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『遊びの数論57』の続き。誤字脱字・間違いがあるかも。

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2026-04-07 平方剰余の相互法則: ガウスの第四証明
ガウスは、平方剰余の相互法則の証明を8種類も残した(生前に公表されたのは六つ)。そのうち、ガウス和に基づく第四証明は、「もし」ガウス和の符号が既に決定されているのなら、最も簡明で見通しが良い(この「もし」が大問題だが、ここでは符号は決定済み、としよう)。
Dirichlet の整数論講義(Dirichlet の講義をまとめたもの。実際の著者は Dedekind)のバージョンを紹介したい。
第四証明 Dirichlet バージョンの最大の特色は、ガウス和の符号決定に解析的手法を使っている点(ここでは「符号は既に決定済み」として話を進めるので、その部分には立ち入らない)。相互法則を証明する部分についても、文章でおっとり説明しているガウスの Summatio と対照的に、式を使って端的に記述されている。
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n を任意の正整数、 h を任意の(正または負の)整数とする。 1 の n 乗根
exp (2hπi/n) = cos (2hπ/n) + i sin (2hπ/n)
に対応するガウス和を
∑{for x mod n} exp (x2⋅(2hπi/n))
によって定義し、 S(h, n) で表すことにする(ここでは「h と n が互いに素」という条件を付けない。「h と n が互いに素」と仮定する場合には、そう明記する)。 x は mod n において不合同な n 種類の整数値――いわゆる「剰余系の代表の一組」――にわたる。例えば x = 0, 1, 2, ···, n − 1 でもいいし、 x = 1, 2, ···, n でもいい。ガウス和の値は、代表の一組の選び方に依存しない。
Dedekind は記号 φ(h, n) を使い、 Nagell を含む若干の著者はこの表記を踏襲しているが、ここでは文字 φ の代わりに S を使う。他のメモでは、同じことを Sn(h) の形式で表記していることもある。
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第四証明は、ガウス和の幾つかの性質に基づく。最も基本的なのは、次の事実: h = 1 かつ n が奇数の場合、もし n が 4k + 1 型なら、つまり n ≡ 1 (mod 4) なら、
S(1, n) = √n
が成り立ち、もし n が 4k + 3 型なら、つまり n ≡ 3 (mod 4) なら、
S(1, n) = i√n
が成り立つ(i = √(−1) は虚数単位)。この二つをまとめて、
n が奇数 ⇒ S(1, n) = Jn √n ‥‥①
と書くことができる。ただし mod 4 において、もし n ≡ 1 なら Jn は 1 に等しく、もし n ≡ 3 なら Jn は i に等しい、と約束する。
第二に、正整数 m, n が互いに素なら、 1 の mn 乗根に関連するガウス和について、
S(h, mn) = S(hm, n) S(hn, m)
が成り立つ。特に h = 1 なら:
S(1, mn) = S(m, n) S(n, m) ‥‥②
第三に、 p が 3 以上の素数で h と p が互いに素のとき:
S(h, p) = (h/p) S(1, p) = (h/p) Jp √p ‥‥③
これで相互法則の証明の準備が整った。
今 p, q を相異なる正の奇素数とすると、②③から:
S(1, pq) = S(p, q) S(q, p) = (p/q) Jq √q × (q/p) Jp √p
この等式の最左辺は、①から Jpq √(pq) に等しい。従って:
Jpq √(pq) = (p/q) Jq √q × (q/p) Jp √p
両辺を正の実数 √(pq) で割って、整理すると:
Jpq = Jp⋅Jq⋅(p/q)(q/p) (✽)
(✽)は、平方剰余の相互法則を含意する。実際、 mod 4 において、〔ア〕もし p, q がどちらも ≡ 1 なら pq も ≡ 1 なので J 記号の定義から Jp = Jq = 1 かつ Jpq = 1 であり、(✽)は
1 = 1⋅1⋅(p/q)(q/p) = (p/q)(q/p)
となるが、これは右辺の 2 種類の Legendre 記号の値がどちらも +1 であるか、またはどちらも −1 であることを意味する(さもなければ二つの Legendre 記号の積は = 1 になり得ない)。一方、〔イ〕もし p, q の一方が ≡ 1 で他方が ≡ 3 なら pq ≡ 3 なので、(✽)は
i = 1⋅i⋅(p/q)(q/p)
となるが、その両辺を i で割れば、 p ≡ q ≡ 1 の場合と全く同じ結論に至る。最後に、〔ウ〕もし p, q がどちらも ≡ 3 なら pq ≡ 9 ≡ 1 なので、(✽)はこうなる:
1 = i⋅i⋅(p/q)(q/p) = −(p/q)(q/p)
両辺を −1 倍して:
−1 = (p/q)(q/p)
これは、右辺の二つの Legendre 記号の値が一致せず、どちらか一方が +1 で他方が −1 だ、ということを含意する。
〔ア・イ・ウ〕を要約すると: 「奇素数 p, q の少なくとも一方が 4k + 1 型なら、
(p/q) = (q/p)
となるが、 p, q が両方とも 4k + 3 型の場合に限っては、
(p/q) = −(q/p)
となる。」――この事実こそ、まさに平方剰余の相互法則であり、伝統的には一つの式
(p/q) = (−1)(p−1)(q−1)/4 (q/p)
にまとめて、表現される。あるいは、同じことだが:
(p/q)(q/p) = (−1)(p−1)(q−1)/4
第四証明とは、たったこれだけのことなのだ! 第三証明では、ガウスの補題を準備してもその先がなかなか大変だが、対照的に、ガウス和についての基本性質が解明されていれば、第四証明は、ほとんど一瞬で終わってしまう。
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Dirichlet は J 記号による場合分けを行わず、機械的な式変形だけで証明を完成させた(Dedekind の記述もそれに基づく)。以下、そのバージョンを記す。具体的には、 Jp の代わりに
i(p−1)2/4 ‥‥④
と書くことができ、その表現は Jp と同じ働きを持つ。実際 p ≡ 1, 3 (mod 4) のとき、それぞれ p − 1 ≡ 0, 2 (mod 4)、従って:
(p − 1)2 ≡ 0, 4 (mod 16)
両辺を 4 で割ると:
(p − 1)2/4 ≡ 0, 1 (mod 4)
すなわち p が mod 4 で ≡ 1 か ≡ 3 かに応じて、 i(p−1)2/4 は 1 ないし i に等しい(Jp の定義と一致)。というのも、任意の整数 A に対して、 iA の値は A (mod 4) によって決まる。言い換えれば、「A を 4 で割ったときの余り」という情報さえあれば、「具体的な A の大きさ」が不明でも、 iA の値を確定できる。
このように、結論としては④は望ましい性質を持つのだが、論理的に、どのようなプロセスによって④の表現が導出されるのか? 一つの解釈として、与えられた奇素数 p に対応する次の積に、④の起源を求めることができる:
iN = i1⋅i3⋅i5···ip−2 ☆
右辺の因子の i の肩の指数は、 1 以上 p 未満の各奇数にわたる。右辺の左端から因子を順に二つずつ取り出すと、それぞれの部分積は i の「4 の倍数」乗、つまり 1 に等しい。ゆえに iN は、☆の右辺の因子(i の奇数乗)が偶数個あれば 1 に等しく、奇数個あれば ip−2 に等しい。しかるに 1 から偶数 p − 1 までの整数のうち、ちょうど半分(つまり (p − 1)/2 個)が奇数なので、☆の右辺の因子の個数は、 p が 4k + 1 型なら偶数(2k)で、 4k + 3 型なら奇数(2k + 1)。ゆえに前者の場合には iN は 1 に等しく、後者の場合には、 p ≡ 3 (mod 4) なので、 iN は i3−2 = i に等しい。他方において、☆の右辺の指数たちの和は:
N = [1 + (p − 2)]/2 × (p − 1)/2 = ((p − 1)/2)2
結局、この形の iN つまり④は、 p ≡ 1, 3 (mod 4) に応じて、それぞれ 1, i に等しい。
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④を利用すると、(✽)から J 記号を排除して、基本演算だけを使って同じことを表現できる:
i(pq−1)2/4 = i(p−1)2/4⋅i(q−1)2/4 × (p/q)(q/p)
∴ (p/q)(q/p) = i(pq−1)2/4 ÷ i(p−1)2/4 ÷ i(q−1)2/4
この最後の右辺を整理したものを iλ とすると:
λ = (pq − 1)2/4 − (p − 1)2/4 − (q − 1)2/4
= (1/4)[(p2q2 − 2pq + 1) − (p2 − 2p + 1) − (q2 − 2q + 1)] ‥‥⑤
つまり (p/q)(q/p) = iλ が成り立つ。この表現が、平方剰余の相互法則の伝統的表現
(p/q)(q/p) = (−1)(p−1)(q−1)/4
と同値であることを示せば、証明は終わる。要するに、
iλ = (−1)(p−1)(q−1)/4
を示したい。
式⑤において p と q の役割は対称的なので、 [ ] 内を p についての2次式と見ることもできるし、 q についての全く同じ形式の2次式と見ることもできる。仮に q についての多項式として整理すると:
λ = (1/4)[(p2 − 1)q2 + (2 − 2p)q − (p2 − 2p + 1)]
= (1/4)[(p + 1)(p − 1)q2 − 2(p − 1)q − (p − 1)2]
= [(p − 1)/4][(p + 1)q2 − 2q − (p − 1)]
この多項式は p, q について対称的なので、上記のように因子 p − 1 を持つからには、因子 q − 1 をも持つはず(実際 q = 1 と置くと、上の式の値は 0 になる)。右側の [ ] 内を p についての多項式として再整理すると:
λ = [(p − 1)/4][(q2 − 1)p + (q2 − 2q + 1)] = [(p − 1)/4][(q + 1)(q − 1)p + (q − 1)2]
= [(p − 1)(q − 1)/4][(q + 1)p + (q − 1)]
p − 1, q − 1 はいずれも偶数なのでそれらの積は 4 で割り切れ、上の表現は整数値を持つ。
われわれが知りたいのは λ そのものではなく iλ なので、 λ を mod 4 で考えれば十分。ところが:
(q + 1)p + (q − 1) ≡ 2 (mod 4) ‥‥⑥
なぜなら mod 4 において p, q はそれぞれ ≡ 1 または ≡ 3。もし q ≡ 1 なら、上記左辺は (1 + 1)p + (1 − 1) つまり 2p と合同。これは奇数の 2 倍なので 4 で割ると 2 余る。一方、もし q ≡ 3 なら、同じ左辺は (3 + 1)p + (3 − 1) つまり 2 と合同(4p ≡ 0 だから)。
従って λ は mod 4 において、次の整数と合同:
[(p − 1)(q − 1)/4]⋅2 = (p − 1)(q − 1)/2
ゆえに iλ = i(p−1)(q−1)/2 が成り立ち、
i = √(−1) = (−1)1/2
であるから、
iλ = [(−1)1/2](p−1)(q−1)/2 = (−1)(p−1)(q−1)/4
が成り立つ。それが示されるべきことだった。∎
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枝葉の部分だが、 Dirichlet–Dedekind, §115 では、次のように⑥が説明される†。いわく、
(q + 1)p + (q − 1) = [(q + 1)(p + 1) − q − 1] + (q − 1) = (p + 1)(q + 1) − 2 ‥‥⑦
と変形すると、 p + 1 と q + 1 はどちらも偶数だからそれらの積は 4 の倍数、従って⑦は ≡ −2 ≡ 2 (mod 4)。
Dirichlet の原論文にさかのぼると、
λ = (pq − 1)2/4 − (p − 1)2/4 − (q − 1)2/4
に当たる指数を次のように変形して、同様の目的を達成している‡:
= (1/2)(p − 1)(q − 1) + (p − 1)(q − 1)((p + 1)/2⋅(q + 1)/2 − 1)
この右辺第2項について「4 の倍数なので mod 4 においては無視可能」と指摘するだけで、証明は終わる。途中計算は記されてないけど、要するに iλ が
(−1)(p−1)(q−1)/4 = i(p−1)(q−1)/2
に等しいことが予期されるので、 λ から (p − 1)(q − 1)/2 を引けば、残りは 4 の倍数になるはず。前述のように
λ = [(p − 1)(q − 1)/4] × [(q + 1)p + (q − 1)]
なので:
λ − (p − 1)(q − 1)/2 = [(p − 1)(q − 1)/4] × [(q + 1)p + (q − 1) − 2]
⑦の関係を使うと:
= [(p − 1)(q − 1)/4] × [(p + 1)(q + 1) − 4]
これを変形すると、上記の Dirichlet の式になる。
† https://archive.org/details/vorlesungenber00lejeuoft/page/298/mode/1up
S(a, b) の代わりに記号 φ(a, b) が使われている。
‡ https://archive.org/details/abhandlungenderk1835deut/page/n882/mode/1up
(q/p), (p/q) の値がそれぞれ文字 δ, ε で表されている。
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このバージョンは Dirichlet の1835年の論文に基づいて、 Dedekind が執筆したもの。 Gauß 自身による第四証明(1811年)と本質的には同内容だが、さらにすっきりと整理されている。「Gauß が発表した難解な理論を Dirichlet が一般人のために整理・解説」というのが、当時のパターンだったようだ。
Dedekind は、この証明の前置きとして auf ganz einfache Weise
と述べている。その言葉にうそはなく、(ガウス和が導入済みなら、という前提での話だが)ガウス和経由の証明は、第三証明・第一証明などと比べると、単純明快と感じられる。
相互法則をあたかも古典数論の問題のように扱う第一証明・第三証明では、「証明できるけど、なんだかよく分からない」という割り切れなさが残る。本来、平方剰余の相互法則は二次体の代数的整数の性質なので、古典数論の範囲で片付けようとすると、かえって見通しが悪くなるのだろう。二次体の問題については、二次体の世界で考えるのがフェアな闘いというもの。ところが第四証明では、その二次体をさらに上位の「円分体」の構造の一部として眺めている。もはやチート。森の中を歩くときには「見通しの利かない複雑な道」と感じても、上空から見下ろせば「一筋の明白な線」に過ぎない。
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〔参考文献〕
(1) Dirichlet–Dedekind の整数論講義の「補遺1」(§111–116):
Dirichlet–Dedekind. Vorlesungen über Zahlentheorie
第2版(1871年)
https://gdz.sub.uni-goettingen.de/id/PPN30976923X?tify=%7B%22pages%22%3A%5B301%5D%2C%22view%22%3A%22%22%7D
第4版(1894年)
https://archive.org/details/vorlesungenber00lejeuoft/page/287/mode/1up
(2) 基となる Dirichlet の論文(1835年):
Dirichlet (1835).
“Über eine neue Anwendung bestimmter Integrale auf die Summation endlicher oder unendlicher Reihen”, Abhandlungen der Königlichen Akademie der Wissenschaften zu Berlin, 1835 (1837), 391–407
https://archive.org/details/abhandlungenderk1835deut/page/n866/mode/1up
Werke I, 237–256
https://www.e-rara.ch/zut/content/zoom/5612846
cf. “Sur l'usage des intégrales définies dans la sommation des séries finies ou infinies”, Crelle, Bd. 17 (1837), 57–67
https://gdz.sub.uni-goettingen.de/id/PPN243919689_0017?tify=%7B%22pages%22%3A%5B61%5D%2C%22view%22%3A%22%22%7D
Werke I, 257–270
https://www.e-rara.ch/zut/content/zoom/5612866
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2026-04-09 第四証明と第二補充法則
第四証明への付記としての第二補充法則。 Gauß 自身の論法も、 Dirichlet–Dedekind も、
S(1, 8p) = S(8, p) S(p, 8) (✽)
に基づく。ここで p は正の奇素数。 S(k, n) は 1 の原始 n 乗根 e2πik/n に関連するガウス和。
ガウス和の定義から:
S(p, 8) = e0⋅πip/4 + e1⋅πip/4 + e4⋅πip/4 + e9⋅πip/4 + ··· + e49⋅πip/4
= 1 + (eπi/4)p + (−1)p + (eπi/4)9p + ···
p は奇数なので第3項は −1 になる。 eπi/4 = i1/2 は 1 の原始8乗根なので、その累乗 (eπi/4)N の値は N mod 8 によって決まる。例えば p ≡ 9p (mod 8) なので、上記の和の第2項と第4項は等しい。従って:
S(p, 8) = [1 + (eπi/4)p + (−1) + (eπi/4)p] + [1 + (eπi/4)p + (−1) + (eπi/4)p] = 4(eπi/4)p = 4(i1/2)p
前半の4項の和と後半の4項の和が等しいことは、 ∑ exp (x2⋅πip/4) において、 x = 0, 1, 2, 3, 4, 5, 6, 7 の代わりに x = 0, 1, 2, 3, 4, −3, −2, −1 を使えば、明らか。
i1/2 = (1 + i)/√2 なので、 mod 8 において:
p ≡ 1 ⇒ S(p, 8) = 4(i1/2)1 = (1 + i)√8
p ≡ 3 ⇒ S(p, 8) = 4(i1/2)3 = (−1 + i)√8
p ≡ 5 ⇒ S(p, 8) = 4(i1/2)5 = (−1 − i)√8
p ≡ 7 ⇒ S(p, 8) = 4(i1/2)7 = (1 − i)√8
【1】 ガウスの論法(Summatio, §34)は、場合分けによる。(✽)から:
S(1, 8p)/S(p, 8) = S(8, p) = (8/p) S(1, p) = (2/p) S(1, p)
左辺の分子は (1 + i)√(8p) に等しく、分母は p が ≡ 1, 3, 5, 7 (mod 8) のどれに当たるかに応じて、それぞれ:
(1 + i)√8, (−1 + i)√8, (−1 − i)√8, (1 − i)√8
これらは順に (i1/2)A⋅√2⋅√8 において A = 1, 3, 5, 7 としたものに当たり、 (1 + i)√(8p) は (i1/2)⋅√2⋅√(8p) に等しいので、分数の値
(i1/2)⋅√2⋅√(8p) ÷ (i1/2)A⋅√2⋅√8
は、それぞれ (i1/2)B⋅√p において B = 0, −2, −4, −6 としたものに当たる。
四つのケースのそれぞれについて、分数の値は:
√p, (−i)⋅√p, (−1)⋅√p, (+i)⋅√p
これが (2/p) S(1, p) に等しい。しかるに対応する S(1, p) の値は、それぞれ
√p, i√p, √p, i√p
なので、結局 p ≡ 1, 3, 5, 7 (mod 8) に応じて:
(2/p) = +1, −1, −1, +1
【2】 Dirichlet–Dedekind, §115 では、同じことが数式で整理されている。 S(1, 8p) = S(8, p) S(p, 8) は、
i1/2⋅√2⋅√(8p) = (2/p)⋅i(p−1)(p−1)/4⋅√p × (i1/2)p⋅√2
つまり i1/2 = (2/p)⋅i(p−1)(p−1)/4 × (i1/2)p
を含意する。両辺を i1/2 で割って:
1 = (2/p)⋅i(p−1)(p−1)/4 × (i1/2)p−1 = (2/p)⋅iλ
ここで:
λ = (p − 1)(p − 1)/4 + (p − 1)/2 = (p − 1)(p − 1)/4 + 2(p − 1)/4
= (p − 1)(p − 1 + 2)/4 = (p2 − 1)/4
結局:
1 = (2/p)⋅i(pp−1)/4 = (2/p)⋅(−1)(pp−1)/8
両辺を (−1)(pp−1)/8 倍して:
(2/p) = (−1)(pp−1)/8
第二補充法則の標準的な表現(pp−1 を p2 − 1 と記せば)が得られた。
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2026-04-10 ガウス和に関連する比較的マイナーな定理
ガウス和経由での第一補充法則の別証明を考える上で、事前にちょっとした補助定理を準備する。
Dirichlet–Dedekind はもっと簡単な計算で済ませてるけど、 Gauß のアプローチも味わい深い。「補助定理」とはいえ、 Gauß は「それ自体としても記憶に残る」(=印象的で美しい)とコメントしている。
Gauß は、繊細な工夫によって一見複雑な式を手際よく処理するのが、本当にうまい。見どころは、
(a1 + a2 + ··· + an)(b1 + b2 + ··· + bn)
の形を露骨に展開して、発生する n2 個の項を軽妙に処理してしまうところ。
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【1】 n を任意の正整数、 r = e2πik/n を任意に選択された《1 の原始 n 乗根》とする。ガウス和
W = S(k, n) = r0⋅0 + r1⋅1 + r2⋅2 + ··· + r(n−1)⋅(n−1)
と、関連するガウス和
W′ = S(−k, n) = r−0⋅0 + r−1⋅1 + r−2⋅2 + ··· + r−(n−1)⋅(n−1)
の積を求めたい。
WW′ = (r−0⋅0 + r−1⋅1 + r−2⋅2 + r−3⋅3 + ⋅⋅⋅ + r−(n−1)⋅(n−1)) W を展開して:
= r−0⋅0 W
+ r−1⋅1 W
+ r−2⋅2 W
+ r−3⋅3 W
︙
+ r−(n−1)⋅(n−1) W ア
ここで W = r0⋅0 + r1⋅1 + r2⋅2 + ··· + r(n−1)⋅(n−1) は n 項の和だが、 r は 1 の原始 n 乗根なので、 rx⋅x の値は x⋅x (mod n) で決まる。もし x⋅x ≡ y⋅y (mod n) なら、 rx⋅x を随意に ry⋅y に置き換えても、値は変わらない。そして x ≡ y (mod n) なら、明らかに x⋅x ≡ y⋅y (mod n) が成り立つ。例えば:
r0⋅0 = rn⋅n イ
r1⋅1 = r(n+1)⋅(n+1) ウ
r2⋅2 = r(n+2)⋅(n+2) エ
等々。従って、次の(それぞれ n 項の)和は、どれも W に等しい:
W = r0⋅0 + r1⋅1 + r2⋅2 + ··· + r(n−3)⋅(n−3) + r(n−2)⋅(n−2) + r(n−1)⋅(n−1) オ
W = r1⋅1 + r2⋅2 + r3⋅3 + ··· + r(n−2)⋅(n−2)+ r(n−1)⋅(n−1) + rn⋅n カ
W = r2⋅2 + r3⋅3 + r4⋅4 + ··· + r(n−1)⋅(n−1) + rn⋅n + r(n+1)⋅(n+1) キ
等々。
カは、オの r0⋅0 をイで置き換えたもの。キは、さらに r1⋅1 をウで置き換えた。
同様に考えれば、一般に任意の整数 A を使って、こう書くことができる:
W = rA⋅A + r(A+1)⋅(A+1) + r(A+2)⋅(A+2) + ··· + r(A+(n−1))⋅(A+(n−1)) ク
【2】 そこで、アの各 W に順にオ・カ・キ…を代入すると、 WW′
= r−0⋅0 [r0⋅0 + r1⋅1 + r2⋅2 + ··· + r(n−1)⋅(n−1)]
+ r−1⋅1 [r1⋅1 + r2⋅2 + r3⋅3 + ··· + r(n)⋅(n)]
+ r−2⋅2 [r2⋅2 + r3⋅3 + r4⋅4 + ··· + r(n+1)⋅(n+1)]
︙
+ r−(n−1)⋅(n−1) [r(n−1)⋅(n−1) + r(n)⋅(n) + r(n+1)⋅(n+1) + ··· + r(2n−2)⋅(2n−2)] ケ
(最後の行の [ ] 内は、クで A = n − 1 としたもの。)
ケの(n 行の)和について、縦に足し算を行う。ただし、各行 [ ] 内の各項に、 [ ] の前の r−x⋅x の形の係数を掛けてから、足し算を行う。第1列の各項は
r−x⋅x⋅rx⋅x (x = 0, 1, 2, ···, n − 1)
の形を持ち、それぞれ 1 に等しい。よって、第1列の部分和は n に等しい(各列は、ちょうど n 個の項を含む)。第2列の各項は
r−x⋅x⋅r(x+1)(x+1) (x = 0, 1, 2, ···, n − 1)
の形で、これを整理したものを仮に rB とすると:
B = −x2 + (x + 1)2 = (x + 1)2 − x2 = ((x + 1) + x)((x + 1) − x) = 2x + 1
よって、第2列の各項は rB = r2x+1 = r1⋅r2x の形を持つ。第3列の各項は
r−x⋅x⋅r(x+2)(x+2) (x = 0, 1, 2, ···, n − 1)
の形で、 = rC とすると:
C = (x + 2)2 − x2 = (2x + 2)⋅2 = 4x + 4
よって、第3列の各項は rC = r4x+4 = r4⋅r4x の形を持つ。つまり、
第2列 は r1⋅r2x の形の項の和
第3列 は r4⋅r4x の形の項の和
であり(x = 0, 1, 2, ··· , n − 1):
第2列 = r1⋅r0 + r1⋅r2 + r1⋅r4 + ··· + r1⋅r2(n−1) = r1 [r0 + r2 + r4 + ··· + r2(n−1)]
同様に:
第3列 = r4 [r0 + r4 + r8 + ··· + r4(n−1)]
一般に、
第 ℓ 列 = r(ℓ−1)(ℓ−1) [r0⋅(ℓ−1) + r2⋅(ℓ−1) + r4⋅(ℓ−1) + ··· + r2(n−1)⋅(ℓ−1)] コ
が成り立つ(それぞれの [ ] 内の第1項 = r0 は 1 に等しい)。
第 ℓ 列の各項は r−x⋅x⋅r(x+ℓ−1)(x+ℓ−1) で、それを = rE とすると:
E = (x + ℓ − 1)2 − x2 = (2x + ℓ − 1)(ℓ − 1) = (ℓ − 1)2⋅2x⋅(ℓ − 1)
よって rE は r(ℓ−1)(ℓ−1)⋅r2x⋅(ℓ−1) の形を持つ(x = 0, 1, 2, ··· , n − 1)。
【3】 WW′ を展開したケは、コ(列ごとの部分和)において ℓ = 1, 2, ··· , n とした総和だから、次に等しい。
WW′ = r0⋅0 [r0⋅0 + r2⋅0 + r4⋅0 + ··· + r2(n−1)⋅0]
+ r1⋅1 [r0⋅1 + r2⋅1 + r4⋅1 + ··· + r2(n−1)⋅1]
+ r2⋅2 [r0⋅2 + r2⋅2 + r4⋅2 + ··· + r2(n−1)⋅2]
+ r3⋅3 [r0⋅3 + r2⋅3 + r4⋅3 + ··· + r2(n−1)⋅3]
︙
+ r(n−1)⋅(n−1) [r0⋅(n−1) + r2⋅(n−1) + r4⋅(n−1) + ··· + r2(n−1)⋅(n−1)] サ
[ ] 内はそれぞれ n 項なので、サの1行目は 1⋅[1 + 1 + 1 + ··· + 1] = n に等しい。もし n が奇数なら、サのそれ以外の行は、どれも = 0。なぜなら r は 1 の原始 n 乗根なので、
r0 + r1 + r2 + ··· + rn−1 シ
は、計 n 種類の相異なる《1 の n 乗根》の和――この各項が相異なる値を持つのは、 r の指数 0, 1, 2, ··· , n − 1 がどの二つも mod n において不合同だから。 mod n において不合同な n 個の整数をそれぞれ ℓ 倍しても、 ℓ が n と互いに素である限りにおいて、得られる n 個の積は依然として互いに不合同。例えば、
0, 2, 4, ··· , 2(n − 1) や 0, 4, 8, ··· , 4(n − 1)
などは、これに当てはまり、
r0 + r2 + r4 + ··· + r2(n−1) ス
r0 + r4 + r8 + ··· + r4(n−1) セ
などは、シと同様、計 n 種類の《1 の n 乗根》を足し合わせたものに過ぎず、同じ和 0 を持つ。 n が奇数で ℓ が偶数である限り、両者は互いに素なので、
r0ℓ + r1ℓ + r2ℓ + ··· + r(n−1)ℓ = 0
は、シと等しい。結局:
n が奇数 ⇒ WW′ = n
別の観点から: 公比 a が 1 でない限り、初項が 1 で末項が z = an−1 の等比数列の和
X = 1 + a + a2 + ··· + an−1
は、次の関係を満たす:
Xa = a + a2 + a3 + ··· + an
∴ X − Xa = X(1 − a) = 1 − an
∴ X = (1 − an)/(1 − a) = (1 − az)/(1 − a)
よって、このような等比数列で、もし公比 a (それは第2項とも等しい)が 1 でなく、しかも公比と末項 z (= an−1) の積 az が 1 に等しければ、上記の分子 1 − az は = 0 なので、数列の和 X は 0 に等しい。例えばスでは a = r2 は(n が奇数である限り)明らかに 1 でなく、 a と z = r2(n−1) の積は
r2 × r2(n−1) = r2+2(n−1) = r2n = (rn)2 = 12 = 1
なので、上記の条件が満たされ、スの和は 0。セの和なども同様。
【4】 一方、もし n が偶数なら、サの n 行の中に、等比数列の公比が 1 に等しい行が(第1行の他に)もう一つだけある。第1行を別にすると、各行の公比は r2, r4, r6, ···, r2(n−1) であり、形式上、公比は r0n と r2n にはならないが、 1 + n/2 行目(最初の行と最後の行の真ん中あたり)では、公比が r2(n/2) = r1n = 1 となる。よって n が偶数の場合には、 n が奇数の場合と違って第1行目以外が全部 = 0 になるわけではなく、 1 + n/2 行目は次の値を持つ:
r(n/2)⋅(n/2) [r0⋅(n/2) + r2⋅(n/2) + r4⋅(n/2) + ··· + r2(n−1)⋅(n/2)]
= rnn/4 [r0 + rn + r2n + ·· · + rn(n−1)] = rnn/4⋅n
r は 1 の n 乗根なので、任意の整数 A に対して rAn = (rn)A = 1A = 1 を満たす。この理由から [ ] 内の n 個の項はどれも 1 に等しく、それらの和は n。
もし n = 4k が 4 の倍数なら、 nn/4 = 4k⋅4k/4 = 4k⋅k = n⋅k は n の倍数なので、 rnn/4⋅n は (rn)k⋅n = 1k⋅n = n に等しい。この場合、サの最初の行から生じる n と合わせて、 WW′ = n + n = 2n。
一方、もし n = 4k + 2 が「4 の倍数以外の偶数」なら、 nn/4 = (4k + 2)2/4 = (16k2 + 16k + 4)/4 = 4k2 + 4k + 1 = (2k + 1)2 = (n/2)2 は n/2 の奇数倍なので、 rnn/4 は rn/2 = −1 の奇数乗に(つまり −1 に)等しく、従って rnn/4⋅n は −n に等しい。この場合、サの最初の行から生じる n と合わせて、 WW′ = n + (−n) = 0。
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要約すると:
定理1(Gauß [0], §35) n を正整数、 k を n と互いに素な整数とする。二つのガウス和
S(k, n) と S(−k, n)
の積は、もし n が奇数なら n 自身に等しく、もし n が 4 の倍数なら 2n に等しく、もし n がそれ以外の偶数なら 0 に等しい。
n が 4 の倍数以外の偶数なら、 n と互いに素な任意の整数 k に対して S(k, n) = 0 であり、従って S(−k, n) = 0 でもあるので、積が 0 になるケースは自明に近い。
〔例1〕 S(1, 5) = S(−1, 5) = √5 ⇒ S(1, 5) S(−1, 5) = 5
S(2, 5) = S(−2, 5) = −√5 ⇒ S(2, 5) S(−2, 5) = 5
〔例2〕 S(1, 7) = i√7, S(−1, 7) = −i√7 ⇒ S(1, 7) S(−1, 7) = 7
S(3, 7) = −i√7, S(−3, 7) = i√7 ⇒ S(3, 7) S(−3, 7) = 7
〔例3〕 S(1, 8) = (1 + i)√8, S(−1, 8) = (1 − i)√8 ⇒ S(1, 8) S(−1, 8) = 16
S(3, 8) = (−1 + i)√8, S(−3, 8) = (−1 − i)√7 ⇒ S(3, 8) S(−3, 8) = 16
定理1は、第一補充法則の(ガウス和経由の)別証明を与えてくれるだけでなく、 n が偶数の場合にも対応可能という懐の広さのため、これを使って「負の第二補充法則」を導出することもできる。(続く)
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