遊びの数論63 

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61 | 62 | 63

遊びの数論62』の続き。誤字脱字・間違いがあるかも。


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2026-07-08 博士の愛した公式(その3) 3⋅4⋅56⋅7

[10 S 5] ≡ 52 [10 S 6] (mod 56)

[14 S 7] ≡ 72 [14 S 8] (mod 75)

[22 S 11] ≡ 112 [22 S 12] (mod 115)

これらは Glaisher の合同式の一種。 mod p5 は一定パターンで規則的に生じるが、 mod p6 は珍しい。

意味?

[10 S 6] = 63273 を 52 倍した 1581825 と、 [10 S 5] = 269325 は、どっちの数も 56 = 15625 で割ったときの余りが同じ!ってこと(具体的には 3700 余る)。

言い換えると、両者の差
  1581825 − 269325 = 1312500 = 15625 × 84 = 56 × 84
は 56 の倍数。 84 = 12 × 7 = 3 × 4 × 7 なので、おしゃれに(?)書けば:
  52[10 S 6] − [10 S 5] = 3⋅4⋅56⋅7

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§17 次の合同式は、 Glaisher [7] の最後の節 §59 にリストアップされた10種の公式のうち最後のもの。
  [n S k] ≡ (nk/2)[n S k + 1]
参照の便宜上、これを第10公式と呼ぶことにする。

「第10公式」では、 n が奇数なら k を偶数とし、一般には n3 が法となる。ただし n = p が素数なら、 k = p − 3 の場合を除いて p4 を法とすることができる(k = p − 3 の場合には、一般の場合と同じく p3 が法)。その証明は、比較的易しい

一方 n = 2h が偶数の場合、 k を奇数とし、やはり一般には p3 が法となる。この場合も n/2 = h = p が素数なら、 k = 2p − 3 の場合を除いて p4 を法とすることができるのだが、その証明はややトリッキー。 Glaisher 自身、すぐには状況を見通せず、 k ≥ p の場合に限った証明を書き上げ、既に活字も組み上がった段階になって「k は p より小さい奇数でも構わないぞ!」というひらめきを得て、論文の末尾に追記し、本文のあちこちに脚注を追加している。

Glaisher 博士は当時 The Quarterly Journal 誌の唯一の編集者だったらしく、ギリギリになって脚注追加、といった融通が利いたようだ。数表を作るようなことが大好きだったらしく、かなり楽しそう。

Glaisher は上側インデックスが 23 までの第一種スターリング数の表を自作していたので、 p = 5, 7, 11 の三つのケースについて n = 2p 場合の具体的数値を観察することができ、従って、上記の結論を初めから予想できていた可能性がある。ただ、すぐには証明を思い付かず、具体例が三つだけでは、一般的に成り立つのか、たまたま最初の三つではそうなるだけなのか断定もできないので、もやもやしていたのではないか。

任意の奇素数 p について、 Wp(2p) = [2p S p] は p の倍数――という観察を糸口にして、 Glaisher は中途半端だった証明を自然に拡張した。事実としては平明だがその論法は繊細で、 p2 で割り切れない三つの項を組み合わせると、それらの和が p2 で割り切れる、ということに基づく(§14)。そして、それを土台に Wp+1, Wp+2, ···, W2p−3 が p の倍数であることが帰納的に示される。 p の倍数だと保証された W の範囲が広がったことで、 p の倍数だと保証された σj(p − 1; 2p) の範囲も広がる(§16)。「第10公式」では、内部的に σj が因子となっているため、それが素因子 p を持つなら、法 pν の指数 ν が増える。

証明の細い道がつながったときは(エレガントかはともかく、論理的には明快)、さぞや胸のすくような思いだっただろう。

表記法(記号・文字)について。 A1, A2, ···, An−1 で (x + 1)(x + 2)···(x + n) の係数(最高次の係数 1 を A0 とする)を表すのは、 Lagrange が Wilson の定理を証明したときからの由緒ある表記法であり、 Glaisher もこの表記法を使う。われわれも同様の表記法を併用するけれど、文字 A の代わりに W を使って W1, W2 等々と記す。 Wr とは n 次式 x(x + 1)(x + 2)···(x + n) の n − r 次の係数であり、定数項は 0 なので Wn = 0。基準となる多項式の次数 n はしばしば暗黙だが、明示したい場合には Wr(n) と表記する。

Wr は「0 から n − 1 までの n 個の整数」の「r 個ずつの積」の総和に等しい。因子 0 を含む項は和に寄与しないので「1 から n − 1 までの n − 1 個の数」の「r 個ずつの積」と言ってもいい。これを Glaisher は
  Wr = Sr(1, 2, ···, n − 1)
のように記した。ここでも、時々同様の表記法を使う。ただし、同じことを簡略に
  Wr = Sr(n − 1)
と書く。スターリング数の(Knuth による)記号では、
  Wr(n) = Sr(n − 1) = [n S n − r]
に当たる。

W と S は、引数の仕様が 1 違うだけで、実質同じ関数。 Wr(6) = Sr(5), Wr(7) = Sr(6) 等々。同じ内容について二つの表記法があるのは冗長で、場合によっては紛らわしい。しかし少なくとも Glaisher の原論文の用法においては、表記の簡潔化や、ある種の一般化に役立っている面もある。もとをただせばスターリング数に(まだ)統一された表記法がないことが、このような「表記の揺れ」の一つの背景といえるだろう。

Glaisher の σ 記号の概要は次の通り(詳細)。
  σ1(1, 2, ··· , m; L) = 1⋅(L − 1) + 2⋅(L − 2) + ··· + m⋅(L − m)
  σ2(1, 2, ··· , m; L) = 1⋅2⋅(L − 1)⋅(L − 2) + 1⋅3⋅(L − 1)⋅(L − 3) + ··· + (m − 1)⋅m⋅(L − (m − 1))⋅(L − m)
つまり σj は各項が 2j 個の数の積から成る総和であり、例えば σ3(1, 2, ···, m; L) なら「1 から m までの数の三つずつの積」(それを一般的に αβγ としよう)に、 α, β, γ のそれぞれを L から引いたものを因子として追加した六つの数の積 αβγ(L − α)(L − β)(L − γ) の和。引数と無関係に σ0 = 1 と約束する。われわれは
  σj(1, 2, ··· , m; L)
を σj(m; L) と略す。実際には、
  σj(1, 2, ···, h; 2h + 1) と σj(1, 2, ···, h − 1; 2h)
の二つが(以下では後者が)常用される。省略記法ではそれぞれ σj(h; 2h + 1) と σj(h − 1; 2h) に当たる。

個々の σ 記号の具体的な和(数値)は、実際上あまり重要ではない。ある種の式の操作の結果として「σ が特定の数の倍数になることが保証される」ようなケースが、重要な鍵となり得る。

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§18 n = 2h を任意の正の偶数、 2t を 0 以上 n − 2 以下の偶数とする。 μ = h − t と置き、 σj(h − 1; n) を σj と略すと、
  (μ − 1/2)⋅n⋅S2t(2h − 1) − S2t+1(2h − 1)
   = 1/2(4μ2 − 1){[μ⋅1/3!]⋅n3⋅σt−1 + [(μ + 1)μ(μ − 1)⋅2/5!]⋅n5⋅σt−2 + ···}  ア
成り立つ(変数名を L から n に変えた)。従って、
  (μ − 1/2)⋅n⋅S2t(2h − 1) と S2t+1(2h − 1) の差
は、見掛け上 n3 = (2h)3 の倍数。しかしこの (2h)3 が持つ因子 2 の一つまたは二つは、 1/2 ないし μ⋅1/3! = μ/6 の分母と約分されて消える可能性がある。よって、上記の二つの数の差が (2h)3 の倍数とは言い切れない。 h3 の倍数であることは確かだが。

上記の二つの数の差は、約分による影響を度外視するなら 4μ2 − 1 の倍数ないし μ の倍数でもあり、 mod h5 においては σt−1 の倍数でもある。

いずれにしても (h − t − 1/2)⋅n⋅S2t(2h − 1) と S2t+1(2h − 1) は、(少なくとも)法 h3 の下で合同:
  (2h − 2t − 1)⋅h⋅W2t(2h) ≡ W2t+1(2h) (mod h3)  イ
  ∴ (n − 2t − 1)⋅h⋅W2t(n) ≡ W2t+1(n)

k = n − 2t − 1 と置くと 2t = n − k − 1 なので:
  khWn−(k+1) ≡ Wn−k(n)
  ∴ kh [n S k + 1] ≡ [n S k] (mod h3)  ウ

これが「第10公式」のデフォルト・ケースに当たる(cf. [7], §20)。仮定により n = 2h は偶数、かつ 0 ≤ 2t ≤ n − 2 なので k は 1 以上 n − 1 以下の奇数。

もし k = n − 1 なら t = 0 なので、イの右辺は S1(2h − 1) = (2h − 1)⋅2h/2 = (2h − 1)⋅h に等しく(1 から 2h − 1 までの各数の和)、つまりイの左辺と等しい。その場合、合同式イは(従ってウは)実際には等式であり、自明。他方、 n = 2 (h = 1) なら、これらは法 1 に関する合同式であり、やはり自明。以下では自明なケースを除外して、 n を 4 以上の偶数、かつ k を 1 以上 n − 3 以下の奇数(t = 1, 2, ···, h − 1)と仮定する。

非自明な最小のケースは n = 4, k = 1 の
  1⋅2⋅[4 S 2] ≡ [4 S 1] (mod h3)
だ。 [4 S 2] = 11, [4 S 1] = 6 なので、この合同式は
  2 × 11 ≡ 6 (mod 8)
を意味し、確かに正しい(この例では、法を 24 = 16 にしても合同式が成り立つ)。

h が 3 以上の素数 p の場合、一般にはアの σt−1 などからも素因子 p が生じ、合同式イないしウは、法 h3 のみならず法 h4 の下でも成り立つ。

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§19 先に h が合成数のケースを観察しておく。

h = 4 (n = 8) の場合、ウは、次の各数が 43 = 26 で割り切れることを含意する。実際そうなっている:
  1⋅4⋅[8 S 2] − [8 S 1] = 4⋅13068 − 5040 = 47232 = 28 × 369
  3⋅4⋅[8 S 4] − [8 S 3] = 12⋅6769 − 13132 = 91988 = 29 × 133
  5⋅4⋅[8 S 6] − [8 S 5] = 20⋅322 − 1960 = 4480 = 27 × 35

h = 6 (n = 12) の場合、次の各数が 63 = 23⋅33 で割り切れねばならない。
  1⋅6⋅[12 S 2] − [12 S 1] = 6⋅120543840 − 39916800 = 26⋅33 × 395455
  3⋅6⋅[12 S 4] − [12 S 3] = 18⋅105258076 − 150917976 = 25⋅33 × 2018203
  5⋅6⋅[12 S 6] − [12 S 5] = 30⋅13339535 − 45995730 = 24⋅34 × 273295 ◎
  7⋅6⋅[12 S 8] − [12 S 7] = 42⋅357423 − 2637558 = 26⋅34 × 2387 ◎
  9⋅6⋅[12 S 10] − [12 S 9] = 54⋅1925 − 32670 = 24⋅34 × 55 ◎
いずれも十分に条件を満たす。特に◎印では、法 63 のみならず法 64 の下でも合同。追加された因子 3 の供給元(因子 2 はもともと余分にある)は、いろいろ。 k = 5 のケースでは σt−1 が 3 の倍数で、かつ μ = 3 なので、 3 を約した後で余分の因子 3 が一つ残る(t は n − k − 1 の半分に等しい。 μ は h − t に等しい)。 k = 7, 9 のケースでは σt−1 は 3 の倍数ではないが、 4μ2 − 1 が 9 の倍数で、やはり 3 を約した後で余分の因子 3 が残る。

n = 18 (h = 9) の場合、 k = 1, 7 のとき法 94 の下で「第10公式」成立。追加の因子 3 は μ または 4μ2 − 1 または σt−1 から供給される(一つは約されるので合計 3 個必要)。

n = 30 (h = 15) に至っては、ほとんどのケースで合同式が法 154 の下で成立し、法 155 の下で成立するケースも少なくない。例えば:
  25⋅15⋅[30 S 26] − [30 S 25] = 155 × 448630
この場合も追加の因子 15 に必要な素因子 3 と 5 は、 μ または 4μ2 − 1 または σt−1 から供給される。例えば上記 k = 15 の例では t = 2, μ = 13 なので
  4μ2 − 1 = (2μ + 1)(2μ − 1) = 27⋅25 = 33⋅52
であり、この部分からだけでも――n3 = (2⋅15)3 とは別に――追加の因子 152 が供給される。

h = 27 では 5 乗を超える法が生じる。
  1⋅27⋅[54 S 2] ≡ [54 S 1] (mod 278)
  3⋅27⋅[54 S 4] ≡ [54 S 3] (mod 277)
  5⋅27⋅[54 S 6] ≡ [54 S 5] (mod 276)
  7⋅27⋅[54 S 8] ≡ [54 S 7] (mod 276)

このように、 h が素数でなくても「第10公式」が h4 やそれより高次の法において成り立つことは、珍しくない。むしろ h が合成数だからこそ、「特定の一つの因子が h = p⋅p′⋅p″··· の倍数でなくても、別々の因子から素因子 p, p′, p″ 等々が供給され、全体として因子 p が生じる」ということが起こり得る。対照的に、もし h = p が素数ならどれかの因子が p の倍数でない限り因子 p は生じ得ず、その結果として――「第10公式」の法は一定の規則に従って h4 ないし h5 になり、デフォルトの h3 よりは高次であるものの―― h5 を超える法の下で公式が成り立つことは(h が合成数の場合と比べて)起こりにくいかもしれない。

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§20 h が素数 p の場合、式ア(§18)において、もし 1 ≤ t − 1 ≤ p − 2 かつ t − 1 ≠ (p − 1)/2 ならば――すなわち、もし 2 ≤ t ≤ p − 1 かつ t ≠ (p + 1)/2 ならば―― σt−1 からも因子 p が供給されるため(補題7)、そのとき「第10公式」は法 p4 の下に成り立つ。

定義により奇数 k は = n − 2t − 1 = 2p − 2t − 1 なので、 t に関する上記の条件は、奇数 k についての条件 1 ≤ k ≤ 2p − 5 かつ k ≠ p − 2 と同値。特に k が = 2p − 3 の場合、 σt−1 から追加の因子 p は供給されない(k = 2p − 1 の場合は、因子 p の個数を考えるまでもなく、公式は自明な等式となる: §18)。さらに p = 3 のときには条件を満たす k は存在しない。

t = (p + 1)/2 の場合(k = p − 2)、 σt−1 からは因子 p は供給されないものの、 μ = (p − 1)/2 なので 4μ2 − 1 = (2μ + 1)(2μ − 1) から因子 p が一つ供給され、結局、その場合、公式は法 p4 の下で成り立つ。一方、 k = p の場合、 t = (p − 1)/2, μ = (p + 1)/2 なので、 σt−1 からも 4μ2 − 1 からも因子 p が供給され、公式は法 p5 の下で成り立つ。

要約すると、次の通り。

定理5(上側偶数のスターリング数に関する合同式: cf. Glaisher [7], §53) n = 2h が 4 以上の偶数で、 k が 1 以上 n − 3 以下の奇数のとき、法 h3 の下で次の合同式が成り立つ。
  kh [n S k + 1] ≡ [n S k]
もし h が 5 以上の素数 p で k が n − 5 以下なら、同じ合同式が法 p4 の下で成り立つ。特に k = p なら、この合同式は法 p5 の下で成り立つ。

h = p = 7, n = 14 の例。
  1⋅7⋅[14 S 2] − [14 S 1] = 74 × 55140480
  3⋅7⋅[14 S 4] − [14 S 3] = 74 × 166593960
  5⋅7⋅[14 S 6] − [14 S 5] = 74 × 44484154
  7⋅7⋅[14 S 8] − [14 S 7] = 75 × 346632
  9⋅7⋅[14 S 10] − [14 S 9] = 74 × 31746
  11⋅7⋅[14 S 12] − [14 S 11] = 73 × 572

定理5はあくまで「最低限の保証」であり、実際にはもっと高い次数の法で合同式が成り立つこともある。次の「6乗剰余」の合同式は、印象的。
  1⋅5⋅[10 S 2] − [10 S 1] = 54 × 7632
  3⋅5⋅[10 S 4] − [10 S 3] = 54 × 15492
  5⋅5⋅[10 S 6] − [10 S 5] = 56 × 84
  7⋅5⋅[10 S 8] − [10 S 7] = 53 × 168

素数 p = 37 の場合、 k = p のとき法 p5 の下で合同式が成り立つのは定理の通りだが、それ以外に k = 3 と k = 39 の場合にも、法 p5 が有効。 p = 59 の場合、 k = p の他 k = 13, 71 でも法 p5 が有効。のみならず、次の合同式は法 p6 の下でも成立する。
  71⋅59⋅[118 S 72] ≡ [118 S 71] (mod 596)

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