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『遊びの数論56』の続き。誤字脱字・間違いがあるかも。

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2026-03-13 おばあちゃんとガウス和(その2)
n = 2H + 1 を 3 以上の任意の奇数、 π = 180° を n 等分した角度を P とすると、次の値はいずれも ±√n に等しい:
∏ 2 sin kP, ∏ 2 sin (2k)P, ∏ 2 sin (4k)P, ∏ 2 sin (8k)P, etc.
∏ 2 sin (2k−1)P, ∏ 2 sin (4k−2)P, ∏ 2 sin (8k−4)P, etc.
積は k = 1, 2, ···, H にわたる。
n = 9 の場合(H = 4)、例えば:
∏ 2 sin kP = (2 sin 20°)(2 sin 40°)(2 sin 60°)(2 sin 80°) = √9 = 3,
∏ 2 sin (2k)P = (2 sin 40°)(2 sin 80°)(2 sin 120°)(2 sin 160°) = √9 = 3,
∏ 2 sin (4k−2)P = (2 sin 40°)(2 sin 120°)(2 sin 200°)(2 sin 280°) = √9 = 3
なかなかきれいなパターン。上記第一の例から因子 2 sin 60° = √3 を除外すると、
(2 sin 20°)(2 sin 40°)(2 sin 80°) = √3
∴ sin 20° × sin 40° × sin 80° = (√3)/8
となるが、それは Morrie の法則
cos 20° × cos 40° × cos 80° = 1/8
の sin 版とでもいうべきもので、どちらも眺めて楽しい。浅ましいことの多い世の中で、一服の清涼剤。前回、「ガウス和に関連する」という理由から天下り的に ∏ 2 sin (4k−2)P を話題とし、その符号を場当たり的に決定したが、その問題も、もう少し大きな絵の中のピースとして捉えると展望が利き、景色を楽しめる。
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∏ 2 sin kP すなわち ∏{k=1 to H} 2 sin [k⋅(π/n)] が √n に等しいことは既知(命題3)。ここで n は 3 以上の奇数、 H = (n − 1)/2 は 1 以上の整数で、奇数 n の半分(端数切り捨て)。
∏ 2 sin (2k)P が同じ値 √n を持つことを確かめるのは、易しい(命題7)。それには、
甲 k = 1, 2, 3, ···, H に対する ∏ 2 sin kP と
乙 ℓ = 2, 4, 6, ···, H に対する ∏ 2 sin ℓP が同じ値を持つ
ことを示せばいい。仮定により π = nP。任意の θ について sin θ = sin (π − θ) が成り立つので、 θ = kP と置けば:
sin kP = sin (nP − kP) = sin (n − k)P
つまり k が奇数のときの sin kP を、 sin (n − k)P に置き換えても値は変わらない(n は奇数だから、 k が奇数のとき n − k は偶数)。よって甲の k たちのうち各奇数を、 H が偶数か奇数かに応じて
n−1, n−3, ···, n−(H−1) か n−H
つまり 2H−1, 2H−3, ···, H+1 か H
に置換していい(n = 2H)。置換結果の上記偶数たちと、もともと甲に含まれる偶数たち
2, 4, 6, ···, H か H−1
を合わせれば、結果は乙と一致。つまり甲と乙は、等しい値を持つ。同様に、甲に含まれる偶数を奇数に置換することで、 ∏ 2 sin (2k−1)P も等しい値を持つことが示される。
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命題10 n = 2H + 1 が 3 以上の奇数なら:
〘ⅰ〙 ∏{k=1 to H} 2 sin [(2k)⋅2π/n] = ±√n
符号は n が 8 の倍数 + 1 or 7 ならプラス、 8 の倍数 + 3 or 5 ならマイナス。
〘ⅱ〙 ∏{k=1 to H} 2 sin [(2k − 1)⋅2π/n] = ±√n
符号は n が 8 の倍数 + 1 or 3 ならプラス、 8 の倍数 + 5 or 7 ならマイナス。
証明 Q = 2P と置くと Q は 2π = 360° の n 等分点。まず ∏ 2 sin (4k)P = ∏ 2 sin (2k)Q が乙と同じ絶対値 √n を持つこと、言い換えると
丙 k = 1, 2, 3, ···, H に対する ∏ 2 sin kQ (乙と同じ積) と
丁 ℓ = 2, 4, 6, ···, H に対する ∏ 2 sin ℓP
が同じ絶対値を持つことを、示そう。仮定により 2π = nQ。恒等式 sin θ = −sin (−θ) = −sin (2π − θ) で θ = kP と置けば:
sin kQ = −sin (nQ − kQ) = −sin (n − k)Q ⓺
つまり k が奇数のときの sin kQ を、 sin (n − k)Q に置き換えてもその sin の絶対値は変わらず、符号だけが反転する。よって丙の k たちのうち各奇数を、⓺により偶数 n − k に置き換えると、結果として生じる新しい積(丁)と丙の値(=乙の値)は、絶対値が同じ。
よって問題は、因子の符号の反転が最終結果にどう影響するか。
〘ⅰ〙 新しい積(丁)の符号は、置き換えられる k が(言い換えれば、置き換えられる sin が)偶数個か奇数個かに応じて、もともとの積の ±1 倍。従って、丁の符号は、
数列 1, 2, 3, 4, ···, H (✽)
の中に奇数が幾つあるかによって決まる。
ケース1(H が偶数) (✽)は、奇数と偶数 H/2 個ずつ含むので: もともとの積が −1 倍される ⇔ H/2 が奇数 ⇔ 2H が奇数の 4 倍 ⇔ n = 2H + 1 が (4 の奇数倍) + 1 ⇔ n が (8 の倍数 + 4) + 1。
ケース2(H が奇数) (✽)は、奇数を (H+1)/2 個、偶数を (H−1)/2 個含むので: もともとの積が −1 倍される ⇔ (H+1)/2 が奇数 ⇔ 2H + 2 が奇数の 4 倍 ⇔ n = 2H + 1 が (4 の奇数倍) − 1 ⇔ n が (8 の倍数 + 4) − 1。
要するに、丁の積は、奇数 n が 8 の倍数 + [3 or 5] なら負で、それ以外(8 の倍数 + [1 or 7] なら)正。
〘ⅱ〙 同様に ∏ 2 sin (4k−2)P = ∏ 2 sin (2k−1)Q は、乙の値の ±1 倍。符号は、(✽)の中に、置き換えられる数(偶数)が幾つあるかによって決まる。ケース1では、奇数も偶数も個数が同じなので、〘ⅰ〙と同じ議論がそのまま成り立つ。ケース2では、(✽)の中に偶数が (H−1)/2 個含まれるので: もともとの積が −1 倍される ⇔ (H−1)/2 が奇数 ⇔ 2H − 2 が奇数の 4 倍 ⇔ n = 2H + 1 が (4 の奇数倍) + 3 ⇔ n が (8 の倍数 + 4) + 3。
要するに、奇数 n が 8 の倍数 + [5 or 7] なら負で、それ以外(8 の倍数 + [1 or 3] なら)正。∎
上記〘ⅰ〙は新たな事実だが、〘ⅱ〙は、命題8・命題9の再々証明に過ぎない。ところで、符号反転の回数を毎回カウントすることは必須ではなく、次のように論じることもできる。
円周 n 等分点(1 + 0i を除く)のうち、偶数番の点の縦座標が〘ⅰ〙で、奇数番の点の縦座標が〘ⅱ〙なので、〘ⅰ〙と〘ⅱ〙の積 ±n は、それら全種類の正または負の sin の積。そのうち H 個が正(第1・第2象限の点)で、 H 個が負なので、 H が偶数か奇数かに応じて、この積は ±n に等しい。 H が偶数 2μ なら n = 2H + 1 = 4μ + 1 だし、 H が奇数 2μ+1 なら n = 2H + 1 = 4μ + 3 なので、〘ⅰ〙の符号か〘ⅱ〙の符号のどちらか一方が分かれば、他方は自動的に定まる。例えば前者を既知とすると、次の状況から、〘ⅱ〙の符号が順に + + − − であることは明白。
| n = 8 の倍数 + | 1 | 3 | 5 | 7 |
|---|---|---|---|---|
| 〘ⅰ〙の符号 | + | − | − | + |
| 〘ⅱ〙の符号 | ? | ? | ? | ? |
| 〘ⅰ〙×〘ⅱ〙 | +n | −n | +n | −n |
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命題11 命題10と同じ条件において:
〘ⅲ〙 ∏{k=1 to H} 2 sin [(2k)⋅4π/n] = +√n
符号は常にプラス。
〘ⅳ〙 ∏{k=1 to H} 2 sin [(2k − 1)⋅4π/n] = (−1)H⋅√n
符号は n が 4 の倍数 + 1 ならプラス、 4 の倍数 + 3 ならマイナス。
証明 R = 2Q と置くと R は 4π = 720° の n 等分点。〘ⅲ〙について。命題10〘ⅰ〙を基準に ∏ 2 sin (8k)P = ∏ 2 sin (4k)Q = ∏ 2 sin (2k)R を考えると、
k = 1, 2, 3, ···, H に対する ∏ 2 sin kR (丁と同じ積)
と比べて、もし k = 2, 4, 6, ··· , 2H なら同じ ∏ 2 sin kR の符号はどうなるか?を考えればいい。仮定により 4π = nR。恒等式 sin θ = −sin (−θ) = −sin (4π − θ) で θ = kR と置けば:
sin kR = −sin (nR − kR) = −sin (n − k)R
すなわち命題10と全く同様に、 k = 1, 2, 3, ··· , H に含まれる奇数を偶数に置き換えると、絶対値は変わらず、区間 [1, H] に奇数が奇数個含まれているときのみ、最終結果において、符号が反転する。命題10〘ⅰ〙から、この符号反転は n ≡ 3, 5 (mod 8) と同値であることが分かっている。もともとの符号は n ≡ 1, 3, 5, 7 に対応して + − − + なので(そして n ≡ 3, 5 のときだけ、符号が反転するのだから)、真ん中の二つの符号を反転させて、結果は + + + + つまり常に正。
〘ⅳ〙について。ここでも命題10〘ⅰ〙を基準に考えると、命題10〘ⅱ〙から、符号反転は n ≡ 5, 7 (mod 8) と同値。もともとの符号 + − − + の後ろの二つの符号を反転させて、結果は + − + − となる。つまり n ≡ 1, 5 (mod 8) なら正、 ≡ 3, 7 (mod 8) なら負。要するに n ≡ 1 (mod 4) なら正、 ≡ 3 (mod 4) なら負。∎
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符号が常にプラスの ∏ 2 sin (2k)P を基準に ∏ 2 sin (4k)P と ∏ 2 sin (4k−2)P の符号をそれぞれ(n を mod 8 で分類して)決定し、さらに前者の符号を基準に ∏ 2 sin (8k)P と ∏ 2 sin (8k−4)P の符号をそれぞれ決定した。すると ∏ 2 sin (8k)P は、再び符号が常にプラスになった。もしそれを基準に ∏ 2 sin (16k)P と ∏ 2 sin (16k−8)P の符号を求め…と続けていくなら、同じパターンがループする。
明示的には扱っていない ∏ 2 sin (16k)P 以降も含めて、全てを一つにまとめると、次の通り。比較的シンプルな周期性がある。
命題12 n を 3 以上の任意の奇数、 d を 1 以上の任意の整数とするとき:
〘ⅰ〙 ∏{k=1 to (n−1)/2} 2 sin [(22d−1k)π/n] = √n
〘ⅱ〙 ∏{k=1 to (n−1)/2} 2 sin [(22dk)π/n] = (−1)(nn−1)/8⋅√n
符号は n ≡ 1, 3, 5, 7 (mod 8) に応じて + − − +
〘ⅲ〙 ∏{k=1 to (n−1)/2} 2 sin [(22dk − 22d−1)π/n] = (−1)⌊n/4⌋⋅√n
符号は n ≡ 1, 3, 5, 7 (mod 8) に応じて + + − −
〘ⅳ〙 ∏{k=1 to (n−1)/2} 2 sin [(22d+1k − 22d)π/n] = (−1)(n−1)/2⋅√n
符号は n ≡ 1, 3 (mod 4) に応じて + −
〘ⅴ〙 n ≡ 1 (mod 8) なら〘ⅰ〙~〘ⅳ〙の符号は全てプラス。
天下り的に命題8(それは上記〘ⅲ〙で d = 1 の場合である)だけを提示するのは、若干せせこましかった。(続く)
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