遊びの数論60

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遊びの数論59』の続き。誤字脱字・間違いがあるかも。


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2026-05-21 指標としてのルジャンドル記号

mod 11 の 11 種の数のうち、 11 の倍数を除く 10 種
  1, 2, 3, ···, 10
のそれぞれは、順序の違いを無視すれば
  20, 21, 22, ··· , 29 あるいは同じことだが 21, 22, 23, ··· , 210
の形の 10 個の数によって、過不足なく表現される。例えば、
  24 = 16 ≡ 5 (mod 11)
なので、この場合 5 という数は、指数(インデックス) 4 に対応:
  Ind 5 ≡ 4 (mod 10)

さて 20 = 1, 22 = 2, 23 = 4, ··· であるが、 mod の 11 は素数なので、フェルマーの小定理から
  210 ≡ 1, 211 ≡ 2, 212 ≡ 4, ·· ·
でもある。 x が 1 ずつ増えるときの 2x の値は、周期 10 で同じパターン(1, 2, 4, 8, 5, ·· ·)の繰り返し。特に「x 乗される数」の 2 は(2 に限らず 10 の倍数以外の任意の整数は)10 乗されると ≡ 1 に戻るという性質を持つ―― mod 11 の世界では。

普通の数の世界にも「10乗されると = 1 になる数」(1 の10乗根)がある。例えば y = 1 や y = −1 は、明らかに y10 = 1 を満たす。その他にも(一見しただけでは分からないかもしれないけど)、
  (1/4)(−1 + 5) + (i/4)(10 + 25)
などの「1 の原始5乗根」や、
  (1/4)(1 + 5) + (i/4)(10 − 25)
などの「1 の原始10乗根」も、 10 乗されると = 1 にな

10乗されると ≡ 1 になる「11 の原始根」(例えば 2)の代わりに、10乗されると 1 になる「1 の10乗根」(例えば −1)を使ってみたらどうかしら――という素朴な発想が、奥の深い世界への入り口となる。

† これらの根号表現はやや複雑だが、指数関数を使えば、簡単に e2πi/5 ないし e2πi/10 と書ける。一般に d 乗されると 1 になる数(1 の d 乗根)の代表例は ζ = e2πi/d と表現可能(d ≥ 1)。任意の整数 c に対して ζc = e2πic/d は、どれも同じ性質(ζc = 1)を持つ(c = 1 の場合が ζ)。

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11 の倍数を除く mod 11 の各種の数 N について、それぞれの指数 x ≡ Ind N (mod 10) を考える(表3参照)。 −1 ――それは 1 の10乗根の一つである――の x 乗を、 N に対応する「指標」とすると、次の通り。

† mod 11 の世界のインデックス(指数)は mod 10。一般に mod p の世界のインデックスは mod p − 1

【表6】 N mod 11 における指数と指標の例
実際の数 N ≡ 2x12345 678910
指数 x ≡ Ind N 01824 97365
指標 (−1)x 1−1111 −1−1−11−1

この場合、指標(の値)は 1 または −1 で、 1 ならば N は平方剰余、 −1 ならば非剰余(mod 11 において)。例えば N = 3 に対して r2 ≡ 3 (mod 11) は解を持つが(52 = 25 ≡ 3)、 N = 6 に対して r2 ≡ 6 (mod 11) は解を持たない。

当然だ――この指標が 1 ⇔ 指数 x が偶数 2k なので、そのとき N ≡ 22k ≡ (2k)2 は r ≡ 2k の平方。指標が −1 ⇔ 指数が奇数のときは、同様のことが成り立たない。オイラーの基準で判定するなら、もし指数が偶数 2k なら p = 11 を法として:
  N ≡ 22k ⇒ N(11−1)/2 ≡ (22k)5 ≡ (210)k ≡ 1
右端の ≡ は、フェルマーの小定理による。一方、もし指数が奇数 2k + 1 なら:
  N ≡ 22k+1 ⇒ N(11−1)/2 ≡ (22k+1)5 ≡ (22k⋅2)5 ≡ (210)k⋅25 ≡ 1⋅25 ≡ −1
2 は 11 の原始根なので 10 乗して始めて ≡ 1 になり、 25 ≢ 1。

すなわち、この指標 (−1)x = (−1)Ind N は、
  Legendre 記号 (N/11)
と同じ値を持つ! Legendre 記号は、指標の一種(少なくともこの場合においては)。

1 の10乗根 ζ は 10 種類ある。そのうち ζ = −1 を選択すると Legendre 記号と同等になるとしても、それは「指標」の世界の氷山の一角に過ぎない。とはいえ、それはそれで重要な事実だし、最初から全体像を把握しようとするのは困難だろう。とりあえず、簡単な具体例で様子を見てみたい。

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上記の例では mod 11 の世界の全種類の数(11 の倍数を除く)に、原始根 ɡ = 2 をてい とするインデックスを付けた。つまり mod 11 の数 N を N ≡ 2x の形で表した。 11 の倍数は mod 11 では ≡ 0 であり、 x としてどんな整数を選んでも
  2x ≡ 0 (mod 11)
にはできないので、 11 の倍数が除外されること(インデックスが付けられないこと)は当然だろう。

それは、次の(当たり前の)ことと、似ている――つまり x にどんな実数(あるいは複素数)を入れても
  2x = 0
は、成り立たない。言い換えれば
  log2 0
は、定義されない。

ところで ɡ = 2 は 11 の原始根(複数ある)の一つに過ぎない。そのような「勝手に選んだ」一つの原始根 ɡ = 2 を基準とするインデックス x ≡ Ind N を使って、等式
  (N/11) = (−1)Ind N
が成り立つと主張する場合、当然ながら「それは ɡ という数の選択にもよるのでは?」という疑念が生じる。

この点を検討してみたい。

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11 の原始根 ɡ は(2 がその例だが)、正の指数としては、 10 乗されて初めて ≡ 1 (mod 11) になる。言い換えると、
  21, 22, 23, ···, 210
の 10 個の数は mod 11 でどれも不合同(11 で割った余りが異なる)。 210 が ≡ 1 になることは、フェルマーの小定理によって保証されている。 11 の原始根として 2 以外にどんな選択肢があるだろうか。例えば 22 = 4 を候補と考えたとしても 5 乗するだけで ≡ 1 になってしまう。つまり 4 は原始根ではない:
  45 = (22)5 = 210 ≡ 1

実際 45 = 1024 = 990 + 34 だが、 990 は 11 で割り切れる。残りの 34 を 11 で割ると 1 余る。

同様に 25 = 32 ≡ −1 は 2 乗するだけで ≡ 1 になってしまうので、原始根ではない。一般に ɡ が「10 乗して初めて ≡ 1 になる数」のとき、もし a が 10 の約数 2 や 5 だとしたら、 ɡa は 10/a 乗するだけで ≡ 1 になってしまい、原始根の条件を満たさない。のみならず ɡ4 も駄目。だって 5 乗するだけで、
  (ɡ4)5 = ɡ20 = (ɡ10)2 ≡ 12 = 1
になってしまう。同様の理由から ɡ6 や ɡ8 も駄目。一般に:

定理5 ɡ が(正の)素数 p の原始根のとき――つまり ɡ が「p − 1 乗されて初めて ≡ 1 (mod p) になる数」のとき――、もし a が p − 1 の(2 以上の)約数だとしたら ɡa は原始根ではない。 a が p − 1 の約数ではないとしても、 a と p − 1 が(2 以上の)公約数を持つとしたら ɡa は原始根ではない。

証明 a と p − 1 の最大公約数を d とする。 a = dm, p − 1 = dn と書くことができる。ここで m, n は整数。最後の等式から n = (p − 1)/d なので、もし d が 2 以上なら、 n は p − 1 より小。さて、
  an = (dm)n = (dn)m = (p − 1)m
なので、 a という数を n 倍すると p − 1 の倍数になる。そのことから、
  (ɡa)n = ɡan = ɡ(p−1)m = (ɡp−1)m ≡ (1)m (mod p)
であり、 ɡan 乗されると ≡ 1 になる。従って、もし n が p − 1 より小さいのなら、 ɡa は原始根の条件を満たさない。∎

一方、もし a と p − 1 が 2 以上の公約数を持たないなら(つまり両者が互いに素なら)、 ɡa は n = p − 1 乗されて初めて ≡ 1 になる。よって、 ɡ が p の一つの原始根なら、
  ɡ1, ɡ2, ···, ɡp−1
のうち、指数が p − 1 と互いに素なものは、どれも p の原始根(そして p には、それ以外の種類の原始根はない)。 mod 11 の場合、原始根 ɡ = 2 を例とすると、
  21, 22, ···, 210
のうち、次の四つだけが原始根:
  21 = 2 と 23 = 8 と 27 = 128 ≡ 7 と 29 = 512 ≡ 6 (mod 11)

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mod 11 において 8 を底とする指数を Ind8 で表すと:
  81 = 8 よって Ind8 8 = 1
  82 = 64 ≡ 9 よって Ind8 9 = 2
  83 = 512 ≡ 6 よって Ind8 6 = 3
   ︙

従来の 2 を底とする指数を Ind2 で表し、両者を比較すると表7の通り。

【表7】 N mod 11 における2種類の指数の例
N12345 678910
Ind8 N 07648 39125
Ind2 N 01824 97365

一見ランダムにシャッフルされているようだが、明確なパターンがある。 8 = 23 なので、 N = 8x なら N = (23)x = 23x だ。つまり 8 を底とする指数と比べると、 2 を底とする指数は、ちょうど 3 倍。 N ≡ 8, 9, 6 の欄を見ると、確かに Ind8 N ≡ 1, 2, 3 に対して Ind2 N ≡ 3, 6, 9 で、それぞれインデックスが 3 倍されている。 Ind2 N の欄の数値の 3 倍が 10 以上になる場合も理論的には全く同様だが、 mod 11 のインデックスは 10 を法とするので、 12 ≡ 2 (mod 10), 15 ≡ 5 (mod 10) のように 10 で割った余りで簡約可能。

要するに Ind8 の欄の各数を 3 倍した数の 1 の位が、 Ind2 の欄に記されている! 式で書けば:
  Ind2 N ≡ 3 Ind8 N (mod 10)

ここで変換の係数 3 は、
  8 ≡ 23 つまり Ind2 8 ≡ 3 (mod 10)
に由来する。より一般的に、 ɡ と h をどちらも素数 p の原始根だとして、 Indɡ のインデックスを Indh のインデックスに変換したいとしよう。 ɡ は原始根なので、あらゆる種類の数(≡ 0 のものを除く)が ɡx の形で表現可能。よって
  ɡa ≡ h (mod p)  ‥‥①
を満たす a が存在する(h も原始根なので h ≢ 0)。このとき:
  N ≡ hb ならば N ≡ (ɡa)b = ɡab (mod p)
  ∴ Indh N ≡ b ならば Indɡ N ≡ ab (mod p − 1)  ‥‥②

②では b ≡ Indh N (mod p − 1) と仮定している。①は a ≡ Indɡ h (mod p − 1) を含意するので、結局②は次を意味する:
  Indɡ N ≡ ab ≡ a Indh N ≡ (Indɡ h)(Indh N) (mod p − 1)  ‥‥③

つまり、与えられた数 N について、もともとの底 ɡ を基準とした N のインデックス Indɡ N は、新しい底 h を基準としたインデックス Indh N から見ると、 Indɡ h 倍である。 mod 11 において Ind2 N は Ind8 の 3 倍だったように(3 = Ind2 8)。

③の両辺を Indh N で割って、左辺と右辺を入れ替えると:

Indh N ≡ (Indɡ N)/(Indɡ h) (mod p − 1)

ここで 1/(Indɡ h) は mod p − 1 における Indɡ h の逆数を表す。仮定により h は原始根なので、定理5により h = ɡa の a は――すなわち Indɡ h は―― p − 1 と互いに素(2 以上の公約数を持たない)。よって p − 1 を法として a の逆数が存在する。[ちなみに、上記の変換公式は、 log の底の変換公式
  logB A = (loge A)/(loge B)
と全く同じ形式。 Ind も対数(離散対数)の一種なので、普通の対数と同様の性質を持つのは、不思議ではない。]

今 p を 5 以上の(従って奇数の)素数とする。もし最初に記したように、 1 の p − 1 乗根として −1 を選んだときの指標が、原始根の選び方と無関係に一貫して Legendre 記号の値と一致するとしたら、 p の倍数以外の任意の数 N について、次の性質が成り立つ必要がある。すなわち、「p の一つの原始根 h を基準としたインデックス y と、(別の種類の)原始根 ɡ を基準としたインデックス x のどちらを使っても、 (−1)x と (−1)y の値は等しい」、言い換えれば「2種類のインデックス Indɡ N, Indh N は、偶奇が一致する」。そのことは、次のように証明される。

仮定により p − 1 は偶数なので、③は、
  Indɡ N ≡ a Indh N (mod 2)
を含意する。この a は、偶数 p − 1 と互いに素なので、奇数。よって上の式の左辺は、 Indh が偶数か奇数かに応じて、偶数ないし奇数になる。原始根 ɡ, h の選択は任意なので、 ɡ と h の値を入れ替えても(旧 ɡ を h として、旧 h を ɡ とする)、今述べたことがそのまま成り立つ。結局、これら2種類の原始根に関連して、一方のインデックスが偶数か奇数かに応じて、他方のインデックスも偶数ないし奇数になる。

最後に p = 3 の場合には、原始根は 1 (mod 3) の1種類しか存在しない。よって「底の変換」が生じる余地はない。

結論。 p が 3 以上の素数のとき、 Legendre 記号の値 (N/p) は、指標 (−1)Ind N と一致し、そのことは Ind N の基準となる原始根の選択に依存しない。ここで N は、 p の倍数以外の任意の整数。

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