他のメモへのリンク集。リンク集を飛ばして、このページの前書きへ。本文の目次へ。21、22などの数字は、メモの番号です。
![]()
『遊びの数論60』の続き。誤字脱字・間違いがあるかも。

![]()
2026-06-07 再びウォルステンホームの定理 なかなかいいアイデア?
ウォルステンホーム(Wolstenholme)のパズルは、
1 + 1/2 + 1/3 + 1/4 + 1/5 + 1/6 = 49/20
の分子が 72 で割り切れるのはなぜか? というようなもの。一般に p が 5 以上の素数のとき、 1 + 1/2 + ··· + 1/(p − 1) の分子は p2 で割り切れる。
このパズルを例えばこう拡張できる:
1/(1⋅2⋅3) + 1/(1⋅2⋅4) + ··· + 1/(4⋅5⋅6) = 49/48 (✽)
の分子が 72 で割り切れるのはなぜか? ここで分母の三つの因子 i, j, k は 1 から 6 までの整数の全パターン(ただし i < j < k とする)の組み合わせ。
拡張版の方がさらに複雑そうだが、要は 6! 倍(つまり 1⋅2⋅3⋅4⋅5⋅6 倍)した整数が 72 の倍数であることを言えばいい。 1/(i⋅j⋅k) の形の 6! 倍は a⋅b⋅c の形で表記可能(a, b, c は整数で 0 < a < b < c < 7)。例えば、
1/(2⋅3⋅5) × (1⋅2⋅3⋅4⋅5⋅6) = 1⋅4⋅6
のように。(✽)の左辺を 6! 倍して、結果の項をソートして並べると:
(1⋅2⋅3 + 1⋅2⋅4 + 1⋅2⋅5 + 1⋅2⋅6) + (1⋅3⋅4 + 1⋅3⋅5 + 1⋅3⋅6) + (1⋅4⋅5 + 1⋅4⋅6) + (1⋅5⋅6)
+ (2⋅3⋅4 + 2⋅3⋅5 + 2⋅3⋅6) + (2⋅4⋅5 + 2⋅4⋅6) + (2⋅5⋅6)
+ (3⋅4⋅5 + 3⋅4⋅6) + (3⋅5⋅6)
+ (4⋅5⋅6)
a⋅b⋅c の形の各項について、「a, b, c のどの二つも、和が 7 でないもの」は、
{1 or 6}⋅{2 or 5}⋅{3 or 4}
の組み合わせの八つ。 (1 + 6) × (2 + 5) × (3 + 4) を展開したときの 8 項と同じなので、それら 8 項の和は = 7 × 7 × 7 であり、 72 で割り切れる。よって「残りの項の和も 72 で割り切れる」ことを言えば、「全体が 72 で割り切れる」ことが示される。それは易しい。次の基本公式だけで足りる:
1 + 2 + 3 + ··· + n = n(n + 1)/2 ‥‥①
12 + 22 + 33 + ··· + n2 = n(n + 1)(2n + 1)/6 ‥‥②
![]()
冒頭の例の続き。(✽)の左辺を 6! 倍して、和が 73 に等しい八つの項を除去したところから。残った項は、次の三つの部分和に整理可能:
P = 1⋅6 × [2 + 3 + 4 + 5]
Q = 2⋅5 × [1 + 3 + 4 + 6]
R = 3⋅4 × [1 + 2 + 5 + 6]
というのも、 a⋅b⋅c の形の項のうち「a, b, c のどの二つの和も 7 でない項」は除去済みなんで、残ってる項は、必ず「和が 7 になる二つの因子」を含む。つまり 1⋅6 か 2⋅5 か 3⋅4 の倍数。
ここで各 [ ] 内の和は 7 の倍数。なぜなら 1, 2, 3, 4, 5, 6 の和は 7 の倍数だが(公式①参照)、それら六つの数から「和が 7 になる二つの数」を取り除いたものが [ ] 内の四つの数なので、要するに:
[ ] 内 = (7 の倍数) − 7 = (7 の倍数)
従って、
P + Q + R = (1⋅6 + 2⋅5 + 3⋅4) × (7 の倍数)
結局、「1⋅6 + 2⋅5 + 3⋅4 も 7 の倍数であること」を示せば、全体は 72 の倍数になり、証明が終わる:
1⋅6 + 2⋅5 + 3⋅4 = 1⋅(7 − 1) + 2⋅(7 − 2) + 3⋅(7 − 3)
= (1 + 2 + 3)⋅7 − (12 + 22 + 32)
の右辺・第1項は 7 の倍数だし、第2項 = 3(3 + 1)(2⋅3 + 1)/6 も 7 の倍数(公式②参照)。すなわち、
1⋅6 + 2⋅5 + 3⋅4 = (7 の倍数) − (7 の倍数) = (7 の倍数)
であるから、(✽)を 6! 倍した整数は 72 の倍数。ゆえに(✽)の分子は 72 の倍数。∎
明快でいい感じ!
![]()
別の例。
問題1 1⋅2⋅3 + 1⋅2⋅4 + ··· + 8⋅9⋅10 が 112 で割り切れることを示したい。ここで a⋅b⋅c の形の各項の因子は整数で、 0 < a < b < c < 11 の範囲の全部の組み合わせにわたる。
一体何項あるのか? 10 個の物から 3 個を選び出す組み合わせの数(選ぶ順序を区別しない)は 10⋅9⋅8/3! = 120。そんなにいっぱいある項を実際に足すのは面倒なので、工夫がものをいう。
解 与えられた式の a⋅b⋅c の形の各項の中から「a, b, c のどの二つも、和が 11 でないような項」を抜き出すなら、それらの和は 113 の倍数。というのも、項 1⋅2⋅3 を例に、次のように八つの項を一組で考えると:
{1 or 10} × {2 or 9} × {3 or 8} の和 = (1 + 10)(2 + 9)(3 + 8) = 113
この八つの項以外でも全く同様で、「どの二つの因子の和も 11 でないような項」は八つ一組で小計 113 であり、全体として 113 の倍数、当然 112 の倍数でもある。よって、それら以外の項――すなわち「どれか二つの因子の和が 11 であるような項」――も、合計が 112 の倍数であることを示せば、問題は解決する。
どれか二つの因子の和が 11 であるような項は、次のように、五つの部分和に整理可能:
(1⋅10) × [2 + 3 + 4 + 5 + 6 + 7 + 8 + 9]
(2⋅9) × [1 + 3 + 4 + 5 + 6 + 7 + 8 + 10]
(3⋅8) × [1 + 2 + 4 + 5 + 6 + 7 + 9 + 10]
(4⋅7) × [1 + 2 + 3 + 5 + 6 + 8 + 9 + 10]
(5⋅6) × [1 + 2 + 3 + 4 + 7 + 8 + 9 + 10]
1, 2, ···, 10 の和は 11 の倍数(公式①)。上記の各 [ ] 内は、この 11 の倍数から二つの数(その二つの数の合計は 11)を引いたものなので、やはりそれぞれ 11 の倍数。従って、上記の 5 行を合算すると、
{1⋅10 + 2⋅9 + 3⋅8 + 4⋅7 + 5⋅6} × (11 の倍数)
となり、この { } 内も 11 の倍数であることを示せば、証明が完了する。それは易しい:
{ } 内 = 1(11 − 1) + 2(11 − 2) + 3(11 − 3) + 4(11 − 4) + 5(11 − 5)
= (1 + 2 + 3 + 4 + 5)11 − (12 + 22 + 32 + 42 + 52)
= (11 の倍数) − (11 の倍数) = (11 の倍数)
平方数の和については公式②を使った。∎
合同式を併用すると、少し見通しがいい。 mod 11 において:
1⋅10 + 2⋅9 + 3⋅8 + 4⋅7 + 5⋅6 ≡ 1(−1) + 2(−2) + 3(−3) + 4(−4) + 5(−5)
≡ −(12 + 22 + ··· + 52) ≡ 0
問題1は、実質次と同じ。
問題2 次の和の分子が 112 で割り切れることを示したい。
1/(1⋅2⋅3⋅4⋅5⋅6⋅7) + 1/(1⋅2⋅3⋅4⋅5⋅6⋅8) + ··· + 1/(4⋅5⋅6⋅7⋅8⋅9⋅10)
ただし各項の分子は 1 から 10 までの相異なる整数を七つずつ、全部の組み合わせ(順序を区別しない)で掛けたもの。
一見面倒な難問のようだが、われわれはこれを数行で解決できる立場にある。
解 問題1から、
1⋅2⋅3 + 1⋅2⋅4 + ··· + 8⋅9⋅10
は 112 の倍数。その和を 10! で割って約分すれば、問題2の和となる。言い換えると、問題2の各項の分母を通分して 10! にすると、分子は 112 の倍数(このとき分母には 10 以下の因子しかないので、約分しても分子の素因子 11 は消えない)。∎
〔参考〕 問題1の和は 18150。問題2の和は 121 ⁄ 24192。
![]()
上の例から分かるように、このシンプルなアイデアによって、 Wolstenholme の定理のある種の拡張バージョンが証明される!
一般のケースは、そこまで簡単ではないようだが…
問題3 p を 5 以上の素数、 k を 3 以上 p − 2 以下の奇数とする。 p − 1 個の整数
{1, 2, ···, p − 1}
を k 個ずつ掛けて、それらを足し合わせた和 Wk は、 p2 で割り切れる。足し算される k 因子の積は、全種類の組み合わせ(順序を区別しない)にわたる。
問題3の内容は J. W. L. Glaisher によって発見・証明された。問題1などの例は k = 3 のケース。 k を p − 2 に固定したものが、いわゆる Wolstenholme の定理に当たる。
解 各項は k 個の因子から成る。 x が「その項の因子である k 個の数」の一つであるとき、もし p − x が「その項の因子である k 個の数」の一つではないなら、そのような因子 x を孤立因子と呼ぶことにする。簡潔化のため、任意の a について p − a を a′ と略す。
〔例〕 p = 7, k = 3 のときの項 1⋅2⋅6 において 2 は孤立因子。 1 と 6 は孤立因子ではない。この場合、もし a = 1 とすれば a′ = 6。
仮定により因子の個数 k は(3 以上の)奇数なので、「項が a⋅a′ の形の二つの因子のペアだけから成る」ということは不可能。さりながら、以下の議論では、どの項も「一つの孤立因子を除いて、残りの k − 1 個(偶数個)の因子は、その形のペアだけから成る」と考えても差し支えない。なぜならば、「その形のペアにならない因子」(すなわち孤立因子)を複数持つ項たちは、小計が p2 の倍数なので、そのような項を全部除去(ないし無視)したとしても、「全体の和が p2 の倍数か否か」の結論には影響しない。3因子の積 a⋅b⋅c の例において「a, b, c のどの二つの和も p ではない場合」を除外したのと同様。
実際、もしある項がちょうど二つの孤立因子 x, y を持つなら、その項を含む 22 個の項を一組として、その組は
{x or x′} × {y or y′} の和 = (x + x′)(y + y′) = p2
という小計を持つ。ある項がちょうど三つの孤立因子 x, y, z を持つなら、その項を含む 23 個の項を一組として、その組は
{x or x′} × {y or y′} × {z or z′} の和 = (x + x′)(y + y′)(z + z′) = p3
という小計を持つ。四つ以上の孤立因子についても同様。孤立因子が二つ以上ある場合、それが何個であっても、関連する小計は p2 の倍数。さらに、孤立因子 x を一つだけ持つ項
x(a⋅a′)(b⋅b′)(c⋅c′)···
も、
x′(a⋅a′)(b⋅b′)(c⋅c′)···
との 2 項の和を小計とするなら、それは p の倍数。現に:
(x + x′)(a⋅a′)(b⋅b′)(c⋅c′)··· = p(a⋅a′)(b⋅b′)(c⋅c′)
要するに {1, 2, ···, p − 1} の m 個ずつの積の和 Wm のうち(0 < m < p − 1)、孤立因子を一つ以上含む項だけを抜き出した部分和は、 p の倍数(ただし、証明したいのは「和が p2 の倍数」ということなので、「p の倍数」というだけでは十分でない)。
今、素数 p の半分(端数切捨て)を H = (p − 1)/2 とする。言い換えると p = 2H + 1。孤立因子を二つ以上含む項は、小計が p2 の倍数なので、そのような項については、以下の議論から除外する。
もし k が 3 なら、除外されなかった各項は、次の形式の幾つかの部分和に整理される(前記の具体例参照):
(a⋅a′) × [1 から p − 1 の各整数(a, a′ を除く)の和]
ここで a は 1 から H にわたる。 [ ] 内は p の倍数なので、積 a⋅a′ の総和
1(p − 1) + 2(p − 2) + ··· + H(p − H)
が p の倍数であることを示せば、このケースの証明は終わる。既に見たように、それは易しい(下記では、一般のケースに含めて、再証明する)。
もし k が 5 なら、除外されなかった各項は、次の形式の幾つかの部分和に整理される:
(a⋅a′)(b⋅b′) × [1 から p − 1 の各整数(a, a′, b, b′ を除く)の和]
ここで a, b は 1 ≤ a < b ≤ H の範囲の全整数にわたる。 [ ] 内は p の倍数なので、 4 因子の積 a⋅a′⋅b⋅b′ の総和 U4 も p の倍数であることを示せば、このケースの証明は終わる。そして U4 は、
W4 = a⋅b⋅c⋅d
の形の一般の総和(0 < a < b < c < d < p)から、「孤立因子を一つ以上含む項たち」を除去した残りに等しい。 W4 は p の倍数であり(Lagrange の定理)、そこから引き算される「孤立因子を含む項たち」の合計も p の倍数なので、 U4 も p の倍数。
一般に k が 3 以上の任意の奇数のとき、問題は、
(a⋅a′)(b⋅b′)(c⋅c′)··· × [1 から p − 1 の各整数(a, a′, b, b′, c, c′, ··· を除く)の和]
の形の部分和に帰する。 [ ] 内は p の倍数なので、
(a⋅a′)(b⋅b′)(c⋅c′)··· の(k − 1 因子の項の)総和 Uk−1
が p の倍数であることを示せばいい(0 < a < b < c < ··· < H)。 Uk−1 は、一般の総和 Wk−1 から「孤立因子を含む項たち」を除去したもの。 Wk−1 もそこから引き算される値も p の倍数だから、 Uk−1 は確かに p の倍数。∎
![]()
このメモは前回の「フェラーズの定理(リー・グレイシャーによる証明)」の続きに当たる。そこでは J. W. Lee Glaisher [7] の §§1–8 の内容を抜粋した。今回の内容は §9 以降、特に §16 の一部に対応する。アプローチは多少異なる。
![]()