n が合成数のときのガウス和(遊びの数論54)

[遊びの数論] 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | 13 | 14 | 15 | 16 | 17 | 18 | 19 | 20
21 | 22 | 23 | 24 | 25 | 26 | 27 | 28 | 29 | 30 | 31 | 32 | 33 | 34 | 35 | 36 | 37 | 38 | 39 | 40
41 | 42 | 43 | 44 | 45 | 46 | 47 | 48 | 49 | 50 | 51 | 52 | 53 | 54

遊びの数論53の続き。誤字脱字・間違いがあるかも。


✿ ✿ ✿ ✿ ✿


2026-01-09 n が合成数のときのガウス和(後編)

#遊びの数論 #ガウス和平方 | 符号 | n 偶数 | n 合成数

中編では、 n が「互いに素な二つの因子の積」である場合のガウス和について検討した。得られた成果を応用すると、 n が三つ以上の(互いに素な)因子から成る合成数の場合についても、容易に扱える。これによって、原理的には、任意のガウス和の値を決定できる!

§30 n が合成数の場合のガウス和: 計算法

中編で証明された事柄をあらためて記すと:

定理28(Gauß [0] p. 36, [1] p. 486) 互いに素な正の整数 p, q の積を n = pq をとする。 1 の原始 n 乗根 r についての(n 項の)ガウス和
  Wn = r0⋅0 + r1⋅1 + r2⋅2 + ··· + r(n−1)(n−1)
は、次の積に等しい。すなわち、 1 の原始 p 乗根 rqq についての(p 項の)ガウス和
  Wp = (rqq)0⋅0 + (rqq)1⋅1 + (rqq)2⋅2 + ··· + (rqq)(p−1)(p−1)
と、 1 の原始 q 乗根 rpp についての(q 項の)ガウス和
  Wq = (rpp)0⋅0 + (rpp)1⋅1 + (rpp)2⋅2 + ··· + (rpp)(q−1)(q−1)
について、
  Wn = Wp Wq
が成り立つ。

参考までに、総和記号を使ってこの定理の証明をまとめ直すと(総和記号を使わない議論については前編中編を参照):
  Wp Wq = {a=0 to q−1} (rqq)aa × {b=0 to p−1} (rpp)bb
   = {a=0 to q−1}{b=0 to p−1} [(rqq)aa × (rpp)bb]
   = {a=0 to q−1}{b=0 to p−1} [rqqaa × rppbb] = {a=0 to q−1}{b=0 to p−1} [r(qa)2 + (pb)2]

〔注〕 最後の等号は、単に指数法則 rA⋅rB = rA+B による(A 個の r の積と、 B 個の r の積を掛け算すれば、 A+B 個の r の積)。二つ目の等号は、次のような分配法則に過ぎない(q = 2, p = 3 の例):
  (Q0 + Q1)(P0 + P1 + P2) = Q0(P0 + P1 + P2) + Q1(P0 + P1 + P2)
   = (Q0 P0 + Q0 P1 + Q0 P2) + (Q1 P0 + Q1 P1 + Q1 P2)

ここで r(qa)2 + (pb)2 = r(qa + pb)2 に留意すると(§28)、定理28を証明するには、
  Wp Wq = {a=0 to q−1}{b=0 to p−1} [r(qa + pb)2]
の右辺の n (= pq) 項の和が、
  Wn = {k=0 to n−1} rk2
の右辺の n 項の和と(足し算の順序の違いを無視すれば)同一であること――を示せば十分。それには、前者の(r の肩の)指数に含まれる n 種類の整数 qa + pb と、後者の指数に含まれる n 種類の整数 k が、(n の倍数の違いを無視すれば)1対1に対応すること――を示せば十分(§29)。命題27により、事実この1対1対応が成り立つ。∎

定理28は、 n が合成数の場合のガウス和の符号を決定するための理論上の基礎として、極めて重要な意味を持つ。ただし、そのままの形式では、必ずしも見通しが良くない。同じ内容を次のように言い換えると便利だろう。

まず、この定理の状況において、もし r が 1 の「基本」原始 n 乗根(偏角 360°/n = 360°/(pq))なら、
  rq は「基本」原始 p 乗根(偏角 360°/(pq) × q = 360°/p
だ。 q は p と互いに素なので、 (rq)q = rqq も、引き続き 1 の原始 p 乗根(補題26〘ⅱ〙)。 (rq)q の偏角は rq の偏角の q 倍、つまり 360° × q/p だ。便宜上の記号として、偏角が 360° × /N の「1 の原始 N 乗根」に関連する(N 項の)ガウス和を
  G[/N]
で表すことにする。 r が「基本」の原始 n 乗根なら
  Wn = G[1/n]
であり、このとき Wp は(上述のように)偏角 360° × q/p の原始 p 乗根 (rq)q に関連するガウス和だから:
  Wp = G[q/p]
同様に、このとき Wq は、偏角 360° × p/q の原始 q 乗根 (rp)p に関連するガウス和だから:
  Wq = G[p/q]

従って、 r が「基本」原始 n 乗根の場合、定理28の等式 Wn = Wp Wq は、次を含意する(一つ目の等号は、単に n = pq による)。

命題29 G[1/n] = G[1/(pq)] = G[p/q]⋅G[q/p]

この命題は第2部・最終節§24の(✽)であり、そこに記されているように、この命題を軸として、平方剰余の相互法則の第四証明が成立する!

〔補足〕 もし N が 3 以上の素数なら、ガウス和 G[/N] は、 N を 4 で割った余りが 1 か 3 かに応じて、
  (/N)⋅N ないし (/N)⋅iN
に等しい(§13)。

より一般的に、 r を任意の「1 の原始 n 乗根」として、 r の偏角を
  360° × /n = 360° × /(pq)
とすると、そのとき原始 p 乗根 rqq の偏角は
  360° × /(pq) × qq = 360° × ℓq/p
であり、原始 q 乗根 rpp の偏角は
  360° × /(pq) × pp = 360° × ℓp/q
であるから、定理28の等式 Wn = Wp Wq は、下記の意味を持つ。

定理30(n が合成数のときのガウス和についての基本法則) p, q を互いに素な正の整数、 n = pq をそれらの積とする。 n と互いに素な任意の整数 ℓ について、次が成り立つ:
  G[/n] = G[/(pq)] = G[ℓp/q]⋅G[ℓq/p]

命題29は、この定理の特別な場合だ(ℓ = 1)。

〔補足〕 一般には、 n の値が同じでも、幾つかの相異なる 1 の原始 n 乗根が存在する。パラメーター ℓ によって、そのうちどれを(ガウス和の基準となる原始 n 乗根 r として)選択するかが特定される(ℓ = 1 なら「基本」の原始 n 乗根)。 ℓ は正でも負でも構わないが、 r が 1 の原始 n 乗根であり続けるためには、 ℓ と n は互いに素でなければならない(補題26)。

ℓ の値が異なる場合でも、もし2種類の ℓ の差が n の倍数なら、それら2種類の ℓ が表す「1 の原始 n 乗根」は等しい。実際、「基本」の原始 n 乗根を R とすると、任意の原始 n 乗根 r は r = R の形を持つ。この数は Rℓ±nの倍数 に等しい(補題25〘ⅲ〙)。従って、
  G[/n] や G[m/n] など
の形の ℓ や m などについては mod n で考えて構わない(分子を「分母で割った余り」に置き換えても、値は変わらない)。

§31 具体例: n = 15 の場合のガウス和

n = 15 の場合(p = 3, q = 5)。次のように mod 3 では 1 は平方剰余、 2 は非剰余。 mod 5 では 1 と 4 は平方剰余、 2 と 3 は非剰余。(ここでは 0 については、平方剰余にも非剰余にも含めない。)

1 は平方剰余(mod 3)
N12
N の平方14
3 で割った余り11
1, 4 は平方剰余(mod 5)
N1234
N の平方14916
5 で割った余り1441

例1 r を「基本」の 1 の原始15乗根(偏角 24°)とすると、それに関連するガウス和
  W = r0⋅0 + r1⋅1 + r2⋅2 + ··· + r14⋅14
は i15 に等しい(定理10)。このガウス和を「n が合成数の場合の原理」に従って、再計算してみる。命題29から:
  W = G[3/5]⋅G[5/3] = (3/5)5 × (5/3)⋅i3
   = (−1)⋅5 × (−1)⋅i3 = i15
当然ながら、同じ値が得られる。ここで (3/5)(5/3) = (2/3) は Legendre 記号で(§13参照)、どちらも −1 を返す。なぜなら x2 ≡ 3 (mod 5) にも x2 ≡ 5 ≡ 2 (mod 3) にも、解がない(平方非剰余)。

例2 1 の原始15乗根のうち偏角 24° × 2 = 48° のものを r とすると(ℓ = 2)、関連するガウス和は ±i15 だ(定理9)。 §25ではこの符号の決定方法・符号のパターン性が分からなかったが、今は定理30がある!
  G[2/15] = G[2⋅3/5]⋅G[2⋅5/3] = (6/5)5 × (10/3)⋅i3
   = (+1)⋅5 × (+1)⋅i3 = i15
二つの Legendre 記号はどちらも +1 を返す。なぜなら x2 ≡ 6 ≡ 1 (mod 5) にも x2 ≡ 10 ≡ 1 (mod 3) にも、明らかに解 x ≡ 1 がある(平方剰余)。

例3 1 の原始15乗根のうち偏角 24° × 4 = 96° のものを r として(ℓ = 4)、関連するガウス和 ±i15 の符号を定理30によって決定する。
  G[4/15] = G[4⋅3/5]⋅G[4⋅5/3] = (12/5)5 × (20/3)⋅i3
   = (2/5)5 × (2/3)⋅i3 = (−1)⋅5 × (−1)⋅i3 = i15
二つの Legendre 記号はどちらも −1 を返す。なぜなら 2 は mod 5 でも mod 3 でも平方非剰余。

例4 1 の原始15乗根のうち偏角 24° × 7 = 168° のものを r として(ℓ = 7)、関連するガウス和を求める。
  G[7/15] = G[7⋅3/5]⋅G[7⋅5/3] = (21/5)5 × (35/3)⋅i3
   = (1/5)5 × (2/3)⋅i3 = (+1)⋅5 × (−1)⋅i3 = −i15
Legendre 記号の一方だけが −1 を返し、結果の符号はマイナスに。実際 1 (mod 5) は平方剰余だが、 2 (mod 3) は非剰余。

〔参考〕 1 の原始15乗根には、上記の他にもあと4種類あり、それらは ℓ = −1, −2, −4, −7 に(言い換えれば ℓ = 14, 13, 11, 8 に)対応する。これら4種類の数に関連するガウス和 ±i15 の符号は、それぞれ ℓ = 1, 2, 4, 7 の場合と逆になる。理由は次の通り。 N ≢ 0 のとき、 mod 5 においては「ある数 N が平方剰余か?」「その −1 倍の数 −N が平方剰余か?」という二つの質問への答えが必ず一致するのに対して、 mod 3 では今述べた二つの質問への答えが必ず逆になる(この件に関しては、一般に 4 の倍数より 1 大きい素数は 5 と同様の性質を持ち、 4 の倍数より 3 大きい素数は 3 と同様の性質を持つ。この規則性は、第一補充法則と呼ばれる)。その結果、
  G[ℓ⋅3/5]⋅G[ℓ⋅5/3] と G[−ℓ⋅3/5]⋅G[−ℓ⋅5/3]
を比較した場合、両者の第一因子から生じる Legendre 記号は符号が逆になり、両者の第二因子から生じる Legendre 記号は符号が変わらない。結局、前者と後者では(一つの因子の符号だけが反転して)、全体として符号が逆になる。

§32 n が任意個の因子の積の場合

定理30を再掲:
  G[/(pq)] = G[ℓp/q]⋅G[ℓq/p]  ア
ここで p, q は互いに素なら何でもいい―― p 自身(または q 自身)が合成数でも構わない。今 a, b, c をどの二つも互いに素な正の整数として、 n = abc とする。 r を「1 の原始 n 乗根」のうち、偏角が 360° × K/n のものとする(ℓ = K)。 p = cb, q = a と置くと、明らかに p, q は互いに素。よってアから:
  G[K/(abc)] = G[K/((cb)a)] = G[K(cb)/a]⋅G[Ka/(cb)]  イ
イの右端の因子に再びアを適用すると(ℓ = Ka, p = c, q = b):
   = G[Kbc/a] × G[Kac/b]⋅G[Kab/c]  ウ
仮定により bc = abc/a = n/a であり、同様に ac = n/b, ab = n/c なので、ウを次のように整理できる。

命題31 a, b, c をどの二つも互いに素な正の整数、 n = abc をそれらの積とする。 n と互いに素な任意の整数 K について、次が成り立つ:
  G[K/n] = G[K/(abc)] = G[Kn/a/a]⋅G[Kn/b/b]⋅G[Kn/c/c]

より一般的に:

定理32(cf. Gauß [0] p. 37, [1] p. 487) q1, q2, ···, qu をどの二つも互いに素な正の整数(u ≥ 2)、 n をそれらの積、 K を n と互いに素な任意の整数とすると:
  G[K/n] = G[K/(q1q2···qu)] = G[Kn/q1/q1]⋅G[Kn/q2/q2]···G[Kn/qu/qu]

証明 u = 2 の場合は、定理30による(p = n/q = q1, q = n/p = q2)。 u = 3 の場合は、命題31による。定理32が 2 以上 μ 以下の任意の u について正しいと仮定して、定理32が u = μ + 1 についても成り立つことを示そう。
  m = q1q2···qμ, q′ = qμ+1, n = mq′
と置くと:
  G[K/n] = G[K/(q1q2···qμ+1)] = G[K/(mq′)]
仮定により m と q′ は互いに素。定理32は u = 2 の場合に正しいので:
   = G[Kn/m/m]⋅G[Kn/q′/q′] = G[Kq′/m]⋅G[Kn/q′/q′]  エ

(帰納法の)仮定により、定理32は u = μ に対して正しい。よって、エ右辺の第1因子は次の積に等しい:
  G[Kq′m/q1/q1]⋅G[Kq′m/q2/q2]···G[Kq′m/qμ/qμ]
   = G[Kn/q1/q1]⋅G[Kn/q2/q2]···G[Kn/qμ/qμ]  オ
従ってエは、「オの μ 個の因子の積」に、「エ右辺の第2因子」
  G[Kn/q′/q′] つまり G[Kn/qμ+1/qμ+1]
を掛けたものに、等しい。それが示されるべきことだった。∎

§33 具体例: n が任意個の因子の積の場合のガウス和

n = 3⋅5⋅7 = 105 の場合。

問題 r を 1 の原始105乗根、その偏角を 360° × 58/105 とする。この r に関連するガウス和
  W = r0⋅0 + r1⋅1 + r2⋅2 + ··· + r104⋅104
を求める。

 mod 3 では 1 が平方剰余、 mod 5 では 1, 4 が平方剰余(§31)。一方、 mod 7 では、次のように 1, 2, 4 は平方剰余、 3, 5, 6 は非剰余。

1, 2, 4 は平方剰余(mod 7)
N123456
N の平方149162536
7 で割った余り142241

W = ±105 であることは分かっている。符号を決定したい。 105 には互いに素な因子が三つあるので、定理32で u = 3 の場合、つまり命題31を使おう。 a = 3, b = 5, c = 7, n = abc = 105 とすると、 n/a = bc = 35, n/b = ac = 21, n/c = ab = 15。従って:
  W = G[58/105] = G[58⋅35/3]⋅G[58⋅21/5]⋅G[58⋅15/7]
分子の 58⋅35 については mod 3 で考えて構わない(例えば 58 を 3 で割った余り 1 に置き換えていい)。同様に 58⋅21 については mod 5 で、 58⋅15 については mod 7 で考えていい。
   = G[1⋅2/3]⋅G[3⋅1/5]⋅G[2⋅1/7]
   = (2/3)⋅i3 × (3/5)⋅5 × (2/7)⋅i7
   = (−1)⋅i3 × (−1)⋅5 × (+1)⋅i7 = −105
なので符号はマイナス。∎

〔注〕 ばか正直に掛け算して 58⋅35 = 2030 が mod 3 の平方剰余か非剰余か判定しても構わないが、 2030 ≡ 2 (mod 3) であり、掛け算してから簡約するより、簡約してから掛け算した方が効率的。 58⋅21 などについても同様。

✿

以上によって、 n が合成数でも、それが相異なる素数一つずつの積に分解されるのであれば、任意の「1 の原始 n 乗根」に関連するガウス和を(符号も含めて)決定できる――既知の方法を組み合わせて。喜ばしい一歩だ!

半面、 n = 32⋅5⋅7 とか n = 25⋅113 のように、因子の中に同じ素数が重複して含まれる場合、その種の「1 の原始 n 乗根」については、まだ「基本」の原始 n 乗根しか扱えない。というのも――任意の素数 p について、任意の「1 の原始 p 乗根」を処理することなら可能だが――、「1 の原始 p2 乗根」「1 の原始 p3 乗根」等々を処理する一般的アルゴリズムが未実装。この制約を取り払うには、 n が《素数の累乗》の場合のガウス和について研究する必要がある。

✿ ✿ ✿


2026-01-11 n が奇素数の累乗のときのガウス和(前編)

#遊びの数論 #ガウス和平方 | 符号 | n 偶数 | n 合成数

正九角形の画像1: 座標面上の原点を中心として点 (1, 0) を頂点0、偏角40°の点 (cos 40°, sin 40°) を頂点1、等々とする。

正九角形のマイナーな性質…

図のように半径 1 の円に内接させたとき、頂点 1, 2, 4 それぞれの横座標の積は 1/8 に等しい。それらの横座標は、作図から 0.75, 0.15, −0.95 くらい、 0.75 × 0.15 × (−0.95) = 約 −0.11 だが、正確に計算するとちょうど −0.125 = −1/8 に。この積は、モリーの法則(Morrie’s law)――ノーベル物理学者ファインマンのお気に入りだった数式――と呼ばれるものの一種。

一方、正九角形の頂点を「三つごとに一つ」(二つ置き)の割合で選ぶと、各頂点の横座標の和も、縦座標の和も 0。例えば頂点 1, 4, 7 の横座標の和は 0.75 + (−0.95) + 0.15 = −0.05 くらいだが(頂点 7 の座標は、頂点 2 の座標と横が同じで縦が −1 倍)、正確に計算すると 0、縦座標の和は 0.65 + 0.35 + (−1.0) = 0 くらいだが、これも実は正確に 0。

正25角形や正27角形など、《奇数の平方》角形、《奇数の立方》角形などの頂点は、多かれ少なかれ同様の性質を持つ。一般に、この種のことは三角関数の問題として扱われることが多いが、ガウスはそれを「指数の整数演算」で軽妙に扱った。「三段重ねの親亀・小亀・孫亀」のような「指数の肩のプチ指数」の繊細な操作。結論はともかく、手法は結構面白い。

† 頂点 1 は、 1 の原始立方根 ω = (−1 + i3)/2 のそのまた立方根 3ω = 0.76604 44431… + i⋅0.64278 76096… に当たる。つまり 1 の9乗根。その横座標「難路無理多し」は 4 が四つ続くのが印象的。縦座標は「虫に菜っ葉」。

✿

§34 円周9等分(つまり 1 の9乗根)

任意の n について、任意の「1 の原始 n 乗根」(円周 n 等分点)に関連するガウス和を求めたい。 n が奇素数の場合が基本的(§13)。 n が複数の素数(必ずしも相異ならない)の積
  n = p1 p2 ···
である場合には、それを易しい問題に分解することができる(定理32)。ただし、今のところ、因子の中に同じ素数が複数ある場合――例えば
  n = 45 = 3⋅3⋅5
のような場合――については、
  n = 32 × 5
と分解後、 5 は処理可能だけど 32 を扱う方法が準備されてない。このギャップを埋めたい。

ここでは p が(正の)素数で t が 2 以上の整数の場合の pt を、素数の累乗と呼ぶ。素数べきとも呼ばれる(「べき」=漢字では「冪」、略字「巾」)。

〔注〕 一般の文脈で「累乗」と言う場合には「0 乗」や「1 乗」や「負数乗」なども含意され得るが、以下の議論で素数の累乗について言及する場合、「指数は 2 以上の整数」とする。

2 の累乗(4, 8, 16 など)については別に扱う必要があるので、《奇素数の累乗》のケースから。最小の例は n = 32 = 9、他の例は 52 = 25, 33 = 27, 72 = 49, 35 = 81, 112 = 121, 53 = 125 など。一般論の前に、具体例 n = 9 で、どんな感じか様子を見てみたい。

正九角形の画像2: 偏角40°の点 (cos 40°, sin 40°) を r¹, 偏角80°の点 (cos 80°, sin 80°) を r², 等々とする。

R を 1 の「基本」原始9乗根(偏角 360°/9 = 40° の円周9等分点)とする。 r = R に関連するガウス和
  r0⋅0 + r1⋅1 + r2⋅2 + ··· + r8⋅8
が = +9 = 3 であることは既知(定理10)。より一般的に、 r = RK を任意の「1 の原始9乗根」とした場合(K は 9 と互いに素な任意の整数)、関連するガウス和 W は
  W = r0⋅0 + r1⋅1 + r2⋅2 + ··· + r8⋅8 = ±3
で、符号は K の選択に応じて ± どちらかになるはず(定理9)。実はこの場合、 K の選択と無関係に、常に W = +3 になる。

なぜ?

W の 9 項の和を、次の三つの部分に分けて考える:
  甲 r0⋅0 + r3⋅3 + r6⋅6
  乙 r1⋅1 + r4⋅4 + r7⋅7
  丙 r2⋅2 + r5⋅5 + r8⋅8

r は「1 の原始9乗根」(6種類ある)の一つ。6種類のどれを r としたに選んだにせよ、9乗根であるからには r9 = 1。よって、甲 = r0 + r9 + (r9)4 = 1 + 1 + 14 = 3 が常に成立。結論から言うと、甲・乙・丙の和 W は、この甲の和だけで決まる。乙の和も、丙の和も、 = 0 だから。

なぜ乙の和・甲の和が、どちらも = 0 なのか?

上記の具体例に関して、指数を簡約(補題25〘ⅲ〙参照)して具体的に計算するなら:
  乙 = r1 + r16 + r49 = r1 + r7 + r4 = r1(1 + r3 + r6)
この ( ) 内は―― 1 の原始3乗根 ω = r3 を使って書き換えると――実は 1 + ω + ω2 = 0 に等しい。丙の和についても同様。 「原始9乗根 r の 3 乗」は「原始3乗根」であることに注意する(補題26〘ⅰ〙で f = 3, n = 9 のケース)。

〔付記〕 従って、
  r1 = x1 + iy1, r4 = x4 + iy4, r7 = x7 + iy7
と置けば(それらの和が 0 = 0 + i⋅0 なのだから)、
  x1 + x4 + x7 = 0 そして y1 + y4 + y7 = 0
であり、冒頭で記した「正九角形の頂点 1, 4, 7 の横座標の和・縦座標の和はどちらも 0」という現象は、不思議ではない。頂点 2, 5, 8 についても同様。

1 + ω + ω2 = 0 は、それ自体として基本公式かもしれないが、次節では、もっと一般的な観点から「なぜそうなるか」を記す。――「もし仮に 1, ω, ω2 の後ろに第4の項があるとしたら ω3 だろう」「ω は 1 の 3 乗根なので、この架空の項 ω3 は第1項に等しいだろう」「だから 1 + ω + ω2 という和は = 0 だ!」というような考え方は(最初、意味不明に思えるかもしれないが)、かなり役に立つ。ある種の複雑そうな和が = 0 であることが、チラッと眺めただけで分かるので。

§35 「最後の項」の次の項

上記の乙や丙の和が = 0 になる現象を一般化し、統一的に扱うとき、次の補助命題が役立つ。

補題33 初項が a で、項が次々に x 倍される数列
  a, ax, ax2, ax3, ···, axm−1, axm, axm+1, ···
の、初項から axm の項までの各項の和
  S = a + ax + ax2 + ax3 + ··· + axm−1 + axm
を求めたいとする。もし x ≠ 1 で、しかも axm+1 = a なら、この和 S は 0 に等しい。

証明 求めたい和 S の x 倍を考える:
  Sx = (a + ax + ax2 + ··· + axm−1 + axm)x
   = ax + ax2 + ax3 + ··· + axm + axm+1
この最後の項 axm+1 は、仮定により a に等しい。つまり:
  Sx = (ax + ax2 + ax3 + ax4 + ··· + axm) + a
この右辺は、求めたい和 S の最初の項を最後に持ってきただけ。結局:
  Sx = S 移項して Sx − S = 0
  ∴ S(x − 1) = 0  カ

仮定により x ≠ 1 なので x − 1 ≠ 0。よって、カは S = 0 を含意する(カの両辺を x − 1 で割ることでも、同じ結論に)。∎

要約 「公比が 1 でない等比数列」の「初項」から「末項」までの和は、もし「末項の次の項」(和の範囲外だが、「末項」を「公比」倍した値)が「初項」と同じ値に戻る場合には、ゼロに等しい。

「公比が 1 でない」というのは重要な必要条件。この条件を無視すると、例えば
  6 + 6 + 6 = 0
のような、でたらめな結論が生じ得る。公比 1 の場合には各項の値が同じだから、 N 項の和なら、当然その「同じ値」の N 倍が答え。特に、公比が 1 で各項が 1 なら、和は項数 N に等しい。

〔補足〕 教科書通りの「等比数列の和の一般公式」(分数の形)を使ってこの補題を証明することは、もちろん可能。この補題の代わりに、一般公式を直接適用してもいい。以下では補題33のパターンが繰り返し現れる。複雑な二重指数が絡む数列が問題になるため、毎回いちいち一般公式を持ち出すのは少し面倒。

例1 r が(任意の)「1 の原始9乗根」のとき:
  乙 = r1⋅1 + r4⋅4 + r7⋅7
   = r12 + r42 + r72
   = r12 + r(1+3)2 + r(1+6)2
   = r1 + r1+6 + r1+12  キ ← この変形については下記
   = r1 + (r1⋅r6) + (r1⋅r12)
   = r1 + r1(r6) + r1(r6)2  ク

クの三つの項は、補題33において初項 a = r1, 公比 x = r6, 末項 ax2 = r1(r6)2 のケースに当たる(m = 2)。つまり項が次々に r6 倍されていもし「末項の次の項」(axm+1)があったとしたら、それは r1(r6)3 = r1r18 だが、仮定により r18 = (r9)2 = 1 なので、 r1⋅r18 は、初項 r1 に等しい。しかも r は 1 の原始9乗根なので、公比 r6 は ≠ 1。ゆえに補題33(の要約)から、クの三つの項の和は 0 に等しい。

† 分かりにくければ、クを = r1[1 + (r6) + (r6)2] と変形してもいい。その [ ] 内は、補題33から――あるいは、等比数列の和の一般公式から―― 0 に等しい。

キの行の変形について。素朴に考えると (1 + 3)2 = 12 + 2⋅3 + 32 なのでキの第2項は r1+6+9 になり、同様にキの第3項は r1+12+36 になる。そのようにしても計算上、間違いではないが、 r は 1 の9乗根なので、 r の肩の指数については 9 の倍数を自由に加減できる(補題25〘ⅲ〙)。だから、指数の +9 ないし +36 の部分は省略可。――単に「指数が少し簡単になる」というだけでなく、ここで指数を一部省略するからこそ、クが等比数列の和であることが鮮明になり、スムーズに補題33を発動できる(さもなければ、クの部分は r1 + r1⋅r15 + r1⋅r48 という、見通しの悪い足し算になってしまう)。後述のように、このパターンの計算では、常に同様の「指数の一部省略」が奏功する。

例2 r が 1 の原始9乗根のとき:
  丙 = r2⋅2 + r5⋅5 + r8⋅8
   = r22 + r52 + r82
   = r22 + r(2+3)2 + r(2+6)2
   = r4 + r4+6 + r4+12  ケ
   = r4 + r4(r6) + r4(r6)2  コ

ケでは、 r の肩の指数について、 (2 + 3)2 = 22 + 2⋅2⋅3 + 32 の 32 を省略し、 (2 + 6)2 = 22 + 2⋅2⋅6 + 62 の 62 も省略(省略された数は、どちらも因子 3 を二つ含むので 9 の倍数)。例1同様、補題33から、コの和は = 0 だ。

乙・丙が = 0 という前節の主張が確認された。一般に n が《奇素数の累乗》のとき、同様の議論が成り立つ。すなわち…

§36 消滅する部分和

命題34 p を 3 以上の素数、 n = p2 とする。任意の「1 の原始 n 乗根」(つまり 1 の原始 p2 乗根)を r として、関連する(n 項の)ガウス和
  W = r02 + r12 + r22 + ··· + r(n−1)2
   = r02 + r12 + r22 + ··· + r(p2−1)2
を考える。 W の最初の項を 0 番、次の項を 1 番、···、一般に指数が k2 の項を k 番と呼ぶと、和 W の値は、実質的には《p の倍数》番の項たちだけによって決まり、常に p に等しい。それ以外の項たちは、全体として、和が 0 に等しい(無いのと同じ)。

証明 W 右辺の rk2 の形の各項を(k = 0, 1, 2, ···, n−1)、 「k を p で割った余り」によって p 種類に分類し、各種類ごとの和を考える。《p の倍数》番の項たちのうち、最後のものは (p−1)p 番であることに留意する(n−1 番で終わりなので、 pp = n 番の項はない)。つまり:
  【余り 0】 r02 + rp2 + r(2p)2 + r(3p)2 + ···  + r[(p−1)p]2
  【余り 1】 r12 + r(1+p)2 + r(1+2p)2 + r(1+3p)2 + ···  + r[1+(p−1)p]2
  【余り 2】 r22 + r(2+p)2 + r(2+2p)2 + r(2+3p)2 + ···  + r[2+(p−1)p]2
    ︙

より一般的に、(項の番号を p で割った余りについて)【余り ℓ】の項たちの和を
  S = r2 + r(ℓ+p)2 + r(ℓ+2p)2 + r(ℓ+3p)2 + ···  + r[ℓ+(p−1)p]2  サ
としよう(ℓ は 0, 1, 2, ···, p−1 のどれかの定数)。サ右辺の「最初の項」以外において、 r の肩に乗る指数は
  (ℓ + up)2 = ℓ2 + 2ℓup + (up)2  シ
の形を持つが(u は 1 以上 p−1 以下の整数)、シ右辺・第3項の (up)2 = u2p2 は p2 (= n) の倍数なので、省略可(補題25〘ⅲ〙)。シの展開と、今述べた指数の一部省略を行うと:
  r(ℓ+up)2 = r2+2ℓup = r2r2ℓup
スペース節約のため r2 の代わりに rℓℓ と書くと:
   = rℓℓ⋅[(rp)2]ℓu = rℓℓyℓu  (✽)
ここで y = (rp)2 と置いた。この y は 1 の原始 p 乗根に当たる――なぜなら、命題34の仮定により r は 1 の原始 p2 乗根なので、 r の p 乗は 1 の原始 p 乗根であり(補題26〘ⅰ〙)、そのまた 2 乗も引き続き 1 の原始 p 乗根(同〘ⅱ〙)。(✽)によって、サをこう整理できる:
  S = rℓℓ + rℓℓ(y)1 + rℓℓ(y)2 + ··· + rℓℓ(y)p−1  ス

ℓ = 0 のとき、 rℓℓ = r0y = y0 も 1 に等しいので、ス右辺の(p 個の)項はどれも 1 に等しく、
  S0 = 1 + 1 + 1 + ·· ·  + 1 = p
だ(p 個の 1 の和)。

一方、 ℓ ≠ 0 なら 1 ≤ ℓ ≤ p−1 だが、その範囲のどの ℓ も、素数 p の倍数ではないので(そして y は 1 の原始 p 乗根なので)、補題25〘ⅰ〙により、 y ≠ 1。このときスは、初項が rℓℓ で、公比が y (≠ 1) で、末項が rℓℓ(y)p−1 の等比数列の和。しかも、もし「末項の次の項」があったとしたら、それは
  rℓℓ(y)p = rℓℓ(yp) = rℓℓ(1)
なので、初項 rℓℓ に等しい。ゆえに補題33(の要約)から、この等比数列の和は 0 だ――【余り 1】の項たちの和、【余り 2】の項たちの和、【余り 3】の項たちの和、等々は、どれも = 0。よって、それら全体の総和も = 0。

結局、命題34の和 W は、【余り 0】の項たち(=項の番号が p の倍数の項たち)の和 S0 = p に等しく、それ以外の項たちは無いのと同じ。∎

とりあえずの結論: p が 3 以上の素数のとき、任意の「1 の原始 p2 乗根」に関連するガウス和は +p に等しい(符号は常にプラス)。

〔参考〕 等比数列の和の概念を使う代わりに、次のように論じてもいい。 r は 1 の原始 p2 乗根だから rp は 1 の原始 p 乗根(補題26〘ⅰ〙)。 p は奇素数なので、 ℓ が 1 以上 p 未満なら 2ℓ と p は互いに素。そのとき r2ℓp = a と置くと a は引き続き 1 の原始 p 乗根であり(補題26〘ⅱ〙)、スを次のように書くことできる。
  S = rℓℓ(1 + a + a2 + ··· + ap−1)
この ( ) 内は、方程式 xp − 1 = 0 の p 個の解の和だから、解と係数の関係から、その方程式の p−1 次の係数に(つまり 0 に)等しい。

§37 n が《奇素数の偶数乗》のときのガウス和

命題34を拡張して、「1 の原始 p4 乗根」「1 の原始 p6 乗根」等々、一般に n が p の偶数乗の場合のガウス和を求める。

定理35(Gauß [0] p. 33, [1] p. 483) p を 3 以上の素数、 h を正の整数として、 p の偶数乗 n = p2h を考える。このとき、 1 の原始 n 乗根 r に関連するガウス和 W は、常に +n = ph に等しい。

〔注〕 命題34は、この定理で h = 1 の場合。 p が ≡ 1 (mod 4) でも ≡ 3 ≡ −1 (mod 4) でも p偶数 ≡ (±1)偶数 ≡ 1 (mod 4) なので、 n = p偶数 のときのガウス和は、常に N の形になり、決して iN の形にはならない。

証明 命題34と同様に、
  W = {k=0 to n−1} rk2 = r02 + r12 + ··· + r(n−1)2
の(n = p2h 個の)項の和を、「k を ph で割った余り ℓ」によって、 ph 種類の部分和 S に分ける(ℓ は 0 以上 ph 未満)。

上記 W における k の値を「番号」と呼ぶと、 W の n 個の項から 《ph の倍数》番の項たちだけを抜き出して足し合わせた和は:
  S0 = r02 + r(ph)2 + r(2ph)2 + r(3ph)2 + ···  + r((ph−1)ph)2
この右辺の和は ph 個の項から成各項が 1 に等しい。実際、最初の項は明らかに r0 = 1 だし、それ以外の項における r の肩の指数は、因子 ph を二つ持つから (ph)2 の倍数――つまり p2h = n の倍数。ゆえに S0 = ph だ。

† S0 の右辺各項の r の肩の指数は、 (Xph)2 の形を持ち、 X が 0, 1, 2, ···, ph−1 の値を取る。もしもその次の項があったとしたら、 r の指数が (ph⋅ph)2 つまり (p2h)2 = n2 になってしまうが(X = ph に相当)、それは和の範囲外(W の末尾の項は n−1 番なので)。

よって S0 以外の部分和 S がどれも = 0 であることを示せば、 W = S0 = ph と結論され、定理35は証明される。

今、 ℓ として、 1 以上 ph 未満の任意の整数を選び、固定する。このとき S の各項は、《ph の倍数より ℓ 大きい番号》を持つのだから(言い換えると、番号を ph で割ると ℓ 余る):
  S = r2 + r(ℓ+ph)2 + r(ℓ+2ph)2 + r(ℓ+3ph)2 + ···  + r(ℓ+(ph−1)ph)2  セ

セ右辺の最初の項以外において、 r の肩の指数は (ℓ + uph)2 の形だ(u = 1, 2, ···, ph−1)。それを展開した
  ℓ2 + 2⋅ℓ⋅uph + (uph)2  ソ
の第3項は、 (ph)2 の倍数――つまり p2h = n の倍数――なので、省略可。よって、ソの数が r の肩に乗った累乗は、
  r2 + 2ℓuph = r2(r2ℓuph) = r2[(rph)2]ℓu = r2yℓu
に等しい。ここで y = (rph)2 と置いた。この y は 1 の原始 ph 乗根に当たる。なぜなら r は 1 の原始 p2h 乗根だから、 r の ph 乗は 1 の原始 ph 乗根(補題26〘ⅰ〙)、その2乗も引き続き 1 の原始 ph 乗根(同〘ⅱ〙)。

以上のことから、セを次のように整理できる。
  S = r2 + r2(y)1 + r2(y)2 + r2(y)3 + ··· + r2(y)ph−1
   = rℓℓ[1 + y + (y)2 + (y)3 + ··· + (y)ph−1]  タ

タの [ ] 内は、初項 1 の等比数列の和であり、公比 y は 1 ではない(なぜなら y は原始 ph 乗根だが、 ℓ は――仮定により 1 以上 ph 未満なので―― ph の倍数ではない)。しかも「末項の次の項」があったとしたら、それは
  (y)ph = (yph) = (1) = 1
で、初項に等しい。よって補題33から S = タ = rℓℓ[0] = 0。 ℓ についての仮定から、この等式は 1 以上 ph 未満の任意の整数 ℓ について有効。∎

〔別解〕 便宜上 ph を m で表すと:
  タ = rℓℓ(1 + y + y2 + ··· + ym−1) = 0
なぜなら、この最後の ( ) 内は方程式 xm − 1 = 0 の m 個の解の和。

 p = 3, h = 2, n = 32h = 81 の場合。 r を任意の「1 の原始81乗根」とする。定理35から、 r に対応するガウス和 W は(r の選択と無関係に)常に +3h = 9 に等しい。のみならず、
  W = r0⋅0 + r1⋅1 + r2⋅2 + ··· + r80⋅80
の 81 個の項(最初の項を 0 番、最後の項を 80 番とする)について、 3h = 9 で割った余り ℓ で番号を分類し、同じ種類の番号の項だけを抜き出して足し合わせた部分和 S は、次の性質を持つ――分類の基準の ℓ が = 0 ならその部分和は 9 に等しく、 ℓ が ≠ 0 ならその部分和は消滅。

R を 1 の「基本」原始81乗根(偏角 360°/81)とすると、 r = R に関連するガウス和はもちろん 9 に等しいが、 r = R2 や r = R4 や r = R5 等々の、任意の「1 の原始81乗根」に関連するガウス和も、全て 9 に等しい。 r の選択と無関係に、次の和はどれも消滅する:
  S1 = r1⋅1 + r10⋅10 + r19⋅19 + ··· + r73⋅73 = 0
  S2 = r2⋅2 + r11⋅11 + r20⋅20 + ··· + r74⋅74 = 0
   ︙
  S8 = r8⋅8 + r17⋅17 + r26⋅26 + ··· + r80⋅80 = 0
上記のどの項も = 0 ではないが、足し合わされたトータルでは = 0。言い換えると、各 S は「x9 − 1 = 0 の 9 個の解の和(0 に等しい)」を rℓℓ 倍したものに当たる。例えば S8 の和に含まれる
  r17⋅17 = r(8+9)(8+9) = r64(r16⋅9)
  r26⋅26 = r(8+2⋅9)(8+2⋅9) = r64(r16⋅9)2
等々において、 r16⋅9 は 1 の原始9乗根。一方:
  S0 = r0⋅0 + r9⋅9 + r18⋅18 + ··· + r72⋅72 = 9
この部分和(最初の項から始めて 9 個に一つの割合で項を抜き出した)だけは、消滅しない。上記 W は、形式的には 81 個の累乗の和から成るけれど、事実上、たった 9 個の累乗の和 S0 によって、その値が決まる。しかも S0 の各項は = 1 であり、この場合のガウス和は、単に 1 を 9 個足し合わせたものに過ぎない!

✿

定理35の証明は、少々複雑な二重指数の操作だけど、とどのつまりが「1 を 9 個足した和は何か?」のような、自明な問題に。大山鳴動してネズミ一匹。でもこれも、ガウス和の一般論のためには不可欠な要素であり、貴重な成果だっ。

n が《奇素数の奇数乗》の場合(n = p3, p5 など)についても、今回の《奇素数の偶数乗》の場合(n = p2, p4 など)と、おおむね同様に処理可能。ただし、ほんの少しトリッキーな要素が加わる。(続く)

✿ ✿ ✿


2026-01-15 n が奇素数の累乗のときのガウス和(後編)

#遊びの数論 #ガウス和平方 | 符号 | n 偶数 | n 合成数

前編」では n が《奇素数の偶数乗》の場合を扱った。続いて《奇素数の奇数乗》の場合について。

n が《素数の累乗》のときのガウス和についての議論では、「二重の指数」を操作すると同時に、「ある種の部分和たちの総計」という「二重の総和」を考えることになる。どうしても記号的には少しゴチャゴチャするが、内容的に難しいわけではなく、結論もシンプル。

✿

§38 具体例: n = 33 = 27

r を 1 の原始27乗根とする。 r に関連するガウス和
  W = r0⋅0 + r1⋅1 + r2⋅2 + ··· + r8⋅8
   + r9⋅9 + r10⋅10 + r11⋅11 + ··· + r17⋅17
   + r18⋅18 + r19⋅19 + r20⋅20 + ··· + r26⋅26
について、 9 項に 1 項の割合で項を抜き出して縦に足し、次の九つの部分和(それぞれ 3 項から成る)に分ける。
  S0 = r0⋅0 + r9⋅9 + r18⋅18
  S1 = r1⋅1 + r10⋅10 + r19⋅19
  S2 = r2⋅2 + r11⋅11 + r20⋅20
   ︙
  S8 = r8⋅8 + r17⋅17 + r26⋅26

もちろん W = S0 + S1 + S2 + ··· + S8 だ。

もともとの W における rkk の形の(27個の)各項について、 k を 9 で割った整数商を u、余りを ℓ として k = ℓ + 9u と書くと:
  rkk = rk2 = r(ℓ+9u)2  チ

チの表記において ℓ が同じになる項――要するに k を 9 で割った余り ℓ が同じ項たち――だけを集めて足し合わせたのが、部分和 S だ。つまり 0 以上 9 未満の各整数 ℓ について:
  S = r(ℓ+9⋅0)2 + r(ℓ+9⋅1)2 + r(ℓ+9⋅2)2  ツ

〔注〕 ツは、チの表記で u = 0, 1, 2 に当たる。 k は 27 未満なので、 u = 3 以上の――つまり指数 (ℓ+9⋅3)2 以降の――項はない。

チに関連して、 r(ℓ+9u)2 = r2+18ℓu+81u2 = r2r18ℓur81u2 が成り立つが、この右端の因子 r81u2 は無いのと同じ。というのも、その因子の指数 81u2 は 27 の倍数。 r は 1 の原始27乗根なので r81u2 = (r27)3u2 = (1)3u2 = 1 となり、「1 倍」は結果に影響しない。そこで、この因子を省略すると:
  r(ℓ+9u)2 = r2r18ℓu = rℓℓ⋅[(r9)2]uℓ = rℓℓ⋅yuℓ  テ
ここで y = (r9)2 と置いた。この y は 1 の原始3乗根。なぜなら r9 は 1 の原始3乗根(補題26〘ⅰ〙)、その2乗も引き続き 1 の原始3乗根(同〘ⅱ〙)。

テで u = 0, 1, 2 としたものをツに代入すると:
  S = rℓℓ⋅y0u + rℓℓ⋅y1ℓ + rℓℓ⋅y2ℓ = rℓℓ[1 + y + (y)2]
この [ ] 内は公比 y の等比数列の和で、末項の次の項 (y)3 = (y3) = (1) が初項 1 に等しい(∵ y は 1 の原始3乗根)。もし y = 1 なら、明らかに
  S = rℓℓ[1 + 1 + 1] = 3rℓℓ
だ。一方、もし公比 y が ≠ 1 なら、補題33から [ ] 内 = 0 なので S = 0 だ。 y は 1 の原始3乗根だから、 y = 1 になるのは ℓ が 3 の倍数のとき。 ℓ は 0 以上 9 未満なので、その範囲内で ℓ = 0, 3, 6 の三つの値に対して S = 3rℓℓ となり、それ以外の ℓ に対しては S は消滅。結局:
  W = S0 + S3 + S6 = 3r0⋅0 + 3r3⋅3 + 3r6⋅6
   = 3(r0⋅0 + r3⋅3 + r6⋅6) = 3(1 + r3⋅3 + (r3⋅3)2⋅2)  ト

今、小文字の s = r3⋅3 と置くと s は 1 の原始3乗根で、トはこうなる:
  W = 3(1 + s + s2⋅2) = 3(s0⋅0 + s1⋅1 + s2⋅2)
定義により、この ( ) 内は、 1 の原始3乗根 s に関連するガウス和だ。従って ±i3 に等しい。 ± の符号は、もともとの原始27乗根 r の偏角
  360°/27 × K
によって決まる。実際、そのとき s = r3⋅3 の偏角は、
  360°/27 × K × 3⋅3 = 360°/3 × K
であり、「基本」の原始 3 乗根の偏角の K 倍なので、 K が mod 3 の平方剰余ならプラス、非剰余ならマイナス。

以上は n が「奇素数 p の偶数乗」の場合(§36, §37)と似た議論だが、次のような違いがある。

n = p2h の場合(2h は偶数)には、 ph 種類の部分和 S を考えたが、どの部分和も ph 個の項の和だった(部分和の数と各部分和の項数が同じ)。そのうち S0 が W に等しく、それ以外の S たちは消滅した。これに対して n = p2h+1 の場合(2h+1 は奇数)には、 ph+1 種類の部分和 S を考える(どの部分和も ph 個の項から成る。部分和の個数は、各部分和の項数の p 倍)。そのうち消滅しない部分和は p 種類(S0 一つだけではない)。

これらの「消滅しない p 種類の部分和」の合計が W に等しいのだが、その計算では、各部分和を個別に検討するのではなく、トでやっているように、 p 種類の部分和をまとめて考える必要がある。消滅しない部分和たちは、「1 の原始 p 乗根に関連するガウス和」(その値を Z としよう。上の例では Z = s0⋅0 + s1⋅1 + s2⋅2 = ±i3)の整数倍に、再整理される。次節で証明されるように W = ph⋅Z だ。

§39 n が《奇素数の奇数乗》のときのガウス和

補題36 p を 3 以上の素数、 h を 1 以上の整数として、 p の奇数乗 n = p2h+1 を考える。 1 の原始 n 乗根 r に関連するガウス和 W について、定理35と同様に――ただし ph+1 個に一つの割合で――項を抜き出して ph+1 種類の部分和 S を定めると、各 S は ph 個の項から成る。ほとんどの S たちは = 0 となって消滅する。 ℓ が ph の倍数であるような p 種類の S たちだけは、消滅しない。

〔例1〕 p = 3, h = 1, n = 33 = 27 ⇒ 9種類(31+1)の部分和 S0, S1, ···, S8 は、それぞれ3項(31)から成る。 S0, S3, S6 は消滅せず、それ以外は消滅。

〔例2〕 p = 3, h = 2, n = 35 = 243 ⇒ 27種類(32+1)の部分和 S0, S1, ···, S26 は、それぞれ9項(32)から成る。 S0, S9, S18 は消滅せず、それ以外は消滅。

証明 W は p2h+1 項から成る。それらの項を ph+1 種類の部分和に分割するのだから、各部分和は ph 個の項から成る(ph+1 × ph = p2h+1)。

部分和 S の定義(定理35の証明のセに当たる式)は:
  S = r2 + r(ℓ+ph+1)2 + r(ℓ+2ph+1)2 + r(ℓ+3ph+1)2 + ···  + r(ℓ+(ph−1)ph+1)2  ナ

ナはセとほぼ同じだが、 r の肩の各指数が、
  (ℓ + uph)2 ではなく (ℓ + uph+1)2
の形に置き換わっている(u は 0 以上 ph 未満)。というのも、 rkk の形の W の各項について、 k を ph+1 で割った余り ℓ に応じて、 ph+1 種類の部分和に仕分けしている(余り ℓ は、当然 0 以上 ph+1 未満の ph+1 種類の値を持ち得る。その一つ一つに対応して S という小計を考えるのである)。

r の各指数について:
  (ℓ + uph+1)2 = ℓ2 + 2ℓuph+1 + u2p2h+2
この右辺第3項は、 r の指数としては省略可(因子 p2h+2 = p2h+1⋅p = np を含み、 n の倍数だから)。その項を省いて右辺を r の肩に乗せると:
  r(ℓ+uph+1)2 = r2+2ℓuph+1 = r2r2ℓuph+1
   = r2[(rph+1)2]ℓu = rℓℓ⋅yℓu  ニ
ただし、
  y = (rph+1)2
と置いた。この y は 1 の原始 ph 乗根に当たる。なぜなら 1 の原始 p2h+1 乗根 r を ph+1 乗すると 1 の原始 ph 乗根 になそのまた 2 乗も引き続き 1 の原始 ph 乗根。

† f = ph+1 は n = p2h+1 の約数なので、 1 の原始 n 乗根 r の f 乗は、 1 の原始 n/f 乗根(補題26〘ⅰ〙)。そして n/f = p2h+1/ph+1 = p(2h+1)−(h+1) = ph

便宜上 d = ph と置き、 u = 1, 2, ···, d−1 に対してニをナに代入すると:
  S = rℓℓ + rℓℓ(y) + rℓℓ(y)2 + rℓℓ(y)3 + ··· + rℓℓ(y)d−1
   = rℓℓ[1 + (y) + (y)2 + (y)3 + ··· + (y)d−1]  ヌ

ヌの [ ] 内は、初項 1 で公比 y の等比数列の和。「末項の次の項」が初項に等しい。実際、 y は 1 の原始 ph 乗根(つまり 1 の原始 d 乗根)なので:
  (y)d = (yd) = (1) = 1

この等比数列の公比 y は、 ℓ が ph の倍数のときに限って 1 だ(補題25〘ⅰ〙)。そのときには、ヌの [ ] 内の d 個の項の値はどれも 1 なので、ヌは
  S = drℓℓ  (✽)
を含意する(r ≠ 0 なので、この値は ≠ 0)。仮定により ℓ は 0 以上 ph+1 未満の整数であり、その範囲に ph の倍数(つまり d の倍数)はちょうど p 個ある:
  ℓ = 0, d, 2d, 3d, ···, (p−1)d  ネ
(ℓ = pd = p⋅ph = ph+1 は範囲外。)消滅しない S は、これらの ℓ に対応して、計 p 種類。

一方、それ以外の場合(同じ範囲内で ℓ が ph の倍数でないとき)、公比 y が ≠ 1 だから、補題33によって [ ] 内 = 0 となり、 S は消滅。∎

補題36に関連するガウス和 W を考えよう。 p2h+1 項の和 W が、 ph+1 個の部分和 S0, S1, S2, ··· に仕分けされた。従って、
  W = S0 + S1 + S2 + ···
という等式が成り立つが、ほとんどの S は = 0 であり、無いのと同じ。消滅しない部分和 S たちの総計が W だ。消滅しない部分和とは、ネの ℓ たちに対応する S で、それぞれの値は(✽)から:
  dr0⋅0, drd⋅d, dr2d⋅2d, dr3d⋅3d, ···, dr(p−1)d⋅(p−1)d
合計すると:
  W = dr0⋅0 + drd⋅d + dr2d⋅2d + dr3d⋅3d + ··· + dr(p−1)d⋅(p−1)d
   = d[1 + rdd + (rdd)2⋅2 + (rdd)3⋅3 + ·· · + (rdd)(p−1)(p−1)]

仮定により r は 1 の原始 p2h+1 乗根であり、その dd 乗(つまり p2h 乗)は 1 の原始 p 乗根。 s = rdd と置くと、
  W = d[1 + s + s2⋅2 + s3⋅3 + ··· + s(p−1)(p−1)]
   = ph⋅[s0⋅0 + s1⋅1 + s2⋅2 + s3⋅3 + ··· + s(p−1)(p−1)]
となり、この [ ] 内の和を Z とすると、 Z は、 1 の原始 p 乗根 s に関連するガウス和である!

従って Z は ±p ないし ±ip に等しく、 W = ph⋅Z は ±php ないし ±ph⋅ip に等しい。この W の値は n = p2h+1 = p2h⋅p の平方根ないしその i 倍であり、そうなること自体は既知だが、符号の決定法が未知だった。上記の議論の核心は、「W の符号決定問題」が「Z の符号決定問題」に帰着する、という点にある。

すなわち、任意の「1 の原始 n 乗根」 r が与えられたとき(n = p2h+1)、その r の偏角 θ が 360° × K/p2h+1 なら、 s = rdd の偏角は θ の dd = p2h 倍なので、
  360° × K/p2h+1 × p2h = 360° × K/p
に等しい。そのような偏角を持つ「1 の原始 p 乗根」に関連するガウス和 Z の符号は、 K が mod p の平方剰余が否かによって決まる(§13)。もともとの r に関連するガウス和 W は、 ph−1⋅Z に等しいのだから、この Z と同じ符号を持つ(ph−1 は正の整数なので、符号に影響しない)。要するに、奇素数 p についてのガウス和の符号決定法(既知)に基づき、 p奇数 についてのガウス和の符号も決定される。

〔補足〕 p ≡ +1 (mod 4) なら p奇数 も ≡ (+1)奇数 ≡ 1。一方 p ≡ 3 ≡ −1 (mod 4) なら p奇数 も ≡ (−1)奇数 ≡ −1。どちらの場合でも p奇数 ≡ p (mod 4) が成り立つので、 Z と W は、 ±N 型か ±iN 型かが一致する。

n = p2h+1 の指数をあらためて t と書くと:

定理37(Gauß [0] p. 33, [1] p. 483) p を 3 以上の素数、 t を 3 以上の奇数として、 n = pt とする。任意の「1 の原始 n 乗根」 r が与えられたとき、その r に関連するガウス和 W は:
  n が(言い換えれば p が) 4 の倍数 + 1 なら ±n
  n が(言い換えれば p が) 4 の倍数 + 3 なら ±in
符号は次の通り。 r の偏角を 360°/n の K 倍とすると、 K が mod p の平方剰余ならプラス、非剰余ならマイナス。

〔例1〕 n = 33 = 27 の場合。 27 は(言い換えれば 3 は)「4 の倍数 + 3」なので、 1 の原始27乗根に関連するガウス和は ±i27 = ±3i3。 ± の符号は次のようにして決まる。 mod 3 において、 1 は(従って 3 の倍数より 1 大きい数は)平方剰余、 2 は(従って 3 の倍数より 2 大きい数は)非剰余。よって、任意に選択された「1 の原始27乗根」の偏角を 360°/27 × K とすると(K は 27 と互いに素な整数、つまり 3 の倍数以外)、関連するガウス和の ± は、 K が 3 の倍数より 1 大きければプラス、 3 の倍数より 2 大きければマイナス。

〔例2〕 n = 53 = 125 の場合。 125 は(言い換えれば 5 は)「4 の倍数 + 1」なので、 1 の原始125乗根に関連するガウス和は ±125 = ±55。例1と同様に、任意に選択された「1 の原始125乗根」の偏角を 360°/125 × K とすると(K は 125 と互いに素な整数、つまり 5 の倍数以外)、関連するガウス和の ± は、 K が 5 の倍数 ± 1 ならプラス、 5 の倍数 ± 2 ならマイナス。なぜなら mod 5 では、 1 と 4 ≡ −1 が平方剰余、 2 と 3 ≡ −2 が非剰余。

✿ ✿ ✿


2026-01-17 i の平方根・そのまた平方根 1 の原始8乗根・原始16乗根

#遊びの数論 #ガウス和平方 | 符号 | n 偶数 | n 合成数

問題 y2 = −1 を満たすような数 y について、 x2 = y を満たすような x を求める。三角関数・複素関数を使うのは反則、作図による解法も反則とする。

−1 の平方根 −1 を i とする――という話を聞いたとき「そのまた平方根 i は?」ってのは、素朴な疑問だろう。「純粋に代数的に x2 = i を解け」というのは、意外とトリッキーな問題だ。

三角関数を使えば一発だが、それが禁じられた場合、一つの方法は、4次方程式の問題として解くこと。最速の解法ではないにせよ、4次方程式なら、やれば一応、必ず解ける。別の方法として、「二重根号処理」の考え方を使い、直接 i の平方根を求めると、高速に同じ結論に至る。

✿

第一の解法 条件 y2 = −1 にもう一つの条件 y = x2 を代入すると、
  (x2)2 = −1 つまり x4 = −1
であるから、要するに
  x4 + 1 = 0  ‥‥①
を解けばいい。

1x4 + 0x3 + 0x2 + 0x1 + 1 のような「係数(1, 0, 0, 0, 1)が左右対称な4次式」の根を求める古典的方法は、 x2 で割って x + 1/x を適当な一時変数名(以下では t とする)で置換すること。

①の両辺を x2 で割る
  x2 + 1/x2 = 0  ‥‥②
となる。
  t = x + 1/x  ‥‥③
と置くと:
  t2 = x2 + 2 + 1/x2 つまり x2 + 1/x2 = t2 − 2
これを②に代入して t2 − 2 = 0、従って t = ±2 だ。それを③に代入すると:
  ±2 = x + 1/x
分母を払うため両辺を x 倍して:
  ±(2)x = x2 + 1
整理すると、結局、
  x2(2)x + 1 = 0 または x2 + (2)x + 1 = 0
を解けばいい。前者の解は:
  x = [(2) ± (−2)]/2 = 2/2 ± i2/2  ← これを α, β とすると
後者の解は:
  x = [(2) ± (−2)]/2 = 2/2 ± i2/2  ← こっちは −β, −α に当たる

結論として、求めるものは、実部も虚部も ±2 = ±1.41421356… の半分 ±0.70710678…。 ± ± の組み合わせで4種類の解がある。∎

† x = 0 は明らかに①の解ではない。よって、解を求める過程で①の両辺を x2 (≠ 0) で割っても、構わない。

✿

四つの解のうち、本物の i はどれか? それ以外の三つは何なのか?

α は、実部と虚部が等しい。そのような数 R + Ri の平方は―― i2 = −1 に留意しつつ、恒等式 (A + B)2 = A2 + 2AB + B2 を使うと――
  (R + Ri)2 = R2 + 2⋅R⋅Ri + (Ri)2 = 2R2i
だ。よって、
  α = 2/2 + i2/2
の平方は 2⋅2/4⋅i = i に等しい。 α は確かに i の平方根だ! 当然 (−α)2 = α2 なので、
  −α = −2/2i2/2
も i の平方根。同様に、
  (R − Ri)2 = −2R2i
なので、
  β = 2/2i2/2
を平方すると −i になる。つまり β は −i の平方根で、
  −β = −2/2 + i2/2
もそうだ。記号的には ±α が ±i で ±β が ±−i ということになる。

〔補足〕 z が「正の実数以外」の場合、 ±z の ± は意味が分かりにくいが、平方根の実部が 0 でなければ、実部が正の側を + の平方根と約束する。例えば β と −β はどちらも −i の平方根だが、前者が +−i で後者が −−i。ちなみに「負の実数」の平方根(例えば −1−2)は純虚数になるが(平方根の実部が 0)、その場合、虚部が正の側を + の平方根とする。

α は8乗すると = 1 になり、しかも1乗~7乗では ≠ 1 という性質を持つ(このような性質を持つ数は 1 の原始8乗根と呼ばれる)。実際、 α2 = i なので α4 = i2 = −1、従って α5 = α4α = −α, α6 = α4α2 = −i, α8 = α4α4 = −(−1) = 1。そして、
  α3 = α2α = i⋅α = i2/2 + i22/2 = −β
であり、従って α7 = α4α3 = −(−β) = β だ。実は四つの数 ±α, ±β は、どれも 1 の原始8乗根。これら四つの数を根とする①の x4 + 1 は、 1 の原始8乗根を定義する多項式。その観点からすると、最初から x8 = 1 の解を考えても良かった。
  x8 − 1 = (x4 + 1)(x4 − 1) = 0
の解は、因子 x4 − 1 の根 ±1, ±i を無視するなら、 x4 + 1 = 0 の解に他ならない。

✿

第二の解法 一般に (A ± B) の形の二重根号は、根号下の数たちの平方差
  δ = A2 − B
を考えて、 A と δ の平均を U とし、 A の平均からのずれ A − U を V とするとき、 U ± V の形に変形可能。このような処理は、典型的には δ が平方数になる場合に「二重根号外し」の目的で使われる。しかし必要とあらば、 δ が平方数かどうかと無関係に適用可能。われわれの問題では、
  ±i つまり (0 ± −1)
に興味があるのだから、上記のアルゴリズムで A = 0, B = −1 に当たる。すると:
  δ = 02 − (−1) = 1
  A と δ の平均 U = (0 + 1)/2 = 1/2
  A の平均からのずれ V = 0 − 1/2 = −1/2
従って、求めるものは:
  U ± V = (1/2) ± (−1/2) = (1/2) ± i(1/2)
   = 1/2 ± i/2
(必要なら)分母を有理化するため分子・分母を 2 倍すれば、たちまち最初の α, β を得る。 α が i の一つの平方根なら −α がもう一つの平方根であること、等々は、言うまでもない。∎

✿

応用として ±α, ±β の(つまり ±i の平方根たちの)そのまた平方根を求めてみる(特に必要性はないが遊び)。これは 1 の原始16乗根を求めることに当たり、代数の言葉では x16 − 1 = (x8 + 1)(x8 − 1) の根のうち、 x8 − 1 の根以外の八つを求めることに相当する。三角関数の言葉では「半角の公式」だが、ここではそれ以外の方法を考える。「第一の解法」のように、 x8 − 1 = 0 の両辺を x4 で割って t = x + 1/x についての4次方程式に変換することは可能。けれど、4次方程式を解くのは、それなりに面倒。
  (A ± B)
について、根号下の平方差 δ = A − B を考えた方が手っ取り早い。まず
  α = (1/2) + (−1/2)
のそのまた平方根を求めよう。 A = 1/2, B = −1/2, δ = 1/2 − (−1/2) = 1。分母を有理化したバージョンの α の実部を参照すると:
  U = (2/2 + 1)/2 = (2 + 2)/4
  V = 2/2 − (2 + 2)/4 = (−2 + 2)/4 = −(2 − 2)/4
  ∴ α = U + V = [(2 + 2)]/2 + [i(2 − 2)]/2
同様に:
  β = [(2 + 2)]/2[i(2 − 2)]/2
それぞれ −1 倍すれば −α と −β だ。

次に −α = −(1/2) (−1/2) に基づいて −α を求めたい。最初の計算とほとんど同じだが(平方されれば根号の前の − は消えるので、 δ は上記の値と同じ):
  U = (2/2 + 1)/2 = (2 − 2)/4
  V = 2/2 − (2 − 2)/4 = (−2 − 2)/4 = −(2 + 2)/4
  ∴ −α = U V = [(2 − 2)]/2[i(2 + 2)]/2
同様に −β = −(1/2) + (−1/2) から:
  −β = [(2 − 2)]/2 + [i(2 + 2)]/2
それぞれ −1 倍すれば −−α と −−β だ。

四つの数 ±±α と、四つの数 ±±β の、計八つの数が求まった。「八つの数」といっても、実際には
  ±[(2 + 2)]/2 = ±0.92387 95325…(急にサンバだ・泣く子三人)
  ±[(2 − 2)]/2 = ±0.38268 34323…(サンバに老婆だ・見よ三人)
の「前者が実部、後者が虚部」になるか、または「後者が実部、前者が虚部」になる。「桁の並び」という意味では 2 パターンの値しかない。符号を考えると、どちらの選択肢でも、実部の ± と虚部の ± の組み合わせが 4 パターンあるので、トータルでは 8 パターンの数となる。 α は偏角 45° で β は偏角 −45° なので、 αβ はそれぞれ偏角 22.5° と −22.5° だ。一方、 −β は偏角 135° で −α は偏角 −135° なので、 −β−α はそれぞれ偏角 67.5° と −67.5° だ。これら四つの数(どれも実部が正)を −1 倍したものは、それぞれ 180° 反対側にある(どれも実部が負)。

✿ ✿ ✿


2026-01-13 ガウス和・付録/Hua バージョン

#遊びの数論 #ガウス和平方 | 符号 | n 偶数 | n 合成数

東京大学。1985年6月12日、現地時間午後5時半ごろ。「皆さま全員に、大変感謝します!」予定時間を延長しての熱心な講演を締めくくり、盛大な拍手の中、演壇で大きな花束を受け取っているとき、ホワ(华罗庚, Hua Loo-Keng)は車椅子から崩れ落ち、そのまま亡くなったという。エルデシュ(Erdős, エルドゥーシュ)の語った「理想の死に方」を連想させる…

オイラーのように去りたいね。講演中に、重要な証明を黒板に書き終える。聴衆の誰かが声を上げる。「一般の場合には、どうなりますか」

ぼくは聴衆の方を振り返って、ほほ笑む。「それは、次の世代にお任せします」

そう言って、ぶっ倒れるんだ。

ホワは1940年台に米国に滞在し、イリノイ大学で教えているので、エルデシュと接点があった。「接点があった」どころか、1954年、エルデシュがオランダでの学術会議に出席したとき、米国への再入国ビザの発行を拒否された理由の一つは、ホワと手紙をやり取りしたことだとい何でもかんでも「スパイ容疑」にされてしまった、マッカーシー時代の疑心暗鬼…

ホワは、正式な高等教育を受けたわけではないが、独学で数論を学び、国際的に活躍した。ハーディーが1910年代にインドのラマヌジャンを「発見」して英国に呼んだのは有名な話だけど、1930年代には中国のホワを英国に招いている。ラマヌジャンとのロマンチックな出会いと別れのせいで、才能を発掘する使命を感じていたのかもしれない。

ともあれ n が《素数べき》の場合のガウス和について、ホワによる整理はピリッとして面白い。そのアイデアを紹介。

† Paul Hoffman (1998, 1999), The Man Who Loved Only Numbers: The Story of Paul Erdős and the Search for Mathematical Truth, p. 128

〔注〕 このメモは、最初「n が奇素数の累乗のときのガウス和(前編)」の続きの「中編」だった。都合により順序を変更し、「前編」の続きを「後編」、このメモを「付録」とする。

✿

§38a 具体例: n = 33 = 27

r を 1 の原始27乗根とする。ガウス和
  W = {k=0 to 26} rk2 = r02 + r12 + r22 + ··· + r262
の各 k = 0, 1, 2, ···, 26 について、 9 で割った商を u、余りを ℓ として k = 9u + ℓ と見ると:
  W = r(9⋅0+0)2 + r(9⋅0+1)2 + r(9⋅0+2)2 + ··· + r(9⋅0+8)2
   + r(9⋅1+0)2 + r(9⋅1+1)2 + r(9⋅1+2)2 + ··· + r(9⋅1+8)2
   + r(9⋅2+0)2 + r(9⋅2+1)2 + r(9⋅2+2)2 + ··· + r(9⋅2+8)2
上記の 27 項の和を ℓ の値に応じて九つの部分和に分け、 ℓ が同じ項を縦に三つずつ足すと:
   = {u=0 to 2} r(9u+0)2 + {u=0 to 2} r(9u+1)2 + {u=0 to 2} r(9u+2)2 + ···  + {u=0 to 2} r(9u+8)2
   = {ℓ=0 to 8} {u=0 to 2} r(9u+ℓ)2  ‥‥①

ここで (9u + ℓ)2 = (ℓ + 9u)2 = ℓ2 + 2⋅ℓ⋅9u + (9u)2 の最後の項は 27 (= 33) の倍数なので、 r の指数としては省略可:
  r(9u+ℓ)2 = r2 + 18uℓ = r2 × r18uℓ  ‥‥②
r は 1 の原始27乗根なので、 r18uℓ = [(r9)2]ℓu の (r9) は 1 の原始3乗根、 (r9)2 も引き続き 1 の原始3乗根。 (r9)2 = a と書くと:
  r18uℓ = [(r9)2]ℓu = aℓu
②に代入して:
  r(9u+ℓ)2 = r2 × aℓu = rℓℓ⋅(a)u
従って:
  {u=0 to 2} r(9u+ℓ)2 = {u=0 to 2} [rℓℓ⋅(a)u]
   = rℓℓ⋅(a)0 + rℓℓ⋅(a)1 + rℓℓ⋅(a)2
   = rℓℓ⋅[1 + (a) + (a)2]  ‥‥③

③の [ ] 内は、公比 a の等比数列の和。 a は 1 の原始3乗根なので、 ℓ が 3 の倍数なら a = 1 で [ ] 内 = 3 だし、 ℓ が 3 の倍数でなければ a ≠ 1 で [ ] 内 = 0。つまり③の値は:
  ℓ が 3 の倍数か否かに応じて rℓℓ⋅3 か rℓℓ⋅0
これを①に代入すると:
  W = {ℓ=0 to 8} [ℓ が 3 の倍数なら 3rℓℓ : それ以外なら 0]
   = 3r0⋅0 + 0 + 0 + 3r3⋅3 + 0 + 0 + 3r6⋅6 + 0 + 0
   = 3(r0⋅0 + r3⋅3 + r6⋅6)  ‥‥④
s = r3⋅3 と置くと:
  W = ④ = 3(s0⋅0 + s1⋅1 + s2⋅2)  ‥‥⑤

s は 1 の原始3乗根で、⑤の ( ) 内はその s に関連するガウス和なので、 ±i3 に等しい――符号は s の選択によるが、 s の選択はもともとの r の選択によって決まる。すなわち、大文字の R を 1 の「基本」原始27乗根(偏角 360°/27)とすると、もし r として r = RK を選んだ場合(K は 27 と互いに素な整数)、
  s = r9 = (RK)9 = (R9)K
の RK は 1 の「基本」原始3乗根(偏角 360°/27 × 9 = 360°/3)。ゆえに K が mod 3 の平方剰余か非剰余かに応じて、 s に関連するガウス和 ±i3 の符号が定まる(仮定により K は 3 の倍数ではない)。その符号が、そのまま n = 27 のときのガウス和
  W = ⑤ = 3(±i3) = ±3i3 = ±i27
の符号となる。

注目すべきこととして、 n = 33 に関する問題が n = 31 に関する問題に変換された。より一般的に、素数の累乗 pt に関する問題を pt−2 に関する問題に変換できる。上述のガウス和を
  G[K/33]
と書くなら、④⑤で 3 がくくり出されると同時に、原始27乗根に関連するガウス和が、原始3乗根に関連するガウス和に還元され、
  G[K/33] = 3G[K/31]
となった。一般に、
  G[K/pt] = pG[K/pt−2]
であることを証明できる。 pt の t がどんなに大きな整数でも、この公式を繰り返し使えば、一回ごとに t が 2 減少して p が一つくくり出されるのだから、例えば
  G[K/75] = 7G[K/73] = 72G[K/71]
となる。実際には、符号だけ分かれば十分。 p が奇素数の場合、もし t が偶数なら、何もせずに + と決め付けていい(定理35)。もし t = 2h + 1 が奇数なら(p を h 回くくり出した後で p1 の問題になるのだから)、単に K が mod p の平方剰余かどうかによって ± を判定すればいい。

§39a n が《奇素数の累乗》の場合の漸化式の証明

前節の例で、
  {ℓ=0 to 8} [ℓ が 3 の倍数なら 3rℓℓ : それ以外なら 0]
   = 3r0⋅0 + 0 + 0 + 3r3⋅3 + 0 + 0 + 3r6⋅6 + 0 + 0
の部分に関しては、 ℓ = 3m の形の ℓ だけを 0 以上 9 未満の範囲で考えればいいのだから、 ℓ = 0, 3, 6 だけが結果に関係する。要するに ℓ を 3m に置き換えて、 m を 0 以上 3 未満とすればいい。つまり:
   = {m=0 to 2} 3r(3m)(3m)
ここで r(3m)(3m) = (r3⋅3)mm の r3⋅3 は、 1 の原始3乗根(r は 1 の原始27乗根だから)。

上記のような具体的な値(p = 3, t = 3)の代わりに、任意の p と t を考えれば、一般の場合となる。

今、 p を任意の奇素数、 t を 2 以上の任意の整数として n = pt が与えられたとき、 1 の原始 n 乗根 r についてのガウス和は:
  W = {k=0 to n−1} rk2
各 k について、それを pt−1 で割った商を u、余りを ℓ として k = ℓ + upt−1 と見る。 ℓ の値ごとに部分和を考えると、「p 項から成る部分和」(小計)を pt−1 = n/p 個束ねたものが、総計となる(前節①参照):
  W = {ℓ=0 to n/p−1}  {u=0 to p−1} r(ℓ+upt−1)2  ‥‥⑥

いつもの議論によって、⑥の指数
  (ℓ + upt−1)2 = ℓ2 + 2ℓupt−1 + (upt−1)2
の右辺第3項は、 r の指数としては省略可能。なぜなら、その項は因子 p を t 個以上含むの n = pt の倍数。第2項を pt−1⋅2⋅ℓu と見ると:
  r(ℓ+upt−1)2 = r2 × (rpt−1)2⋅ℓu  ‥‥⑦

† (upt−1)2 = u2p2t−2 は因子 p を 2t − 2 個含む。仮定により t ≥ 2 つまり t − 2 ≥ 0 なので 2t − 2 = t + (t − 2) ≥ t。

さて、⑦に含まれる (rpt−1) は、 1 の原始 p 乗根補題26〘ⅰ〙で n = pt, f = pt−1, n/f = p)。実際、それを p 乗すると (rpt−1)p = rpt−1⋅p = rpt = rn = 1 だ。仮定により 2 と p は互いに素なので、
  a = (rpt−1)2
も、引き続き 1 の原始 p 乗根。⑦の × の後ろは aℓu となる。

⑦と上記の考慮から、⑥の内側の総和について、
  {u=0 to p−1} r(ℓ+upt−1)2 = {u=0 to p−1} [rℓℓ × (a)u]
と書くことができる。この [ ] 内は、総和記号により u がだんだん大きくなって、公比 a の(p 項の)等比数列の和を成す。 a は 1 の原始 p 乗根なので、もし ℓ が p の倍数なら、公比は a = 1 であり、上記の総和は、 p 個の rℓℓ × 1 の和、すなわち prℓℓ に等しい。一方、もし ℓ が p の倍数でなければ、公比は a ≠ 1 であり、補題33によって、この和は消滅する。実際、 (a)0 = 1 と (a)p = (ap) = 1 に留意すると、「初項」と「末項の次の項」が等しい。結局、⑥はこうなる:
  W = {ℓ=0 to n/p−1} [ℓ が p の倍数なら prℓℓ : それ以外なら 0]

〔参考〕 Knuth 風に書くと:
  W = {ℓ=0 to n/p−1} [p∣ℓ]⋅prℓℓ
ここで [p∣ℓ] は、「p が ℓ を割り切る」が真なら 1、偽なら 0 を表す。

0 以上 n/p = pt−1 未満の(pt−1 個の) ℓ たちのうち、 ℓ = pm の形のもの(p 個につき 1 個)だけが和に寄与する。すなわち ℓ を pm で置き換えて、 m を 0 以上 pt−2 未満とすればいい。大文字の N = pt−2 と置くと、求めるものは:
  W = {m=0 to N−1} pr(pm)(pm) = {m=0 to N−1} psmm
ここで s = rpp は、 1 の原始 pt−2 乗根。 p は定数なので、くくり出すと:
  W = p × {m=0 to N−1} smm  ‥‥⑧
この × の後ろの和は、 1 の原始 N 乗根 s に関連するガウス和だ(N = pt−2 個の項から成る)。

従って、次の命題が成り立つ。

命題36a(cf. Hua [3], p. 163) p を奇素数、 t を 2 以上の整数とする。 r が 1 の原始 pt 乗根で、その偏角が 360°/pt の K 倍なら、 r に関連するガウス和 W は、 s に関連するガウス和の p 倍に等しい。ここで s は、 1 の原始 pt−2 乗根のうち、偏角が 360°/pt−2 の K 倍のもの。

証明 ⑧により、 r に関連するガウス和 W は、 1 の原始 pt−2 乗根 s に関連するガウス和の p 倍。この s の偏角が、命題36aの通りであることを示そう。上記の議論では rpp を s と置いた。もし r の偏角が 360° × K/pt なら rpp の偏角は、
  360° × K/pt × pp = 360° × K/pt−2
に等しい。∎

命題36aの重要な含意は:

定理37a(Gauß [0] p. 33, [1] p. 483) p を 3 以上の素数、 t を 3 以上の奇数として、 n = pt と置く。もし r が 1 の原始 n 乗根で、その偏角が 360° の K/n 倍ならば、 r に関連するガウス和 W の符号は、 K が mod p の平方剰余か非剰余かによって決まる(前者ならプラス)。

〔注〕 n が 4 の倍数より 1 大きければ W = ±n であり、 n が 4 の倍数より 3 大きければ W = ±in だ。 t が 1 以上の奇数なら pt はそのどちらにもなり得るし、符号も ± どちらにもなり得る。

証明 W の符号だけが問題。 n = pt のとき、問題を pt−2 のケースに帰着させ、必要に応じてさらに pt−4 のケース、 pt−6 のケースなどに次々と帰着させると、毎回 p が一つずつくくり出されるが、くくり出される p は正の実数なので、結果の符号に影響しない。いつかは p1 = p のケースになる。そのときの原始 p 乗根の偏角は――もともとの r の偏角が 360° × K/pt なら―― 360° × K/p に等しい(命題36aを必要なだけ反復適用)。∎

✿

命題36aを経由する証明は、ガウスのオリジナルと比べるとテクニカルだが、偶数乗と奇数乗を同時に(しかもコンパクトに)扱えるところが良い。アイデアは Hua [3] による(説明の仕方は多少異なる)。

[3] 华罗庚 (1979), 数论导引 [repr. 华罗庚文集 (2010), 数论卷 2]
Hua Loo-Keng (1956, 1982), Introduction to Number Theory (Translated by Peter Shiu [Xiao Wenjie])

✿ ✿ ✿


<メールアドレス>