・1人称複数(通性)。
ܟܘܪܣܝܐ
発音kurs(ə)yā
意味m. 「椅子」
解説単語自体は第17課で既出。この文だけ読むと、「教室に椅子が1個しかないのか? 生徒は床にでも座るのか?」という疑問が生じる。実はカラバシの語法では、生徒の「座席」は ܡܰܘܬܒܐ (mawt(ə)ḇā = 東方言 māw-) という別の単語になるようだ(第3巻・第1課)。従って「椅子」は1個でも、生徒の「座席」は別にある
ܚܕܐ
発音(ə)ḏā
意味f. 「一つの」(女性形)
解説
  1. ܠܘܚܐ は女性名詞。
  2. ܚܕܐ の前に ܘ が付くと、ܘܰܚܕܐ (wa(ə)ḏā) となる。 ܘܰܥܒܶܕ(第17課)と同様。
ܛܶܒܠܝܬ̥ܐ
発音eḇlīṯā
意味f. 「(家具の)テーブル」
解説標準的な表記は ܛܰܒܠܝܬ̥ܐ (aḇlīṯā) だが、カラバシは最初の母音を e としている。方言差のようなものだろう。この単語が「家具のテーブル」を指すことは、Jess. などの辞書には明記されていない(→ 単語の背景)。
ܡܰܠܦܳܢܐ
発音malānā
意味m. 「教師」
補足[2013-12-08追記] ܦ が軟音になる点に注意。基本的に子音の後ろに軟音は来ないが、この単語は古形が malləānā であり、もともとは母音の後ろの軟音だった。
参考になる音声ファイル
ܘܰܚܕܐ ܛܰܒܠܝܬ̥ܐ
発音🔊 wa(ə)ḏā aḇlīṯā [waχ(ə).ðɑ(ː) tˤaw.liː.θɑ(ː)]
意味「そして一つのテーブルが」
解説この課の本文と全く同じ語句。音声ファイルは東方言のもので、[χ][w] と発音されている。 の響きにも注目。普通の t と違い、破裂の瞬間に息を吐く音がほとんど聞こえず、独特のうつろな感じがする。
質問
ܐܰܝܟܳܐ ܗ̱ܝ
発音ʾaykāy = 東方言ʾaykay
解説二つ目の母音記号は、カラバシのスタイルでは本来必要ない。 ܐܰܝܟܰܐ ܗ̱ܘ (ʾaykaw) との母音の違いや方言差があるので、念のために母音記号を付けたのかもしれない。
注意

補足説明

[カラバシ注解の目次へ]

この章では、本文中では触れなかった微妙な問題について補足する。

ay + 硬音

ܐܰܝܕܐ (ʾaydā) は、どうして​ ʾayḏā とならないのだろうか。ay は、現実には [ɛɪ] のような二重母音として発音されるのだから、「母音で終わる音節の後ろでは軟音」という規則によって d が軟音になってもおかしくない。実際、方言や話者によっては、そう発音されることもあるようだ。

しかし、歴史的には、y はあくまで子音。​ʾay/(ʔ)aj/ という「子音で終わる音節」だ。「子音で終わる音節の後ろは硬音」という原則に従えば、​ʾaydā となる。

ܐܰܝܟܳܐ (ʾaykā) や ܒܰܝܬܐ (baytā) についても、同様に理解できる。

ローマ字表記についての補足
アーラフ (ʾĀla) とエー (ʕē) の子音

ISO 259/ISO 233/DIN 31635風のラテン文字転写によると、ܐ の子音は U+02BE MODIFIER LETTER RIGHT HALF RING [ ʾ ] で表され、ܥ の子音は U+02BF MODIFIER LETTER LEFT HALF RING [ ʿ ] で表される。

CAL では、それぞれ U+02C0 MODIFIER LETTER GLOTTAL STOP [ ˀ ] と U+02C1 MODIFIER LETTER REVERSED GLOTTAL STOP [ ˁ ] を使っている。ISO 259では、この書き方も認められている。

Peshitta Tool では、U+1D53 MODIFIER LETTER SMALL OPEN O [ ᵓ ] と U+1D9C MODIFIER LETTER SMALL C [ ᶜ ] が使われている。これは形が似た無関係の文字を流用したもので、見た目は格好いいが好ましい表記ではない。

いずれの表記法も、一般の学習者から見ると、どちらがどちらなのか紛らわしい。

この注解では、前者については標準の右半円記号​ [ ʾ ] を使う一方、後者については U+0295 LATIN LETTER PHARYNGEAL VOICED FRICATIVE [ ʕ ] で表した(つまり、発音記号をそのまま文字として用いた)。シリア語では前者は重要でないが、後者は明確に発音する必要がある。そこで、重要なものを大きく、重要でないものを小さく表示した。これは分かりやすくするための便宜上のもので、一般的な慣習ではない。前書きでのカラバシの名前の表記 ――ʿAḇd-Mšīḥā Naʿman―― だけは、ISO風になっている。

軟音を示す横線の位置

この注解では軟音を ḇ, , ḏ, ḵ, , ṯ で表しているが、コンピュータ上では、実際には ḇ, ḡ, ḏ, ḵ, p̄, ṯ を使うことが多い。すなわち、一般的な書き方では、gp は横線を付ける位置が上側になる(字形的に下にあまりスペースがなく、上に書いた方が見やすいため)。混乱を避けるため、この記事では横線の位置を下側に統一した。

曖昧母音 ə について

シリア語において、この短い母音は歴史的には確実に存在するが、次第に脱落して発音されなくなった。シリア文字の母音記号の枠組み内では全く表記されない。しかし、後続する子音が軟音になるという点で、脱落した後でも影響力が残っている。

この記事では、必要に応じてこの母音を (ə) で表したが、常に表記したわけではない。曖昧母音の存在を表記した方が硬音・軟音の関係が分かりやすくなることが多いが、古典シリア語の標準的発音では曖昧母音はほぼ消滅しているため、表記すると混乱を招く面もある。例えば、ܓܰܢܬ̥ܐ は古形 gannəṯā を考えた方が t が軟音である理由が分かりやすいが、それは古典シリア語の発音 ganṯā とはずいぶん異なる。しかも、女性語尾の t が子音の後ろでも軟音になるのはよくあることで、そういうものだと割り切った方が話が早い。このようなケースでは、曖昧母音について言及しなかった。

a/ā/e/ē について [2014-02-16追記]

多くの教科書やテキスト(この注解も含む)において​ “e” で表されている短母音は、場合によっては​ “i” で表されることがある。特に、東方言の発音に基づく場合、しばしばこのように表記される。古典シリア語の音素としては、長母音の /eː//iː/ の区別はあるが、短母音の /e//i/ の区別は存在していない。従って、どちらの表記でも(音素としては)同じ意味になる。

ā は実際の発音では短母音になることがある(少なくとも東方言においては)。つまり、aā については、長さの違い以上に、母音の質の違いが重要な意味を持つと考えられる。eē も、一般には口の開き方が異なっていた可能性が高いが、a/ā と違って、e/ē は長さの違いの方が重要だったようだ。そう考える根拠は:

  1. 現代文語における ā の発音は、東方言において [ɑ(ː)]、西方言において [ɒ(ː)] または [ɔ(ː)] となる(付録2参照)。つまり、東方言と西方言においては唇の丸めが違うが、後舌母音であることには変わりない。別々に発展した2方言において後舌母音なのだから、特別な事情がない限り、ā は古典期においても後舌母音だったと考えるのが合理的だろう。
  2. 同様の考察から、a は古典期において前舌母音だったと推測される。
  3. 東シリア文字・西シリア文字のどちらでも、長母音 ē は「短母音 e の母音記号 + 長音を表す文字」で表現される。この事実は、eē が基本的に長短の差にすぎなかったことを示唆する。一方、aā は東西いずれの文字でも全く別の母音記号で表現される。この事実は、両者が長短の違いだけでなく質的に違っていたことを示唆し、上述の前舌・後舌という解釈とも整合する。

これは、必ずしも、ei の発音が存在していなかったという意味ではない。古典シリア語より前のアラム語では、この二つは音素として区別されていたかもしれないし、古典シリア語としても、この二つは(音素としては区別されなかったとしても)同一音素の異音として存在していた可能性がある。

東シリア文字では、ei が区別して表記される。この区別は東方言独自のものかもしれず、古典シリア語においては意味を持たないかもしれない。しかし、部分的には、古典期における発音(異音)と何らかの関連性を持っている可能性がある。この記事では、同じ e でも、東シリアの e に当たる場合は è で表し、東シリアの i に当たる場合は e で表している。

概して西方言より東方言の方が、古典の発音に近い。古典シリア語の e大部分(つまり e)は、東方言の i に当たるが、現代文語・東方言において、この音は [ɪ] に近く、[i] になる可能性もある。古典シリア語の e一部(つまり è)は東方言の e に当たるが、東方言において、この音は [ɛ] に近いことがある。東方言を「信用」するなら本来の e の発音は [ɪ] に近いのかもしれないが、逆に [e~ɛ] が古典期の発音で後代の東方言は「なまっている」のかもしれない。もしかすると、音素 /e/ の本来の発音は、「ある場合には [ɪ] に近いが、別の場合には [ɛ] に近い」といった複雑なものだったのかもしれない。

残念ながら、古典期の正確な発音は分からない。[ɪ] を採用すると真相が [ɛ] に近かった場合、誤差が大き過ぎる。とりあえず真ん中をとって、[e] と発音しておくのが妥当な線だろう。これなら、4世紀の発音が [i, ɪ, e, ɛ] のどれだったとしても、大きな誤差は生じない。つまり、古典シリア語の eē を実際の発音と一対一対応させるなら、長さの違いだけを考え、[e] / [eː] とするのが暫定的な最適近似と考えられる。

ē の表記

(1) 次の二つのパターンでは、長母音 ē を表すのに ܐ が使われる。

母音記号を含めると ◌ܶܐ になる。ただし、カラバシのスタイルでは、セヤメがある場合、母音記号は省略される。

(1a) より一般的に、ē で終わる音節では、その ē を表すのに ܐ が使われることが多い。

ただし、この場合、西方言では発音が ī に変化していることが多い。

「西シリア文字の ◌ܺ は、ܐ が後続するときは古典シリア語の ē を表す」と解釈すれば、表記と発音の関係は規則的だ。

[2013-12-29追記] 一般論として、西シリア文字の全ての ◌ܺ が古典シリア語の ē に当たるわけではない。ただし、この母音記号が本来の ī を表す場合、大抵は ܝ が後続し、従ってカラバシのスタイルでは母音記号が省略される。例えば、ܗܺܝ の発音は だが、カラバシはそれを単に ܗܝ と表記する。結果的に、カラバシにおいて母音記号 ◌ܺ が表記されている場合、その母音は古典シリア語の ē に当たる可能性が高い。

(2) 子音で終わる音節では、長母音 ē を表すのに ◌ܶܝ が使われる。

特に、「第3子音Y」型の分詞の男性複数形は、この形になる。その場合、ܝ は単なる「長音を示す記号」ではなくもともと語根に含まれる子音なので、ey というローマ字表記が用いられることがある(どちらの書き方でも発音は同じ)。

ܐ で表される ēܝ で表される ē は、わざわざ別の書き方をする以上、もともとは発音が違っていた可能性がある。 ܝ は普通 ī を表すのだから、後者は [ɪː] のような狭い ē だったのかもしれない。あるいは逆に考えて、前者は [ɛː] に近い広めの ē だったのかもしれない。古典シリア語では、この違い(仮にもともと違いがあったとして)は音素的意味を失い、どちらも同じ /eː/ だった。

(3) カラバシ第1巻の単語のうち、次の5語は変則的。古典期に ē と発音された部分が西方言では ī に変化しており、(1a) のパターンにも当てはまらない。

[2013-12-29追記] 最初の3語では、◌ܺܝ―― カラバシでは母音記号が省略される ―― の発音が問題になる。残りの2語では、単体の ◌ܺ の発音が問題になる。

態について

第1巻では、パエル態(Pael)— またはパッエル態 ―― の分詞が2種類、登場した。 ܡܗܰܠܶܟ (mhalleḵ) と ܡܙܰܒܶܢ (mzabben) だった。

パエルではない「普通の態」は、ペアル態(Peal)と呼ばれる。

「態」は動詞の変化パターンの区別であり、Peal と Pael という用語は、動詞の基本形がそれぞれ -(ə)-a- / -a--e- であることを表す。

ペアルは、G語幹とも呼ばれ、単に G とも呼ばれる。パエルは、D語幹とも呼ばれ、単に D とも呼ばれる ―― この用語は、シリア語に限らず、アラム語や他のセム語にも適用される。G と D は、本来、ドイツ語の術語で GrundstammDopp(e)lungsstamm の略。直訳すれば、それぞれ​ “Ground stem”(基底語幹)と​ “Doubled stem”(二重化語幹)に当たる。

「質問」の問題文にも、いくつかパエル態が含まれている。

語根 ŠLM の場合、基本形と命令形は同形。「第3子音Y」型の場合、基本形では末尾が ī だが命令形では末尾が ā となる。

動詞の活用パターンには、上記のペアルとパエルの他に、もう一つ、アフエル態(Aphel)という型がある。このパターンは、頭に​ ʾa- が付いて、​ʾa--e- という基本形を持つ。カラバシ第1巻では1回だけ登場する。第17課ܐܰܪܝܡ (ʾarīm)「高くしなさい」(語根 RWM)がそれだが、これは「第2子音W」型で、基本のパターンとは少し異なる。

文字の上下のドット

慣習として、3人称単数女性の所有語尾 ܗ には、上に点を付けることが多い。この傍点は、本来的には「前の母音が ā であること」を表す。もし母音記号を全く付けない場合、ܠܗ̇lāh (彼女に)、ܠܗlèh (彼に)となって、点の有無により語形と意味が区別される。「上に点が付いている→重要・強調→口を大きく開ける明瞭母音」、「上に点が付いていない→狭い母音」と考えればよい。

ܗܘ つまり ܗܽܘ「彼」は、下に点を付けて ܗ̣ܘ または ܗ̣ܽܘ のように表記されることがある。 ܗܝ つまり ܗܺܝ「彼女」も、同様に下に点を付けることがある。カラバシの教科書では下に点が付いていないが、Jess. や Nöld. では付いている。古い表記法の名残であり、差し当たっては気にする必要ない。 ܗ̣ܶܢܘܢ「彼ら」、ܗ̣ܶܢܶܝܢ「彼女たち」といった表記も同様。

キーボードから入力したい場合、このドットは Shift+; となる(; は [L] の右のキー)。東シリア文字の ܘܼܝܼ の母音記号のドットとは意味が異なり、Unicode のコードポイントも異なる。

単語の背景

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ܒܳܒܐ (bāḇā) ―― 第3課
CAL / Jess. / Costaz などには、この単語に「乳幼児」の意味があることは記されていない。Thesaurus:442 に記載がある。5~6世紀の人 Damascius は「子どもを指すシリア語」として βάβιον という語を記録した。9世紀のフォティオスは、これについて「シリアの人々、特にダマスカスの人々は、新生児や小さい男の子たちを βαβίας と呼ぶ」と記している。後代、アラビア語などの影響で、ܒܳܒܐ は「お父さん」という全然別の意味で使われるようになった。
ܡܘܙܐ (mūzā) ―― 第3課 [2013-12-08追加]
Jess. / Costaz などには、この単語は載っていない。中期ペルシャ語からの借用語らしい。 CALThesaurus:2032 に記載あり。
[2013-12-15追記] MacKenzie: A Concise Pahlavi Dictionary によると、「バナナ」を表す中期ペルシャ語は 𐭬𐭥𐭰 (表記“mwṣ” / 発音mōz)。
ܘܰܙܐ (wazzā) ―― 第15課
カラバシは「白鳥」をこう呼んでいるが、この単語の本来の意味は「ガン、ガチョウ」。一方、ܩܘܩܢܳܘܣ (quqnāws) はギリシャ語からの外来語で、明確に「白鳥」を指す。
ܙܘܙ̈ܐ (zūzē) ―― 第16課 [2014-08-31更新]
単数形は、ܙܘܙܐ (zūzā)。古代の1シェケルは、重さの単位で約11–14グラム。貨幣のシェケル(硬貨)は、もともとその重さの貴金属(恐らく銀)に対応する価値を持っていたのだろう。zūzā は、貨幣の単位としても重さの単位としても、その4分の1に当たるようだ。しかし、「半シェケル」と説明されることもある。
[2015-07-26追記] カラバシの教科書の第3巻・31課には、「パン1キロの値段が30 zūzīn」という描写がある(zūzīnzūzā の複数形の一種)。パン1キロは、おおむね日本のパン3斤に当たる。現在(2015年)、パン3斤の値段は450~750円くらいだろうか…。その点からすると、カラバシの世界の zūzā は現在の20円前後といえそうだ。
ܚܰܘܚ̈ܐ (awē = 東方言 āwē) ―― 第16課
文語シリア語の中で使われているが、実際には現代シリア語の単語。CAL / Jess. / Costaz などには載っていない。Thesaurus:1219 / Maclean:94a に記載があり(後者はアッシリア現代アラム語の辞書)、意味は「桃」となっている。Alan, Level 3, Lesson 72 でも「桃」の意味で使われている。米国版第1巻・巻末の単語集でも「桃」。ところが、カラバシの別のテキスト(要JavaScript)では同じ単語が「プラム」となっていて、青紫のプラムのイラスト(要JavaScript)まで載っている。
「プラム」を表す古典シリア語本来の言い方は、ܚܘܚܐ (ōā) と ܚܰܚܐ (aā) ―― 前者が「スピノサスモモ」、後者が「セイヨウスモモ」とされる。
ܚܰܘܚܐ (awā) は新しい語形で、恐らくアラビア語 خوخ (ḵawḵ) の影響を受けたもの。 خوخ 自体、意味が二重で、エジプト・アラビア語では「桃」、シリア・アラビア語では「プラム」を指すらしい。
[2014-01-26追記] 注: ☆印の資料では、この単語(またはこの単語の母音)の表記に東シリア文字が使われ、ܚܵܘܚܵܐ (āwā) のように書かれている。一般に、aw は東方言では āw になる(Nöld. §49B)。
ܡܰܣܬܐ (mastā) ―― 第17課 [2013-12-15更新]
古典シリア語には、「サワーミルク、凝乳」を表す単語 ܡܣܳܬ̥ܐ (msāṯā) が存在する。それが崩れたような ܡܰܣܬܐ という語形については、Jess.:287a / Thesaurus:2178 / Maclean:186b に記載がある。「ヨーグルト」を表すペルシャ語 ماست (māst) ―― またはクルド語 mast―― の影響を受けた後代の語形かもしれない。
ܣܶܕܪܐ (seḏrā) ―― 第21課
一般的なシリア語辞典には、この単語に「教室」の意味があることは記されていない。ユダヤ系のパレスチナ・アラム語(パレスティナ・アラム語)では、 סִדְרָא (siḏrā) が「柱の列、柱が並んだ部屋、学習の広間」という意味を持つ(Jastrow:959a)。シリア語での「教室」の意味が、パレスチナ・アラム語の影響を受けているのかどうかは不明。
ܛܰܒܠܝܬ̥ܐ (aḇlīṯā) ―― 第21課
「家具のテーブル」の意味は CAL や Jess. には明記されていないが、Costaz:122a に記載がある。ギリシャ語 τάβλα の借用とされる。だとすれば、英語の table と同語源。τάβλα の原義は「(筆記用の)板」。「サイコロ遊びの遊戯台」の意味もあるので「テーブル」になってもおかしくはないが、「テーブル」の意味は後代のもの。アラビア語 طاولة (āwila) は明確に「テーブル」を指し、その影響があるのかもしれない。

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