遊びの数論58

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遊びの数論57』の続き。誤字脱字・間違いがあるかも。


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2026-04-07 平方剰余の相互法則: ガウスの第四証明

ガウスは、平方剰余の相互法則の証明を8種類も残した(生前に公表されたのは六つ)。そのうち、ガウス和に基づく第四証明は、「もしガウス和の符号が既に決定されているのなら、最も簡明で見通しが良い(この「もし」が大問題だが、ここでは符号は決定済み、としよう)。

Dirichlet の整数論講義(Dirichlet の講義をまとめたもの。実際の著者は Dedekind)のバージョンを紹介したい。

第四証明 Dirichlet バージョンの最大の特色は、ガウス和の符号決定に解析的手法を使っている点(ここでは「符号は既に決定済み」として話を進めるので、その部分には立ち入らない)。相互法則を証明する部分についても、文章でおっとり説明しているガウスの Summatio と対照的に、式を使って端的に記述されている。

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n を任意の正整数、 h を任意の(正または負の)整数とする。 1 の n 乗根
  exp (2hπi/n) = cos (2hπ/n) + i sin (2hπ/n)
に対応するガウス和を
  {for x mod n} exp (x2(2hπi/n))
によって定義し、 S(h, n) で表すことにする(ここでは「h と n が互いに素」という条件を付けない。「h と n が互いに素」と仮定する場合には、そう明記する)。 x は mod n において不合同な n 種類の整数値――いわゆる「剰余系の代表の一組」――にわたる。例えば x = 0, 1, 2, ···, n − 1 でもいいし、 x = 1, 2, ···, n でもいい。ガウス和の値は、代表の一組の選び方に依存しない。

Dedekind は記号 φ(h, n) を使い、 Nagell を含む若干の著者はこの表記を踏襲しているが、ここでは文字 φ の代わりに S を使う。他のメモでは、同じことを Sn(h) の形式で表記していることもある。

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第四証明は、ガウス和の幾つかの性質に基づく。最も基本的なのは、次の事実: h = 1 かつ n が奇数の場合、もし n が 4k + 1 型なら、つまり n ≡ 1 (mod 4) なら、
  S(1, n) = n
が成り立ち、もし n が 4k + 3 型なら、つまり n ≡ 3 (mod 4) なら、
  S(1, n) = in
が成り立つ(i = (−1) は虚数単位)。この二つをまとめて、
  n が奇数 ⇒ S(1, n) = Jn n  ‥‥①
と書くことができる。ただし mod 4 において、もし n ≡ 1 なら Jn は 1 に等しく、もし n ≡ 3 なら Jn は i に等しい、と約束する。

第二に、正整数 m, n が互いに素なら、 1 の mn 乗根に関連するガウス和について、
  S(h, mn) = S(hm, n) S(hn, m)
が成り立つ。特に h = 1 なら:
  S(1, mn) = S(m, n) S(n, m)  ‥‥②

第三に、 p が 3 以上の素数で h と p が互いに素のとき:
  S(h, p) = (h/p) S(1, p) = (h/p) Jp p  ‥‥③

これで相互法則の証明の準備が整った。

今 p, q を相異なる正の奇素数とすると、②③から:
  S(1, pq) = S(p, q) S(q, p) = (p/q) Jq q × (q/p) Jp p
この等式の最左辺は、①から Jpq (pq) に等しい。従って:
  Jpq (pq) = (p/q) Jq q × (q/p) Jp p
両辺を正の実数 (pq) で割って、整理すると:
  Jpq = Jp⋅Jq⋅(p/q)(q/p)  (✽)

(✽)は、平方剰余の相互法則を含意する。実際、 mod 4 において、〔ア〕もし p, q がどちらも ≡ 1 なら pq も ≡ 1 なので J 記号の定義から Jp = Jq = 1 かつ Jpq = 1 であり、(✽)は
  1 = 1⋅1⋅(p/q)(q/p) = (p/q)(q/p)
となるが、これは右辺の 2 種類の Legendre 記号の値がどちらも +1 であるか、またはどちらも −1 であることを意味する(さもなければ二つの Legendre 記号の積は = 1 になり得ない)。一方、〔イ〕もし p, q の一方が ≡ 1 で他方が ≡ 3 なら pq ≡ 3 なので、(✽)は
  i = 1⋅i⋅(p/q)(q/p)
となるが、その両辺を i で割れば、 p ≡ q ≡ 1 の場合と全く同じ結論に至る。最後に、〔ウ〕もし p, q がどちらも ≡ 3 なら pq ≡ 9 ≡ 1 なので、(✽)はこうなる:
  1 = i⋅i⋅(p/q)(q/p) = −(p/q)(q/p)
両辺を −1 倍して:
  −1 = (p/q)(q/p)
これは、右辺の二つの Legendre 記号の値が一致せず、どちらか一方が +1 で他方が −1 だ、ということを含意する。

〔ア・イ・ウ〕を要約すると: 「奇素数 p, q の少なくとも一方が 4k + 1 型なら、
  (p/q) = (q/p)
となるが、 p, q が両方とも 4k + 3 型の場合に限っては、
  (p/q) = −(q/p)
となる。
――この事実こそ、まさに平方剰余の相互法則であり、伝統的には一つの式
  (p/q) = (−1)(p−1)(q−1)/4 (q/p)
にまとめて、表現される。あるいは、同じことだが:
  (p/q)(q/p) = (−1)(p−1)(q−1)/4

第四証明とは、たったこれだけのことなのだ! 第三証明では、ガウスの補題を準備してもその先がなかなか大変だが、対照的に、ガウス和についての基本性質が解明されていれば、第四証明は、ほとんど一瞬で終わってしまう。

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Dirichlet は J 記号による場合分けを行わず、機械的な式変形だけで証明を完成させた(Dedekind の記述もそれに基づく)。以下、そのバージョンを記す。具体的には、 Jp の代わりに
  i(p−1)2/4  ‥‥④
と書くことができ、その表現は Jp と同じ働きを持つ。実際 p ≡ 1, 3 (mod 4) のとき、それぞれ p − 1 ≡ 0, 2 (mod 4)、従って:
  (p − 1)2 ≡ 0, 4 (mod 16)
両辺を 4 で割ると:
  (p − 1)2/4 ≡ 0, 1 (mod 4)
すなわち p が mod 4 で ≡ 1 か ≡ 3 かに応じて、 i(p−1)2/4 は 1 ないし i に等しい(Jp の定義と一致)。というのも、任意の整数 A に対して、 iA の値は A (mod 4) によって決まる。言い換えれば、「A を 4 で割ったときの余り」という情報さえあれば、「具体的な A の大きさ」が不明でも、 iA の値を確定できる。

このように、結論としては④は望ましい性質を持つのだが、論理的に、どのようなプロセスによって④の表現が導出されるのか? 一つの解釈として、与えられた奇素数 p に対応する次の積に、④の起源を求めることができる:
  iN = i1⋅i3⋅i5···ip−2  ☆
右辺の因子の i の肩の指数は、 1 以上 p 未満の各奇数にわたる。右辺の左端から因子を二つずつ選ぶと、それぞれの部分積は i の「4 の倍数」乗、つまり 1 に等しい。ゆえに iN は、☆の右辺の因子(i の奇数乗)が偶数個あれば 1 に等しく、奇数個あれば ip−2 に等しい。しかるに 1 から偶数 p − 1 までの整数のうち、ちょうど半分(つまり (p − 1)/2 個)が奇数なので、☆の右辺の因子の個数は、 p が 4k + 1 型なら偶数(2k)で、 4k + 3 型なら奇数(2k + 1)。ゆえに前者の場合には iN は 1 に等しく、後者の場合には、 p ≡ 3 (mod 4) なので、 iNi3−2 = i に等しい。他方において、☆の右辺の指数たちの和は:
  N = [1 + (p − 2)]/2 × (p − 1)/2 = ((p − 1)/2)2
結局、この形の iN つまり④は、 p ≡ 1, 3 (mod 4) に応じて、それぞれ 1, i に等しい。

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④を利用すると、(✽)から J 記号を排除して、基本演算だけを使って同じことを表現できる:
  i(pq−1)2/4 = i(p−1)2/4⋅i(q−1)2/4 × (p/q)(q/p)
  ∴ (p/q)(q/p) = i(pq−1)2/4 ÷ i(p−1)2/4 ÷ i(q−1)2/4

この最後の右辺を整理したものを iλ とすると:
  λ = (pq − 1)2/4 − (p − 1)2/4 − (q − 1)2/4
   = (1/4)[(p2q2 − 2pq + 1) − (p2 − 2p + 1) − (q2 − 2q + 1)]  ‥‥⑤

つまり (p/q)(q/p) = iλ が成り立つ。この表現が、平方剰余の相互法則の伝統的表現
  (p/q)(q/p) = (−1)(p−1)(q−1)/4
と同値であることを示せば、証明は終わる。要するに、
  iλ = (−1)(p−1)(q−1)/4
を示したい。

式⑤において p と q の役割は対称的なので、 [ ] 内を p についての2次式と見ることもできるし、 q についての全く同じ形式の2次式と見ることもできる。仮に q についての多項式として整理すると:
  λ = (1/4)[(p2 − 1)q2 + (2 − 2p)q − (p2 − 2p + 1)]
   = (1/4)[(p + 1)(p − 1)q2 − 2(p − 1)q − (p − 1)2]
   = [(p − 1)/4][(p + 1)q2 − 2q − (p − 1)]
この多項式は p, q について対称的なので、上記のように因子 p − 1 を持つからには、因子 q − 1 をも持つはず(実際 q = 1 と置くと、上の式の値は 0 になる)。右側の [ ] 内を p についての多項式として再整理すると:
  λ = [(p − 1)/4][(q2 − 1)p + (q2 − 2q + 1)] = [(p − 1)/4][(q + 1)(q − 1)p + (q − 1)2]
   = [(p − 1)(q − 1)/4][(q + 1)p + (q − 1)]

p − 1, q − 1 はいずれも偶数なのでそれらの積は 4 で割り切れ、上の表現は整数値を持つ。

われわれが知りたいのは λ そのものではなく iλ なので、 λ を mod 4 で考えれば十分。ところが:
  (q + 1)p + (q − 1) ≡ 2 (mod 4)  ‥‥⑥

なぜなら mod 4 において p, q はそれぞれ ≡ 1 または ≡ 3。もし q ≡ 1 なら、上記左辺は (1 + 1)p + (1 − 1) つまり 2p と合同。これは奇数の 2 倍なので 4 で割ると 2 余る。一方、もし q ≡ 3 なら、同じ左辺は (3 + 1)p + (3 − 1) つまり 2 と合同(4p ≡ 0 だから)。

従って λ は mod 4 において、次の整数と合同:
  [(p − 1)(q − 1)/4]⋅2 = (p − 1)(q − 1)/2

ゆえに iλ = i(p−1)(q−1)/2 が成り立ち、
  i = (−1) = (−1)1/2
であるから、
  iλ = [(−1)1/2](p−1)(q−1)/2 = (−1)(p−1)(q−1)/4
が成り立つ。それが示されるべきことだった。∎

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枝葉の部分だが、 Dirichlet–Dedekind, §115 では、次のように⑥が説明されいわく、
  (q + 1)p + (q − 1) = [(q + 1)(p + 1) − q − 1] + (q − 1) = (p + 1)(q + 1) − 2  ‥‥⑦
と変形すると、 p + 1 と q + 1 はどちらも偶数だからそれらの積は 4 の倍数、従って⑦は ≡ −2 ≡ 2 (mod 4)。

Dirichlet の原論文にさかのぼると、
  λ = (pq − 1)2/4 − (p − 1)2/4 − (q − 1)2/4
に当たる指数を次のように変形して、同様の目的を達成してい:
   = (1/2)(p − 1)(q − 1) + (p − 1)(q − 1)((p + 1)/2(q + 1)/2 − 1)
この右辺第2項について「4 の倍数なので mod 4 においては無視可能」と指摘するだけで、証明は終わる。途中計算は記されてないけど、要するに iλ
  (−1)(p−1)(q−1)/4 = i(p−1)(q−1)/2
に等しいことが予期されるので、 λ から (p − 1)(q − 1)/2 を引けば、残りは 4 の倍数になるはず。前述のように
  λ = [(p − 1)(q − 1)/4] × [(q + 1)p + (q − 1)]
なので:
  λ − (p − 1)(q − 1)/2 = [(p − 1)(q − 1)/4] × [(q + 1)p + (q − 1) − 2]
⑦の関係を使うと:
   = [(p − 1)(q − 1)/4] × [(p + 1)(q + 1) − 4]
これを変形すると、上記の Dirichlet の式になる。

† https://archive.org/details/vorlesungenber00lejeuoft/page/298/mode/1up
S(a, b) の代わりに記号 φ(a, b) が使われている。

‡ https://archive.org/details/abhandlungenderk1835deut/page/n882/mode/1up
(q/p), (p/q) の値がそれぞれ文字 δ, ε で表されている。

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このバージョンは Dirichlet の1835年の論文に基づいて、 Dedekind が執筆したもの。 Gauß 自身による第四証明(1811年)と本質的には同内容だが、さらにすっきりと整理されている。「Gauß が発表した難解な理論を Dirichlet が一般人のために整理・解説」というのが、当時のパターンだったようだ。

Dedekind は、この証明の前置きとして auf ganz einfache Weise と述べている。その言葉にうそはなく、(ガウス和が導入済みなら、という前提での話だが)ガウス和経由の証明は、第三証明・第一証明などと比べると、単純明快と感じられる。

相互法則をあたかも古典数論の問題のように扱う第一証明・第三証明では、「証明できるけど、なんだかよく分からない」という割り切れなさが残る。本来、平方剰余の相互法則は二次体の代数的整数の性質なので、古典数論の範囲で片付けようとすると、かえって見通しが悪くなるのだろう。二次体の問題については、二次体の世界で考えるのがフェアな闘いというもの。ところが第四証明では、その二次体をさらに上位の「円分体」の構造の一部として眺めている。もはやチート。森の中を歩くときには「見通しの利かない複雑な道」と感じても、上空から見下ろせば「一筋の明白な線」に過ぎない。

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〔参考文献〕

(1) Dirichlet–Dedekind の整数論講義の「補遺1」(§111–116):

Dirichlet–Dedekind. Vorlesungen über Zahlentheorie
第2版(1871年)
https://gdz.sub.uni-goettingen.de/id/PPN30976923X?tify=%7B%22pages%22%3A%5B301%5D%2C%22view%22%3A%22%22%7D
第4版(1894年)
https://archive.org/details/vorlesungenber00lejeuoft/page/287/mode/1up

(2) 基となる Dirichlet の論文(1835年):

Dirichlet (1835). “Über eine neue Anwendung bestimmter Integrale auf die Summation endlicher oder unendlicher Reihen”, Abhandlungen der Königlichen Akademie der Wissenschaften zu Berlin, 1835 (1837), 391–407
https://archive.org/details/abhandlungenderk1835deut/page/n866/mode/1up
Werke I, 237–256
https://www.e-rara.ch/zut/content/zoom/5612846
cf. “Sur l'usage des intégrales définies dans la sommation des séries finies ou infinies”, Crelle, Bd. 17 (1837), 57–67
https://gdz.sub.uni-goettingen.de/id/PPN243919689_0017?tify=%7B%22pages%22%3A%5B61%5D%2C%22view%22%3A%22%22%7D
Werke I, 257–270
https://www.e-rara.ch/zut/content/zoom/5612866

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